「運命なんてものはないですよ。みんな自分で決めなければならない」
シリーズ完結巻。
これまでの仕事、これまでの縁。
それらがつながって、三日月堂の未来になるというのが良いなぁ。
「星をつなぐ線」、「街の木の地図」、「雲の日記帳」、「三日月堂の夢」の4話が収録。
プラネタリウムの星空館。開館時に作った星見盤の木口木版を使って、リメイク版を作る話。
色々と時期が良かった。弓子が平台を動かそうと決意した後でなければ、縁をつないだ後でなければ、三日月堂に辿り着かなかったでしょうし。
そこからまた縁がつながっていくわけですが。
星座館でバイトしている学生が、課題で作る雑誌を三日月堂で作ることになって。
それを販売するために借りた店舗の店主についての話が始まり……三日月堂で本を作ることに。
終わろうとしていた、継ぐ予定もなかった三日月堂が、ついにここまで来たのか、と感慨深かった。
何でも電子で出来る時代ですけど、やはり紙は紙でいいですよねぇ。書店員としては、やはり紙の本の良さを推したい。電子書籍の手軽さも良いものだと思いますけどねぇ。
本づくりの時も、全て昔のやり方にすることには拘らずDTPソフトとかも活用してましたし。
良い所どりして共存していければいいんですが……
視点が切り替わっていく流れが綺麗にまとまってて、読んでいて楽しい。言葉の選び方が、好みなんですよね。
作中の人物だと、「雲の日記帳」の水上さんの言葉が特に気に入ってる物が多いですねぇ。
「でも、思うんですよ。夢だけがその人の持ち物なんじゃないか、って」とか。
地の文では最後の方にあった、「本とは不思議なものだ。」から始まる6行が好きです。
願いを込めて言葉をつづっても、届かないかもしれない。けど、誰かに心に残るかもしれない。
何の気なしに紡がれた言葉に胸を打たれるかもしれない。
言葉には、物語には、そうした力があるのだと信じたくはありますね。
うん、希望が見えるいいシリーズでした。