「亡くなる少し前、あの版を見ながら祖父は言っていました。この人の言葉に、この人と家族がこの世界に居たことに、いつも心打たれる。いつまでも残しておきたいと思う。自分が印刷に願うのはそういうものだ、って」
活版印刷三日月堂を舞台にした小説、第三弾。
これまで三日月堂が作った商品が、誰かの手にわたって、そこから次のお客様へとつながっていく流れが綺麗だなぁ、と思っています。
2巻で作った『我らの西部劇』の完成記念で、川越の小さな映画館で上映イベントが行われる事になって。
ちょうど川越特集を組むことになっていた旅行雑誌の出版社が取材に来て……流れで三日月堂に行って、三日月堂も取材して。
その記事を見た、弓子の母親の知人が訪ねてきて……と今回は特に前の話やそこで作られた印刷物がしっかり次の話に繋がっていった感じがします。
デジタル化が進み、パソコンとプリンターで対応できるこのご時世に、敢えて活版印刷で作るわけ。
三日月堂で、店主とお客さんとが、それぞれ納得ができるものを作ろうと語らっている場面が、静かですけど「ものを作っている」という熱が感じられて好きです。