気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

感想(文芸)

魔女推理 きっといつか、恋のように思い出す

 ico_grade6_3h

(……でも)

確かに、救われたのだ。

 

先月引退した陸上部の先輩・七尾から相談を持ち掛けられた拓海。

付き合いが悪いくのりが周囲とぶつかった時にフォローしてくれたりしていた、良い先輩のようです。

七尾からの相談は、幼馴染であった稲荷集という人物が死亡し……近ごろ、その幽霊の目撃情報が出始めている、というものだった。

事後現場でのいつものやりとりをした際、陸上に打ち込んでいた人物にしては違和感のある言葉をくのりが口にして。

 

謎の多い状況ではあるけれど、くのりはあくまで死を食べるだけであり探偵ではない、と言ってそこまで積極的に調査しようとはせず。

それでもまぁ、独自の視点から回答に辿り着いているのは流石ですよねぇ。興味はないけれど、拓海の声が聞けるから、と状況説明を楽しんでいるのは2人の独特の距離感があって味わい深い。

 

調査するために被害者の家を直接訪ねることになって、隠された真相を暴くことになっていましたが。陸上に打ち込んだ学生たちの証明方法、というか。走って事情を打ち明けるかどうか決める勝負してるの良かったな。

 

第二話のエピソードは、学園という閉ざされた場所で死んだ、天才と噂されていた少女の死の真相について。

地元の名士である檻杖の家の人なら、ということで介入が認められてくのりと拓海が入り込むことになって。

死の真相、なんともまぁ……って感じの事件ではありましたが。想定外の爆弾も出てきたのにはビビった。なんだあの黒幕、というか。露見して逃走したならそのまま立ち去ってくれたまえよ。

拓海とは違う選択をしようとしているあの人物は今後も縁が出来そうですが……厄介なことにしかならなそうなんだよなぁ。2人の関係に独特の味わい感じてて好きなので、あまり引っ掻き回してほしくはないのですが、さてどうなるやら。



鬼人幻燈抄 平成編 逢う日遥けし

ico_grade6_4

「手を繋いで君と一緒に……彼等には、その方が似合っている」

 

ついに物語は平成へ。

それはつまり170年の時を経て、遠見の鬼が予言した鬼神降臨の年が近づいている証でもあって。

甚夜が葛野の地に戻ってきたの感慨深いですねぇ……。

かつての里長や、千夜の願いを継いだ人々が、甚太神社やいつきひめ、姫川という苗字などなどを残してくれていたのも、胸に来るものがある。

 

それはそれとして、目的があるとはいえ甚夜が学校通ってるのなんか面白すぎるな……。

そば打ちして店を構えたりしてたし、庭師として働いてみたり、人間社会に馴染む意味を込めて仕事をしてる姿はこれまでも見てきましたけど。

学園生活となると、若い世代との交流が出てくるわけで、それまでとは違いますよね。……まぁ、子育て経験もある年長者でもあるわけで、卒なくこなしてましたけど。

 

あとは、藤堂夏樹についての描写がなろう版より少し詳しくなってましたかね?

なろう版にも都市伝説関係の短編が番外編に収録されていましたし、そのあたりについてより触れられていたように思います。

嫌なものを察知する感覚は強いけど、対策を取る腕はない夏樹からの願いもあって、甚夜が高校入学することになったようです。過去の因縁もあってのことではあるようですけど、今の縁も大事にしてるのが彼らしい。

 

今回収録のエピソードだとやっぱり「いつきひめ~妖刀夜話・終章~」が好きですねぇ。

夜刀守兼臣についての過去が明かされて、甚夜が当代いつきひめを「姫川の娘」と呼ぶ真意が明かされる。さらには予期せぬ、けれど大切な、思いが巡った果ての出会いもある。短いエピソードながら満足度が高い。



鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯篭

ico_grade6_4

「未練に足を引かれながらここまでやってきた身だ。忘れろなどとは口が裂けても言えん。それでも、区切りというのはどこかで付けないといけないのだと思う」

「だから、けじめですか」

「ああ。そして恋の話だ」

 

夜の女が集まる鳩の街。かつて存在した花街ではあるが……売春禁止法の施行によってすべての業者が撤退し、その役割を終えた街。

しかし甚夜は消えたはずの鳩の街に「花の名前を冠し、特殊な力を持つ娼妓」の噂を聞いて……。

花街特有のドロドロはなく、悩みを抱え迷う女が行き交う不思議な街がそこにはあった。

 

