気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

その他

菓子屋横丁月光荘 浮草の灯

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「そういうこと。まわりの意見にとらわれていろいろ迷うけど、人は意外と自分のしたいことをはっきり持っている。それさえわかればいいと思うんだ。そのときにしたいことをするしかない。未来のことはわからないんだから」

 

「浮草の灯」、「切り紙」、「二軒家」の三話収録。

川越の街で、縁が出来て悩みを聴いて。それぞれの道を進み始めるお話。

人間どうしたって迷うことはあるもので。

今自分のいる場所は確かにある。けれど、これからもここにいるのか。いていいのか。はたまた別の道を探すのか。今回はそういう話が多かったですね。

 

たとえば「浮草」。『三日月堂』でも出て来た古本屋。

そこでバイトをしている女子大生は就活中だが内定がなく、病をわずらった店主から、店は残るからこれからも働いてほしいと言われた。

たとえば、木谷ゼミの先輩。実家は紙屋だったが親に反発しIT会社に就職。だが、勤める中で齟齬を感じていた。そこに企業を予定している人から声をかけられて。

あるいは幽霊話に惹かれて来た少年。彼の家で起きていた問題と、流れた涙のこと。

 

色々と条件、状況は違いますが。

結局は、冒頭で引用した先生の言葉が全てのように思います。

判断を迫られたとき。分岐に差し掛かった時。自分が、なにをしたいのか。

誰かに相談する事があっても、決断するのは自分なんだという話。

だからって他の人がどうでもいいなんで事ではなく。支えてくれたり、残してくれたものがあるからこそ踏み出せる事もあるわけで。

今は懊悩の闇にあれど、これまでの積み重ねは灯りとなって、これからを照らしてくれることでしょう。相変わらず優しく温かい物語でした。

菓子屋横丁月光荘 浮草の灯 (ハルキ文庫)
ほしおさなえ
角川春樹事務所
2019-06-12


菓子屋横丁月光荘 歌う家

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――行っておいで。

「行ってきます」

 

同作者さんの「活版印刷三日月堂」も川越が舞台でしたし、ちょっと気になりますねー。

いつか行ってみたいです。

発売日に買ってたんですが、積んでるうちに2巻出ちゃって焦って読みました。

 

家の声が聞こえる。幼少期から不思議な力を持つ大学院生、守人が新たな住み家を見つけるまで。

両親を亡くし、祖父に引き取られて。祖父との折り合いも悪かったものの…先日亡くなって。大学院への進学が出来たものの、親族は早く家を出ないかと匂わせて来て。

もっと荒れててもおかしくない経歴ですが、かなり真っ直ぐ育った好青年といった感じ。

 

縁あって、川越にある古民家で住み込みの管理人をすることになって。

元々人当たりの良い青年でしたが、それでも過去のあれやこれは彼の心に沈んで澱のようになっていて。

心の固くなっていた部分が解されていくような、暖かい物語です。

 

菓子屋横丁月光荘 歌う家 (ハルキ文庫 ほ 5-1)
ほしおさなえ
角川春樹事務所
2018-08-09


年間日本SF傑作選 プロジェクト:シャーロック

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『まさにアレは「パンドラの箱」なのかもしれない。だとしたらその箱を開けたのはわたしだ。わたしが開けなければあれはこの世に解き放たれることはなかった。殺されることになったとしても文句は言えない。』

 

友人からの借り本。SFにはあまり手を出さないので毎度新鮮な気持ちで読んでます。

楽しいのもあれば、自分には合わないなぁ、というのもありましたが。

特に気に入った物を抜粋して感想を。

 

『プロジェクト:シャーロック』我孫子武丸

警視庁のデスクワーカーが暇を持て余して趣味で作ったAI

名探偵シャーロック。

ネットに挙げられたそれは、興味を持った多くの人の手によってどんどん改良されていき、実際の事件を解決する事も出てきた。

そんな中で、生みの親である人物が殺されて……

というストーリー。いやぁ、こうホラー見てるような、破綻が迫ってる雰囲気が好き。

 

『ホーリーアイアンメイデン』伴名練

妹から姉に送られた手紙。何の変哲もない導入かと思いきや……

それが死んだ妹から送られてきたもので。

彼女の考えていた事が、ゆっくりと明かされていく展開には引き込まれました。

こういう手紙とか日記系の情報開示方法が好きなんですよ。

姉はいったいどんな気持ちでこの手紙を読んだんだろう、と想像の余地が残るのも、作品の雰囲気にあっていて良かった。

 

