ico_grade6_4
『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と思うのが執着だと思っていた。だから私は、遥川悠真に死んで欲しかった』

 

BOOKWALKER読み放題にて読了。           

キャンペーン追加タイトルで、対象期間は7月末日まで。

 

テレビに出たり、講演会を開いたりしてる、人気小説家・遥川悠真が失踪。

連絡が取れなくなった編集から通報が入って、彼の部屋を警察が調べる事に。

その部屋には、パソコンにたった一つ残された小説のデータと、誰も知らなかった少女の影があった。

情報を求めて、残された小説のデータを読み込んでいって、出てきた情報を調べて……真相に辿り着くわけなんですが。

 

読み終えた後、残った感情を何と言えば良いだろう。

あまりにも、罪深いというべきなのか。かつて、確かに救われた子がいたのだから、多少歪んでいても幸いだったというべきなのか。

 

幕居梓は、読書が好きな小学生だった。

図書室に通い詰めていたが、家庭の事情で本を借りることはなかった。

それもそのはず。彼女は、家で虐待されていた。暴力を振るわれるわけではないが、決まったサイクルでの生活を強いられ、午後7時には押し入れに放り込まれて、外出を禁じられた。

暗闇の中では、何をすることも出来ない。だから、彼女は読んだ本の内容を思い出し、諳んじる事で時間をつぶしていた。

 

遥川悠真の新刊を、司書の人が融通して貸してくれた事もありましたが。

母親に見つかってしまって……その後の展開がまぁエグイ。毒親ってこういう事かな、と思いましたね。

梓自身も大分ショックを受けて、死のうかと思ったくらい。本を片手に駅に足を運んで……そこで、彼女は小説家・遥川悠真と出会ったのだ。

 

引き留める台詞は、中々にひどいものでしたけど。そんな言葉でも、少女一人を呼び留めることは出来て。確かに、救われたのだろう。

2人の交流はそれからも続いて、やがて彼女は中学生になり高校に進学して……

少女の憧れは変わらずにあったけれど、小説家はスランプに陥り落ちぶれていった。

 

それを見ていられずに少女は、自分が助けてもらえた事を、物語と言う形にして届けていましたが。

元より、成人男性が親戚でもない少女を部屋に入れ、交流している状態は一歩間違えば事案なわけで。初めから、どうしようもなく歪で。どうにか取り繕っていたけれど、それが破綻してしまう未来は約束されていたのでしょう。

結末はタイトルに記されている通りですが、それでも。呑み込みがたい想いが湧く、力強い小説だったな、と思いました。買わねば……