ico_grade6_3h
「私も、エメも、アルも……友達を泣かせる趣味は無いの。元々魔王をこっちの世界に逃がしたのは私たちが負うべき責任で、あなたにはなんの関係もない。だから、私達の、エンテ・イスラの話を聞いてもまだあいつのことを好きだというなら」
(略)
「私達に構う必要は無いわ。あなたのキモチは、これからもずっとあなた自身が決めて」


電撃文庫MAGAZINEなどで掲載していたものをまとめた短編集です。
なので、雑誌の方も読んでいる身としては新鮮味は薄かった。
描き下ろしで日本に来たばかりの勇者のエピソードがあったのはうれしかったですけど。

一番気に入っているのは、最初に掲載されている「勇者と女子高生、友達になる」でしょうか。
1巻で魔王の姿をみた千穂の、その後の話。
その記憶を消されず、けれど自分の想いを他人に暴露されたこともあり彼女は戸惑っていて。
勇者一行と出会い、その悩みを打ち明け、彼女たちの事情を聴く話。
……勇者の仲間はなんか寿司に夢中になっていましたけど。
けどまぁ、確かにエンテ・イスラの食事情を想うと、こっちは楽園なんだろうなぁ。

それ以外にもいくつかありますが、感想としては、芦屋の主夫力が半端なさ過ぎて怖い。
勇者を驚嘆させるほどの裁縫の腕やら、豆知識やらとか何が君をそこまで駆り立てるんだ……
圧力鍋を懸賞で当てた時のはしゃぎっぷりといったらもう……
でも、今回一番のポイントは、要点をしっかり見抜いているアラス・ラムスの発言でしょう。

そして困って様な顔で、真奥を見上げ、そして言った。
「ぱぱ、るしふぇるはおてつだいしないよ?」

……子供は本質を見抜くね! 漆原はまぁ、プロのニートだからなぁ……もう仕方ない。

描き下ろしの「はたらく前の勇者さま!」もまた笑えた。
いや、勇者の住まいの家賃が安い理由が分かりましたが、その背景設定は笑えない。
立地はいいのに着服する社員とか、手抜き工事とか、幽霊騒動とかがあったらそりゃあ安く設定せざるを得ないわなぁ……
ただ魔王たちが割と速やかに順応したのに対し、恵美のテンパり具合といったらもう……