「魔女だ魔女だとうるさい。魔女に依頼に来たんだ。そんなことは、最初から知っている。俺は、魔女のロゼがいい」
法に、国家に縛られぬ存在である魔女ロゼ。
祖母や母からその力を継ぎ、湖の真ん中に浮かぶ小島に居を構えていた。
薬師が調合出来るようなものから、魔女の魔法を注いだ特別なものまで。
そんな彼女の下に「惚れ薬」の依頼を持ち込まれて。
それだけならただの依頼ですが……タイトルに在る通り、問題なのは依頼してきた騎士がロゼが「好きな人」と言う辺りで。
せめてもの仕返しで、材料の情報を小出しにしたりしてましたが。それでもちゃんと薬を作って渡す辺り、仕事には真剣ですよね。
魔女の在り方ゆえでしょうけど、不器用な彼女が、もっと救われてほしいと思わずには居られない感じで。
「魔女」と言う存在を人々は恐れ、ロゼの祖母が死んだときには街の人々が喜ぶ様子を見せつけられて。
そんな大衆の行いを、「人が死んで安心したとは、胸くそが悪い」と言ってくれた場面はスカッとしましたね。これは惚れるのも仕方ない。
依頼者のハリージュが少しずつ彼女を知り、気に掛けるようになっていく様子は微笑ましかったです。
いやまぁ、基本的にはレタスしか食べませんとか言う食生活の偏りですとか、部屋の荒廃っぷりを見ると心配になるのも頷けますけどね。
最初のうちは振り回されていた彼が、次第にロゼに惹かれていくのが丁寧に描かれた素敵な物語でした。
Twitterでフォローしている人が書籍化をそれは喜んでいらしゃったので、気になって購入したのですが、良い買い物ができました。大変満足。
電子版を買ったので、ハリージュが使用人に微笑ましく見守られる短編が読めて良かったです。