気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

単行本

鬼人幻燈抄 平成編 逢う日遥けし

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「手を繋いで君と一緒に……彼等には、その方が似合っている」

 

ついに物語は平成へ。

それはつまり170年の時を経て、遠見の鬼が予言した鬼神降臨の年が近づいている証でもあって。

甚夜が葛野の地に戻ってきたの感慨深いですねぇ……。

かつての里長や、千夜の願いを継いだ人々が、甚太神社やいつきひめ、姫川という苗字などなどを残してくれていたのも、胸に来るものがある。

 

それはそれとして、目的があるとはいえ甚夜が学校通ってるのなんか面白すぎるな……。

そば打ちして店を構えたりしてたし、庭師として働いてみたり、人間社会に馴染む意味を込めて仕事をしてる姿はこれまでも見てきましたけど。

学園生活となると、若い世代との交流が出てくるわけで、それまでとは違いますよね。……まぁ、子育て経験もある年長者でもあるわけで、卒なくこなしてましたけど。

 

あとは、藤堂夏樹についての描写がなろう版より少し詳しくなってましたかね?

なろう版にも都市伝説関係の短編が番外編に収録されていましたし、そのあたりについてより触れられていたように思います。

嫌なものを察知する感覚は強いけど、対策を取る腕はない夏樹からの願いもあって、甚夜が高校入学することになったようです。過去の因縁もあってのことではあるようですけど、今の縁も大事にしてるのが彼らしい。

 

今回収録のエピソードだとやっぱり「いつきひめ~妖刀夜話・終章~」が好きですねぇ。

夜刀守兼臣についての過去が明かされて、甚夜が当代いつきひめを「姫川の娘」と呼ぶ真意が明かされる。さらには予期せぬ、けれど大切な、思いが巡った果ての出会いもある。短いエピソードながら満足度が高い。



鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯篭

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「未練に足を引かれながらここまでやってきた身だ。忘れろなどとは口が裂けても言えん。それでも、区切りというのはどこかで付けないといけないのだと思う」

「だから、けじめですか」

「ああ。そして恋の話だ」

 

夜の女が集まる鳩の街。かつて存在した花街ではあるが……売春禁止法の施行によってすべての業者が撤退し、その役割を終えた街。

しかし甚夜は消えたはずの鳩の街に「花の名前を冠し、特殊な力を持つ娼妓」の噂を聞いて……。

花街特有のドロドロはなく、悩みを抱え迷う女が行き交う不思議な街がそこにはあった。

 

そこで甚夜は確かにマガツメの娘、七緒を見つけて。

青葉という少女や、ほたるという娼妓。一線引いて人々を見守っている店長なんかと交流しつつ、真相に近づいていくわけですが。

南雲みたいな分かりやすい悪役が、悪意を持って作り上げたというわけでもなく。夢みたいな空間で、本来会うはずが無かった人々の縁がたまたま結びついただけ、みたいな感じで全体的に穏やかに進んでいってましたね。

 

七緒もマガツメの娘ではあって、鬼の異能は持っていたけれど……マガツメが切り捨てた感情の中でも、特に遠ざけられるようなものが根幹であったから、最後に「同化」することになってましたが、そこに至るまでも少しずつ会話して相手の事を知っていく、という流れでしたし。

 

店長相手に甚夜が、探していた娼妓は姪だが、妹と折り合い悪いから顔を合わせたくはなかったと愚痴をこぼししていたシーン。それなのになぜ探したのか、と問われて「……多分、迷っているからだろう」と返した場面が結構好きですねぇ。

様々な出来事を過ごしてきてなお、彼の心は定まっていない。どこぞの剣鬼に言わせれば濁った剣でありつづけてた。ただ、今回のエピソードでそんな迷いの中にある濁った剣だからこそ「斬らない」未来を選べたのは彼らしくて良かったですね……。

 

