気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

電撃文庫

ウィザーズ・ブレイン アンコール

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『――そうして世界は今日も続いてく。

(中略)

私達は、今日も元気に、がんばってる。

だからね、フィアちゃん。

世界はきっと、大丈夫だよ』

 

電撃の公式海賊本などに掲載され、文庫未収録だった『ハッピー・バレンタイン』、『正しい猫の飼い方』、『最終回狂騒曲』を収録のほか、書き下ろしエピソード『湯宴の誓い』、『旅路の果て ~Journey home~』、『そして物語は続く ~Cooking for you~』を収録した短編集。

 

書き下ろし『湯縁の誓い』は、戦争終結から一年ほどが経過した後のエピソード。世界再生機構の街は多くの人や建物が増えて、変化し続ける日々だったとか。

新しい施設を作ろう、という議題が出た中でファンメイが「温泉がいいと思う」とか言い始めて。シティ生活に切り替わってからも長く……改めていろんな知識が断絶してるなぁ、と感じる部分もありましたが。

かこーんって音だって主張した後「それ、鹿威し。温泉とは関係ないと思う」ってツッコミ入ってるの、地味にツボだった。

そしてタイミングよく地下の調査を行うことになって……予期せぬものを発見して。危うい時もありましたけど、最終的には丸く収まって良かった。

 

情報の断絶が活きてるエピソードでいえば『ハッピー・バレンタイン』もそうか。なんで月夜頭がいいのに時々あんな暴走するんでしょうね……。

『正しい猫の飼い方』はエドやファンメイが、猫の幽霊を見ることになる話。情報制御理論が通るこの世界だと、普通にありうるのか。作中でも出てましたが、人形遣いとかまさしく「ゴーストハック」使いますしね。

最も自然発生的なものは粗が多く、魔法士が使うものは洗練されている、など色々違う部分もあるようですが。毒になりうると知っていても、会いに来た幽霊の猫が、とてもいとおしい。

 

『旅路の果て』は歩み続ける錬とフィアが遭遇した、やり残し……というか。

彼の行動の結果、巡り合うことになった2人と言葉を交わすことになる話。いやまぁ、うん。錬の旅は、これからもこういうことの繰り返しなんだろうなぁ、と思いますが。フィアが隣にいてくれることは本当に救いだな、とも思いました。

最後に収録されているのが『そして物語は続く』。セラがとある目的からクレアの好物を探ろうとする話。身近にいるディーに話を聞いたりもしてましたが、彼もセラに会うまでは立ち位置が定まらずにいたわけで。他数名にも話を聞いてましたが、コレというものは見つからず。

でも、不意に「なぜそもそも食べ物なんだ」という疑問を投げてくれた人がいて。それでセラが見つけた答えが素敵で、本編後にこの話を読めて良かったなぁと思いました。

86―エイティシックス― EP.13 ディア・ハンター

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――お前が死ねば良かったのだと。

誰かに断じられることは。

そう、誰かの生を断じてしまうことは。

「正しい言葉じゃないと――俺は思う」

 

ヴィ―カがフレデリカの出自と、レギオン停止の希望について知ったことで高級指揮官との相談が出来る環境が出来たのはシン達にとって良かったでしょう。

まぁ、シンは出来れば早い段階でレーナに相談したいと思っているみたいでしたけど……彼女は未だ療養中だし。

そろそろ帰還できそうな時期に、首都で謎の連続爆発事件が発生。その近辺で、共和国からの避難民が目撃されていたことで「保護」の名目でレーナは隔離されることになってしまって。

 

そしてその爆発事件の裏には共和国の計画があったことが、明らかになってきて……。

かつてはエイティシックスの扱いについてもあるし、記憶に新しい盗聴器騒動もあって、どんどん民の中で共和国へのヘイトが高まってしまって。

その一面を見れば、確かに保護は必要だっただろうなぁというのは分かります。

ゼレーネへの尋問も続く中で誰が指揮機体になっているのか、を絞り込もうとしているようですが。読者目線でだけ分かっている情報として、ノウ・フェイスの正体がアレですしね……。

