気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

単行本

鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々

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「随分、遠くまで来たんだな、俺達」

「本当。もう帰れなくなっちゃった」

 

フォロワーさんが激しく推してるのをTwitterで目撃して、物は試しくらいのつもりで読んだんですが……

思いっきり、ぶん殴られたような衝撃を受けましたね。正直、舐めてた。

出来ればネタバレを見ない内に、自分の眼でこの本を手に取って読んでほしい。

「小説家になろう」の方にも掲載はありますが、あちらのあらすじはネタバレ満載なので、本をオススメしたいところです。

 

ある山間の集落、葛野。

鍛冶が盛んな里であるがゆえ、土着神である火の神マヒル様を崇めていて。

その巫女は「いつきひめ」と呼ばれ、巫女守と呼ばれる護衛役を置いていた。

よそ者ながら、その役を務めている甚太が、この物語の主人公です。

巫女守は里の守護者として鬼のような怪異を斬る「鬼斬役」でもあり、彼は日々刀を振るっていた。

 

それは、よそ者であった自分と妹を迎え入れてくれた里に報いるためであったし、養父と幼馴染の少女との約束のためでもありました。

巫女守という役職に誇りはある。同時に鍛冶の里である葛野で、職人としての才能がなかったことに対する劣等感も抱いている。

年相応の青さを感じる場面もありましたが……それでも、甚太には、揺るがぬ芯があって。

 

彼に大きな影響を与えているのが、彼が守るべき巫女。

「いつきひめ」としてあがめられる立場になった、家族として過ごしたこともある少女、白雪。

母もおなじく「いつきひめ」であり…覚悟を持って、その地位を継いだ。

 

甚太と白雪の、不器用すぎる告白と、わかれてしまった道が切なくて苦しかった。

お互いの誇りを思えば、その答えになってしまうだろう、と丁寧に描かれてなお痛かった。

途中から、結末が予想出来て、それでもなおページをまくる手が止まらなかった。

書籍読んだ後、かっとなってPOP書いたりして気持ちを落ち着けようとしましたが、読み終えた後、残った熱が引いていかなくて…思わずWEBの方まで飛びましたね。

 

まだ途中までしか読めてないんですが、尊いやら悲しいやらいろんな感情が沸き上がって「あ、あぁ…」と呟く機械みたいになってました…

今までこの作品を知らなかったことを後悔したし、書籍化を期に読めた事には歓喜しました。すごい物語であると保証します。どうか、ご覧あれ。


本と鍵の季節

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そうしながら、僕は友を待っていた。

 

図書委員をしている僕と、皮肉屋の友人松倉詩門。

二人のもとにはなぜかいくつもの謎が舞い込んできて。

同じ図書委員の先輩からの相談、割引目当てで連れ立って行った美容室での変事などなど。

思考や行動のスタンスに違いがある二人が、つるんでる様子がなんか好きです。

 

帯には「爽やかでビターな図書室ミステリ」と書かれていましたが。

謎を解いてスッキリ! って形ではなく、目の前にある謎を解き明かしても、明らかにならない情報もあって、どこか不気味な余韻を残している。

 

確かに苦くて、世知辛い。

「どんなに立派なお題目でも、いつか守れなくなるんだ。だったら守れるうちは守りたいじゃないですか」と口にできる高校生がどれほどいるだろう。

その発想に至るまでの経緯を思うと胸が痛む。

 

けれど、その苦さを飲み込んでなお、変わらずに進む彼らの様子には脱帽する。

だってそうでしょう。謎解きをして、人の身勝手さに振り回されていたのかも知れない、と思って。

それでなお次の頼み事を受けているのは、性分といえばそれまでかもしれませんが、凄いことだと思いますよ。

願わくば、二人がこのまま変わらず居てくれますように。


本と鍵の季節 (単行本)
米澤 穂信
集英社
2018-12-14


いまさら翼といわれても

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「でも、折木さん、わたし、思うんです。……お話の中の折木さんと、いまの折木さん。実は、そんなに変わっていないんじゃないか、って」

 

