電撃文庫
川上稔先生の短編ですよー!!
今回も電撃文庫BornDigitalとして、電子版のみ。
カクヨム連載『川上稔がフリースタイルで何かやってます。』で一時掲載していた作品をまとめたものです(ただし『最後に見るもの』は2020年1月11日時点で掲載中)。
短編集1~2巻は「ハッピーエンドのラブコメ」でしたが、今回は「ハッピーエンドな尊い話」。尊ければいいので、現代だろうとファンタジー世界だろうと何でもアリアリなのは強い。
個人的なイチオシは『ひめたるもの』。フリスタは不定期に掲載作品が出し入れされてるんですが、消えるタイミングを失念してて再読しそこねたんですよね……。いつでも読めるようになって嬉しい。
尊い話1~2だと1の方が好きな話多かったですけど、2も面白かったので是非読んでください!
各話ごとの感想は下記。
「この巻から読んだ人は先生が何を言っているのか分からなそう……」
「一巻から追っていたとしても何言ってんだコイツ以外の感想が出ねえわ!」
実は、これが新年初読書です。積読の山に一番いたばっかりに……。
毎回ネタにこまっているというか、奮闘されているような姿をTwitterやあとがきなどがら伺うことができますが。
いやぁ、今回もひどかった……。シコルスキにおいては褒め言葉ですからねコレ。帯に「変態度、ナンセンス度、クズ登場人物度 ライトノベル業界1位(※自称)」とか書いてありましたし。
1話からやたら濃い変態(いつもの事ですが……)が登場したり。新キャラの名称がナカニダスだったり。さらには、パロディと言う名のトンデモ商品を生み出してオークに売りつけようとしたり。
よくもまぁここまで粘着的な変態どもを生み出せるな……と感嘆してしまう。
しかし、ちょっと下ネタが増えてきているのは……これも前からと言えばそうなんですけどね。一気に読むとくどくて胃もたれしそうになりますね。
シリアスを許さない会の会長とか、なんというか特殊技能持ちが多いですよねこの世界。
純粋な暴力で魔族をボコボコにしてたユージンも中々ですけど。
ゴマ塩の二人が、魔族の障害となっていた勇者と賢者が云々言ってた気がしますが。現状でも何とかなりそうな戦力が多い気がする。
そして最終話に爆弾を放り込んでくるのがいつものスタイルですが。
……なんでKADOKAWA刊行のラノベに、小学館の編集者が出てくるんですか???
ちゃんと取材した上で、バッチリ登場させてきてるのは草。仕事選んでいいんですよ?
後書きによればマジに今度こそ終わりだそうですが。まかりまちがって4巻出てしまった時、タイトルどうするんだろう。フォーを現せる単独の漢字……?
「なにを教えて、なにを残してやるのか。……これはどんな戦よりも難しいぞ、ヒューゴ」
綺晶機関の秘めた力と、それが新たな災害をもたらす可能性に気が付いたカイ。
問題は騎士竜とその機関の扱いに関してだけではなく。
領主であるシギル家の戦力が落ちた事によって、ヴェーチェル領そのものを狙う外部勢力の存在まで考えられることに。
このタイミングで、エレナの義兄であるリチャードが帰還して、戦略的なアドバイスをくれるようになったのは助かりますね。
カイとエレナの婚約に関して思う所があるようで、ちょっと面倒な兄としてちょっかい出してくる場面もありましたけど。
どちらかと言うと、現場で活躍したり機関の研究をしている現場の人間であるカイ。彼を補佐できる立場の人間が増えるのに越したことは無いでしょう。
……しかし、厄介なのはクーデターを実行したウェイン一派がそれを把握してることですよ。
エレナには王の器があること。カイは将の器ではない凡人だが……エレナと共にあるのならば、英雄になる可能性すら考えている。
力だけではなく、策謀も備えた敵と言うことで。カイとエレナ達に立ちはだかる敵は強大で、けれどカイ達はまだ青い。さて、乗り越えるまでの時間が足りるかどうか。
今回は、そんなカイが成長するエピソードでもありましたね。
エレナを渡すわけにはいかず、それ故に戦いは続けますが、彼自身の核が定まらずぶれていて。「誇り」を掲げて交戦する騎士相手に、迷う場面なんかもありました。
