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「友人の言葉でも、恋人の言葉でも、まったくの他人の言葉でも、野ノ尾さんににとっては同じだということですか?」
彼女は頷く。
「同じことを話していたなら、誰が言おうとそれは同じ言葉だ。会話とは本質的に、そういうものだと私は思う」

短編と中編。
巻末にはサクラダリセットとは関係ない「ホワイトパズル」という作品が収録。
本編は、春埼がケイの見舞いに行ったり、友達を作ろうとしたりする話。
それと、ビー玉の中に入る少女と月の砂を取りに行った少年の話。
どの話も、この作品特有の綺麗さを持っていて好きですよ。

「ビー玉と世界とキャンディーレジスト」
意識をビー玉の中に入れる能力を持つ少女。
しかしそれは、自分で意識して使えるものではなかった。
気がつけばビー玉の中にいて、気がつくと出ている。
その少女をビー玉から出すという仕事が回ってくる。
ルールに固執する「風紀委員」というあだ名をもつ彼女は、その能力で意識を失ったため、入学式に出れなかった。
すぐにリセットすれば解決するが、そこはケイのすること。
彼女と会話をし、彼女について知ってから、最善策を模索する。
短編ですが、あいかわずの二人が見れて、安心できますね。

「ある日の春埼さん~お見舞い編~」
「ある日の春埼さん~友達作り編~」

掲載順はずれているんですが、テーマは同じなので、まとめて。
かなり短い短編で、タイトル通り春埼がメインの話ですねー。
お見舞いの方は、体調を崩したケイを見舞いに行くかどうか悩む話。
友達作り編は、野ノ尾さんとくだらない会話に興じる話。
くだらないといっても、「世界で一番優しい言葉は何か」みたいな益体もないというか答えも出ない話題ってことですけど。

「でも、だから私は、下らない話を求めているんだよ。答えなんてあるはずもない、意味が正確でなくても誰も困らない、ただ心地よいだけの会話が好きなんだ」

野ノ尾さんにいわせれば、そういうことなんですが。
春埼と二人でいると、どことなく癒しというか不思議空間が拡大しているような感じがしますね・・・

「月の砂を採りに行った少年の話」
タイトル通り。「月の砂を取りに行く」と言って少年が消えた。
月に行く能力があると語った少年。しかし、それは危険だ。
なぜなら、咲良田の外に出ると能力についての記憶が失われるから。
ということで、ケイたちが調査というか解決に動きます。
その少年は野ノ尾と知り合いということで彼女と話をして、少年の求めたものがなんなのかを知ろうとする。
単純にリセットという能力だけで解決に走らないっていうスタンスが好ましいですね。
努力を惜しまないところ、といいますか。

「Strapping/GOODBYE is not an easy word to SAY」

中編は、過去篇から続きのエピソード。
相馬菫が死んだ後、リセットを使えなくなった春埼の話。
ケイも春埼も相馬菫の死によって色々と混乱しているようです。
宇川さんという、強力な能力の持ち主ともここでであっています。
まー、名前だけ出てきて、能力の詳細はわからないんですが。
リセットが相馬菫を殺した、かもしれない。それでも、リセットで救える人がいるのなら、と自らの理念に従い行動するケイは、本当に強いですね。だからこそ、絶対に忘れない能力なんてものを得たのかもしれませんが。

巻末の「ホワイトパズル」もいい話で、結構好きな話でした。
サクラダリセットとは全く関係ない短編なんですが、どことなく、似通った空気があって、気に入っています。
全く関係はないんですけど。
作者もあとがきで「関係ない短編が平然と入っているところが素敵だと思っているのですが、同意してくれる方がどれだけいるだろうと考えると不安がつきません」とか書いていますが。 
少なくともここに一人、同意する人はいます、とか言ってみたり。
少年が、不思議な少女と交流する話。 
不器用な交流をして、少しずつ距離を詰めている感じがたまらないですねー。
楽しかったです。