まぁその結果、しばらくキネマ館へ帰還できない状況に陥っていたのは彼の失態ですが……。

甚夜が「刀さん」してる時のやよいちゃん達との交流のシーン、ほのぼのして好きなんですよね。彼の人の好さが出てますし。

あとはいろいろと事情を察しつつも、はっきりと告げることはせず胸に秘めてくれた店長さんのキャラが地味ながら良い味してて好きでした。


鬼人幻燈抄 大正編 夏雲の唄

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「あのあたたかさは、彼がくれたもの」

溜那は断言する。

「たぶん、こころは手から伝わる」

理屈として正しいかどうかではなく、彼女にとってはそれが真実なのだろう。

 

サブタイトルにもなっている「余談 夏雲の唄」から開始。

南雲の野望を潰えさせることには成功して、心配材料は姿を消した吉隠だけになった。……その吉隠が鬼哭の妖刀持って行ってるのが厄介なんですけど。

希美子が初めての気持ちに戸惑う、平和なエピソードを楽しめたの良かったですねぇ。

問題に長く備えていた甚夜としてみれば、彼女が自由に振舞えるようになった証明でもあるからと彼女の味方する方向だとか。父親である充知は、かなり複雑そうでしたけどね。

 

あとは甚夜が求めていた、鬼哭の夜刀神兼臣に封じられた鬼の力について。

ココでもまたあの時の思い出が出てくるのか。逃れられない過去でもあるし、彼を構成する縁であるのも確かなのですが。

……そうした来歴を承知の上で「楽しそうだから」と引っ掻き回す吉隠の手に渡り、利用される結果になったのは、モヤモヤするなぁ。吉隠、そういう役回りの敵役だと思うので、実に良い仕事してるとも言えますが。

 

この期に及んで溜那を狙って、状況をかき乱しにくるんだから最悪です。

暴走状態になった溜那を、それでも斬らずに救いに行く甚夜が格好良かったですね。

予想してない結末になってつまらない、と言ってる吉隠に貴一がちょっかいかけて冷や水浴びせてくれたのは痛快でしたが。

再び対峙した甚夜から、痛手を負いつつも逃げられたのが痛い。どうせまためんどうな企み練ってくるのわかりきってるしな……。

鬼人幻燈抄 大正編 終焉の夜

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「いつか分かると言ってくれた。嘆くなって。分かる時が、わたしにも先があるって、信じてくれた」

(略)

「だからもう、暗い場所には戻らない。わたしは、帰る……わたしのこれからを信じてくれた人のところに」

 

保護された溜那は、それは大事にされているみたいですけど。

……これまで何も持っていなかったからこそ、大事にされることに戸惑いを覚えて。そんな彼女を信じて、大切にしてくれる甚夜と出会えたのは本当に良かったなぁと思いました。

今回、甚夜がなぜ赤瀬の家で使用人をしているのか明かされる過去編もありましたが。

希美子の父である充知とのやり取りが結構好きですねぇ。

 

夜遊びしていた青年が怪異に遭遇し、甚夜に助けられ……しかし、その夜に姿を消した友人がいて。別の友人と捜索に繰り出してみれば、人食いとなった南雲と出くわすっていうんだから、運が悪いにもほどがある気もしますが。

甚夜との縁が出来て生き延びたうえ、自分の娘の守護を頼めることにつながるんだから、こう意外と持ってる説もある。

最初に出会ったときは去ってしまったけど、その時に果たされなかった約束を口実にして駄目元だろうと呼びかけるシーンとか良いですよね……。

 

格好良さでいうと、芳彦くんもなかなか。

吉隠の策略に囚われてしまった彼でしたけど、その状況下で出来ることをしていましたし。「はい。僕はちゃんと選びました」って言うあり方が、本当に良い。

戦闘能力こそありませんけど今回南雲に与した、「鬼」という種族としての在り方に迷い続けていた井槌や偽久に比べると、覚悟の決まり方がすごいですよね。

強制的に終わりを区切られたから、というのもあるとは思いますけど。

 

甚夜がこれまでの積み重ねを経て、南雲叡善を打倒したのは良かったですが。

吉隠に逃げられたのだけが痛いというか。愉快犯が面倒なアイテム持って行ったのがなぁ……。

5分で読書 全力の「好き」をキミにあげる

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「そもそも、らしいとからしくないとか、本当は他の人が決められることじゃないと思うし……その人がやりたくてやってることなら、全部その人らしいんじゃないかな」

「……うん。そうかも」

 

