「最初の質問に戻りますが、後悔しているのですか? 命と引き換えに、ご主人様のモノになったことを」
(略)
「後悔しているよ、今はな。だがよ――」
(略)
「――その今があるのは、生きているからだろ? なら、いつか帳消しになると信じて、生き続けるさ」
小説家になろうの書籍化作品。
帯に「ダークヒーロー」と有りましたが、ひたすらに闇が深いだけで、ヒーロー要素ないんですけど……。
レーベルのコンセプトからすれば、モンスター文庫の方が近かったんじゃないだろうか。
ヒーロー文庫は「男なら誰もが夢見るシチュエーション”にハマらせてくれる」ってサイトにありますね。
モンスター文庫はチラシだかに「正義<ヒーロー>だけじゃつまらない!」みたいなこと書いてあったような。
始まりこそ、なろうのテンプレである異世界転生ですね。
魔法があるファンタジー世界への転生ですが……主人公は、二度目の生を謳歌するのではなく、「一度目の死を恐れる」気持ちの方が強くて。
もう二度と死にたくないが為、錬金術に手を出し、不老不死を求めて研究に励む。
幸い貴族の子として生まれたので、初期投資は問題なく用意できて。途中からは自分で稼いでましたしね……
主人公のトゥリウスは自分が不老不死になるためなら、それ以外には興味がなく。
人体実験も平気で行い、それによって奴隷が死のうと、気にすることはない。
ヒロイン枠すら、脳改造して絶対服従のしもべにするとか、清々しいほどに狂ってる。
貴族として醜聞を避けたいという思いから、兄は弟を始末できずにいるわけですけれど。……これは、どこかで腹を決めてトゥリウスの命を絶つ以外に、家を守ることはできなかったんじゃないかなぁ。
結局、トゥリウスの行う大量の奴隷が死ぬような実験のせいで、兄貴の婚約話はつぶれるし、父は狂気に充てられて使い物にならなくなるし。
この世界からすれば、前世の知識を持つトゥリウスは異物なわけで、こうここまで好き勝手改造の手を伸ばされると、周囲のキャラクターたちに同情してしまうな……
イラストがしのとうこさんだったので手に取ったんですが次の巻は買うか微妙なライン。WEBの連載もありますし、読むとしてそっちでいいかなぁ……