気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に適当に読んだ本の感想などを上げていってます。 ラノベ中心になる予定ですが、コミックとかWEB小説とかTRPGのサプリメントとか、とりあえず自分が読んだものの感想を端から書き連ねていく感じですかね。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

感想(文芸)

きみのために青く光る

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 あるかどうかは分からないけど、まず「ある」と信じてしまう。その方がうまくいくから。

「……なんだか、いいかげんですね」

「人間の叡智ですよ」

 

青藍病という、心の不安に根付いた異能を発する病気。

原因も不明、能力の表れかたもそれぞれ異なって。

周囲の動物に攻撃される能力とか、相手の年収が分かる能力みたいな使い道どこよ、みたいな能力があれば、危険な能力もあって。

念じるだけで生き物を殺せる能力みたいな、ヤバさしかない能力もありましたねぇ。

 

別々の能力者について語られた短編がまとまっている形ですね。

「犬が光る」、「この世界に二人だけ」、「年収の魔法使い」、「嘘をつく。そして決して離さない」の4章から構成されています。

元々が心の不安に根ざしているため、思わぬ事態になって慌てふためく、何て場面もあったりしましたが。

概ね能力と向き合って着実に前進したのは良きことでしょう。

 

青藍病を研究している静先生がいいキャラで好きです。

動物が好きで、相談相手がペットを連れてきていると途中で撫でまわしたりしていて、何というか和む。

あと、発症者達が静先生と話をして、他の発症事例を聞いて感想を零してるところが個人的にはツボです。「おかしな人もいるらしい」とか「とんでもないのもいるそう」とか短い言葉で他の話とのつながりが見える、こういう演出が好きなんですよねぇ。

 


夜空の呪いに色はない

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「朝は夜の向こうにあるものです。正しく大人になるには、ひとつひとつ、誠実に夜を超える必要があります」

「夜?」

「暗く、静かな、貴女だけの時間です。夜がくるたび悩みなさい。夜がくるたび、決断しなさい。振り返って、後悔して、以前決めたことが間違いならそれを認めて。誠実な夜を繰り返すと、いずれ、まともな大人になれます」

 

階段島サイドと現実サイド、それぞれの思惑が入り乱れた状況。

捨てた方と捨てられた方、どちらにも言い分はあって、既に捨てた後であるため、判り合う事がない。

二人の七草による噛み合ってないというか、温度差の違う主張の場面とかは、いつも以上に青臭い感じがしましたねぇ。

 

それが悪いって言うんじゃなくて、七草という人間が、これまでより少し身近に感じられた気分。

理想と、妥協。全く持って不器用この上ない。でもそんな彼が嫌いにはなれない。

安達からは「歪んだ完璧主義者」と評されてましたね。「弱虫で、歪んでいる、痛ましい完璧主義者」とも。

彼の弱さが好きですけどねぇ。真辺みたいに直截的にはなれませんし。

 

今回は七草たち以外にも大人達の行動も結構多かった感じですねぇ。

トクメ先生が言った大人になるには夜を超えなくてはならない、という表現が今回一番気に入ってます。

物語的に見逃せないのは、かつて魔女だった時任さんが過去に一体何をしたのか、という事ですね。

全てはつながっているんだよなぁ、と。現実の方もかなり歪んだ形で状況が形作られているみたいですけど、ここからどういう答えを出すのか。

一歩を踏み出した彼らに幸いあれかしと祈っております。



蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ

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「きみの詩が、たしかに聞こえた」

 

大学を留年しブログで小銭を稼ぐ引きこもりの葉山。

何の因果か、天才作曲家蓮見律子に興味を持たれ引きずり出されることに。

普段は色々と足りないけれど最終的に帳尻を合わせる男子と、多くの事を見通せてスペックは高いけれどどこかズレている女子のコンビ、というあたりいつもの杉井節な感じ。

久しぶりにこの作者の作品読んだのですが、安定している、って印象ですねぇ。

 

