ラノベ好きVTuber本山らの公式アンソロジー。

気鋭の作家10人を集めた作品集ですが…いやまぁ、凄いわ。

彼女の動画全ては見れてないんですが、作家さんや出版社さんのアカウントをフォローしているとTwitterで気付くと彼女の情報が飛び込んできますし。

活動を精力的にして、コラボフェアまで開催して、こんな小説まで生み出して。素直に尊敬する。

別件ですが、普段は感想記事に作家さんの名前もタグ付けしてるんですが、10個までしか登録できなかったので、今回は涙を呑んで割愛してます。

以下感想。掲載順・敬称略です。
ネタバレ有りなのでご了承の上閲覧ください。


『Lのための物語/ハジマリノベル』相生生音

「“想い”には人の心を動かす力があるのですね……」

 

「本という文明の永遠存続」を詠う犯罪を厭わない組織が存在する近未来。

その計画を止める為に、少女を救出してくれ、という依頼を受けた探偵と助手の話。

本の凋落に関する叫びは、元書店員として聴いていて痛かったなぁ。紙の本、好きですけどね。個人で見ても昔ほど読めなくなってるし…売り場づくりに関しても。

書店カツカツなところ多いですからねー。万引きによる閉店なんかも珍しくないですし。そんな中で出来る事といったら『売れるものを売る』事なわけで。

単純な話『売り場担当のイチオシだけど1冊しか入荷しなかった本』と『話題沸騰で100冊入荷した本』どちらを売る方が店の利益になるかって事で。

イチオシを推す為に積み増しの交渉とかもないではないですが…中々上手くいきませんしね。そもそも『話題沸騰だけど2冊しか来ませんでした』みたいなケースもあるから、今日もどこかで書店員の悲鳴が響いてることでしょう…

えー書店トークが長引きましたが。正直言って出版業界は、厳しいです。それでも、今でも、紙の本を買いに来てくれる人はいるんですよ。

それに影響を受ける人だっている。その力を信じてくれる人がいるなら、本は絶えないだろう、と改めて思えたのは良かったですねー。

 

『仮想世界で狂気』うさぎやすぽん

「夢みたいだね」

 

引き籠りになった兄と、その家族の話。

視点は妹で、食事の差し入れに行ったり、たまに呼び出されてトークを聴かされたりと、難儀してるようですが。

昔は、兄の語る夢のような話を聴いていて楽しい時もあった。けれど、時は流れ、関係は変わり…ラノベ作家になるという兄を痛いと感じるようにもなり。

兄の夢見た果て。彼が残した痕跡と笑顔、空想の軌跡。消えてもどうしようもなく残るものがあるという話。

 

『本山羅野神社昔話』折口良乃

「さて、今日もがんばるぞー」

 

狐は化ける者。多くは人を化かして騙す怪異ですが。

江戸の世に生きる狐。本山羅野神社に住み着いた彼女は、人に変化する力こそあれど、それを悪用するのではなく、貸本屋に通うための手段としていて。

いつの世も、本好きはいるものだなぁ。

途中お侍様に狐とバレる場面もありましたが、ただの本好き狐であると理解者を得たり。

火事があれば本を貸してみたり、神社を守るために腐心したり。好きなものを、居場所を守ろうとする彼女の姿勢が綺麗でしたね。

 

『好きなことして消えていく』空伏空人

「俺が読みたい話がないから、俺が書いてるんだよな」

 

「自分の右腕が千切れて再生した存在という設定のVtuber『うつぶせくん』」。実在するのか……Vの世界は奥が深いというか。

本山らのの魂たる「私」が、『うつぶせくん』の魂たる先生にある相談をしに行く話。

ツイートした覚えのないツイート。その正体。

自分と同じような言動をする「何者か」。上手く結託すれば作業効率2倍では? とか正直思ったんですが、この後普通に分裂してるらのちゃんのエピソード有ったからダメだな…

「終わり。個は終わっても、集は続きます。人が死んでも世界は続きます」という地の文章のあたりが印象的でした。「終わること以上に続けることは難しい」とか。

私のこの感想垂れ流してるブログも、ここで紡いでいる言葉も、なんだかんだ56年やってますが、それだけ続けても終わらせようと思えば一瞬ですからね。更新を、辞めればいい。その終焉を思うと、作中の人物たちの感じた怖さが、いくらかはわかる。

