「……せんぱい。笑えません」
安心安定の、涼暮皐先生のラブコメ。
つまり、心が痛いってわけですよ!! どうしてこういうことするの……
しっかり面白かったですけど、所々に人の心があるようなないような……揺さぶられる感じ。すくなくとも容赦はない。
舞台となる街には『星の涙』という都市伝説が存在した。
七年前に降り注いだ、七つの流れ星。
不思議な力を有したその石を使えば、無くしてしまった一番大事なものを取り戻せる。
ただし――2番目に大事なものと引き換えに。
それにあやかったアクセサリー作って売っているところもあって、結構広まっている話みたいですねー。
『氷点下男』の異名を持ち、学内で浮いている2年生の冬月伊織。
彼は不定期に、郊外にある公園に足を運んでいた。そこは一番星が綺麗に見える場所。
最も伊織は星を見に行っているわけでもなく……ある夜に、幼馴染の妹と再会した。
彼女の姉とは友人だったが、妹はそうでもなく。年を重ねて疎遠になっていて、同じ高校に進学していたことすら知らなかった。
不意の再会の翌日から、幼馴染の妹――双原灯火は、伊織に付きまとい始めた。
昼食を一緒に取ろうとしたり、デートに誘って来たり。彼女が別に自分を好きでもなく、思惑があることを承知の上で、伊織は交流を続けていますが。
致命的なまでに不器用なだけで、割と付き合いいいですよね伊織。でも、自分の過ちを知っているのもあって、ある一線からは譲らない頑固さも見えて、正道の主人公ではないけど、割と好き。
序盤はまだラブコメの皮をかぶっていましたけど、途中から隠す気もなくなった感。
余談ですが、今作を試し読みで2章まで読んだ時の感想は「絶対に地獄に引きずりこんでやるという気概を感じる」でした。
文章の合間から「不穏」が漂っているんですよね……三章なんかは、章のタイトルからしてアレでしたし。
伊織が過去にしでかしたこと。灯火が願おうとしていたこと。
さらには、Twitterでのキャラ紹介でノーコメントを通されていた伊織の友人であった「陽星」のこと。
手を変え品を変え、よくもまぁここまで厄をお出しできるなと正直震えましたよ私は。
今回起きた異変はなんとか無事に収まってましたが……陽星の問題とか、大きな爆弾にしか思えず今から先が怖い。
読了後にタイトルと帯文を見るに、人の心はないのでは……疑惑が募りますが。
作品としては、冒頭でも述べたようにしっかり面白かったです。
カクヨムで2巻プロローグを公開するという、面白い試みもやっていて、とりあえず続きが出る雰囲気なので楽しみではあります。
プロローグも読んだうえでの一言で、今回の感想記事を締めたいと思います。
「どうしてこういうことするの?」