律子は、天才作曲家で演奏のセンスもあるけれど……作詞のセンスはなかった。

曲のイメージが固まるとどこだろうと楽譜を描き始めてしまう悪癖もあるようですけどね……

自室で発露するならともかく、公共の施設や歩道で始めたら駄目でしょう……

いや常識的に見て警察呼ばれたりするだろ、って以外のもありますが。実際少なくとも一度は呼ばれたみたいだし。

今のご時世だったら、なんか変な事してるって動画取られて、公開前の楽譜の情報がネット流出……とかもありえそうで怖い、とか思ってしまった。

 

詩情が分からない律子が拾ってきたのが葉山で。

もっとも、素人がいきなりいい詩をかけるはずもなく、ボロクソに言われながら、流されるまま、律子の近くで時間を過ごしていますが。

そうすると「天才作曲家・蓮見律子の知り合い」という情報を得た演奏家と知己を得たりとか、色々と葉山の周りにも変化が起きて……ある事件に遭遇する事に。

 

しかし、何とも物悲しいというか世知辛いというか、ここまで破綻する前に踏みとどまれなかったのか、と考えてしまいますが。

無理だったから、あぁなってしまったんだよなぁ。不幸な出来事が重なって、命が喪われることになってましたが。

もし偶然が重ならなくても、別のものが失われるのは避けられなかったわけですし。

生き残った人が少し前向きになれたのだけが、救いでしょうか。きっといつか、あの楽譜を世に広めてくれることでしょう。



米澤穂信と古典部

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タイトル通り古典部シリーズと作者の米澤穂信さんに焦点を当てた公式のまとめ本。

『氷菓』の発売が2001年でもう15年を超えてるんですね……長いなぁ。

最新作の『いまさら翼といわれても』で、結構千反田が揺れてましたので、その後どういう決断を下すのか、というあたりはとても気になっています。

どうか、結末まで見届けられればいいんですが。気長に、待ちたい……

 

古典部の新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」が収録されています。

ほぼコレ目当てで買ったといっても過言ではない。

掲載から本にまとまるまでが長いからなぁ……我慢できないので、掲載に気付いたら買う事にしてます。

 

時間軸としては、少し前ですね。

まだ一年生の大日向が部活に顔を出していた時期なので『二人の距離の概算』よりも前ですねぇ。

ある人物が描いた読書感想文について盛り上がる、というエピソードですが。

折木、省エネ主義の割に、色々と過去から飛び出てくる男だな……

「鏡には映らない」や「長い休日」などでも彼の過去の一部は描かれていましたけど。

昔から変わっていない部分があるんだなぁ、という感じもしてなんかほっとしました。

……黒歴史、とまでは言わないまでも何年も経ってから掘り起こされた折木自身はたまったもんじゃないでしょうけどね……

 

古典部メンバーの本棚の一部を作者が考えた、って言う企画とかも中々面白かったです。気になった作品に手を伸ばしてみたいような気はしますが。

既に積読が山になっているので、あれをもっと削ってからだな……

米澤穂信と古典部
米澤 穂信
KADOKAWA
2017-10-13


ジンカン 宮内庁神祇鑑定人・九鬼隗一郎

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「でも、ひとつ分かりました。なんにせよ人は死ぬんです。だったら、僕は自分が綺麗だと思うものにこだわりたい。自分がやりたいだけのわがままをしてから、笑って前のめりに倒れたい」

 

呪い緒を招く特殊文化財。

それを専門と知る神祇鑑定人九鬼と、就職に失敗し彼に拾われた夏目。

夏目は拾われた恩から九鬼を慕っている部分があるようですけど……

「怪しいものを持ち込まれてはたまらないから脱げ」と言われて実際に脱いで見せる人を信じちゃあかんのでは……

いや「僕は脱ぎませんからね」とちゃんと自己主張は出来てるので、まだ大丈夫かな……?

