気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

新潮文庫

十二国記 白銀の墟 玄の月 四

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「……奇蹟的な存在だから真実だと見做される……」

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「台輔自身がそう言っていたんだそうだ。天啓が真実として通用するのは、麒麟という存在が奇蹟的だからだ、と」

 

「耐え忍ぶに不屈、行動するに果敢」。それが戴の気質だと思っている。

幼少期の泰麒は、それと真逆だと言われていたが……驍宗様は、それと異なる評価を下していたという。

うん、彼の目が正しかった。三巻最後で描かれていましたが、王である驍宗自身が、それを体現しているのがまたいいですねぇ。

 

閉じ込められ、それでも道を探し続けた。命を繋いだ。可能な範囲で祀を欠かさなかった。

……そして、ついに彼のありかに目星をつけた配下が、助けに駆け付けるより先に、自分で脱出して来るんだから、傑物と言うほかない。

魔窟で少ない味方と戦い続けた泰麒と、良い主従ですよ本当に。

李斎たちの念願かなって、王との合流が叶い、これで全てが収まる……と安堵した隙を突くように、苛烈な展開に引きずりこんでくるのだから、作者様は容赦ない。

 

いやはや、阿選も思った以上にしぶとかったというか。

反抗勢力が、耐え忍びついに反撃をという場面で的確に叩いてくるんだものなぁ。

恵棟が結構好きなキャラだったので、容赦なく切り捨てられ、病に囚われてしまったのが辛くて辛くて仕方ない。

 

再び王を迎え反撃しようとした。しかし、王は捕えられてしまった。

もはや打つ手はないかもしれない。それでも、と。驍宗様を処刑しようとする場所へ、駆けつけた人々が居たから、何とか窮地を脱する事が出来た。

 

いやはや正直、あそこまで状況を整えたところからひっくり返されたので、残りページを見てバッドエンドにはならないよね?! と不安になりながら読みました……

泰麒が、王の下へ馳せ参じようとした無茶には震えた。元より怪我をした身でどこまで、無理をするんだ……

多くを取りこぼした結末。ハッピーエンドと呼ぶには、失われたモノが多すぎる。けれど、それでも。王旗と麒麟旗が掲げられた場面には、感じ入るものがありました。

 

読み終えて、記事を書く前に他の方の感想とかもつらつら見ていたのですが。最後の挿絵。

戴の史書の厚みが、この王朝が長く続くことが約束されたものだという解釈があって、それが素敵だと思いましたねぇ。

来年刊行予定の短編集で、戴の落ち穂拾いをされる予定だそうで、泰麒と王のやり取りとか、色々描かれると嬉しいです。恵棟のように病んだ人々、麒麟の奇蹟でどうにかなりませんかね……無理かな……


十二国記 白銀の墟 玄の月 三

ico_grade6_4                                                              

(前略)けれども、結果を得たいと思うその気持ちこそが、結果から身を遠ざけるのだと――これは修行者の心得なのですが」

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「修行に成果を求めてはならない、と何度も師に言われました。それは修行をなまくらにする、と」

 

魔の宮廷で、泰麒の行いに迷いを得た項梁。

話し合い、その真意を知る序盤の会話が好きです。

慈悲の生き物である麒麟ではあるが、泰麒は角を失い病んだ果てに、策を練り疑う強さを得た。

それは、確かに強さと表現するべきものだと思います。ただ、泰麒に向いているかと言うと、どうしても過去の幼い姿がよぎって、少し泣きたくなる。

P277の「もう子供ではないんですよ」、「たぶん、良くも悪くも強かになりました」という泰麒に「惜しくもあるが、心強い」と返す場面がありますが、まさしく同じ思いです。

 

一・二巻でかなり丁寧に、戴国の現状を描いていて、ここからどう展開するものかと思っていたのですが。

三巻は結構情勢が動いたというか、明らかになったことが多かった印象です。

国や朝廷にはびこっていた「病」の正体、泰麒の補佐であった正頼の現状と抱えていた事。

阿選の来歴や思考。琅燦と阿選の会話や、天を試そうとする行動原理の一部も語られました。琅燦の方は、まだまだ腹に抱えてる物がありそうですけど。

そして、終盤ついに明かされた、驍宗様の行方。

 

王を殺せば次の王が立つ。だから、初めから殺す気はなかった、とは書かれていましたが。

それにしたって大胆な封じ方ですね。それで生き延びている驍宗様も凄いですけど。

P99で語られた、「中日までご無事で」と言われたあとの驍宗様と麾下の会話が良かったなぁ。自分の分を、性格を分かっていて、戴を出ようとしていた下りは驚いた。

 