そこで甚夜は確かにマガツメの娘、七緒を見つけて。

青葉という少女や、ほたるという娼妓。一線引いて人々を見守っている店長なんかと交流しつつ、真相に近づいていくわけですが。

南雲みたいな分かりやすい悪役が、悪意を持って作り上げたというわけでもなく。夢みたいな空間で、本来会うはずが無かった人々の縁がたまたま結びついただけ、みたいな感じで全体的に穏やかに進んでいってましたね。

 

七緒もマガツメの娘ではあって、鬼の異能は持っていたけれど……マガツメが切り捨てた感情の中でも、特に遠ざけられるようなものが根幹であったから、最後に「同化」することになってましたが、そこに至るまでも少しずつ会話して相手の事を知っていく、という流れでしたし。

 

店長相手に甚夜が、探していた娼妓は姪だが、妹と折り合い悪いから顔を合わせたくはなかったと愚痴をこぼししていたシーン。それなのになぜ探したのか、と問われて「……多分、迷っているからだろう」と返した場面が結構好きですねぇ。

様々な出来事を過ごしてきてなお、彼の心は定まっていない。どこぞの剣鬼に言わせれば濁った剣でありつづけてた。ただ、今回のエピソードでそんな迷いの中にある濁った剣だからこそ「斬らない」未来を選べたのは彼らしくて良かったですね……。

 

まぁその結果、しばらくキネマ館へ帰還できない状況に陥っていたのは彼の失態ですが……。

甚夜が「刀さん」してる時のやよいちゃん達との交流のシーン、ほのぼのして好きなんですよね。彼の人の好さが出てますし。

あとはいろいろと事情を察しつつも、はっきりと告げることはせず胸に秘めてくれた店長さんのキャラが地味ながら良い味してて好きでした。


恋になるまで、あと1センチ

ico_grade6_5

「はい。――それ全部、俺がしたいです。俺の権利にしてください。俺にしか、許さないでください」

 

ふざけていた男子に突き飛ばされ、階段の上から落下してきた女子生徒をかばった主人公の男子高校生、颯太。

友人は「天使が空から降ってきたかと思った……」なんて零していましたが。実際美麗な容姿と華奢な体躯を持つ美人さんで、注目されている先輩ではあったようです。

その名が、花茨篠。

基本的に周囲にそっけない態度をとるために「能面みたいな女」とか「いばら姫」なんて噂されている人物ではあったようですが。

 

颯太の前では感情豊かで、妙に距離感の近い先輩でもあった。

最初から「花茨」ではなくて「篠」と名乗って、颯太から「篠先輩」って呼ばれるように誘導しているし。

運動部に所属している彼に、自分の、女物のタオルを貸し与えることで周囲を牽制しようとしたり。

 

基本的に颯太視点で進行していくので、篠の態度にドキドキして振り回される部分も多いんですが。ふわわ、と笑う彼女の事が颯太は気になっていくわけです。

その心情だったり、距離が近づいていくさまが丁寧に描かれているので本当に微笑ましくて、心が温まるんですよねぇ。

颯太目線だといつも可愛い篠先輩ですけど、他の人の前だと警戒したりしてるのが伝わってくるの好きです。颯太相手だと普通に触れたり距離を詰めるけど、それは彼が特別だからというのが明確ですからね……。

 

ちなみにこちら、WEBからの書籍化作品になるんですが、WEB連載時の書くエピソードのタイトルが篠先輩目線の台詞になっていたりするので、気になる方はそちらも見てみるのオススメです。



占い師オリハシの嘘

ico_grade6_4

「ええ。代役とは言え、これも商売なわけですし」

(略)

「アフターサービスも万全に、っていうのが理想じゃないですか」

 

よく当たると評判の占い師オリハシ。

芸能人や財界関係者からも日々依頼が舞い込み、リピーターも多い人物が……失踪癖があり、たびたび妹に代役を任せているとか。

この物語は女子大生の奏が、姉の友人である修二と一緒に代役として持ち込まれた依頼を解決していく物語ですね。

 

まぁ奏には占いの力とかないので、依頼者から事情を聞いて論理的に解決を導いた後に、それっぽい理由付けをしているんですけど。

今回も含めて何度も代役を務めてボロを出していないのはお見事というほかない。

奏は自身の想い人である修二を相手にしている時だと、テンションがバグりがちなちょっと面白い子、の範疇なんですけど。

洞察力だったり、いざという時に危険に踏み込める覚悟だったり、秀でているというか尖った部分もある良い主人公でしたね。

 

