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「で、今さら何を埋め込まれた」

「きっと、お前の知らないものを」

 

上条当麻は、間に合わなかった。

オティヌスは完成し、「世界を滅ぼすか」と気軽に滅ぼせるほどの力を得た。

世界そのものが消えた虚無の世界。

当麻はその右手の特殊性故に、滅びた世界には含まれず、たった一人で魔神オティヌスと対峙する事に。

 

魔神相手に上条当麻が真っ向から戦って勝てる道理はなく。

それでも。自分一人しかいないのならば、元の世界を取り戻すために足掻こうとするのが上条当麻で。

オティヌスは神の力を使い、当麻の心を折りにかかる。

吹けば飛ぶような相手に対して、己が潰すのではなく、相手に潰れてもらおうとする辺りは神様っぽいというか。

 

その為に用意された舞台が、本当に容赦なくて笑っちゃった。いや、笑い事じゃないんですけど。

多くの事件に関わり、その右腕で人を救ったり、野望をくじいたりしてきた。

上条当麻は、ヒーロだった。

 

では、その彼がいたからこそ多くの事件は起きたのだ、と見方を変えてみたら?

そんな世界を再現して、当麻を放り込んで。これまで守ってきた人々、縁のある人々から迫害を受ける様子は結構堪えた。

「上条当麻」によく似た誰かが、彼の場所に入り込んだ世界があったら? エトセトラエトセトラ。

 

数多の世界を再現し、上条当麻を折ろうとした。

それでも止まらなかった彼の足取りを凍らせたのが、幸福だって言うのは皮肉と言うか。

正攻法ではありますけどね。絶望に抗い続けてきた彼だからこそ、あの世界は眩しく見えた事でしょう。

溜まりに溜まった鬱憤を吐き出す、あの見開きは、ヒーローなんかじゃない上条当麻自身の叫びであった。いやぁ、演出が上手い。その直前のイラストもいい感じでしたし。