 

初っ端から眼帯のみ着用した全裸の男という驚愕の要素がぶち込まれて、衝撃を受けましたが……内容は面白くて、流石としか言えない。

片方はベテランで、片方は拾われたばかりの訳ありの新人。

現代において、魔術だとか呪いの品だとかの総称――特殊文化財を扱う部署に所属している二人がメインとなって話が進んでいきます。

古くは権威を持っているところだったようですが、どんどん影響力は落ちている様子。部長がノルマ果たさないと査定が厳しい、とか零してて世知辛い。

 

魔術という、一般的ではない手法に手を出した人、特殊文化財に魅入られた異端の側に寄っている人々を上手く描いている、と言いますか。

一話の「イェイツの日本刀」、三話の「月の小面」で描かれた呪いに囚われた人々の、情念は凄まじく、それを端的に描き切っているので引き込まれます。

それぞれの事情についてもまだまだ深く追求できそうですし、刊行続いてほしいなぁ。

 



大正箱娘 怪人カシオペイヤ

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「明けない夜は、あると思うかい?」

 

副題にある通り、今回は怪人カシオペイヤ絡みの事件が多く収録されております。

後ろ暗い秘密を暴く義賊のような行いをしているかの怪人の目的はなんなのか。

そして、もう一点。近頃町ではやっている、万病に効くとされる「箱薬」なる怪しい薬の存在。

あらすじの「少女・うららと調査に乗り出す」って言うのは割と語弊があるのではないかと思いましたけど。

 

相変わらず紺が、突っ込んでいって、悩んで、うららや周囲の人に助けてもらうというようなお話でありました。

彼女が踏み込まなければ、状況が変わらなかったかもしれない、という面もないとは言いませんが……見ていてハラハラするんですよね、紺。

 

彼女自身、覚悟があるから色々と進めてしまうのは危ういと思います。

いつかしっぺ返しを食らいそうな気もしますけどねぇ。

怪人カシオペイヤの標的に「箱娘」の存在も入っているようですし。そもそも「箱娘」予想以上にヤバそうな機密の塊みたいですし。

怪人が秘密を暴き回れる程度には都の闇は深いようですが……紺がそれに呑まれてしまわないよう祈るのみです。



ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン下

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「世界でただ一人、嘘をついてはいけない相手はだれだと思う?」

昭子はしばし考えた。

「自分か」

「それでもみんな嘘をつくけどね」

 

友人からの借り物。

帯にもありますし、巻末の謝辞・解説にも名前が出ている『高い城の男』を知っていると、おそらくはもっと楽しめたのではないか。

普段SFを読まないので、新鮮ではありました。

しかしまぁ、どうにもビターな感じですなー。好みからは少し外れる。

 

どうにもこうにも、あちこちが不器用に過ぎると言いますか。

もう少し言葉を尽くせば、行動を惜しまなければあるいは変わった部分があったかもしれない。

六浦賀と妻が、或いは父と娘が。

紅功が口を閉ざしていなければ。

そんなIFを考えたりもしてしまいますが。けど行き着く先はあまり変わらなかった気もしますねぇ。

 

この世界はあちこち歪んでしまっているような感じで、修正するにも大分行き着くと衣まで行ってるような。

多分その内GW団ないし他の組織のテロ活動によって、致命的な打撃をこうむるのではないかと思ってしまいますが。

自浄作用とか弱そう……でもそんな世界でも彼ら、彼女らにとっては今生きるただ一つの世界なわけで。

好き勝手やっているように見えた紅功に覚悟があったように、揺るがぬ忠誠を捧げていた槻野が揺れた場面があったように、ギャップの演出は割と好みでしたが。



ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン上

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「きみを鈍いと評したのはいったいだれだろうな」

 

友人からの借り物。

第二次大戦で日独が称した世界、というIFを展開しているSFモノです。

表紙のテイストからして、もっとロボロボしい感じなのかと思いましたけど、思ったよりは大人しい立ち上がりでした。

 

勝利した日本軍は、アメリカにあった日系人の収容所を解放した。

けれど、同時に彼らのトップを侮辱した発言をした相手へは容赦しなかった。

アメリカはかなり追い込まれていますが……争いの種は尽きず。

各地を爆撃され、多くの死者を出しながらも、「戦争ははじまったばかりさ。黙って死を受け入れるつもりはない」と述べたキャラが居たように、禍根を断つことがどれだけ難しいか。

