気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

新潮文庫nex

さよならの言い方なんて知らない。4

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いつだって彼が戦うのは、物事の前提だ。震えながら世界を変えてしまうような、臆病な怪物が香屋歩だ。

――私はそれを、ヒーローと呼ぼう。

 

臆病者を自認する香屋歩。

けれど、目的のためにそのポリシーをひとつ手放すことにして……

キネマ倶楽部のリーダーの座をキドから譲り受け、自らの能力を活かすことで、この街に新しい勝利条件を作ろうとした。

前提を知らないままこの街に来て、そこまで考えて能力を設定していたのか、と思うと震えますね。怖いわぁ。

ポイントが減少したとはいえ、月生が加入した事もあり、注目を集めるチームとなっていましたが……

 

PORTのリーダーであったユーリィが、その地位を自ら放棄して、No.2のホミニニと一緒に別チームに移籍するなんて大ニュースのせいで、ちょっと薄れてしまってましたが。

移籍したユーリィから香屋にメッセージが来たり。

架見崎に残っていたチームの多くを巻き込んだ、規模の大きい戦いが起きていましたが。

参加チームの多さの割には、結構静かな展開になった感じがしますねぇ。

少数精鋭を中小チームに差し向けた影響も大きいでしょうけど。

 

ユーリィが、月生戦を経て修行の必要性を感じ、気ままに動いているのが中々のノイズになっているのは正直笑えましたね。

その人、今回はわりと何も考えてないよ……得られるのなら色々貪欲に持ってくつもりはありそうですけど。

リーダーになったのに香屋が相変わらず、自分から動かずに引きこもっているのには笑いましたね。ポリシーを捨てても、変わらず臆病で状況を動かそうと足掻き続けている。

 

ただ、圧倒的に時間が足りなくて、読み切れなかったというか。

より多くのループを重ねて仕込みを続けていた相手に、足元を引っかけられる終わりになって。

ループの終わりまでは辿り凍てましたけど、運営も一枚岩じゃないというか。色々ややこしそうですけど。

ここでもトーマはある程度踏み込んで把握しているっぽいのが怖いなぁ。絶望を証明、とか何をする気だ……

さよならの言い方なんて知らない。3

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「もっと気楽に、受け入れてもいいだろう? 生きてるのは幸せで、死ぬのは不幸だ。こんなことにどうして、理由がいるんだ。当たり前に信じていいだろう?」

 

ついに刊行された、架見崎シリーズの新章、書き下ろしの第3巻。

架見崎で最強と目される月生に対して、「平穏な国」と「PORT」が行動を開始。

2チームで共同して、月生を倒すという作戦。

さすがに以前、香屋が言っていた「登録名:月生のプレイヤーを倒す能力」ではありませんでしたが。

 

最大のポイントを持つ月生に、真っ向からは敵わない。そして、協力するとは言っても、ただ一人にポイントを集めて無効化するのも現実的ではない。

そこで、それぞれが能力を取得し組み合わせることで発動する、と。

平穏の前ナンバー2が進めていた交渉で、新しくその座に就いたトーマも、作戦実行に向けて動いて。香屋は人質のまま、できる範囲で情報を集めた。

小規模なチーム同士の争いはあったが、大手は準備に励み1ループが終わった。

そして、切り替え時にそれぞれが能力を取得しついに幕が上がる。新能力が一気に羅列されてちょっとびっくりしたと言いますか、読みこむのに時間かかった。

 

月生が刺客を最初のうちは軽くあしらっていて、さすが最強と目されたプレイヤーだなと感心してしまった。

平穏もPORTも、状況を動かしている幹部クラスの面々がそれぞれに思惑をもって、出し抜こうとして。そんな中に、まったく無力な香屋が指し手として介入するって言うんだから、いやはや全く大したものだ。

ポイントは無い。戦闘能力も。勇気もカリスマも。香屋には何もかもがなくて、どこまでも臆病で……だからこそ、怖いし強い。

限られた情報しか持たず、それでも事態を動かせる彼は、活用できれば最強のカードにもなりそう。

 

ゼロ番目のイドラのこと。PORTの新キャラ達や、ユーリィ回りの話。

ユーリィの能力の活用方法は独特で面白かったですし、タリホーの思惑はなんなのかよくわからなかった。あとは、新キャラであるパンか。色々抱えてそうな気配がしました。今後の活躍に期待。