『鉱区A-11』加藤元浩

唯一の漫画。『C.M.B』の一エピソード。

番外編的な話らしいですけどね。

たった一人しかいない小惑星の上で射殺された作業員。

その死因は? いったい何があったのか。

絵があると状況が分かりやすくていいですねぇ。

C.M.B』は名前とかは知ってるけど読んだことが無い作品なので興味が湧きました。

 

『天駆せよ法勝寺』八島游舷

SF×仏教という初めて見たテーマでした。

何を言ってるんだお前は、みたいな雰囲気にゲラゲラ笑った。

宇宙僧とかすごい力強いワードだと思うんですよね。

実際「第九回創元SF短編賞」受賞しているようですし。

中々楽しい作品でした。


『Unnamed Memory 試し読み用書き下ろし短編』を読もう

※(19年2月16日追記)
無料の期間が終了したため、配信終了したそうです。
ややこしいのでリンクは解除しましたが、推しを推す為に記事は残しておきます。

※2(19年3月26日追記)
noteにてお試し短編が公開されたようです(リンク)。
いや、noteの更新自体は2月21日とかだったみたいなんですが。
仕事でドタバタしてて気づけなかったので……それはさておき、お試しでもオスカーとティナーシャの対の良さは垣間見ることが出来るので、是非。



『Unnamed Memory』が好きなんですよ。
えぇ、『Unnamed MemoryⅠ 青き月の魔女と呪われし王』の感想書いた時にも、好きだとは言ってましたが。
発売以降ツイッターでふと思い出すと『Unnamed Memory』の話をしてたりするくらいには、思い入れのある作品です。

そんな『Unnamed Memory』の試し読み用描き下ろし短編が今ならkindleで無料!
というアピールの為だけに記事を書くくらいには、推してます。
なんか設定の問題で、kindle版公開から少しの間は99円設定になってたんですが。
無料まで待ちきれなくて課金してました。
友人に倣って軽率に推しに課金してしまう軽率の民を名乗ろうかしら……

「そろそろ結婚する気になったか」と王子が聞いて「何寝ぼけてるんですか」と魔女が返答する。
二人のやり取りが、読んでいて楽しいです。
でも、この軽い部分は彼らの一面でしかなくて。
この短編で言うと「そうか……分かった」とオスカーが言った後に見せた強者としての姿が、その隣に並んで色あせない魔女の笑みが、美しいと思うんですよね……

短編は短編で面白かったんですけど、あくまで試し読みの断片でしかないので。
気になったらぜひ、書籍の方も手に取ってほしい。
ACT1とACT2、それから続くSideStoryがWEBでは展開されていますが……現状ACT1までしか書籍化されないとか言う話で、悲鳴を上げてるので。

Unnamed Memory 試し読み用書き下ろし短編
Unnamed Memory 試し読み用書き下ろし短編 [Kindle版]
古宮 九時
2019-02-08





活版印刷三日月堂 雲の日記帳

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「運命なんてものはないですよ。みんな自分で決めなければならない」

 

シリーズ完結巻。

これまでの仕事、これまでの縁。

それらがつながって、三日月堂の未来になるというのが良いなぁ。

「星をつなぐ線」、「街の木の地図」、「雲の日記帳」、「三日月堂の夢」の4話が収録。

プラネタリウムの星空館。開館時に作った星見盤の木口木版を使って、リメイク版を作る話。

色々と時期が良かった。弓子が平台を動かそうと決意した後でなければ、縁をつないだ後でなければ、三日月堂に辿り着かなかったでしょうし。

 

そこからまた縁がつながっていくわけですが。

星座館でバイトしている学生が、課題で作る雑誌を三日月堂で作ることになって。

それを販売するために借りた店舗の店主についての話が始まり……三日月堂で本を作ることに。

 

終わろうとしていた、継ぐ予定もなかった三日月堂が、ついにここまで来たのか、と感慨深かった。

何でも電子で出来る時代ですけど、やはり紙は紙でいいですよねぇ。書店員としては、やはり紙の本の良さを推したい。電子書籍の手軽さも良いものだと思いますけどねぇ。

本づくりの時も、全て昔のやり方にすることには拘らずDTPソフトとかも活用してましたし。
良い所どりして共存していければいいんですが……

 