上層部はまだ冷静な部分もあって、実質軟禁だとしても保護の名目は守っていましたが。

 

共和国の陥落以外にも、どこかで生き残っていた国が滅びたのか連邦へのレギオンの襲撃の密度は高まるばかりで。

そんな中、疑心暗鬼に陥って人同士の諍いすら生じるこの状況に置いては爆弾情報すぎるんだよなぁ。

脱走したユートはチトリ達「小鹿」を連れた最後の旅を完遂せんと動き続けて。その中にダスティンの知人がいたことで彼もまた揺らいでいました。

想い人のレーナの「隔離」に、内心反発しつつも軍人としてはそれを吞むしかない冷静さを得たシンでしたが、戦場で大暴れしてたのも彼らしいですけども。

 

86区という地獄を生き抜いて、それでもなお誇りを胸に戦場に立つことを選んだエイティシックスたち。まだ若い世代が多いこともあって、青さが光ることも当然あるんですが、それでも彼らの在り方は覚悟が決まっていて格好いいですよね。

その体現と言えるエピソードが、今回最後に起きたリト周りのエピソードなんですよね。そう、彼らはあそこで止められるし、引き金を引けるんだ。

……だというのに、人の愚かさによってそれが損なわれて、さらにはあの悪習とほぼ同様の状況がこの最終局面で再現されるっていうのは、なかなかに耐えがたいものがありましたが。

せめて、少しでも多くの希望が残ることを祈りたいものです。

 

と言いつつ愚かな選択をした人々に相応の報いがあって欲しいという気持ちも、どうしたって胸に引っ掛かり続けるんだよなぁ……。でも、そういう連鎖が争いを生む源泉なのだ……。私も愚かだ……。

不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚2

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「一緒に居る時は助けるし、離れていても力になる。相手を尊重する。理解に努める。それが及ばなくても、粗末には扱わない。――そういうこと全部を無条件で当たり前だと思ってる。俺にとって花乃と一妃はそういう相手だ」

 

床辻の守護をする地柱の一角になった蒼汰くん。

彼の隣には相変わらず異郷の住人である一妃と、以前の事件の影響で首だけになってしまった妹・花乃の姿があって。

彼は半分人間としての側面を残していることや、まだ就任直後ということもあって地柱としての職務については試行錯誤の毎日みたいです。

 

一部とはいえ土地神みたいな役割を担うことになったわけだから、監徒から市内の高校へ転校してくれと頼まれることになって。監徒関係者が多いだけなら驚かなかったのに、先輩地柱の墨染雨との出会いまであったのは驚きましたね。

先輩地柱達は、蒼汰みたいな半分人間みたいな状態ではなくしっかり「地柱」という存在を全うして長くを生きている方々で……。

 

知恵袋的に頼りになる場面もあったんですけど、やっぱり一妃みたいに人とは違う価値観を持っているな、みたいなシーンもあってちょっとゾクゾクしましたね。

人と似ていて、けれども違う。異種が異種であることが示されるシーン、結構好きなんですよねぇ。

多くの禁忌がある床辻ですが。「東西南北を結ぶ道を歩ききってはならない」という禁忌が破られないようにするために、信号が多めに配置されている話だとか。国に対して「そんなつい最近できたようなもの」とこぼしたりだとか。

違う常識で生きてる方々なんだよなぁ。それでも一妃みたいな変わり者を除けば、異郷の人物よりも、一般的な人間に近くて……だからこそ、人と交流できてしまうし、それによって揺さぶられることすらあるというのが危うさだとは改めて思いましたが。

 

地柱を止めるには死ぬしかない、という意味で蒼汰くんは既に不可逆な変化を迎えた主人公なんですよね。

それを受け入れて、その状態で出来ることを模索しているわけです。目下、一妃から妹の体を取り戻したいと思っているみたいですが。一妃と妹本人は現状を良しとしていて、不利な状況。それでも相手を否定するのではなく、自分はこうしたいという意見を発し続けていたわけで。