KADOKAWA刊行のアンソロジー『5分で読書』の1冊。

アンソロなので、テーマに沿って複数作家さんの短編が掲載されているのが基本になるわけですが。

この『全力の「好き」をキミにあげる』は1冊まるごと、藤崎珠里先生の作品で構成されています。

小説家になろうで両片思い系の恋愛短編を多数投稿してる作者さんで、以前から読んでいたのもあって、書籍化はめでたく嬉しいものですね。

 

2作だけ前後編の構成で、残りはそれ単体で読める形なので、1編ずつじっくり読んでいく形をとれるのもいいですねー。

糖度高い作品過剰摂取しすぎると倒れちゃいますからね、自分のペースで読めるのはいいわ。

 

好きな女の子と共通点が多いから、と相談相手になっているけれどそれなら自分の事を好きになってくれてもいいのに、と悩む少女を描く『鈍感なのは』。

一目ぼれした勢いで告白して、それ以降もアピールを続けた少女の想いの強さが語られる事になる『伊吹くんに、毎朝一番におはようって言える人になりたいです。』

『片思い中の幼なじみとの添い寝、その顛末について 前/後編』というタイトル通りの作品などなど。

どの物語でも恋心を抱えた少年少女が可愛らしく、読了後幸せになってほしいなと思える要素で溢れている、良質な短編集でしたね。

 

特に気に入ったのは『㊙委員長の楠田くんは、ファミレスでバイトをしている』で、バイトしている委員長を発見してしまい通いづめていた早川さんが、途中でちょっと冷静になって距離を取ろうとしたら、逆に委員長から踏み込んでくる流れが良かった。

もう一つの前後編構成『どの本にもいない』に出てくる読書好きの少女、結音ちゃんも小動物見てるような可愛さがありました。

いやぁ、甘かった。どの作品も満喫しました。

鬼人幻燈抄 大正編 紫陽花の日々

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「変わるための努力があれば、変わらないための努力もあるということです。どちらが正しいではなく、どうありたいかでしょう」

 

時代は流れ、街に灯りが増え銃火器が広まったことによって、鬼の脅威は遠ざかった。

けれど退魔も鬼も、ただ流されるだけでは終わらず、足掻こうとするものもいた。それ自体は、一概に悪いとは言えないですよね。家が没落しようって時に、対策しないわけにもいかないでしょうし。

ただし、今回南雲叡善が画策した計画は自作自演の極致みたいなものですし、多くを利用して喰らっていく破滅的なものなわけで。認められないのは良くわかる。

 

南雲家が主催したパーティーに、秋津染吾郎を継いだ宇津木が来て巻き込まれて。

そこに甚夜がやってくるシーンは本当に熱かったですねぇ。彼は南雲の計画を潰そうと目論んでいたものの、なぜかその隣にはマガツメの娘・向日葵が居て。

状況は分からないながら「こいつとあんた、どっちにつくかなんぞ端から決まってるわ」と甚夜を信じてくれる、四代目の秋津が本当に格好いいんですよ。稀代の退魔と呼ばれるようになったのも頷ける。

 

敵の計画の核となる少女、溜那は確保したことで状況を停滞させることは出来ましたが。

それは逆に、敵が動くときは一気に決着を付けようとするってことで、中々難しいというか。

甚夜が世話になっている家の当主は彼の味方だけど、先代当主は南雲に協力的で。これを切って捨てたら、逆にそれを弱みとして突かれて捕まりかねない。

剣によって簡単に解決できない問題が増えてきたというか、南雲とそれに与する鬼の一人吉隠が、それぞれの思惑で動いているのがこう、毒を撒かれてるような感じがして苦い気分になりますねぇ。

吉隠の能力があまりに特殊過ぎるというか、嬲るタイプの鬼で苦手です。早く蹴散らしてほしいですけど、こういうタイプの敵って無駄に長生きするんだよな……。

鬼人幻燈抄 明治編 君を想う

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「さらばだ。もう逢うこともあるまい」

「あほ、こういう時はいつかまた逢おうって言うもんや」

 