明らかになった情報がいくつかあって、増えた謎もある。

 

月生戦が3巻の見所なのは間違いないですけど、一番衝撃を受けたのはやはりトーマの秘密でしたね。

香屋も、秋穂も。そうとわかっていて、招待に応じたのか。架見崎に足を踏み入れたのか。

そしてそれを、今まで黙っていたのか。どうして、そんな事が出来るんだ。

秋穂に怪物と称されるのにも頷ける。そんな彼が架見崎で何を為すのか。続きを期待したいですねー。


さよならの言い方なんて知らない2

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「ほんの幼い少年で、実力は未知数です。でもなぜだが、彼の言葉を無視する気にはなれないな」

「それは予想屋というより、詐欺師に向いた才能だね」

 

架見崎でついにトーマと再会した香屋。

かつての親友は、2年余りをこのループする街で過ごし、最大の領土を持つ「平穏な国」に所属して、それなりの立場を獲得していた。

香屋と秋穂が一緒に架見崎に来たけれど、この二人、かなり別行動してるんですよね。

それでも相手の事を分かっている感じが好きです。

 

戦闘力が無い香屋が、トーマの手も借りながら情報を集めて、架見崎で勃発した争いに介入するのが楽しい。

闘う力がないから、事前に準備したり交渉したりして。手札が足りないと嘆きながらも、どうにか成果を上げている辺りが凄いな。

良い予想屋と言われたり、詐欺師呼ばわりされたりしてますが。どの評価も納得できる部分がある。

 

そんな彼の本質が臆病者で、だからこそ行動するという姿が、どうしてか眩しい。それはトーマが、彼がいることで未来に少し希望を持てると思っていたのと同じような気持ちなんだろうなぁ。

結構あちこちに変化がでて、これからどうなるのかが気になります。秋穂とコゲが気づいた、架見崎の秘密、というか彼らの違いとかもありますし。3巻が楽しみ。


さよならの言い方なんて知らない。

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「たいていの物事はフィクションから始まる。そのフィクションに現実が出会う瞬間に、心の底から憧れる」

 

角川スニーカー文庫から刊行されていた「ウォーター&ビスケットのテーマ」の改稿版。

元々は同じグループSNEの河端ジュン一先生との共著でしたが、改稿に当たって河野裕先生の単著になってます。河端先生も変わらずストーリ―協力はされているそうですけど。

階段島シリーズが完結し、リスタートする物語。

 

スニーカー文庫版とは大筋は同じですが、ちらほら会話に変更がはいったりしてますね。

冒頭、トーマの姉に「いつまでもアニメとか」みたいな事を言われた……ってやり取りがライトフライヤー号の話になってましたねー。

 

同じアニメが好きだった、三人組。

香屋歩と秋穂栞。もう一人は、2年前にどこかへ消えてしまった。

その親友が残したのと同じマークのついた封筒が二人に届けられて。

調べてみても情報が出てこない、架見崎という町の名前。

訝しみながらも踏み込んでみて、彼らは不可思議なゲームに巻き込まれることとなった。

 

特殊な能力をポイントで購入し、それを用いた戦争で領土を拡大していく。

小さなチームに拾われた二人は、近隣の大きなチームの思惑に巻き込まれる事になりますが……

どちらも、ただの駒で終わる人材じゃないというか。

運営側の人間が初めに「ぜひ、戦いやすい能力を獲得してください」とか言ってくるガイダンスの中で、しっかり自分で考えて選択している。

確固たる意志を持ってる感じがしていいですねぇ。
書き下ろしとなる3巻も刊行予定のようですし、楽しみが増えました。


きみの世界に、青が鳴る

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「でも、今も幸せな方がいいよ。いつだって我慢しない方がいい。なのに今は苦しいのを受け入れるなら、やっぱり諦めているんだと思う」

 

シリーズ完結巻。

安達と堀の話であり、七草と真辺の話であり。

次の魔女の座を巡って争っているということでしたが。

相原大地のための話でもあるんだよなぁ、と言いますか。

 

七草が今回もいろいろ動き回ってました。

安達を理解するため。堀を魔女にするため。自分の幸せのため。

大地の幸せを願っているという意味では、大体のところ一致してるわけで。

正解を探すために、一歩ずつ進んでいく。これからも続いていくんだ、というそんな感じの物語。

 