そんな彼だからこそ、あの最後になったのは納得です。彼が自分を貫くのであれば、同様に個人の意見を貫こうとする人物を否定するのは、一貫してないことになりますしね……。

不可逆な部分が、悲しくないと言ったら嘘になりますが。異種を交えた上で立派に家族をしていた3人の導いた結末が、良いものであったと私は思います。

 


ソードアート・オンラインIF 公式小説アンソロジー

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「何を言い出すかと思えば――まだ理解できていないんですか? 危機感が足りないのはそっちですよ?」

 

タイトル通り、『ソードアート・オンライン』をテーマにいろんな作家さんがIFストーリーを執筆して、公式で刊行しました! な1冊。

 

収録作品は下記の通り(敬称略)。

第一章『SAOif ピトフーイが、SAO事件に巻き込まれていたら~』時雨沢恵一×黒星紅白

第二章『もしキリトとアスナがゾンビゲームであそんだら』香坂マト×あるみっく

第三章『ドリームゲーム――くろすおーばー――』佐島勤×石田加奈

第四章『デスゲーム脱落編』周藤蓮×星河シワス

第五章『名探偵コヨミ/まだらのねこ』渡瀬草一郎×ぎん太

第六章『at the Children’s Steps』高野小鹿×rin

第七章『この呪いをどう解いたらいいの―シリカと幽霊少女―』牧野圭祐×かれい

第八章『もしアスナがレストランを開いた場合の、キリトの立ち位置的なお話』Y.A×長浜めぐみ

第九章『ソードアート・オンラインIf You Can Smile』川原礫×abec

 

第一章は、ガンゲイル・オンラインのコンビによるエピソード。タイトル通り、ピトフーイがSAOサバイバーとして知った情報をレンちゃんに語っていましたが……それは嘘八百で。それを信じてしまうレンちゃんが居たんだよ、という夢オチなんですが。軽いノリで楽しめる導入で良かった。

第二話はコンバート必須、つまりベテランゲーマーだけを対象にしたゾンビを蹴散らすタイプのゲームのベータテストに参加することにしたキリトとアスナ。最速クリアを目指して、想定されていなかった挙動も駆使して制覇したのはお見事。ゲーマー向けというのもあって難易度高めに設定されて、チュートリアルで脱落者続出なのはちょっと笑った。ハードル上げすぎぃ。

 

第三章は、メインの視点が魔法科の兄妹なのが特徴的でしたかね。魔法科の世界で聖遺物と呼ばれるアイテムの起こした、夢の世界との混信。それに巻き込まれた兄妹が、ゲームの配役を割り当てられて、クエスト攻略に来たキリト達と戦うことになる話。その前に一般プレイヤー蹴散らしてるのが達也だよなぁ。

第四章は、デスゲーム時代のSAOの攻略組に位置していたとあるパーティーに起きたトラブル。奇跡的な確率でバグに巻き込まれ、生き残ってしまったプレイヤーのお話。最後、想像の余地が残っているのが好きですね……。

 

第五章はSAOオルタナティブ・グローバーズリグレットシリーズのコンビによるエピソード。このシリーズも好きなので、IFであっても楽しめたの良かったです。ちょっと癖の強いクエストに挑んで、後日譚もちょっとみたいな感じ。

IF要素としては「もしもグロリグが館モノミステリーだったら」みたいなテーマらしいので、リアルでのヒロインがとても強くて良かった。

 

第六章は、原作より三歳年下なキリト君が規約違反承知でナーヴギアを入手し、ゲームに参加したというIF。ヒロインたちとの縁こそ、年齢差もあってか年上勢から可愛がられているような状態で。それでも頼られている部分もあって……。

