「――さて、そんなあなたは一体何にお金を使うのかしら?」
WEB未読。
タイトルから分かる通り、転生モノです。チートで無双とは程遠い、世知辛い世界ですけれど。
農奴の両親の間に生まれた奴隷階級。さらに両親は、厳しさに負けて早逝というスタート。
何が悪いと言われれば、生まれた場所と世界が悪いという感じで……彼自身に責がない部分で、始まりから重く暗いので万人受けはしなそう。
幸せになってほしいなぁ、と見守る心境で読んでましたが、一歩どころか半歩進めるかも怪しい状況が続いて、メンタルに来る。ただ、文章は好みにあって、スラスラ読めましたね。
幼少期から日本人として生きた記憶を持っていたため、適度に力を抜きつつ、こき使われ続けた。
時にサボりを見つかり、折檻されたようですが、それでも生き……なんとか成人年齢まで命を繋いだ。
しかし成人になると税負担が重いので、他所の鉱山へ奴隷として売却される事になって。馬車に揺られていたら、その馬車が魔物に襲われる。
波乱万丈で、どの場面で死んでてもおかしくないですけれど、辛くも命を拾って都市までたどり着いたけれど、縁も金もない逃亡奴隷を救ってくれる聖人はおらず、すげなく追い払われる羽目に。
ただ、その近くにある主人公と同じような境遇の人の共同体、ラヴァル廃棄街になんとか潜り込んで、そこでようやくこの世界で初めて、優しさに触れることとなります。
前世の知識があるせいで、振る舞いや言葉遣いが農奴にしてはおかしいと危ぶまれたり、『廃棄街』特有の事情を呑み込めなかったり、世知辛い要素に終わりはありませんけどね……。
廃棄街の冒険者として、魔物への警戒を仕事として。お金を得て。
これまでより、よっぽど人間らしい生活をして。それでも危険が向こうからやってくるんだから、この世界は鬼だ。
チートはないけれど、妙な働きを見せる勘だったり、追い込まれた時に見せる戦いぶりだったり、謎はありますが。少しでもいい暮らし出来るといいなぁ。