泰麒が、阿選の支配する宮廷で、少しずつ味方を増やしているのが、前へ進んでいると思えて楽しかったです。

潤達がいっていた「けれども知らずにいて受け容れることと、知っていて受け容れることの間には天と地ほどの違いがございます」言葉が、全てなんだよなぁ。阿選と麾下の間に、どんどんと壁が生じていたようですし。

王を遠ざけておいて、距離を取った阿選は、やはり王の器ではなかったというところか。

驍宗様と縁があった轍囲の民の在り様が、戴の現状にあって、とても眩しかった。


十二国記 白銀の墟 玄の月 二

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「なにがどうなっているのかは分からないし、たかだか将軍の俺には分かる必要もないことだ。俺は阿選様の麾下で、それは変わらない」

行ってから、友尚は寂しげに笑んだ。

「けれども、いまの事態は間違っている」

 

戴国の寒さを肌で感じ、王宮へと戻った泰麒。

少しでも民を救うために手を尽くそうとしてますが……阿選によって簒奪された王宮は中々の魔窟と化していて。

国内に蔓延している、突然豹変してしまう「病」が宮廷にもはびこっていて。

そんな中で、冒頭から阿選が泰麒を呼び出して。顔を見せていないとのことだったので、ここにきて動いたのはちょっと意外。

 

驍宗様の麾下だった琅燦が、阿選の傍で色々とやってるのが、なんなんでしょうね。

琅燦の言い出した「確認する方法」が荒っぽくて、それに乗っかる阿選といい麒麟をなんだと思ってるんだ。

表に出てこないとはいえ、トップが阿選であることには間違いなく、彼に帰還を許されたことで、事態が少しは進むかと思えば。

 

冢宰が邪魔をしてきて、亀の歩み。かなり丁寧に、沈みゆく朝廷を描いていたので、鬱憤を覚えなかったというと嘘になります。

とはいえ、阿選麾下の中でも、それぞれに思う所があって。恵棟のように泰麒に仕えてくれる人員が残っていたのには、正直ほっとしましたね……

 

一方で、驍宗様を探している李斎たち。

こちらも遅々として進まず。まぁ、確かに片腕の将軍が伝手を頼りに少数で探して、速攻で見つかるくらいだったら、この六年の間に誰かが見つけていたって言うのは、あるでしょう。

それにしたって断片しか情報が集まらず、なかなかもどかしかった。

 

P193辺りで琅燦たちが話していた、王と天命の話は興味深かったですけど。

王を封じて、実質的に位を奪った状況じゃなかったら、もっと楽しかっただろうなぁ。

こういう設定掘り下げるトークは好きです。ただ、天命を疑うような話が、真っ当な王のもとで出るはずもなく、今だから出来る会話なのが悩ましい。

しかしまぁ、二巻の終わりは凄まじかったですね。これで1か月待たされた人々は、どれだけ打ち震えた事でしょう。


十二国記 白銀の墟 玄の月 一

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「心からお帰りをお待ちしておりました……!」

 

18年ぶりとなる、十二国記の書き下ろし長編。

私が十二国記を読み始めたの、結構刊行が進んでからなので、そんなには待ってない……と言いかけて『丕緒の鳥』は初版で買ったので6年は待ってたのかと驚きましたね……

 

遂に描かれる事となった、戴のエピソード。

王と麒麟が消えた六年の間に、荒れたという国。

これまでは、ほとんどが伝聞でしたが、泰麒と李斎が帰還して、そこに暮らしている人々の様子が描かれると、想像以上で心に来ますねー。

驍宗様の行方が知れず、偽王が立ったときに反発はあったが……粛清と、心変わりの病によって頭を押さえつけられていた。

 

希望の光が見えず、ここに至るまでも既に多くの命が喪われた。

それでも、戴の人々は完全に屈してはいなかった。生きながらえて、各々が戦っていた。

特に、真っ先に偽王を批判し、壊滅させられた瑞雲観の道士たちには感服します。

少しでも多くの知識を残そうと奔走し、辛くも生き延びた面々は薬の知識を活用し、民を助けていた。

これだけ荒れた国にあっても、心までけだものに堕する事がなかった。戴の民の強さを見れた気がして、序盤から引き込まれました。

 

角を失った泰麒は王気を探すこともできない。

「喪失したからこそ、奇蹟ではない現実的な何かで、戴を救うために貢献しなければなりません」という、泰麒は本当に強くなった。

彼の場合は、強くならざるを得なかった部分もありますが。

あの幼い泰麒が、ここまで成長したのかという感動と、もうあのあどけない泰麒はいないんだなという喪失感とが同時に来て、情緒が大変なことになった。

項梁という味方を得て、驍宗様を探している中で、泰麒が突然李斎と別行動をとって……

向かった先に驚かされました。いや、妙手ではあるでしょう。

敵の胸中に飛び込めばそれだけ情報は得られますが、同時に危険なわけで。それは相談できませんよね……泰麒なりの戦いが実ってほしいものですが。


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