「逆さの小路」という怪異の噂について調べていた甚夜は、気がついたら鬼の異能も行使できない状態で白雪と対峙していた。

鈴音も居る、懐かしの光景。夢の様に、幻の様にその光景を見ていたら、かつてと違う言葉が飛び出してきて……彼は過去の未練を断ち切り、現世に帰ります。

存在しないと断言した老人が語った、噂話の真相が重かったなぁ。甚夜の調査時代はそこまで苦戦もせず、あっさり解決した部類になりそうですが、心には刺さる。

 

そしてまた時は流れて、野茉莉も成長して。作中ではもう結婚していてもおかしくない年頃だけれど、かつての約束もあり、彼女は自分の意志で甚夜の傍にいることを決めて。

父親とかの視点からは、思う所もあるようでしたけど。結局は、野茉莉を尊重して受け入れてる良い親子関係だなぁ、と本当にほっこりしました。

だけど、平穏は長く続かず……かつて広まった「人を鬼にする酒・ゆきのなごり」。それと同じ名前、ラベルの酒が京都でも流通し始めて。

実体は普通の酒ってことでしたけど、これはつまりマガツメの策略が迫っている表れでもあって。

 

甚夜がマガツメの下に踏み込みつつ、染吾郎達に助力を要請している辺りは成長を感じましたね。

三代目が甚夜の親友として、命を賭けて矜持を示してくれたシーンが本当に好きなんですよ。最初は親友がこれ以上の重荷を背負わないように排除しようとして、それが叶わないとしても人としての意地を見せるべく言伝を残していた。あぁ、本当に得難い友であったことよ。

 

親友を失った後に、娘にまで手を伸ばしてくるあたりマガツメの策略の悪辣さが光ります。……悪辣であろうとした結果ではなくて、本人も言っていた通り甚夜がどういう選択をするのか見たかったので、極限の状態を用意したって感じではありますが。

明治編の営みが温かかっただけに、それがどんどん崩れて行ってしまったの、本当に悲しかったなぁ。それだけ、丁寧に描いてくれていたからこそ、喪失の痛みがあるんですけど。もどかしくはある。

 

巻末の幕間「未熟者の特権」では、京都に残った平吉のエピソードが描かれていて、知りたかったその後の様子がある程度見られて本当に嬉しかった。あの場所に甚夜が居ないのが、どうしようもなく切ないけれど。

「出会いは、別れのためにあるんやないぞ。いつかぶん殴ったるから首洗って待っとけよ」

という元少年の誓いが、とても良い。

鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼

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「人は鬼程強くはないし、長く生きることはできひん。そやけど僕らは不滅や」

(略)

「お、その顔、そうは思えんって感じやな。ほんならええよ。僕が人のしぶとさを証明したるわ」

 

さらに時は流れて。野茉莉が思春期になったからか微妙に甚夜と距離がある感じに。

甚夜の方も対応を測りかねて、対応に苦慮しまくっているのは、不器用な部分のある彼らしいなぁと思いましたが。

 

野茉莉も決して父親の事が嫌いになった訳では無くて、だけど思ったように振る舞えず悩む羽目になって。

……表題の「夏宵蜃気楼」のエピソードで、彼女は長い夢を見て。それによって抱えていた蟠りも解けることになったのは何よりでした。

福良雀と蛤の話がこうやってつながってくるの、いいですよねぇ。長い時代を描いている作品ならではの味わいがあって好き。

 

甚夜の鬼狩りに関しても、地縛との決着や向日葵たちが甚夜を「おじさま」と呼ぶ理由が判明したり、かなり面白かったですね。

シリアスばっかりじゃなくて「余談・鬼人の暇」の昼で描かれていた「あんぱん」の話みたいに、微笑ましい話もあるのが素敵。

娘と過ごす時間を作るために表向きの本業である蕎麦屋を休みにしてしまう甚夜の親バカっぷりも好き。

 

野茉莉に想いを寄せてる染五郎の弟子、平吉くんがこんな逞しい父親に自分を認めさせないと行けなくて呆然としてたのにも笑ってしまった。

でも「四代目は平吉以外認めない」と甚夜に言わせるくらいには、認められてもいるんですけどね。鬼と退魔でありながら、良い関係を気付けているのが好きなんですよ。

 