オリハシの下に持ち込まれる依頼は「婚約者の様子がおかしいのは魔女の呪いではないか」だったり「蛇神憑きと噂があるメンバーを起用すれば、映画コンペで良い結果を残せるだろうか」みたいな、オカルトを絡めた話題になるんですが。

それに現実的な答えを見つけていく流れが、結構好きでした。失踪癖のある姉は、彼女なりに妹の奏を大事に思っているみたいでしたけど、何も説明せずに代役任せていくのはもうちょっとこう……どうにかならない? みたいな気持ちにはなった。

なので、終章の描写は個人的にポイント高かったですねー。奏ちゃん、洞察力鋭いのに見えてないものもありそうなのが面白かったです。



鬼人幻燈抄 大正編 夏雲の唄

ico_grade6_4

「あのあたたかさは、彼がくれたもの」

溜那は断言する。

「たぶん、こころは手から伝わる」

理屈として正しいかどうかではなく、彼女にとってはそれが真実なのだろう。

 

サブタイトルにもなっている「余談 夏雲の唄」から開始。

南雲の野望を潰えさせることには成功して、心配材料は姿を消した吉隠だけになった。……その吉隠が鬼哭の妖刀持って行ってるのが厄介なんですけど。

希美子が初めての気持ちに戸惑う、平和なエピソードを楽しめたの良かったですねぇ。

問題に長く備えていた甚夜としてみれば、彼女が自由に振舞えるようになった証明でもあるからと彼女の味方する方向だとか。父親である充知は、かなり複雑そうでしたけどね。

 

あとは甚夜が求めていた、鬼哭の夜刀神兼臣に封じられた鬼の力について。

ココでもまたあの時の思い出が出てくるのか。逃れられない過去でもあるし、彼を構成する縁であるのも確かなのですが。

……そうした来歴を承知の上で「楽しそうだから」と引っ掻き回す吉隠の手に渡り、利用される結果になったのは、モヤモヤするなぁ。吉隠、そういう役回りの敵役だと思うので、実に良い仕事してるとも言えますが。

 

この期に及んで溜那を狙って、状況をかき乱しにくるんだから最悪です。

暴走状態になった溜那を、それでも斬らずに救いに行く甚夜が格好良かったですね。

予想してない結末になってつまらない、と言ってる吉隠に貴一がちょっかいかけて冷や水浴びせてくれたのは痛快でしたが。

再び対峙した甚夜から、痛手を負いつつも逃げられたのが痛い。どうせまためんどうな企み練ってくるのわかりきってるしな……。

魔女推理 嘘つき魔女が6度死ぬ

 ico_grade6_3h

「……今のが、彼女の死、ね」

(略)

「あなたには、聞こ、えた?」

「聞こえたよ」

 

祖父母の介護のために両親に付き合って離れた故郷へ、つい最近戻ってきた主人公の薊拓海。

そんな故郷・久城には「魔女」と噂される幼馴染の少女、檻杖くのりが住んでいた。

かつては仲が良かったというらしいですけど……戻ってきてからは、敢えて会おうとはしていなかった。

しかし、「魔女になりたい」と宣うクラスメイトが接触してきて、彼は過去の事件を振り返ることになり……その結果として、くのりとの再会を果たすことになるわけです。

 

記憶を失った少女や川でおぼれた子供、不審なところのある教会。

ちゃんと再会してからは、2人でそういった事件の調査をしたりもしていましたが……。

くのりには確かに魔女と呼ばれるような力があった。

都市伝説に興味があって調べていると言った少女は「魔女の能力は共感能力者」という説を唱えていて、実際ルールの一部には適合していたらしいですけど。

死の残滓を浚う……死を喰らう能力を持つくのりと、そんな彼女にどうしようもなく惹かれてしまう薊くんのお話。

 

彼の中には間違いない熱があって、それでもなお逃げ出したのはなぜなのか。

それは、くのりが魔女の能力を行使した結果倒れたのを見たからだった。その感情に名前を付けるとしても、恐怖ではなく……。

メイン2人はどこか欠けていて、その凹凸が綺麗にかみ合ってしまうことで物語になるというか。揃って欠けが埋まった薊くんたちは、破滅に向かって転がっていきそうな怖さがある。くのりの母が既に死んでいる、というのもありますしね。

これからの2人を見たいという気持ちもありつつも、そうやって事件に接することは、くのりの死に近づくようなものですから、恐ろしさもあるな……。

世界でいちばん透きとおった物語

ico_grade6_4

「たとえば『ぽっかり穴があいたみたい』とかよくいうじゃないですか。あれともちがうんですよね。もとから二人だけの家で一人いなくなったら、それはもう『穴』じゃなくて天井がなくなっちゃったみたいなもんで、それでも当座の生活には困らないからそのままなんとなく暮らしてて、雨が降ったら困りますけど今のところ降ってないし、みたいな……ああ、すみませんわけわかんないですね」