少しホラー風味? 終わったのか、続いたのか。その結末は、ご自身で確かめて欲しい。

 

『本山らの異伝 ライブラリー・シーカー』瘤久保慎司

「……適当な人だなあ! 未発見図書のロマン、全然わかってない!」

 

ポストアポカリプスもの。絶滅した文明の数々の小説等が残された遺跡『図書館』。

そこの発掘に従事するカエル人や、狐人の話。

滅びた世界でも残された物があって、それに魅了される人の情熱が眩しい。

シリーズものの途中の巻が抜けてると気持ち悪いよねぇ。見た事のない、面白そうな本なんて心が燃えるよね。

うんうんわかるわかる、と頷きまくるマシーンになってました。なんか途中でトラブルあったみたいですけど、本に夢中ならのちゃん可愛いからいいんじゃないですかね。(じりじりと何かが這い寄る気配/二の舞)。

 

『本山らのの分裂』紺野天龍

「……とっておきのアイデア……?」

 

ライトノベルに限っても昨今の刊行点数は膨大で。おまけに、それが毎年増えていくんだから。全てを読むなんてとても無理。だからこそ取捨選択をして、物語を自分の内に取り込んでいくわけですが。

大学生の本山らの。彼女はある日、7人に分裂して。学校に行ったり家事を分担しつつ、それぞれが好むジャンルを読み漁る。時にはラノベトークで盛り上がる。

いやぁ、楽しそうでいいですね。なぜ分裂したかの謎は終盤回収されますが、途中まで自然に馴染んでるのには笑った。

そして問題が発覚してなお、ラノベを読み続けると即座に返した彼女に脱帽。

 

『本山らのと学校図書館(と司書のぼく)』佐伯庸介

「…別にな、本なんてのは何読んだっていいんだけどな」

 

学校図書館でラノベを扱うか否か。

実際色々と紛糾しそうなテーマですが。自分が通っていた中学・高校は割と寛容で、結構ライトノベルも扱ってましたね。

『終わりのクロニクル』まで置いていたのは懐が広すぎると思う。そのおかげで川上先生にハマったんですよねぇ…

閑話休題。図書委員の木山(誤字ではない)という少女と、司書の先生とのやりとり。ライトノベルを置くことに反対する先生の主張と会議。

飛び道具で落着してましたが、アレ下手したら自分が火傷してたよなぁ、とちょっとそこは怖かったです。ただ、司書の先生が、可能性を閉ざさなかったことは、とても嬉しい。

 

『僕は本山らのに恋をする』斜線堂有紀

『何言ってるんですか。人間は生きてるだけで物語なんですよ』

 

荒廃し、死刑囚の流刑地となった地球。

そこに送り込まれた罪人の「僕」は、たまたま残っていた記録媒体を見つけ、そこから「本山らの」をサルベージした。

多少なり介入は出来るが、あくまで追想でしかない彼女。

けれど、そんな存在に救われる人だっているのだ。荒れ果てて、多くのものが廃れても。

積み上げて来た創作や物語。それを紡ぐ言葉そのもの。誰かに刺さることもある。

アンソロジー内でもトップクラスの荒廃っぷりですが、タイトル通りの恋の話で、砂漠のオアシスのような癒しの話でもありました。

 

『仮想の狐』周藤蓮

「いいねぇ、そういう証明がくるのが楽しみだよ」

 

本山らのに依頼を受けてアンソロジーを書くことになった作家と、友人の駄弁り。

報酬として『彼女が狐だという証拠を見せてくれ』と依頼して。

その証人として、友人を呼んで。飲みながら相談し……狐に、化かされるお話。

表紙含み12Pで、収録策の中では短い方ですが。

酒を飲みながら盛り上がっている2人の反応が楽しくて良かった。しかし友人、雑学堪能ですな…

                                                                                                             

『【らのちゃんを実況する企画】今日も編集がんばらの』時田唯

「「はかどらない!」」

 

タイトル通り、らのちゃんを実況する企画。

これが最後って言うのが味わい深いというか。めっちゃノリノリで実況してて楽しかったです。

途中でラノベ読み始めている場面にはおもわず笑みが。やらなきゃいけないことがあると、読書はかどりますよね……

らのちゃんは果たして今日中に動画を投稿する事ができるのか! お楽しみに!