魔女の魔法で、何回も試行錯誤出来たりもしますが、それですぐに万事解決とはいかなくて。理想の為に足を止めない真辺の強さは、凄いと思うけど、真似できない。

堀が少しだけ彼女を嫌い、というのも納得してしまう。同時に、七草が理想だというのも分かって、こう読んでいてもどかしく感じる部分がありますけど。

言葉の選び方一つ一つが、それぞれのキャラの信念に誠実で、美しいと思うんですよね。だから、この作品が愛おしい。

 

フェア掌編の「ラブレター」もゲットしましたー。

発売日に買いに行ったら、まだ店頭で配布スタートしてなくて泣いた。      

その後、運よく見つけられたので、購入。

いやぁ、良い情景ですね。最後のテキストだけが決まっている手紙。

彼女は悩みながらもそれを書き切ったんだろうなぁ、というのがまた良い…

 



夜空の呪いに色はない

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「朝は夜の向こうにあるものです。正しく大人になるには、ひとつひとつ、誠実に夜を超える必要があります」

「夜?」

「暗く、静かな、貴女だけの時間です。夜がくるたび悩みなさい。夜がくるたび、決断しなさい。振り返って、後悔して、以前決めたことが間違いならそれを認めて。誠実な夜を繰り返すと、いずれ、まともな大人になれます」

 

階段島サイドと現実サイド、それぞれの思惑が入り乱れた状況。

捨てた方と捨てられた方、どちらにも言い分はあって、既に捨てた後であるため、判り合う事がない。

二人の七草による噛み合ってないというか、温度差の違う主張の場面とかは、いつも以上に青臭い感じがしましたねぇ。

 

それが悪いって言うんじゃなくて、七草という人間が、これまでより少し身近に感じられた気分。

理想と、妥協。全く持って不器用この上ない。でもそんな彼が嫌いにはなれない。

安達からは「歪んだ完璧主義者」と評されてましたね。「弱虫で、歪んでいる、痛ましい完璧主義者」とも。

彼の弱さが好きですけどねぇ。真辺みたいに直截的にはなれませんし。

 

今回は七草たち以外にも大人達の行動も結構多かった感じですねぇ。

トクメ先生が言った大人になるには夜を超えなくてはならない、という表現が今回一番気に入ってます。

物語的に見逃せないのは、かつて魔女だった時任さんが過去に一体何をしたのか、という事ですね。

全てはつながっているんだよなぁ、と。現実の方もかなり歪んだ形で状況が形作られているみたいですけど、ここからどういう答えを出すのか。

一歩を踏み出した彼らに幸いあれかしと祈っております。



凶器は壊れた黒の叫び

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「現実の君たちなら諦められたことを、君たちは諦められないんだ。誰にだって大切だとわかる感情よりも、自分たちにとって純粋な感情の方を選んでしまえるんだ。僕は現実の君たちが、嫌いじゃない。彼らはいろんなものを諦めて、変化して、満点ではないけれど幸せになっていくんだと思う。ハッピーエンドのひとつの形だ。でも君たちは、あっけなくその結末を否定してしまう」

 

魔女について何かを知るらしい安達がこの島に現れた事で、島の状況は静かに、けれど確かに変化していって。

この島の歴史と、魔女の事情が紐解かれていって、引き込まれました。

想った以上に階段島がファンタジー要素強かったというか、あらすじの青春ミステリって文句とはどんどん離れているような気がしてきますが。

 

階段島の住人達は、「捨てられた」彼らは、その当時のまま変わらずにいて。

島にいる七草は、島にいる真辺はどこまでも彼らの理想を貫いている。

何かを変えるって事は大変だろうけど、同じくらい変わらずにいつづけるって言うのも困難な事だと思います。

 

一人で生きていけるわけじゃないのだから。他人との交流を、誰かからの干渉を、完全に排除しきることは出来ない。

或いは魔女が望めばそんなこともできるかもしれませんが、けれど階段島は基本的にそんな束縛をする場所でもない。

まぁ、今回は堀が彼女のルールを超えて動いた部分もあったりしましたが。

 