年齢が近くなったこともあってか、そんな彼をよく見ているシリカの葛藤が良く描かれていましたね。

第七章もシリカメインのIF。シリカが「幽霊に取りつかれる」というクエストを発生させてしまって……そこでキリトとの縁も出てましたが、幽霊との交流を通じて一人での挑戦を選択したのは良かった。

 

第八章はタイトル通りの話。SAO時代に一度前線を離れて2人暮らしを始めた2人がアスナの「新しい事をしてみたい」とフレンド向けに料理を振舞ってみるお話。穏やかでしたね……。

第九章は原作者によるアリシゼーション編のIF。キリトとユージオが罪人として連行されず、そのまま学院に在籍し続けた未来を描く話でした。

七つの魔剣が支配するXIII

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「無粋な雑音はここまでだ。身の内の呪詛と共に、しばし妙なる楽の音に浸り給え〈呪樹〉。……その異名も謹んで預かっておきなさい。それもまた君への呪いであり――きっと、同じだけの祝福なのだから」

 

ガイが呪詛使いとしての才能を示した後……呪いが移るのを避けるため、彼は剣花団と距離を取ることに。

彼自身は植物の世話を手ずからできない事が気掛かりでこそあったけれど、一年生の頃から世話になっていたオリバー達と並べた事を喜んでいる部分もありました。

……ただ、ガイという人物は剣花団において潤滑油みたいな存在であって、彼との距離が生じてしまったことで、どうしたって他の5人の間がギクシャクするのは避けられない問題だったのでしょう。

 

折しもオリバー達も4年生になり研究室選び……つまりは進路を見定める時期だったというのも色々と大きいかな。

一線を越えたオリバーとナナオの関係を察して、距離を取りガイを拠り所としていたカティですが……彼女も不安定になっていましたし。

それをみたシェラが魔術師らしい合理で状況を強いた事でギスギスしてたし。彼女の血筋ゆえに抱えているのが明示されましたが。魔術師、業が深い家ばっかりかよ……こわぁ……。

剣花団内部だけではなく、彼らの後輩もまたキンバリーで鍛え抜かれて、時に先輩たちの心を刺しに動いたりもしてくるんですが。先輩・後輩関係の中でもまたいろいろ思惑が入り乱れてるのが面白い。

 

さて、キンバリーという魔境において、外部から派遣されてきた大賢者ファーカー。

その真意を探ろうと色々と動いていたわけすが。オリバーが切り込んで、グルグル心をかき乱される結果になったのは……敵もさるものというかなんというか。

彼の復讐相手である校長一派を抜きにしても、魔術界という魔人の巣窟で生き抜いてきた先人たちはやはり恐ろしいものですね。

ファーカーはエスメラルダを蹴落としたい勢力から派遣されてきたと思わせつつ、オリバーを揺さぶるような言動をして、その上で別勢力との接点まで出てきた。一体何を考えているのか。それが明らかになるときは……より過激な争いの中になりそうですが、さて五年生に進学したオリバー達は何と対峙することになるんでしょうか。今回もまたあとがきが不穏……。

あした、裸足でこい。4

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「上手くいくあなたも、そうでないあなたも、ずっと見てる。目を逸らさないから」

(略)

「どうか、あなたの願いが叶いますように」

 

ループを続ける中で二斗がいつも目にしていた、新小惑星らしきものを発見したことで表彰されていた同級生。

彼女は音楽を続ける中で色々と擦り切れていき……その中で、変わらず星を見つけ続けていた天体少年に声をかけてみる、という変化を発生させることにして。

そして、そこからは3巻最後に記されていた通り、彼女との縁が出来たことで巡の運命は変化してしまって、小惑星の発見を成し遂げることなく転げ落ちていってしまったわけですが。

 

彼もまたやり直しの機会を得たことで、二斗の交友関係が壊れることもなく続くことになって。

その上で二斗は音楽活動でも変わらず注目を集め続けていた。そんな彼女に追いつきたいと願い、小惑星を見つけるために奔走することに。

そんな彼の行動に惹かれる人もまたいるんですよねぇ……。天体観測のイベントに参加することを決意したものの、突発的なものだったこともあって六曜先輩たちの都合も着かず。そんな中、後輩かつ他校生でもある真琴が手を挙げて。