久しぶりの古典部単行本です。

書籍化待ちきれず雑誌で追っていたので、余り新鮮味はなかったのがちょっと残念ではあった。

割と好きなエピソード「連峰は晴れているか」は図書館で読んだため、こうしていつでも読めるようになったのはうれしい限り。

 

あちこちの雑誌で掲載されていた短編をまとめた一冊です。

里志が折木に生徒会選挙で起きた不審な出来事について相談する「箱の中の欠落」。

中学時代の折木が行った「悪事」の真相を伊原が探る「鏡には映らない」。

ある教師がヘリが好きだった……と言う話から連想した出来事を確認する「連峰は晴れているか」。

伊原が漫研と決別する「わたしたちの伝説の一冊」。

折木が省エネ主義を掲げるようになった原点が語られる「長い休日」。

そして表題作でもある「いまさら翼と言われても」。

 

6本が収録されていますが、描き下ろしはなし。

雑誌掲載時とは多少描写が変わっている部分はありましたが。

ざっと読んで気付いたのは「箱の中の欠落」の結末部分がちょっと変わってましたねー。

 

どれも結構好きですが、「鏡には映らない」、「長い休日」の二編が特に好きかなぁ。

その次は「連峰は晴れているか」と「いまさら翼といわれても」で悩む。

進級したこともあって進路の話題とかも出てきてましたが。まだまだ彼ら学生なんですよね。

キーワードは時間とか変化って事になるでしょうか。過去に起きた事件、未来への展望、変わり行くもの。そうしたものについてのエピソードが多いように思います

目の前の問題をすべて解決できるスーパーマンに離れない。不器用なりに努力したり、妥協することもあるわけで。

 

伊原は漫研を退部した……けれど、厄介事から逃れられて生き生きしてるように見えますし。

古典部の活動を通して折木のことを多少なり知って、過去の過ちを認め謝る姿勢も示したりしてました。

不器用さが目立ったのは折木かなぁ。

彼の省エネ主義を抱くに至った事件、あんな気付きをしてしまったら、もうちょっと性格捻くれてもよさそうですけど。そこまで行かない辺り彼の性根の良さが伺える。

 

一方で、悩みの渦中にあるのが千反田で。これまでその好奇心で、動き続けていた彼女が足を止めてしまう珍事が発生しているわけですが。

気になるところで終わるので、早く続きを……! という気持ちになりました。えぇ。

いまさら翼といわれても
米澤 穂信
KADOKAWA
2016-11-30
 

現代詩人探偵

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答えが、ほんとうのことが、正しいとは限らない。

知らないのは僕だけなのかもしれないとさえ思う。詩に紛れながら、僕は、夢想をする。

誰もいない場所で、詩人が倒れる。

そのくちびるに、詩はあるか。

 

詩を書いて生きていきたい。

かつて、そんな願いをもって集まった男女がいた。

「現代詩人卵の会」。年齢もバラバラな彼らは、集い語らった後、10年後の再会を約束した。

フリーターとして日々を過ごしながら、詩を忘れられずにいた「僕」は、10年後の会合へと足を運び……かつて集った9人のうち、半数が既に亡くなっていることを知った。

概ねが自殺と思われること。それを聞いた主人公は、死んだ人について知りたいという気持ちを抱き、事情を知っている人々から話を聞いていく。

 

この作品は名探偵が出てきて事件に明確な答えを出すわけではありません。

フーダニットやハウダニットではなく、ホワイダニット……「なぜ」を問う話です。

それも概ねが自殺ですから、問いは「何故死んでしまったのか」。

当然、本人から話は聞けないので、周囲から話を聞いていくわけですが。

「僕」の持論である「詩を書きたくて詩人になった人間なんていない」を地で行く話だと思いました。

 

他の全てを選べなかったから。語りたい言葉を詩にするしかなかった。

この作品に出てくるキャラクターの多くは、既に亡くなった人を含め、どうしようもなく詩人であった。あるいは、詩人であろうとした。

詩を選ぶしかなかったように。きっと、本人たちはそうすることしか、なかった。

 