けれど、父親から当主の位を譲られ。領主として立つことを決めて。「騎士」の姿に感じていたもどかしさも超えて、彼なりの軸を確立したように思える。
ただ、それだけに。敵にこちらの手札を一つ奪われたのは痛いなぁ。猶予の時間が削られていく。
「もう少しだけ我慢して、これから始まる戦いを見ていてくれ。みんなが頑張ってくれた成果を俺たちが示す。エレナを浚いにきた反乱軍を叩き潰してな!」
BOOK☆WALKER読み放題にて読了。
地方群主の子息であるカイは、武芸こそ駄目なものの口は達者で。
祖父と一緒に研究に打ち込んだり、幼馴染の婚約者・エレナと良好な関係を築いたり。
穏やかな時間を過ごしていた二人は、何事もなければそのまま平凡で幸せな人生を送るはずだった。
けれど、王都において参謀ウェインによるクーデターが発生。
王位継承者の多くが殺され……エレナもまた、継承権を持つために標的とされた。
この世界には鉄騎竜と呼ばれる巨大兵器が存在するが、カイ達のような地方群主にいきわたるほどではなく。
「鉄騎竜」の所持を厳しく制限する事で、上位層への特権化したり、戦力の集中と言う意味でも間違ってはないと思いますが。
そうやって造り上げた安寧を嫌って、反乱する輩まで出てくると話は別と言うか。
王位継承者を皆殺しにするという苛烈さ。その手口を好まない人は居るでしょうが、圧倒的な力の前では無力で。
エレナの命も危うかったですが。カイが祖父と培ってきた研究成果、「騎士竜」の力によって敵の尖兵を撃退。
長く厳しい戦いの始まり。
カイの父親たちが、流れされるままに戦うのではなく。
標的であるエレナを引き渡したところで未来はないと理解して、彼らなりの野心を抱えた上で戦う覚悟を決める描写を入れてくれたのは良かったですね。
騎士竜と鉄騎竜のバトルで、カイの見せ場を作りつつ。戦争では、それ以外の見通しとか根回しも必要だという視点があって作品世界が広がった感じがする。結構楽しかった。
「そんなことのために、僕は麻衣さんと付き合ってるんじゃない」
「じゃあ、何のために付き合ってるの?」
「ふたりで幸せになるため」
霧島透子と名乗った、咲太にしか見えない未ニスカサンタの女性。
彼女はサンタとしてプレゼント――「思春期症候群」を配り歩いた、と告げて。
大学内にも該当者は多く、その中には中学時代の知り合い、赤城郁実も含まれていた。
プレゼントを贈ったのは嘘か真か、1000万人。
さすがにそれら全員を救うなんて真似ができるはずもなく。……けれど、かつての縁もあって赤城のことだけは気になっていた。
まぁ、赤城のことばかり考えていられるわけでも無く。
バイトで教え子と交流したり、道が分かれた高校時代の友人たちと遊んだり。
麻衣さんの許可が得られてしまったために、合コンの穴埋めに行く羽目になったりと。
咲太が、わりと普通の大学生やっているのは感慨深くありますねぇ。
……否応なく思春期症候群と言う厄ネタが付きまとうので、普通とは少しずれてますが。それでも、青春を満喫しているのが伝わって来て楽しいんですよね。
美東が毎度会話あったり、上里も同じ大学に進学していたりと、意外な縁がつながり続けてるなーと言うか。
その内どっちかが思春期症候群に巻き込まれたりするんだろうか、と思えて気が気じゃないな。特に、一線を引いてる美東は気になる。
赤城が気になり、彼女と交流する中で思春期症候群が発現しているのが確定。
そして彼女から「勝負をしないか」と持ち掛けられて……受けるのが咲太なんだよなぁ。
中学時代に起きた出来事は、どうしようもなく影を落としていて、あちこちに影響を与えているのが改めて示されるエピソードでもありました。
しかし、赤城の思春期症候群からすると、「#夢見る」って「あるから使った」だけな感じがするというか、これまだ根深く残り続けそうな気配がする。
最後、意味深な警告が飛んできていましたし、続きが楽しみです。
「面白いコト、見せてくれるのよね?」
(略)
「もちろん。期待していい」
国内有数の蔵書数を誇る宇伊豆学園の図書館。
開架書庫が地上4階、地下2階の規模を誇り、限定的に学外へ開放もされており、研究者なども利用するほど。
しかし、それはあくまで表の顔。