10代の学生」を対象にしていたから高校生・中学生のコンビでも参加可能って言うのは面白いルールの穴の突き方だなって感じがしましたね。

 

二斗と真琴が不思議とバチバチしてましたが……。真琴の胸中が明かされたことで、まぁそれもそうか……って感じではありましたね。

真琴も真琴で背負っているものが多そうで。繰り返しの中で、巡は最初に願った未来をつかみ取ることには成功した、と言っても良いでしょう。しかし、その代わりに失われようとしているものも示されて……次回、完結巻となる5巻でどういう決着を迎えるのか楽しみです。二斗好きだけど、真琴も不幸にしたら許さんぞ……の気持ちがある。

春夏秋冬代行者 秋の舞 下

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「頑張って、撫子。貴女なら出来る。俺はすぐ傍で見守りましょう」

 

橋国・佳洲の秋の護衛官・ジュード。

彼はある目的をもって撫子を拉致することを決めて。現人神を手中に収めるために、敢えてその神威を使わせて、意識を失わせるって言うのは荒っぽいながら効果的だよなぁ。

竜胆と侍女の真葛が致命傷を負わされたことで、必死にそれを救命しようとして……実際、成し遂げたのだから彼女の腕も磨かれてて良いですねぇ。

……それだけ過酷な状況に置かれてきたということで、なんとも喜びにくいですけど。

 

独自行動をとっていた雷鳥が追ってくれてたのは、まぁありがたかったか。

危険な状態だった2人は辛くも命を拾って。真葛さんは起き上がれないほどでしたが、護衛官の竜胆はそれでも助けに行ったんだから、流石というかなんというか。

同じようなシチュエーションだったのもありますけど、シリーズの途中で最初の頃のエピソード回顧するの良いですよねぇ。春の護衛官さくらと初めて会った時に発破かけられたのを思い出して、自分の秋を取り戻すために動いたのはお見事でした。

 

さて佳洲の秋の護衛官ジュードが果たして、何を考えていたのか。

秋陣営に傷を負わせて現人神を拉致した上で、撫子自信を害する気持ちはなく。彼は、ただ佳洲の闇を暴きたかった。そのための証人として大和を巻き込んだのだ、と。

自らの身の危険を顧みず踏み込んでいくあたり、四季の関係者というか。護衛官らしさはありましたが。現在の彼の立ち位置は秋の護衛官だけど、彼の歩き始めた場所はまた違っていて……そこがリアムの行動につながるんだから、やっぱり主従のすれ違いは悲劇招きがちね……。

 

佳洲秋主従の騒動がありましたが、闇を暴きだすという大目標は達成できてましたから、そこはまぁ良かった。

ただ撫子が2回攫われる羽目になって、周囲の人々に傷が増えたのはなぁ……。

大和に残っていた春主従、夏主従の片翼もまた独自に動いてより春夏秋冬の絆が深まった部分もありますが。

 

良かったことでいえば撫子の夢に関する竜胆の父親が語っていた下りが真実であるならば、秋陣営は少なくともある程度の未来まで無事ってことですしね……。まぁ命があるとしても、今回みたいに拉致されたりとかのトラブルには遭遇してそうですけどね。夢の中の竜胆が、今はいつか確認してきてたり「また来たんですね」とか言ってる当たり、実に怪しい。

……まぁあと上巻で竜胆父が心配していた、長生きする秋の神様は護衛官を手放さないって話も、懸念材料にはなりうるのかもしれませんが。主従の絆の強さを見ていると、それもまた良いんじゃないかと思えるんですよね……。

 

メロンブックスで購入したんですが、「人生行路」が好きでしたね。佳洲の幼い冬主従に大和の夏の双子神が、大和の冬について語って「冬のあるべき姿を見た」と思っているシーン、短編のメインとなる部分ではないんですけど好きな描写でした。