揺らがない彼らは、安達の行動の結果、魔女の仕組みについて知っても変わることなく、それぞれの道を行く。

階段島を嫌いだと叫び続けてきた真辺は、変わることなく魔女の過ちを指摘するし。

七草は、この島を綺麗だと思っているから、何とか守ろうと動く。

お互いを嫌ってるわけではないけれど、会話だってできるけれど、本当に大事なところを譲る気はない。

現実の彼らとはまた違う形で並び合う二人の結末がどうなるのか、気になります。

 

100万回生きた猫の哲学が嫌いじゃないですねー。

彼と七草が話していた「愛」についての話は楽しく読みました。

……あとは安達が引っ掻き回していてどうなるのかと冷や冷やし通しだったからなぁ……

 

 

汚れた赤を恋と呼ぶんだ

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泣き顔を笑顔にできなくても、コートで涙を拭けるなら、それを僕は幸せと呼ぶんだ。
愛する少女が傷ついたなら、臆病に傷痕をなでで、それを僕は恋と呼ぶんだ。

階段島シリーズ、第三巻。帯にて4作の刊行予定も出てますが、2016年秋だそうで……長いよ……今から待ち遠しい。
「引き算の魔女」。自分に必要のない人格を消し去ってくれる魔女がいる、という都市伝説。
あるきっかけから魔女の噂を追う七草。
……今回は階段島の外にいる彼らの話です。階段島にいる「捨てられた彼ら」の原典。けれど、捨ててしまってもやはり七草は七草で、真辺は真辺という気がしましたね。

前回のクリスマスの話で、ヒーロー志望の少年が必死に動き、泣きそうな顔になりながら弦を見つけた時。
答えを知りながらも、それでも探し物を届けた彼を見た時に、読んでいて泣きそうになったのを思い出しました。
「傷付いた顔をして、それでもここにきた彼を笑う事なんて出来ない」と真辺はそんなことを言っていましたが。
確かにその通りだと思いました。けど同時に彼は「捨てられてしまった」からここにいるという、階段島の真実を思うと、胸が痛んだ。
だって、あれだけ誰かの為に必死になれる自分を、彼は捨ててしまったというのだから。

けど、今回階段島の外にいる七草や真辺を見たことで、少し印象が変わりましたね。
結局彼らは不器用なんだ。引き算の魔女なんて都市伝説に出くわして、思わず捨ててしまったけれど、それを悔やむ人だっている。
喪失を上手く埋められずに、違和感を抱くこともある。捨てる前と後では変わったという実感もある。
でも、追い詰められた時に真辺が迷わず七草に電話をしたように。
七草が、多くの言葉を思考に費やし、真辺の涙を拭きとりたいと感じたように。
変化していくものが確かにあるというのなら。変わらないものだって、あるのでしょう。

七草と真辺は、理想が高いというか高潔すぎるんじゃないですかね。
理想的だと思うのがあって、それが変わってほしくないと思って。けれど変化を成長と呼ぶことも分かっていて。だからこそ、変わってほしくないという気持ちを、ある種の信仰を捨てた、なんてそう言えるもんじゃない。
「(前略)。それでも。汚れた赤を恋と呼ぶんだ。きっとそうだと信じるんだ。だって、ほら、こんなにも、彼女の涙を拭き取りたい」

七草と真辺は、二人でいれば上手いことバランスとれて失敗が減る気がしますけど。下手に離れようとするから自分のアンバランスさを自覚してしまうんじゃないのかなぁ。
大地とかとも現実で接点があるのは意外でしたが。
今回の謎はやはり、魔女を名乗りつつ「引き算の魔女」を探していた安達という少女でしょうか。最後には、階段島に辿り着いていたようですし、今度はまた島側で騒動が起きる感じですかね。

その白さえ嘘だとしても

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「あれが、悪ふざけだっていうんですか?」
「だってそうでしょう。貴女もよ。イヴのパーティーだからといって、なんでも笑って許されると思ったら大間違いよ」
「笑うわけがないじゃないですか」
(略)
「あんなにも傷付いた顔で、それでもここに来た彼を見て、いったい誰が笑えるっていうんですか」


捨てられた人々の住まう街、階段島。
この街でも時間は普通に流れていて。
だから、冬が来るし、雪だって振るし、当然クリスマスだってやってくるわけです。
外界との交流の手段を持たないこの島では、なぜか届く通販だけが、生命線となってます。
けど、クリスマスを前に、その通販がなぜか届かなくなって、不機嫌になる人とかも出てきて。
歪で楽園のようなこの島で、流通が途絶えるというのはかなりの問題です。