それは残された人々からすれば「そんなことの為に」と言ってしまうような物だったりします。

でも、選んでしまった。その決断が心に棘が刺さったように、残ります。

必ずしも謎を解いて救われる誰かがいるのではなく、傷つけるケースもあります。だから、好みは分かれるかもしれない。

ただ自分は結構気に入りました。どうしようもなく詩人であった彼らの生き様が、忘れられないから。

 

君の膵臓をたべたい

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「生きるってのはね」

「…………」

「きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ」

 

主人公の少年は病院で1冊の文庫本を拾う。

それは、クラスメイトの少女が綴ったある秘密に端を発する日記で。

親しくしている友人もなく、いつも一人でいた「僕」が少女と交流してく中で影響を受け、変わっていく。

 

ヒロインの桜良が自身の状況に挫けず―少なくともそれを表に出さないように努力を重ねて―必死に生きていく姿には胸を打たれる。

彼女との交流は、予想がつかない方向へ転がることもあり、騒がしく楽しく、そして終わりが決まっている切なさ。

そのあたりが上手くブレンドされて、良質な青春小説になっていると思います。

 

秀逸だと感じたのは、あくまでこの話は僕と彼女を中心にしたものとして終わっているところ。

彼女の事情とは全く関係ない処からやってきた終わり。要素だけ拾えば、このくだりを最初に持ってきて、犯人捜しをするミステリーとして描くこともできなくはない。

でも、そうした事情は枝葉末節で、誰がとかどうしてとかは触れられず。ただ結果だけがあって、それを受けてどうするかという「僕」の話としてまとまっているのが良いなぁ、と思いました。

 

あと主人公の母親が、多くを語らず、でも自分の息子のことを信じて見守ってくれていた事だとか。

桜良の母が、「僕」のことを受け入れ本を託してくれたことだとか。

喪われてしまったものは確かにあるけれど、彼の周りには優しさが溢れていて、傷を負った彼をしっかり受け止めてくれたことには安堵しました。

良い話だった、と素直にそう思います。

君の膵臓をたべたい
住野 よる
双葉社
2015-06-17
 

江ノ島西浦写真館

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「その服は桂木さん自身が選んだんでしょう。どんなものであれ、自分の意志でしていることには価値があると思います」

 

「ビブリア古書堂」の作者の新作。

舞台はビブリアと同じく鎌倉ですが、こちらはタイトルにある通り江ノ島がメイン。

亡くなった祖母が運営していた写真館。

孫の繭は、遺品整理のために館主の死と共に歴史に幕を下ろしたその場所を訪れる。

 

彼女自身、かつては写真が好きで、色々と撮っていたがある失敗をしたために写真から離れていた。

本当は母も来るはずだったが仕事の都合で、来ること叶わず。彼女は一人、残された物を整理していく。

そして見つけた注文されたものの取りに来ない「見渡し写真」の缶。タイミングよく一人受け取りに来たことを皮切りに、彼女はそれらの写真に隠された謎を解き、自身の過去と向き合うきっかけを得たりするわけなんですが……

 

全体的にもやもやすると言いますか。

繭のやらかした過去は確かに、カメラを置く決断するのも納得できる感じでしたが。

納得しやすいのは、彼女の過去ぐらいで、真鳥家の問題なんかはちょっと大事過ぎるというか、無茶が過ぎる感じがしたのは残念と言いますか。

普通だったらそこに切り込まないだろう、ってところに踏み込んでいくあたりは好ましくはなかったかな。

結果的には上手くまとまった感じがしてますが、実際なんの解決もしてないような気がしますし。

繭の大学での知人から「(前略)言うことがいちいち無神経で、敵の多い人だったよ。俺も君のことは嫌いだった」と評されたところから変わってないんじゃないか、と思えてしまう。

最後、過去起こしてしまった過ちとそれによって傷付けた相手と対面する場面で終わってますが……傷を広げないことを祈るばかりです。

 

 

阪急電車

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そして電車がホームを滑り出た。西宮北口から宝塚までを遡る車中、乗客たちがどんな物語を抱えているか――それは乗客たちそれぞれしか知らない。
人数分の物語を乗せて、電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。