視点が切り替わっていく流れが綺麗にまとまってて、読んでいて楽しい。言葉の選び方が、好みなんですよね。

作中の人物だと、「雲の日記帳」の水上さんの言葉が特に気に入ってる物が多いですねぇ。

「でも、思うんですよ。夢だけがその人の持ち物なんじゃないか、って」とか。

地の文では最後の方にあった、「本とは不思議なものだ。」から始まる6行が好きです。

願いを込めて言葉をつづっても、届かないかもしれない。けど、誰かに心に残るかもしれない。
何の気なしに紡がれた言葉に胸を打たれるかもしれない。

言葉には、物語には、そうした力があるのだと信じたくはありますね。
うん、希望が見えるいいシリーズでした。



米澤穂信と古典部

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タイトル通り古典部シリーズと作者の米澤穂信さんに焦点を当てた公式のまとめ本。

『氷菓』の発売が2001年でもう15年を超えてるんですね……長いなぁ。

最新作の『いまさら翼といわれても』で、結構千反田が揺れてましたので、その後どういう決断を下すのか、というあたりはとても気になっています。

どうか、結末まで見届けられればいいんですが。気長に、待ちたい……

 

古典部の新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」が収録されています。

ほぼコレ目当てで買ったといっても過言ではない。

掲載から本にまとまるまでが長いからなぁ……我慢できないので、掲載に気付いたら買う事にしてます。

 

時間軸としては、少し前ですね。

まだ一年生の大日向が部活に顔を出していた時期なので『二人の距離の概算』よりも前ですねぇ。

ある人物が描いた読書感想文について盛り上がる、というエピソードですが。

折木、省エネ主義の割に、色々と過去から飛び出てくる男だな……

「鏡には映らない」や「長い休日」などでも彼の過去の一部は描かれていましたけど。

昔から変わっていない部分があるんだなぁ、という感じもしてなんかほっとしました。

……黒歴史、とまでは言わないまでも何年も経ってから掘り起こされた折木自身はたまったもんじゃないでしょうけどね……

 

古典部メンバーの本棚の一部を作者が考えた、って言う企画とかも中々面白かったです。気になった作品に手を伸ばしてみたいような気はしますが。

既に積読が山になっているので、あれをもっと削ってからだな……

米澤穂信と古典部
米澤 穂信
KADOKAWA
2017-10-13


ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン下

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「世界でただ一人、嘘をついてはいけない相手はだれだと思う?」

昭子はしばし考えた。

「自分か」

「それでもみんな嘘をつくけどね」

 

友人からの借り物。

帯にもありますし、巻末の謝辞・解説にも名前が出ている『高い城の男』を知っていると、おそらくはもっと楽しめたのではないか。

普段SFを読まないので、新鮮ではありました。

しかしまぁ、どうにもビターな感じですなー。好みからは少し外れる。

 

どうにもこうにも、あちこちが不器用に過ぎると言いますか。

もう少し言葉を尽くせば、行動を惜しまなければあるいは変わった部分があったかもしれない。

六浦賀と妻が、或いは父と娘が。

紅功が口を閉ざしていなければ。

そんなIFを考えたりもしてしまいますが。けど行き着く先はあまり変わらなかった気もしますねぇ。

 

この世界はあちこち歪んでしまっているような感じで、修正するにも大分行き着くと衣まで行ってるような。

多分その内GW団ないし他の組織のテロ活動によって、致命的な打撃をこうむるのではないかと思ってしまいますが。

自浄作用とか弱そう……でもそんな世界でも彼ら、彼女らにとっては今生きるただ一つの世界なわけで。

好き勝手やっているように見えた紅功に覚悟があったように、揺るがぬ忠誠を捧げていた槻野が揺れた場面があったように、ギャップの演出は割と好みでしたが。



ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン上

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「きみを鈍いと評したのはいったいだれだろうな」

 

友人からの借り物。

第二次大戦で日独が称した世界、というIFを展開しているSFモノです。

表紙のテイストからして、もっとロボロボしい感じなのかと思いましたけど、思ったよりは大人しい立ち上がりでした。

 

勝利した日本軍は、アメリカにあった日系人の収容所を解放した。

けれど、同時に彼らのトップを侮辱した発言をした相手へは容赦しなかった。

アメリカはかなり追い込まれていますが……争いの種は尽きず。

各地を爆撃され、多くの死者を出しながらも、「戦争ははじまったばかりさ。黙って死を受け入れるつもりはない」と述べたキャラが居たように、禍根を断つことがどれだけ難しいか。

