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「……お前、ジョン……なんて、なんて目をしてやがる……!」

(略)

「親父、親父……これが、俺だ。これが俺なんだよ……見てくれ、俺の真実を。そして知ってくれ。これがあんたの息子が行き着いた先なんだ」

 

小説家になろうの書籍化作品ですね。

書籍化部分はダイジェスト化されてしまっていますが。

人生やり直し系のファンタジー作品です。

 

魔王に率いられた魔族によって、長く厳しい争いの世界を生きていた兵士のジョン。

魔族による被害はかなりひどく、人類は滅亡一歩手前まで追い込まれていて。

強大な敵が現れたため、各国は協力し合って対魔王の連合軍を作り、知識を集約し洗練し、高価な治療薬などを惜しげもなく投じ、それでも打つ手が無くなり人体実験すら行い、選ばれた勇者を旗頭に戦い抜いた。

何かが違っていれば、敗北していたのは人類の方だったかもしれない。

そんな極限まで追い込まれた戦争を生き、魔王城での決戦までたどり着いた彼は、しかし勇者の勝利に気が緩んだ瞬間を魔王軍の残党に刺され死亡する。

 

……それで終わりか、と思ったらなぜか記憶を保持したまま、赤ん坊だったころの自分へ戻っていて。

戦火に焼かれ失ってしまった故郷の美しさを感じ、ジョンは未来の知識を活かし、少しでも良い未来に辿り着くために手を打ち始めることに。

 

人類の総力を挙げての戦いの最後まで生きていたため、一兵卒とはいえジョンの持つ知識は、現在においては破格のもので。

人を結束させた「魔族」という脅威がない状態で全てを明かせば、魔族との戦争始まる前に、人と人の間で戦争が始まるレベルの危険な知識がかなりあり。

赤ん坊からのやり直しという事もあって、じわじわ進んでいく感じですねぇ。

 

1巻の舞台は、ジョンの生まれた村から広がりませんからね。

過去の戦争の凄惨さを思うと、現代での出来事が亀の歩みなので、もうちょっと何とかならないかなぁ、とも感じるんですが。

一方で、「勇者」ならざる彼が知識を得たからっていきなり無双を始めるのも萎えますし、さじ加減が難しい所ですなー。

ただ、自分の好みにはあったので、このまま追いかけていこうかと思います。

ジョンの父母の器の大きさに救われますし、彼も現状を良しとせず、村の子供たちを鍛えたりと手は打ってますし、これからに期待。

 

平兵士は過去を夢見る
丘野 優
アルファポリス
2014-02