たまたま電車に乗り合わせた人たちの交流と恋の様子。
短編連作で、他の話に出てきたキャラがちらっと描かれていたり、会話をしていたり。
思わぬところでつながっているものだなぁ、という感じがいいです。
一つ一つの話は短いのでテンポよく読めますし。

阪急電車の中でも知名度が低いだろう、今津線を舞台に展開していくお話。
沿線に住んでいてよく利用しているとかなんとか。
旦那さんが「電車って小説の舞台として面白くない?」と振ってきた何気一言が書くきっかけになったとかで。
旦那さんグッジョブ。

近くの図書館でなんどか顔を合わせている常連と、初めて会話を交わしたり。
恋人を取られ、討ち入りのごとく白いドレスで結婚式に臨んだ女性の話。居合わせたお婆ちゃんと率直な会話を交わして、慰められたり。
その白いドレスを見て会話をしているカップルだったり。
多くの人が乗り合わせていると、確かに色々と聞こえてくるものはあるよなぁ、と。
学生とか結構大声で話しているから、意識しなくても耳に入ってきたりしますし。

一番の立役者はお婆ちゃんじゃないかなぁ、と。
その言葉で行動を起こせた人が何人いるか。その辺でカウンセラーやってもいいんじゃないだろうか。
年の功とは言いますが、うん、こういう人になら諭されても腹は立たないだろうなぁ、という感じで。
結構な良キャラだと思います。

少し前の作品で、映画化もされているので、そっちの方で知っている人もいるかもしれませんねー。
個人的には映画は合わなかったんですが、そもそもあまり映画を見ないからっていう部分も影響しているかもしれない。

阪急電車
有川 浩
幻冬舎
2008-01

ブランコ乗りのサン=テグジュペリ

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芸のために、捨てられるものの多くを競う私達。若さ。時間。肉体。感情。青春と呼ばれる日々。
そしてそれと引き換えに手に入れるのはひとつだけ。
「美しくありなさい。ほんのひとときで構わないのです」
私はまぶたをおろし、ひととき、という言葉を考える。
「そのひとときだけが、あなたがたを、永遠にするのですから」
そうして、永遠を手に入れた者は、その先に何を見るのだろう。(後略)


天災後に設置された、復興のためのカジノ特区。
そこにある、少女サーカスの物語。
少女たちの、想いが痛いほど伝わってくる文章。
誰もが真剣で、形は違えど、逃げていないんだろうな、とそう思いました。

サーカスの演者たちは、過去の作家の名前を襲名して演技をしていた。
ブランコ乗りはサン=テグジュペリ。
猛獣使いはカフカ。歌姫はアンデルセン。
他の生き方を知らないといい、人生を、命を、全てを賭けている少女
その身と愛情でサーカスを守る決意をする歌姫。

サン=テグジュペリを襲名した少女は、練習で失敗し怪我を負う。
舞台に立てない間、彼女は双子の妹に代役を頼む。
姉は曲芸学校に通い、演者となるために全力を尽くしていた。
妹は、学校には通っていなかったが、その天賦の才で演技を行うことができた。
涙海と茉鈴が交わしていた会話。妹の方が才能がある、けれどブランコ乗りになるのは私だ、というものが印象に残っていますが。
代役としてたった愛涙。周囲の状況に圧倒され、怯えているような部分もありますが。
それでも最後、決断を下したところでは、花開いた、美しさがあったと思います。

誰も彼もが、歪んでいて、だけど魅力的で。
こんな少女たちが演じているからこそ、襲名を目指す学校に、人が集まっていくんだろうな、と思います。
綺麗なだけじゃない、嫉妬や羨望、果ては陰謀まで渦巻くけれど。だからこそ、そこで咲く少女たちの演技は、美しく、「花の命」という喩えが輝くのでしょう。

ブランコ乗りのサン=テグジュペリ
紅玉 いづき
角川書店(角川グループパブリッシング)
2013-03-01

プロフィール

ちゃか

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