鬼人幻燈抄 明治編 徒花

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「……ねぇ。葛野君は今、幸せ?」

(略)

「当たり前だろう?」

 

時は流れて明治。甚夜は、染五郎の伝手を頼って京都に渡っていた。

そこで娘となった野茉莉を育てながら蕎麦屋を営みつつ、鬼狩りを続けていたものの……廃刀令などが出されたこともあり、帯刀しての活動がしにくくなってもいた。

 

それでも、刀を捨てられるわけもなく、変わらないままでいましたけれど。

同じように刀に生きる「兼臣」を名乗る女性に、鬼退治の助力を乞うてきて。そこまで強くはないものの力を持った地縛という鬼を取り逃がした後、兼臣が居候する羽目になって、ふくれっ面になっていた野茉莉が可愛かったです。

 

 

余談の「林檎飴天女抄」が、作中でもかなり好きなエピソードなんですよね。

現代に生きる女子高生の薫が、明治時代にタイムスリップしてしまって甚夜に保護されることになるんですけど。

明治時代に天女呼びをした少女と交わした約束を、長い時間過ぎても覚えているのが尊いんですよねぇ。あとは神社の甚夜を知ってるちよさんの事とかも含めて好きです。WEBでも何度も読み返してます。

 

「楽しいのはいけないことか?」

「そんなことないよ。でも苦しんで頑張ってる人の方がすごいと思うから」

 

そういう風に、努力を続けている友人に比べて自分は、と思ってしまう薫は真面目で、だからこそ迷ってしまうんだろうなぁと思います。

 

けれど、やっぱりこの巻で一番重要なのは、副題にもなっている「徒花」のエピソードでしょう。

廃刀令の時代に現れた、刀に生きる鬼。名を聞くようにしている甚夜のこだわりに対しての応答と、それを受けた甚夜の反応が好きなんですよねぇ……。痛くて、切なくて。それでも意味のある戦いであったなら、せめてもの慰めになってくれたことでしょう。

巻末には「余談:続・雨夜鷹」を収録。後の世に甚夜が『雨夜鷹』の「行間には文字よりも大きな心が詰まっていた」と読み解いているのが素敵でした。


トランスヒューマンガンマ線バースト童話集

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「俺は取返しのつかないことをした。捨ててはいけないものを捨ててしまったんだ。もう一度手に入れようなんて、虫の良い話だった。そのあげくがこれだ」

 

6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。

タイトルに童話とある通り、SFと童話を混ぜ合わせた作品が6つほど収録されています。

SFは余り読まないジャンルなんですが、知人から借りたので読了。

普段読んでないのもあって、新鮮で、笑えたのは良かった。闇鍋感ある。

 

精神をアップロードして、肉体から解放された人々が暮らす世界。

必要があればボディをレンタルして、そこに自分の意識をインストールする。

そんな世界で、電子化をしていなかった少女が継母や義姉にいじめられる「地球灰かぶり姫」。

分け合って隠れ住む竹取の翁が、半端ながら知性を得た竹と日々戦いながら、ある日出会った不思議な少女を育てていく「竹取戦記」。

NPCに囲まれた世界でただ一人の女王様として君臨していた少女の末路を描く、「スノーホワイト/ホワイトアウト」。

 

宇宙に進出し、しかし人類が去った後に残された知性もつエビやカニなどの要素を持つ機械たちが、人類の残した遺跡を探索する「〈サルベージャ〉VS甲殻機動隊」。

宇宙の果てに進出した、特殊な集団の残した遺物を回収して回っていたおじいさんとおばあさんが見つけた成果を描く「モンティ・ホールころりん」。

電子化に適応したアリと、それを選ばなかったキリギリスの交流と結末が記される「アリとキリギリス」。

と言った6つのエピソードが収録されています。

 

幸せな結末に辿り着いた、「地球灰かぶり姫」が一番好きかなぁ。初手な分読みやすかったですし。

「竹取戦記」で、求婚者モチーフの5人が、与えられた先進技術を解析しようとして失敗しまくる場面はユーモラスで笑えましたが。

モンティ・ホール問題に対して「最適を知っていて、選ばない」選択をしたおばあさんも結構好き。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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