より深い場所ある「閉架書庫」は、奇書・稀覯本が収められていて、図書委員の中でも一部の人員は、その閉架書庫の探索も兼任していた。
広大なだけならまだしも、障害となる魔獣まで闊歩していて。迷宮と呼ばれていた。
探索チームも魔書というアイテムで、バフをかけたり魔法じみた力を発揮したりしてますが、時には犠牲者も出るとか。
……最も、迷宮内で負った損害は、外に出ると治るという不可思議な環境で、頭部さえ確保できていれば死者も蘇るほど。
故に、探索チームも危険と隣り合わせながら、報酬ももらえるということでバイト気分で臨む人も多いそうで。
いやぁ、いいなぁ。正直楽しそうだなぁって思いました。学校生活の中で、リアルにファンタジー体験出来て報酬ももらえるとか羨ましい。
主人公の守砂は、序盤はそのことを知らない一般生徒でしたが。
手違いから迷宮に迷い込んでしまい、魔書に適合した為探索チームに勧誘されて。
いくつかの条件を付けた上で、守砂も了承し。チームを結成して探索していくわけです。
素人ゆえに、最初は失敗をしたりしていましたけど。
目標は明確なうえに、守砂が適合した魔書の能力がオートマッピングや敵探知。さらには、未踏地では周囲の能力が強化されるバフ能力まであって。
ゲーム的だけど、他の魔書の能力が身体能力強化とか攻撃・防御手段が多そうなのに、探知・支援型の能力はかなり反則的なのでは……。
報酬を求めて競い合う環境であるため、助け合いの精神が薄い探索委員。
迷宮の特性もあって、取り残された班員に救助を出せない事も多いとかで。
「じゃあ、僕の隊がやります」と。報酬よりも、探検に主体を置いているから、なんて利己的な判断もありましたけど。
魔本の能力的にも適役ですよね……。地図を作って情報共有したりもして、その結果ちょっとした騒動が起きたりもしてましたけど。
相手に利益を与えつつ、自分の目的も果たしていたのでお見事。裏でこそこそするんじゃなく、自分も命かけていたので、不快でもなかったですし、むしろ痛快だった。
勇骨を読んでいたので、期待してましたが楽しい新作でした。続いてくれるとうれしいなぁ。
あと、挿絵も好みの雰囲気で良かったですねー。
別チームの人だけど思兼先輩が特に好き。表紙のエスキュナーちゃんも中々。
歳上幼馴染な天寺先輩は……守砂関連だと箍外れちゃうとこ含めて面白い人だと思いました。
守砂、本命は早めに決めた方がいいぞ……。天寺先輩以外を選んだ場合が怖そうだけど。
「無理に死ぬ必要ないのに」
“今日は、傘は必要ないのに”と言うような、軽い口調で言った。
「いいや、私は死ななければならないよ」
帯文の『「みんながそう言っている」の“みんな”はあなたが選んだ人達だ。』が好き。
いやぁ、しかしキノの旅23巻ですって。ここまで出るラノベも減りましたよねぇ……と言おうかと思いましたが、最近完結したシリーズとかでもっと出てるのもありましたね。
まぁ、それはさておき。今回も、相変わらずな旅人たち(キノとエルメス、シズ一行、師匠たち、フォト)の日常が描かれてます。
一番気に入ったのだと第四話「愚か者は死んでもいい国」。
クーデターを起こした総統によって支配されている独裁国家。しかし、外面は良くしたいので旅人からは良い評価を下されている。
実際、監視網を確かなものとするために技術が発展し、キノとエルメスも満喫してましたしね。
そして、滞在中に総統が新しい政策についてのアンケートを取り始めて……
結末があっけないというか、予想外のオチがつきましたが、全部上手くいくわけじゃないもんなー。こういう、無情なところ好き。
他には、フォトのエピソードである第二話「ピンクの島」。
絵はがきでみた「全てがピンク一色に塗られた島」の写真を撮りに行ったフォト達が島で予想外の光景を見る話。
短いんですが、見え方とか文化の違いが感じられるの好きなんですよね。
虹の色って国によって6色とか7色だったり、太陽の色を日本では赤にするけど海外では白や黄色にするとか。
そう言う系統の表現見るの楽しいです。……まぁ、あの島の住人たちの現状とソウが評したRGBを見ると、皮肉も聞いてて別種の楽しみもあるんですが。