 

大御所ミステリ作家の宮内彰吾、死去。

妻帯していたにも関わらずあちこちで女を作り捨てていった男。その浮気相手の一人が、主人公の燈真の母だった。

最も燈真は父にあったこともなく、ずっと母子家庭として育ってきて。存在と名前こそ知っていたものの、著作に手を出すこともなかった。

 

母との関係は良好で、ジャンルこそ被らなかったけれど趣味の読書の事でよく話をしていたとか。けれど彼の母は不意に交通事故で亡くなってしまい……その2年後、父の死亡をネットニュースで燈真は見ることになりました。

関係ない相手がついにいなくなった、というだけで葬式なんかにも顔を出す気はなかった。

けれど、なぜか宮内の長男から「宮内が最後に書いていた小説を探している」という連絡が入って。いろいろな思いがありつつ、燈真はその捜索に関わることに。

 

形見分けという名目で、宮内の浮気相手たちに連絡をとり、自分の知らなかった父について知っていく。いやまぁ、普通にクズだなぁとは思いましたけど。

そうやってあちこちで情報を集めていく中で、トラブルがあったり新発見があったりもするわけです。

そして最後に明らかになった真相が、なかなかに凝っていたなと思いました。本作、電子書籍版がなく、紙のみでの刊行となっているのですが、そうするだけのこだわりを感じたと言いますか。ある意味執念だよなぁと言いますか。



紙魚の手帖Vol.2(小市民シリーズ短編掲載号)

ico_grade6_3

「これは、すごいね」

 

奥付によれば発行日は20211210日。

小市民シリーズの短編読みたさに今更ながらに読了。

今回の短編は「羅馬ジェラートの謎」。

 

少し前、小山内さんに貸しを返してもらったところ、少しもらい過ぎたのでその埋め合わせをしたいという話になって。

小山内さんが好きなジェラート屋さんが、2号店を出すことになってそこが1号店よりも行きやすい立地だというので、2人で食べにいくことに。

 

現地集合ということにして自転車で行った小鳩君と、バスで向かった小山内さん。

道中で起きた事故の影響でバスが遅れたりするトラブルもあったようですが……いざジェラートを食べる段になってもまた、気になるポイントを見つけてしまうのがこの2人だよなぁ、と言うほかない。

ジェラートは美味しかったか、そうではないか。フードコートに居た、気になる人物の正体とは。そこで予期せぬ答えに到達してしまったり、ジェラート食べてたはずなのに決着がビター風味なのが、相変わらずの2人で良かった。

結界師の一輪華3

 ico_grade6_3h

「……私、朔のこと好きかも」

 

疎遠になっていた葉月との仲を修復した華。

いまだに離婚して一般の会社に就職する夢を諦めてないみたいでしたけど。

……葉月の件で頼ったり、学校で実力披露したりしてるんだから、もう無理でしょ諦めよ? みたいな穏やかな気持ちで見守っていたんですが。

 

三光楼家の次期当主として指名されている雪笹が、華と朔を別れさせようと目論んで。

雪笹は困難な試練に臨んでいたため、しばらく都市を離れていて情報に疎かったのもあるでしょうけど。華が実力を示したあとに「落ちこぼれ」の噂を信じて手を出してくるのはなぁ、と思う部分とそれはそれとして赤点取りまくったからな……って気持ちとがあって、少しちょっかいかけるくらいは仕方ないかな、って気持ちもあります。

ただわざわざ竜の逆鱗に触れる必要はなかっただろう、とも思うんだよなぁ。

朔からも華からも一撃貰ってましたけど、そりゃそうだとしか言えない。

 

朔が、華と葉月を保護した後、彼女たちの兄であり無干渉であった兄の柳と交流し、兄弟姉妹の間で交流が足りてないと話し合いの席を設けてくれたのは良かったですね。

しっかりと華の事を大事にして、解決できる家族間の問題については穏当に片付けてくれてるし。バカやってる両親も、今回の一件でようやく区切りを迎えられたみたいですし、ホッとしましたね。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
 コメント歓迎。ただし悪質と判断したものは削除する場合があります。

メールアドレス
kimama.tyaka@ジーメール なにかご依頼等、特別連絡したい事柄はこちらにお願いします。
メッセージ
アーカイブ
カテゴリー
記事検索
最新コメント
  • ライブドアブログ