「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、この国の出版が倒れる時です」

本の紙を印刷している工場は、石巻にあった。
……当然、あの震災の折には被害を受けたわけで、復興は難しいかと思われた。
しかし、この工場は生命線のようなもので、ここが止まってしまうと、大変な事態になる要所でもあって。

東北で紙が作られているなんてことは全く知らずに読みました。
表からはわかりにくいものだけれど、紙がないことには本は成り立たない。
それを理解して、半年復興を誓って行動を起こしていく人々の姿は、格好いいし、目の前の問題に言い訳も妥協もせず目的へ向かう行動力に学びたいとも思う。

工場から出る白煙が好きではなかったという人がいた。
しかし、震災後なくなってみると寂しいものがあり、煙突から煙が出始めたのをみて勇気づけられた、というメールも届いた。
被災したとき、家を、家族を、命を失くしたものと、残したものがいて、それぞれ何らかの複雑な感情があって、仕事に明け暮れていた。没頭できる何かがあるのはむしろ気が紛れた。
いい話ばかりではなく、被害を受けて流出した備品の回収に赴いた際、瓦礫処理も同時に行っていったら、話に尾ひれがついて広まり、仕事が増えた話。やり場のない怒りがぶつけられた話なんかも書かれていた。
美談でまとめるのではなく、あの当時に起きた事を書き連ねてある姿勢には好感が持てる。