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「――命を絶つのは、なりません。ならないんですよ。若いみそらで、女だからと、死んでしまうことはならないと思うんです」

(略)

「だって、こんなに。残されるものはこんなにも、悲しいのだから……」

 

時は大正。

主人公の英田紺は、新米の新聞記者。

「魑魅魍魎や怪異、そういった話をまことしやかに、あるいはそんなことなどなかったと証明するために」記事を書いている部署に所属していて。

最も上司と紺くらいしかいない零細部署で、新人の紺があちこち派遣されて、調べて……と行動している部署なんですが。

 

ある日、「呪いの箱が倉から見つかったので処分してほしい」という依頼が舞い込んで。

上司から「箱娘」なる、一風変わった存在の話を聞き、会いに行くことに。

箱にまつわる厄介ごとに相談に乗る娘、うらら。

紺は厄介事ばかり持ち込まれる部署で、走り回りながらうららとの交流も増えていき。

 

閉ざされた箱の話……と言う訳ではなく、様々なものに振り回される女性たちを描いたお話でありました。

旧家に嫁いだ女、舞台女優、妹を亡くした姉など。彼女たちにはどこか諦観が付きまとって。

もう取り戻せぬ物に思いを馳せたり、叶わなかった願いを胸に抱いていたり、喪失を嘆いたり。

そんな彼女たちと向き合う紺は、未だ癒えぬ傷を胸の内に負いながら止まらず、進み続けている強い人で。

 

「だってあなた、これだけ傷ついても」

(略)

「救いたいとは言っても、救われないとは、一度も言わないんだもの」

 

と作中で評されていましたが、まさにその通りで。

若く、無謀で無鉄砲で。見ていてハラハラしますけどね……。

紺が交流を続けている箱娘にも、並々ならぬ事情がありそうですが、その辺りの事情に触れる続編が出てほしいものですが……未だ出てない所を見るとどうだろうか。