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「私は手を貸して差し上げただけですよ。私がいなくても、いずれ起こったことばかりです」
「迷惑なのだよ。いずれを、今にされるのは」


達也たちが二年になり、また九校戦の季節がやってきた。
ただし、開始一か月前になって、突然競技の入れ替えが発表された。
それは昨今の情勢や、あちこちの思惑を受け、多分に軍事・戦闘色が強くなったものだった。 
変化はそれだけではなく、達也のもとに、そうした競技変更の裏側で陰謀が渦巻いていることが知らされる。
達也は、九校戦の準備だけではなく、その陰謀への対処まで始めることとなり。

と、そんな感じなんですが。
個人的には、少し不満がありますかね。
3・4巻で描かれていた九校戦が結構好きだったもので、なおさら。
今回は、九校戦を舞台としながらも、その裏側で蠢いている陰謀に対処するのがメインとなっているので。
競技変更で大変だ、といった割には競技風景ほぼダイジェストですからね。
盛り込み切れなかったサブエピソードはどうにかして短編として公開していく予定らしいですが、現状では未定なので公式からの続報待ち。
九校戦で、陰謀渦巻きすぎじゃないだろうか。前回といい、今回といい。 

ダイジェスト風っていうこともあって、九校戦が楽しめなかったのは残念ですねー。
一校とか三校とかならわかりますけど、最初七校がトップ立ってますし。
一応「海の七校」で前回も注意される相手ではあったと思いますけど、キャラクターがいないところにあっさり負けていると、なんか微妙な心境に。
今回は、一条も達也にいいようにつかわれていたというか、あまりいいところもなかった感じですし。
その一方で、黒羽の姉弟が活躍していたり、達也たちとの絡みが増えてきたりと、四葉家の問題に向けて話が流れていくっていう伏線なんですかねぇ。

なんだかんだで、真由美が卒業後も毎回登場していますよね。
今回は、姉妹で出かけているところでばったり会うという感じでしたが。
七草姉妹が、真由美を連れてくるダシに使われている感じがまた。

そして、四校の方には、黒羽の姉弟が進学していたようで、九校戦の際に接触してきます。
幹比古によれば「今年の春ごろから」、「四葉の分家の有力筋に黒羽という家があるという噂」が流れているそうで。
陰謀渦巻く中に手を加えて方向を操作していた一人、四葉家当主の真夜が何か怪しいこと口走ってましたしね。
あと半年、来年の正月まではおとなしくしていてほしいとかなんとか。
いったい何をたくらんでいるのかが気になるところです。

横浜争乱の時に動いていた周が今回も裏でいろいろやっていましたが。
それを追い詰めた黒羽貢さんが、仕事人な雰囲気出してて、嫌いじゃないですよ。
あの人本当に、追憶編のパーティーで、達也を黙殺したり、自分の子供と交流することを好ましく思っていないのを悟られるような人なのだろうか。
追憶が深雪視点で、今回は黒羽としての仕事中っていう違いがあるのかもしれませんが。
厄介なものだと、能力という意味では認めているように思いましたけどね。
だからこそ、遠ざけたいのだろうか。暗部の人にしては、やり方稚拙な気もしますが。

「こんな所でアレを使うべきではない。本来アレは、外に出すべきではないモノだ。アレは四葉の罪の結晶。アレを四葉の内に閉じ込めることだけが、我々にできる贖罪だというのに」


アレ呼ばわりしているのは、微妙なところですが、四葉の罪であると認めている部分は、結構重要なんじゃないかなぁ、と。
達也の父や、突っかかってきてた四葉の人とは違って、少なくとも現状認識はしっかりできてるわけですし。

さて。次回は「古都内乱編」だそうで、舞台は京都でしょうかね。
確か論文コンペの会場は持ち回りだったと思うので。
また事件が起こるのか。九校戦でも起きたから、もはやお約束の域ですね。
達也の「戦略級」としての価値、軍人としての立ち位置。四葉のガーディアンであるということ。
まーどれ一つとっても、陰謀からは逃れられない定めですよね。
それに巻き込まれる学生たちも大変だ。

魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編 (電撃文庫)
佐島勤
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2014-04-10