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「……かをりちゃんは……好きなんだね、公生……の弾く音楽が」
少し、胸が苦しくなった。公生自身を好きなのか、と訊けなかった。
「うん、隙だよ。みんな、みんな、大好き。生きていて、好きなことがいっぱいあって、それが嬉しくてたまらない。ヴァイオリンが弾けることも、聞いてくれたお客さんが拍手してくれることも、クレープがあることも」
(略)
「毎日が、大好き。何もかも好き」


小説版、四月は君の嘘。
分類に困ったのでとりあえず、コミックと同じ漫画の欄に混ざってます。

さて、本編ですが「6人のエチュード」とありますが、視点は5人。
表紙にいる主要キャラクターたちが、有馬公生をどう見ているのかが語られるエピソードとなっています。
だから、6人目は公生自身だってことでしょうね。

宮園かをり視点のプロローグ「君は弱虫だ」とエピローグ「君はすごい」。
幼少期の相座武士が見た「有馬はヒーローだ」。
ヒューマンメトロノームと呼ばれる以前、公生自身の演奏に撃ち抜かれた絵見に映る公生の姿「有馬は嘘つきだ」。
幼馴染の少女が見た、黒猫と公生、そして母を失った公生の様子が描かれる「公生は優しすぎる」。
そして、デートをしてフラフラして、それでも友人の事をわかっている渡視点の「公生は男なんだ」。
以上の6話が掲載。

演奏家としての有馬公生を捉えている武士と絵見のエピソードが印象的でしたね。
掲載順がロボットのように練習を続ける公生に影響を受けた武士、それ以前の演奏を知っている絵見っていうのがまたいい感じだと思いました。
コンクールでの有馬公生を知っていて、かたやヒーロー視し、かたや超えてやろうと燃えていて。
対し方が随分違うなと思っていたんですが、その原点からして違いがあったんですね。

ピアニスト有馬公生。
コンクール荒しの経歴から、悪名として広まっているその名前。
けれど、その存在に、演奏に影響を受けているキャラクターたちがどれだけいるか。
今回はそのことがよくわかるエピソードが集まっていて、原作の補完として中々秀逸だったと思います。