 

勝利を得た日本がアメリカを統治するようになり、USAならぬUSJとなり四十年。

昇進時に儀式を行ったり、特高が存在していて、過激な取り調べ……と言う名の何かを行う輩も居て。

外から見ていると、全体的に暗いというか、曇り空に覆われているような感じで希望も何もあったもんじゃないなぁ、というような雰囲気ですけど。

 

消息を絶った上官の行方を問われた紅功。

同僚からの勤務態度の評価などは良くないモノの、技術者としての腕はあるのか、調査に駆り出されて、色々と目撃していましたが。

彼のキャラが何ともつかみにくいなぁ。不真面目なのか、真面目なのか。

特殊な銃で死んだ相手を見た時には気分を悪くしていたのに、特殊な性癖を持つ工匠との会話は普通にこなしていたしなぁ。前者は悪臭に耐えかねて、ではありましたが。

本人の中には揺るがない軸がありそうですけど、そこが何とも読み取りにくい感じがします。



活版印刷三日月堂 庭のアルバム

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「亡くなる少し前、あの版を見ながら祖父は言っていました。この人の言葉に、この人と家族がこの世界に居たことに、いつも心打たれる。いつまでも残しておきたいと思う。自分が印刷に願うのはそういうものだ、って」

 

活版印刷三日月堂を舞台にした小説、第三弾。

これまで三日月堂が作った商品が、誰かの手にわたって、そこから次のお客様へとつながっていく流れが綺麗だなぁ、と思っています。

 

2巻で作った『我らの西部劇』の完成記念で、川越の小さな映画館で上映イベントが行われる事になって。

ちょうど川越特集を組むことになっていた旅行雑誌の出版社が取材に来て……流れで三日月堂に行って、三日月堂も取材して。

その記事を見た、弓子の母親の知人が訪ねてきて……と今回は特に前の話やそこで作られた印刷物がしっかり次の話に繋がっていった感じがします。

 

デジタル化が進み、パソコンとプリンターで対応できるこのご時世に、敢えて活版印刷で作るわけ。

三日月堂で、店主とお客さんとが、それぞれ納得ができるものを作ろうと語らっている場面が、静かですけど「ものを作っている」という熱が感じられて好きです。



家庭用事件

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「どちらかといえば、反対」僕は言った。「でも、亜理沙が自分で考えて決めたなら、どっちでも応援する」

 

「不正指令電磁的なんとか」、「的を外れる矢のごとく」、「家庭用事件」。

「お届け先には不思議を添えて」、「優しくないし健気でもない」。

以上五話を収録した短編集となっております。

葉山君が一年生一月の頃のエピソードから、収録してある最後の話の時点では二年生の十二月になっていたり、とどんどん時間は過ぎていますが……

 

葉山君は、変わらないなぁ。

高校に入学し、不可思議な事件に巻き込まれて。

『頼まれ葉山』なんて、あだ名がついたりしているとか。人がいいですからね……

携帯のデータ飛ばされたらもっと怒っていいと思うよ……?

 

卒業してからも、謎があると呼び出される伊神さん。まぁ、本人も楽しんでるからいいでしょうけど。

後輩たちから「そうだね。召喚しようか。あの人」「えっ? 何?」「式神か何か?」「人間離れしてますが人間です」とか言われる伊神さんよ……

 

今回掲載の話で一番楽しかったのは「お届け先には不思議を添えて」ですかねぇ。

OBたちが隠したかった過去の話、というか。いったい何をやってるんだ、みたいなオチがつくんですが、他人事だと笑えてしまいますねぇ。本人たちは本当に死活問題だったんでしょうが。あとがきでシリーズはまだまだ続く、と書いてありますので、7巻を気長に待ちます。

家庭用事件 (創元推理文庫)
似鳥 鶏
東京創元社
2016-04-28


プロフィール

ちゃか

 友人に「活字中毒っていうか読書中毒」と評される程度には本が好き。適当に感想を書いていく予定。リンクはフリーでコメントはご自由に。悪質と判断したものについては削除する場合があります。

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