「心からお帰りをお待ちしておりました……!」
18年ぶりとなる、十二国記の書き下ろし長編。
私が十二国記を読み始めたの、結構刊行が進んでからなので、そんなには待ってない……と言いかけて『丕緒の鳥』は初版で買ったので6年は待ってたのかと驚きましたね……
遂に描かれる事となった、戴のエピソード。
王と麒麟が消えた六年の間に、荒れたという国。
これまでは、ほとんどが伝聞でしたが、泰麒と李斎が帰還して、そこに暮らしている人々の様子が描かれると、想像以上で心に来ますねー。
驍宗様の行方が知れず、偽王が立ったときに反発はあったが……粛清と、心変わりの病によって頭を押さえつけられていた。
希望の光が見えず、ここに至るまでも既に多くの命が喪われた。
それでも、戴の人々は完全に屈してはいなかった。生きながらえて、各々が戦っていた。
特に、真っ先に偽王を批判し、壊滅させられた瑞雲観の道士たちには感服します。
少しでも多くの知識を残そうと奔走し、辛くも生き延びた面々は薬の知識を活用し、民を助けていた。
これだけ荒れた国にあっても、心までけだものに堕する事がなかった。戴の民の強さを見れた気がして、序盤から引き込まれました。
角を失った泰麒は王気を探すこともできない。
「喪失したからこそ、奇蹟ではない現実的な何かで、戴を救うために貢献しなければなりません」という、泰麒は本当に強くなった。
彼の場合は、強くならざるを得なかった部分もありますが。
あの幼い泰麒が、ここまで成長したのかという感動と、もうあのあどけない泰麒はいないんだなという喪失感とが同時に来て、情緒が大変なことになった。
項梁という味方を得て、驍宗様を探している中で、泰麒が突然李斎と別行動をとって……
向かった先に驚かされました。いや、妙手ではあるでしょう。
敵の胸中に飛び込めばそれだけ情報は得られますが、同時に危険なわけで。それは相談できませんよね……泰麒なりの戦いが実ってほしいものですが。