 

勝利を得た日本がアメリカを統治するようになり、USAならぬUSJとなり四十年。

昇進時に儀式を行ったり、特高が存在していて、過激な取り調べ……と言う名の何かを行う輩も居て。

外から見ていると、全体的に暗いというか、曇り空に覆われているような感じで希望も何もあったもんじゃないなぁ、というような雰囲気ですけど。

 

消息を絶った上官の行方を問われた紅功。

同僚からの勤務態度の評価などは良くないモノの、技術者としての腕はあるのか、調査に駆り出されて、色々と目撃していましたが。

彼のキャラが何ともつかみにくいなぁ。不真面目なのか、真面目なのか。

特殊な銃で死んだ相手を見た時には気分を悪くしていたのに、特殊な性癖を持つ工匠との会話は普通にこなしていたしなぁ。前者は悪臭に耐えかねて、ではありましたが。

本人の中には揺るがない軸がありそうですけど、そこが何とも読み取りにくい感じがします。



活版印刷三日月堂 庭のアルバム

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「亡くなる少し前、あの版を見ながら祖父は言っていました。この人の言葉に、この人と家族がこの世界に居たことに、いつも心打たれる。いつまでも残しておきたいと思う。自分が印刷に願うのはそういうものだ、って」

 

活版印刷三日月堂を舞台にした小説、第三弾。

これまで三日月堂が作った商品が、誰かの手にわたって、そこから次のお客様へとつながっていく流れが綺麗だなぁ、と思っています。

 

2巻で作った『我らの西部劇』の完成記念で、川越の小さな映画館で上映イベントが行われる事になって。

ちょうど川越特集を組むことになっていた旅行雑誌の出版社が取材に来て……流れで三日月堂に行って、三日月堂も取材して。

その記事を見た、弓子の母親の知人が訪ねてきて……と今回は特に前の話やそこで作られた印刷物がしっかり次の話に繋がっていった感じがします。

 

デジタル化が進み、パソコンとプリンターで対応できるこのご時世に、敢えて活版印刷で作るわけ。

三日月堂で、店主とお客さんとが、それぞれ納得ができるものを作ろうと語らっている場面が、静かですけど「ものを作っている」という熱が感じられて好きです。



活版印刷三日月堂 海からの手紙

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「表現は翼ですよ」

(略)

「飛ぶことに意味はない。飛びたいから飛ぶ。飛べるから飛ぶ。それだけ。だけど、飛ぶためには技術が必要です。持って生まれたものだけじゃなくて、技術……飛びたくても、それを見につけてない人は飛べないでしょう?」

(略)

「飛べる人は飛ぶべきだ。僕はそう思うんですよ」

 

小さな活版印刷所、三日月堂にやってきたお客さんたちの物語。

わざわざ三日月堂に来る人々っていうのは、デジタルで色々と出来る時代に、活版印刷に興味を持ったり、それで何かを作ろうって人々ですから。

表現方法のひとつとして「活版印刷」をことばの可能性を見てくれている、という感じがして読んでいて心が温まります。

 

今回は「ちょうちょうの朗読会」、「あわゆきのあと」、「海からの手紙」、「我らの西部劇」の四話を収録。

冒頭の「ちょうちょうの朗読会」が結構いい感じでした。

店主の弓子さんが「いまできることだけをやってたんじゃ、ダメ」と、想いを新たにする場面とか好きです。

朗読会で取り上げられていた作品は知らなかったのでいつか読んでみたい……いつかとか言ってると、記憶の彼方に行ってしまいそうですが。

 

あとは表題作の『海からの手紙』でしょうか。

銅版画をやっていたという女性が、三日月堂を訪れて。

弓子さんと交流して、気が付いたら豆本を作る流れに。

まぁ、過去を吹っ切るきっかけになったというか、楽しそうにやっているからいいんじゃないですかねぇ。

 

他の2作も味わい深い感じでした。

元々、弓子の祖父がやっていた店を彼女が継いだという形で、失われつつあった三日月堂に灯がともった感じでしたが。

残された者が、残して行った者、残されていた物とどう向き合うかという話にもなってきて。

残せる物が果たしてどれくらいあるだろうか、何て考えたりしましたけど。

シリーズ3弾が出てくれることを祈っております。



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ちゃか

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