春夏秋冬代行者 秋の舞 上

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「俺も貴女が平穏に暮らせないことが辛くて許せません」

 

大和では春の代行者が季節顕現の旅を続けている時期。

秋の代行者・撫子は、『春の舞』・『夏の舞』の騒動を経て刷新された侍女と護衛を伴って、花見をすることになって。夏の陣営から護衛犬が派遣されていたりして、楽しそうな日々を送れているのは良かったですね。

……ただし、そんな中で護衛官の竜胆は忙しそうにしていた。それは外交部から持ち込まれたとある厄介ごとが原因で。

 

海外にある「橋国」の代行者から交流したいという要請があり、それが秋の陣営に持ち込まれていた。

雛菊が8年行方不明になっていた時期の様に、トラブルが起きた時に応援を頼める「互助制度」というのがかつてはあったようですが。異国に赴いた代行者が危害を加えられる事例があったために、大和ではその制度を放棄していた。

そもそも海外は大和よりも賊の活動が活発であることなどから、互助制度復活を狙う動きがあってそれに利用されかねないから、と竜胆たちはそれを受け入れないつもりだった。

 

しかし橋国も引かず……。春夏冬の陣営にも声掛けをしてきたし、最悪の場合は向こうがこちらにやってくるという提案までされて。

危険な地域に赴いて守るために尽力するか。過激な賊を招き入れる可能性を考慮してでも、迎え入れるべきなのか。最初に打診された秋が断ったことで、他の季節に迷惑をかけてしまった可能性。

そういういろんな思惑を考えた結果、再打診された秋陣営はそれを受けることを決めたわけですが。

 

いざ動く時に、夏の双子神の片翼である瑠璃と雷鳥、冬主従も出てきてくれたのはありがたかったですね。

季節の祖として、狼星は最終的に冬がその交流を受けるつもりだったみたいですけど。ただ、初手で提案を受けても軽んじられるから突っぱねたとか。そういった交渉のやりとりと、それぞれの季節を思いやった結果として、秋が受けてしまったのは悲しいすれ違いでしたね……。

 

春の誘拐事件を経て竜胆が彼女への愛を自覚するようになって、より大事にするようになっていたわけですが。

これまでの両親との距離感とかで示唆されていたものの、撫子が幼少期に置かれていた状況から、「良い子」であろうとし過ぎる彼女の在り方とで、秋主従の中でも微妙にすれ違いが起きていたのは、心配材料ではありましたね……。なんせ『秋の舞』の主役なわけですし。

橋国側のトンデモ要求をはねのけたり、今の竜胆は必死に主を守ろうとしていますが、最初期はそこまで必死ではなかった。そのことを知っている父との会話を撫子に聞かれたのも痛かったというべきか。

 

橋国での出来事がメインではあるけれど大和残留組である春主従とかの視点もしっかり描いていてくれたのは嬉しかったですねー。

瑠璃と狼星が初対面の時のいざこざを引きずってここまで来てましたが。季節の祖としての冬には、必要な態度というものがあるというのを、瑠璃が一緒に外交の場に出ることで感じて、少し態度が軟化したのも良かったですが。

……そうやって大和側が協力していてもなお、異国の地というのはなかなか動きにくいですよねぇ……。最後が不穏すぎる。

ストライク・ザ・ブラッド APPEND4

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「だいたいの事情は分かりました。帰り道は、わたしが案内してあげられると思います」

 

OVA特典などに収録されたエピソードをまとめたAPPENDシリーズ第4巻。

巻頭に『人工島の落日』という書下ろしが収録されたりもしてましたが。幽霊調査を依頼された古城が雪菜を伴って現地に赴いて……廃墟と化した絃神島を目撃することになる話。

その不思議な環境の中で、再び「偽姫柊」こと零菜ちゃんと遭遇したりもしてました。匂わせがかなり強まってきたというか、ほぼ答え示されているんだから、現実を見つめた方が良いよ2人とも……。

