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「じゃあ、僕が総長連合入れたら、僕を一度でいいから応援してくれ、それも心から」
「じゃあ、私が総長連合入れたら、私を一度でいいから助けて頂戴ね、それも心から」


星が地上に降りて踊り、風は電柱の上で歌を歌う。
何もかもが完全であるがゆえに、不完全ある都市。矛盾を内包するその場所が「矛盾都市TOKYO」。
そこで副長を務めていた「僕」はある事情から記憶を封印しようとする。
記憶を封印する過程で、「僕」はそれまでの記憶を振り返ることとなる。
それは走馬灯のように過ぎ去るもので、時系列もバラバラな記憶の断片たち。
「先輩」や「君」を含む仲間たちと共に過ごした記憶が、「僕」の中を通り過ぎていく。

とまぁ、今書いたように、「僕」の記憶の断片が連なった作品。
時系列もバラバラで、あっちにいったりこっちにいったり。
その中に出てくるキャラは、相変わらずの川上節というか、奇人変人のオンパレードで。
そんな連中の過ごす街も、奇行が目立ったりするわけですよね。
都市の性質として、明確な名前が出てこないでどのキャラも「僕」とか「令嬢」とかって記号で呼ばれているので、ちょっと取っつきにくいかも。
まぁ、慣れてしまえばそれまでなんですがね。

起動力という力も存在し、「僕」のそれは「思い信じて打撃したら全てが打撃力を持つ」というもの。
概念ですら殴れるので、まずいラーメンを殴って「不味さ」を抽出することだってできてしまう。
いやまぁ、それやった後、ラーメン屋の店主に叩き出されてましたけど。
副長に任じられた能力をそんなことに使うなよ・・・って言いたいけど、川上作品だと割とデフォルトですよね。
むしろ上層部こそ頭おかしくて普通、みたいな。

前述のとおり、頭おかしいやりとりが多いんですけど、川上作品に慣れ親しんだ身としてはそれが楽しいんですよね。
電車が学生で混雑しているから、八倍圧縮かけてみたり。
体育祭の障害物競走では地雷が使われたり、メイン競技は42.195㎞高飛びだったり。
奇怪な実験を行って騒ぎを起こすキャラクターが居たりとはちゃめちゃ。
しかし、その奇人変人のごった煮がどういうわけか面白いんですよね。
どのキャラも結構好きなんですが「先輩」が一番好きですかねー。

川上作品が好きだったら是非読んでほしい作品ですなー。
都市シリーズとか前過ぎて、新刊書店ではもうほとんどおいていない気がしますが。

コマ切れの話なんで、章の終わりらへんにコマ切れの記憶ごとに解説が入っているんですが。
「麻酔効いてなくて、手術中に医師のダジャレに突っ込んだら、無言で麻酔を追加された友人」がいるそうで。
ホライゾンとかの後書きでも思うんですけど、結構、周囲にいろんな人がいますよね。
波乱万丈とまではいかなくても、愉快なイベント巻き起こす友人がいるのは類友ってやつでしょうかね・・・