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イベントペーパーや完売したコピー本など、「今はもう読めない掌編」を中心に再録された総集編。

時系列も入り乱れているので、消滅史とか逸脱者という単語に心当たりがない人は薄目でヤバい短編をスキップしましょう。

-world memoriae-シリーズが中心で、月白と監獄学校の短編が収録されてます。あと学園Babel時空のエピソードも。

とりあえず『Unnamed Memory』と『Unnamed Memory本編後』部分の感想。ネタバレ注意。



 

Unnamed Memory

・ナークの日

「ナーク」

Act.1でティナーシャにナークの契約を移された後のオスカー。

彼がナークの名前を呼ぶ話。ぴんと姿勢を正したり嬉しそうな声を上げるナークが可愛いです。

 

・記憶

「起きる……起きたい……生きてるから……」

寝起きが悪いのをまだ誤魔化せていた時のティナーシャの話。……いやそれは冒頭だけですけど。契約に則りファルサスに来た後の話。商人が来たからオスカーに呼ばれて。

今回は着せ替え目的じゃなくて、魔法に使う触媒としての宝石の商い。思わぬ掘り出し物を見つけていましたけど。

 

・魔法の話

「試しにアカーシアで触ったら」

これは結婚した後のエピソードですね。

城に張られている結界を張り替えるティナーシャを見つけたオスカーの話。一応メインの張替は宮廷魔法士たちが担当で、ティナーシャはその間のサポートみたいですけど。

一回結界張り替えるので、その間別の結界張ってますね、を軽くやってしまう魔女の力に震える。オスカーの好奇心は、正直ちょっと分かる。

 

Memory of worlds

「できるから、やらないのも自由なんですよ」

同じく結婚後の話。力はあるけれど、それを使わない事を選ぶこともある。

恵まれた境遇にある二人の、他愛無い会話。そこで語られた仮定の話が、本編後を知ってると重い。本当にやるからな……

 

Unnamed Memory(本編後の話)

・雪空

「すぐに急くな。それに、こういうのも楽しいだろう」

逸脱者二人の旅路。

ある事件の後、迷宮を封印する必要にかられて雪山探索をしている話。……これ以上なくシンプルにまとまっているのに何を言っているのか分からない。迷宮封印の必要が生じる事件is何。知りたいような知りたくないような。

そんな過程で雪山だろうといつも通りな二人が強い。

 

・青月

「お前はここで終わりだ。――魔女の怒りに触れた」

一つ所にとどまれない男が、それでも重ねて通う酒場の話。

そこでは子どもが攫われる事件が起きていたり、魔女が子供を攫うなんて噂が流れ、「死神」と仇名される不審な輩まで居て。こういう細工されたエピソード好き。

 

・雪花

「実は結構楽しい」

紅毒の話。雪を見た事がないというヘルジェールにオスカーが、雪を見せる話。

あんなに魔法苦手だったのに、雪降らせる構成覚えたのか……実用性高いの丸暗記したんじゃなかったのか。なにしているの。

おまけで種明かしというか、覚えようとした過程書かれていましたがティナーシャお疲れ様です。本当に。

 

・未然の歌

「思い出したくないのならそのままでいい」

同じく紅毒。オスカーが怪我をしたと聞いて、彼の下に足を運んだヘルジェールの話。

不可解に突き動かされ、転移してまで来ているんですよね。彼女からすると、嘘つきにも見える男。はぐらかしてくる相手が、それでも気になる様子が微笑ましく切なくもある。

 

・寧日

「愚か者が。身の程を知れ」

数国に絡んだ騒動に介入したオスカーとティナーシャ、その最終段階において横やりを入れて来た最上位魔族の女の話。オスカーに狙いを定めた事もあって、ティナーシャがマジ切れしてて怖い。後で止めよう、と当初の目的を達成しに行ける辺りオスカーの神経が太い。ティナーシャへの信頼が厚い証拠ですが、ここはちょっと止めて欲しかった気もするな……

                                                                                                                

Lunar eclipse                                                                                        

「……ごめん、ティナーシャ」

月蝕に連なるエピソード。決して呼ぶまいと思った彼女を読んでしまった後の話。

セノーはティナーシャに書類を見せて助言を請うて。彼女が選ぶ言葉の一つ一つが、もう戻れない過去を想わせて悲しくなる。

それは呼んでしまったセノーの方が、実感しているんでしょうけど。最近は吐き出さなかったという謝罪の言葉。それはつまり、かつて吐き出したことがあるという事で……どうして、こうなってしまったのだろう。

 

・書簡「野鼠に告げる」(月蝕)

その先にしか、我等の未来は存在しないのだ。

タイトル通り、とある書簡です。狂った王と傍らに侍る女に敵対する勢力の、ですけど。

かつて王剣持つ逸脱者を殺した相手に向けた手紙で、まぁ、頭に来ること。

月蝕、重くて暗くて壊れてしまった話ではなるんですが、作品としては好きですが。確かにあった平和を壊してのうのうと生きてる、敵対者達が痛い目見ればいいとつい願ってしまう。……でも、今の魔女の前に立つと、それは悲惨な目に遭いそうだなぁと思うんですよね……