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「みんな、お父さんより先に死んじゃうんだよ。そしたらお父さんは、やっぱり一人になっちゃうでしょう」

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「ううん、詩くんは、この先も一人にはならないよ。詩くんは、そういう人だから」

 

本編が多くの謎を残したまま、続きが出ないと知ったときの悲しさが少し晴れた気がします。

成長した詩也の娘、ミナ・アリス=原田の視点で語られる、「その後」のお話。

 

甲斐崎の謎とか、雫の過去だとか、そういったものの答えが描かれていたのはうれしかったです。ただ、同時にやはり惜しくもあります。

謎は明かされましたが、「昔を懐かしんだ父の語った話」という体裁なので、どうしてもダイジェストなんですよねぇ。

それが惜しい。甲斐崎と詩也のバスケ勝負とか、それは楽しいシーンだったろうから、それに至るまでの話を見てみたかった、という想いもあります。

けど、本当はあそこで終わりだったはずなのに、期せずしてその後の話が見られたのは本当にうれしく作者さんや編集さんには感謝の気持ちで一杯です。

 

あらすじで「母は父のそばにはいられなかった」と有ったので、一体何があったのかと思っていたんですが。

吸血鬼である故に別れが来るのは分かっていて、それが想っていたよりも早かった。けれど、子どもたちが生きていたり、彼の秘密を知ったうえで黙ってくれている人達がいる、というのは安心できました。

吸血鬼、という事に苦悩していた十六歳の少年はもういなくて。全てを受け入れた「父親」として、ミナを見守っていた詩也が格好良くなっていたなぁ、と思います。

これから先、喪失は増えるだろうけど、きっと今の彼なら大丈夫なんじゃないかなぁ、と思える良いお話でした。

 

……あとがきで作者さんの容態の方がちょっと心配になりましたが。元々先に原稿を書いて余裕を持っているとか以前書かれてましたが……それでも、どうかお体をお大事にしていただきたいものです。