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「ファルサスの城都まで来られたなら、あの人に届きます。あの人は全てを覆してくる切り札ですからね。こうなるのは幸運じゃなくて必然です」

2巻発売記念で、投稿されていた断片集の感想です。
『Unnamed Memory』は良いぞ……

呼吸するように空を漂っているティナーシャが可愛い。
そして魔女の紐付きで城を抜け出している王太子の思考が相変わらず。
平穏なのは良いが、多くの人間が集まる以上騒動の種も尽きない。
ならば、自分が来ているうちに来い、というのは何かが間違っているような……
でも、オスカーなら大体のもめ事解決できちゃうから、人族な対応という意味では正しいわけで。ぐぬぬ。
ラザルの心労が思いやられる。

実際見事に面倒事を引き当てるんだから、悪運が強いというか。
道中、五歳くらいの女の子が人形を盗られた、と言って泣いているのを見つけて。
話を聞いて、盗んだらしい少年の後を追ってみたら、敵意を隠さぬ男たちに包囲されるとか、なんで?
子供の悩み聞いて、なんで剣を持った相手に包囲されてるの……
結界に振れぬように剣で敵の投げた短剣を弾くあたりオスカーも慣れてきてますが。
今回はそれを読んで、剣を抜いた時点で分かるようにしていたティナーシャの勝ち。

城下町で王太子を包囲してたり、空から明らかに魔法師(実際は魔女)の応援が駆けつけたのに、女だからと油断してる辺り、命知らずだな……としか。
まぁ、実際ゴロツキ程度に負けるオスカーじゃないですけど。
地雷原で踊った君たちが悪いんだよ……
その後ティナーシャが魔法で少年を探索していましたが。
職場に王太子が女性を連れて来たと思ったら、その女性と一緒に飛び降りて空を飛んで去っていく様を見せつけられた兵士は、お疲れ様です。
そうだよな。普通王太子が見張り塔から落ちたら声上げるよな。魔女に魔法で封じられてたけど。

あっさり少年、クアンを確保したものの、人形にはある秘密があって。
それを「しかるべきところに持ち込んでくれ」と頼まれていたから、魔女を探していた、という少年。
目的とは違うとはいえ、魔女に行き当たったんですから、流した先がファルサスで良かったね……
いやまぁ、クアンの過去からここに魔女が居ると思っていたので、狙って流したんでしょうが。

クアンから事情を聞き、解決の為に東の異国メンサンにまで転移した一行。
感想書くにあたって読み返してたんですが、2巻冒頭の大陸地図見ると、マジに東の端なんですが。
そこまで即座に行けるって言うんだから、魔法師は凄い。
その魔法師を排除していたタァイーリの広さを思うと、あちこちに歪みは出てたんじゃないかなぁ、何て事も思いましたね。
実際、歪みが蓄積して反抗勢力まで出てくるわけですし。

閑話休題。
ティナーシャは醜悪な事件だと言い、オスカーを関わらせたくないようでしたが。
オスカーはオスカーで、自分が居ないとティナーシャは全部爆破して終わらせるだろ、と。
どっちもどっちというか。実際、どちらか一人でも片付く問題ですけど、ティナーシャ一人だったらマジに爆破して終わりとかありうるもんな……

何だかんだ言いつつ、オスカーの事を評価しているティナーシャが好きです。
同時に、「――人は、どう足掻いても孤独なものですよ」という魔女としての顔も、見れて満足度の高い短編ですね。

今回の悪党どもは、また醜悪な事をしていましたが。
それをしっかり裁くためにオスカーが動いてくれたのには、ほっとしました。
まだ人の良心を信じられる、というか。
『あんたも、優しい魔女だ』
というクアンの言葉が、全てだと思うのです。