「強い力がないから、何もできない――だから何もしないってのは、なんか違うと思うんだよ」
BOOK☆WALKER読み放題にて読了。
シリーズの区切りとなる巻。リコルドリクと記録者を巡る対立。
巻き込まれた妹や友人を救うべく、玲音は奔走していましたが……
記録者である玲音は捕まり、リコルドリクは敵の掌中にあって。
絶体絶命の状況で、将軍相手に交渉を提案できるあたり、結構肝が太いというか。勝負勘は強い方なのかなーという感じ。
出番がないかと思っていた、ネイや法章まで登場してくれたのは嬉しかったですねー。
特に法章。体の問題があるので、そもそも生きているのか不安ではありましたが。
ある裏切り者の残した研究。開発者たちも予想していなかった副作用によって、体調が安定するようになったとかで。
毒も薬も、扱い方次第だよなぁ、という感じがしますね。
……皇帝一派はあまりにも過激で、キャラバンの非戦闘員だろうと幹部だろうと標的にしてましたが。劇物だからって遠ざけても解決しない辺りが、実に厄介です。
迷宮神群がらみの案件に、星詠みエスハはもちろん満月のフェルディナンが関与してこないわけもなく。
思った以上に関わってたな、というか。「事態をかき回す問題児」扱いされてるのも、むべなるかな。
玲音は、本人も自覚してますが甘い部分が多くて。
それでも結果的に良い方向に繋がっているから、実に主人公していますよね。
これで友人相手にあまりにもあけっぴろげに欲望を晒す癖さえなければ、もっとモテてた気もする。……近くにクレアが居る以上無理か。
玲音の真意を聞いて、パントマイム(亜里亜談)してたクレアは可愛かったです。なかなかのポンコツ娘で、癒し枠な感じがして好き。
皇帝一派が大分優勢な雰囲気だったので、目次で「終章」が乗っていた時、どう収拾付けるのかと思いましたが。
宝石箱の封印を解いた皓月が報いを受けたり、大凡収まるべきところに収まった感じでしょうか。色々と、危ういものも残ってそうでしたけど。
最後に明かされたくろとらくん真実にびっくりした。そう言えば確かに出てなかったけど!!
「……よし。クレアは俺と一緒に来てくれ」
BOOK☆WALKER読み放題にて読了。
ブロスペクト一派は着実に集結しており、キャラバンの方は方針が定まらない状態。
夢路が交渉に立っていましたが……かつての仇敵だったということもあってか、決裂。選択肢は「降伏」か「戦闘開始」だけとか、皇帝もおっかないこと言うね。
……だからこそ、キャラバンと敵対していたんだろうという納得がある。
まぁ、キャラバンも内部で争いの在る不安定な船ではありますけど、ブロスペクト一派よりはマシに見えてくるから不思議。
というか皇帝の関わっていた迷宮神群「船乗りリュティエ」。どんな航路を辿ればそんな能力を発現するんだってくらいの爆弾でしたね……
そのまま皇帝たちに身柄を押さえられそうになった玲音たちでしたが。
星詠みエスハが与えた加護が、今回は上手く作用して脱出に成功。
妹が覚醒して敵に回っている事や、玲音に宿っているのが「記録者」という状況を左右する石であるために、逃げる選択肢はなく。
状況を動かすために、色々と行動を開始してはいるんですが。
敵側に、殺傷を躊躇わない「将軍」とかが居る関係で、常にハラハラしてました。
玲音の妹が「女王」であるために、命は保証されるだろうけど。他にどれだけ被害が出るかは読めない状況が続くので。
羽矢田さんは中間管理職感があって、なんというかご愁傷様みたいな気分にもなる。
懐かしいキャラシリーズで真砂の名前が出たり、由姫や冬華が出てきたりして、新規ではいった人はキャラが多くて混乱しそうだなーとかちょっと思った。
『パラサイトムーン』読んでると、ある程度把握できてるのでその辺りは楽なんですが。
前シリーズ併せて好きな世界観なので読んでほしいですね。うん。両方読めば解決!!(力技)。
巻末にある「くろとらくんのQ&Aコーナー」といい、本編でギャラの為に玲音連れて行こうとしたり、くろとらくんがキャラ立ってて好きだなー。
ちゃか
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