 

イチャついてる度でいえば、「第七話 凪沙のわくわく心理テスト」で相性の良い回答してるのを公の場所で披露してて、「砂糖吐きそう」って言葉に同意してるの笑えた。

あとはSSだから短めのエピソードが多いですねー。

プール掃除したり、海に遊びに行ったり和やかに過ごしてましたね。幽霊関連の話も多くて、なんか夏テイストが強かったかなぁ。

 

「第三話 彼女の中の……」という、古城が自宅で目撃した幽霊の話。

それは雪菜の心情が零れて生じた生霊で……素直な生霊ちゃんの願望に応えるために、リアルの雪菜の頭撫でたり抱き締めたりしてるの微笑ましくて良かったですね。

相変わらず雪菜が強ヒロインすぎましたが、「第十一話 いつかのバースデイ」で紗矢華のエピソードとかも楽しめました。

書き下ろしの一話と巻末の特別編で気になる情報が描かれてましたし、この世界特異な存在多すぎて笑う。

ソード・オブ・スタリオン2 種馬と呼ばれた最強騎士、隣国の王女を寝取れと命じられる

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「あとは任せたよ、ラス。たった一人の、私の最後の希望――」

 

ティシナに追い払われる形で、フィアールカの下へ帰還することになったラス。

本来はシャルギア王国の王都で、後から来るフィアールカと合流するハズだったが、ティシナ王女という予想外の存在によってそれが叶わなかった。

先入観を持ってほしくなかったフィアールカによって、情報が制限されていたからではありましたが。実際お抱えの諜報機関は優秀で、彼女が悪役王女なんて呼ばれる突飛な行動をとっている原因の予測を立てていたのはお見事。

自分たちよりも腕利きの諜報機関が協力している、という常識的な予測から、心が読めるとか未来が見れる、みたいな超常的な可能性まで追っているのは柔軟ですよ。

 

実際、彼女は未来を知った状態で過去にやってきた、いわゆるループ経験をしている人物だったわけで。真実にかすってますしねぇ。

ラスの所在について誤情報を流す工作をしていたのに、ティシナにラスの名前とかがバレていたというコトなんかも踏まえて、フィアールカが答えを導いてたの良かったですね。

そういう状況を踏まえて、当初の予定よりも早くフィアールカが動くことになっていましたが。

……ラスがうっかり「ティシナにキスされた」って零した下りも影響してるよなぁ、コレ。なんだかんだラス大好きで、嫉妬しがちなフィアールカ可愛いと思います。

 

皇太子として動く以上、国内の貴族への配慮も必要になる。さらに、亡き兄の婚約者候補と対面したり、その実家の人々とちょっとしたやり取りが発生したりもしてましたが。

それを乗り越えた上で、シャルギア王国に踏み込んだラス達。

あらためてティシナ王女と接触し、彼女の真意を探っていくことになって。

ある程度近づいた段階で、彼女が秘密を打ち明けてくれたのは良かったですねぇ。フィアールカの生存を知っていたこととか、ラス達側としては頭が痛いところではあるかな。

秘密を知った上で伏せてくれて、その上で協力関係になれたのはありがたくもありましたけど。

 

ティシナが回避したがっていた悲劇、その発端となった敵の作戦は結構面白かったですね。どうやって王都まで戦力を運び込んだのか、というところとか。

とりあえずは、1巻から続いてきたエピソードに一区切りがつきつつ、気になる情報も出てきたので、どうか続いて欲しいものですなー。

巻末には閑話『銀級騎兵、娼館に行く』として、ラスの紹介状を持ったクスターが噂の娼館に足を運んだ話でしたが……。うん、大変そうだけど多分強くなれるよ、ファイト!

あとは『黒の剣聖、弟子と出会う』として、フォンがラスに興味を示すきっかけとなった過去のエピソード。なるほど、そりゃ気になる存在だろうなぁという納得しかない。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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