最低限必要なものは入ってくるものの、個人あての荷物がどうしてか来ない。
食料品はあるから生活は出来るけれど、それだけ。
そんな、突如として沸き起こった問題に接して、階段島の住人は何をしていたか。
ヒーロー志願の少年は、たった一人の演奏家のために、あるかも分からない弦を探す約束をした。
生真面目な委員長は、溶け込めないクラスメイトのためにプレゼントを探していた。
単純で純粋な少女は、この事態を引き起こした犯人を捜すために行動を起こした。
人付き合いのいい少年は、それぞれの友人の探し物を手伝いながら、階段島の謎に迫っていた。

まったくバラバラの探し物をしていたはずなのに、最後にはパーティーを行っている場所にキャラが集まるんだから、中々愉快といいますか。
違う話だったはずなのに、つながっていく流れは割といい感じだったと思います。
文章とか言葉回しとかは、やっぱりこの作者流の味があって好みでしたが、個人的に言えば1巻の方が面白かったかなぁ、という印象。
ちょっと前巻から間空いたから、その印象が薄れていたので読み始めはちょっとつっかえましたが、思い出し始めてからはするする読めました。
七草が派手に動いていないのに、どんどん階段島の深部に切り込んでいってる感があるので、結末がどうなるのかが楽しみです。


この部屋で君と

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「誰かに傷つけられた怒りや恨みを、その相手に似た誰かにぶつけるのって、簡単で楽な方法なんだよね。感情の処理の仕方として」
(中略)
「だから、そういう方法を取る人が、早く違う方法を見つけるといいなって願うばかりだけど。高畑君もさ、そういう人たちを見て絶望するんじゃなくて、自分に希望を感じさせてくれるものに目を向けて、それを大事にしたり、誇りに思ってみたらどうかなぁ」


一つ屋根の下で暮らす人々のアンソロジー。
読書メーターで他の方の感想を見ると、なんかスピンオフな短編を乗せている人もいるとかなんとか。
正直三上さん目当てで買ったからなぁ。
その内手を広げていきたい、と思わないではないですけど。
正直現時点で部屋に積読の山があるので、あれを消化しないことには、手を広げたら死ぬ。財布的にも、積読の消化率的にも。

流石にプロの作品。
同じテーマで手を変え品を変え魅せてくるというか。
それぞれの作家さんごとに個性が出てて、面白いは面白い。

掲載作の中できにいったのは、徳永圭『鳥かごの中身』、三上延『月の砂漠を』。
その次に飛鳥井千砂『隣の空も青い』ってところでしょうか。

『隣の空も青い』は、まとめると仕事と私どっちが大事なの、みたいな話といいますか。
すれ違いを感じ始めていたところに、出張の話が急にはいってきて、同僚と同室で過ごしながら、色々と考えていく話。冒頭に引用したセリフはこの作品からですねー。
ストーリーより、キャラの会話っていう要素がいい感じではないかと。

『鳥かごの中身』は、アパートの別の部屋で暮らしている少女。
母子家庭で母が帰ってこない。途方に暮れている彼女を青年は保護した。
少女を助けたつもりだったけレ度、交流を通して助けられていたのは彼の方だった。
まぁ、いい話だと思いますが。これ、一歩間違えると「少女を部屋に連れ込む事案発生」と警察直行コースだよな、ってツッコミ入れるのは野暮なんだろうなぁ。

『月の砂漠を』。
地震で妹を亡くしたのちに結婚した姉。
相手は妹の婚約者であった。亡くなったことを割り切れず悩んだり、とモヤモヤする部分はありますが。
色々と規約があって面倒な、住宅。どうしてそこを選んだのか。
ちゃんとキャラが立っていた感じがして好みではありました。

個人的には、作品ごとの色が違うので、評価上下して、平均するとなんかパッとしなかったかなぁ、みたいな結論になってしまうのがアレですけど。
まぁ、どれか1作くらいは気に入る作品あるのでは。
好きな作品と、そこまででもない作品が入り混じっていることがあるから、アンソロジーって難しいです。いや、気になって手に取っている以上、文句家立場じゃないと思いますがね。

この部屋で君と (新潮文庫)
朝井 リョウ
新潮社
2014-08-28

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