気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

★5

月の白さを知りてまどろむ3

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「ずいぶん待たせた」

ただ一人の客を待って、彼女はこの館にいた。

恋情を捧ぐ男のために。揺らぐ不安を抱えて。

「愛している」

 

シリーズ完結巻。第五譚と後日譚を収録。

テセド・ザラスと対峙した際に残されたサァリの血。それを彼らは回収し……さらに服用することによって、自己の兵隊の強化を図ろうとして。

そもそもそうやって活用する技術があるあたり、外洋国の悪辣さというのが光って見えましたねぇ……。

更には懲りれば良いもののアイリーデにまで踏み込んで、より多くを望もうという傲慢さを見せられて腹立たしいものはありました。

 

様々な思惑から大陸各地が騒がしくなってる中、アイリーデもその喧噪から無関係ではいられず。

……むしろ外洋国関係者や、流浪の神性と封じられた蛇とかの思惑も蠢いている以上、中心にあると言っても過言ではないんですけども。

 

それはそれとして、シシュの中にある思いもここにきて明確なものとなったというか。今までも抱いていたそれを、ついにシシュはサァリに開示しようとするわけですが。

結婚の申し込みの為に立会人を設けようとしたりだとか考えるあたり、相変わらずのズレっぷり。どこまでも真面目で堅物な彼だからこその対応で、ちょっとクスっとはしちゃいましたけども。

堅物すぎて彼女を守るためにいるから「死なないで」の返事に、まっすぐ応えてしまうあたりがもう……。

ちょっと拗れかけてましたが、敵がハッキリと動きを見せたことによって決断の時が早まったのは、良かったのやら悪かったのやら。

 

出来れば2人のペースで進んで行って欲しかったものですが、ままなりませんねぇ。

サァリがただ一人の客を定めてからもトラブルが絶えませんでしたし。状況は落ち着かないものでしだけど、客取りのシーンのやり取りとか、とても印象深くて好きなんですよねぇ。サァリ視点の「私の恋のすべて」とか加筆シーンでしたよね? とても良かった。

 

兄神と対峙することになった場面で、最後の一撃になったのがあの人物が遺したものであったこととか、味わい深くて好き。

あとは先見の巫の結末とかも良かったですよね……。これはこれで人の業なんでしょうけど、だからこそシシュとサァリの交流が見られたのを思うと、私は……否定できないんだよなぁ。

 

後日譚は完全書下ろしエピソード。

シシュは自分のいる場所をサァリの隣と定めて、生活拠点をアイリーデに移すことを決めて。それでも、兄とのつながりであるし地位があった方が楽な時もある、ということで王弟としての立場はそのままにすることが決まって。

実際、低いながらも王位継承権を持つ人がシシュとのつながりを求めてアイリーデにやってきたり、ちょっかいを掛けてくる輩が居たりしましたが。

本編で戦った敵に比べれば小物だったので安心して読めましたねぇ。サァリが可愛くてとても良い後日譚でした。

 

WEBにはこれより先のエピソードもあるにはあるんですが、ちょっと毛色が違うエピソードも入ってくるので、書籍版ハッピーエンドやったー、で良い気がしますよ、はい。

ちなみにWEB版に手を出すのであれば、2巻の「章外:祝福」とか読み返すと味が深くなるとは思います。

 

今回SSがどこも気になったので、珍しく3冊買いをしてしまったわけですが。

アニメイト&書泉特典「誕生祝い」は、実にシシュらしくて笑えました。街の人も彼の理解度上がっていってるの良いなぁ。十年修行したいじゃないのよ。

ゲーマーズ特典「初恋」は、鉄刃の勘違い完結編。いつでも勘違いしてる鉄刃さん、面白エピソードとして大好きだったんですけど、彼もまたアイリーデの人間だったというか。良く見てるなぁ、と思いました。こういうの、当事者ほど気付きにくいと言いますしホラ……。まぁシシュだから、というのもあるでしょうけどね。

メロブ特典『朝寝』は……うん、サァリもまたアイリーデの女だなぁというか。とても「夜の女」っぽくて好きです。

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?18

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「実体験のない僕が言っても説得力がないとは思うけれど、きっとそれに相応しい瞬間というものが来るよ。そのとき、気後れしなければいい。キミなら大丈夫だ」

 

目的としていた魔王フォルネウスは死んでしまった。

けれど彼の刻印を継いだ《雷甲》のフルフルと、彼女が大切にしている聖騎士長のミーカを確保することには成功したシャックス達。

そして2人を連れて彼らの王である、ザガンの下へと連れて行って。フルフルがザガンから提示された2つの選択肢に納得せず、別の道を望んだのは未熟でもなるほど魔王だなぁって思ってよかったです。

 

まぁ最長老と呼ばれたマルコシアスが暗躍している状況では、かつての魔王候補といえど安心できる状況ではなく、このままでは直ぐに殺されて刻印を奪われるとザガンは予想していましたが。

その欲深さを認めて、彼の下で学ぶことを許してくれたのは良かったですね。シャックス達を信頼しているけれど、それはそれ自分の目でも確認しようという姿勢も良し。

 

ザガンも今はいろいろとやるべき事を抱えている状況で、そのタスクをいくつかは部下に任せたりしていたわけですけど。

魔王や魔王候補と接点を持つ交渉は、フォルネウスの一件のように会うまでは上手くいったとして、マルコシアス陣営の妨害が入ることもあって。上手くいったりいかなかったり。

流石に相手もさるもの、というか。排除するべきと認めた相手にしっかり戦力差し向けてくるの、厄介過ぎるな……。

 

べへモスとレヴィアもまたそうやって人探しをしていたコンビであり……彼らが探していたのは魔王《黄金卿》フェネクス。生贄魔術の祖と言われる人物であり、口ぶりは妙に小物臭いけれど、アスモデウスから今の魔王武闘派トップスリーに挙げられるほどの人物でもあって。

長い年月をある目的の為に流離っているような、変わり者であったようですけど。それがザガンに接触した結果……フェネクスは自分の運命を変えうる可能性を見たわけですから、ザガンの研鑽の成果が出ていて良かったですねぇ。

 

一方マルコシアス陣営も着実に動いていて。

ザガンの城に直接乗り込んだり、他の魔王に書簡を送ったりして、今の魔王を集めたいと言い始めたの怪しいなんてもんじゃないですよねぇ。他にもいろいろと実験してるみたいでしたし。

アスモデウスもまたマルコシアスが動いている隙に、色々と準備を整えてるみたいですし。最後のザガンとネフィのシーンは良かったですけど、上下巻の上巻扱いみたいですからこの後どんな展開になるのか興味津々です。

……それはそれとして、今回ザガンが某人物を「最も恐れるべき存在になった」と評していたのに、その時その人物が抱えていた「やる事」がアレなのは……うん、丸くなったというかなんというか。笑ってしまった。

9S〈ナインエス〉true side XIII

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「私はもっと話し合いたかった。理解し合いたかった」

(略)

「何を言う。充分に話し合ったではないか。科学という正確無比なやりとりは、万の言葉より有意義なものだ」

 

ついにシリーズの決着を迎える最終13巻。好きなシリーズの完結はどうしたって喜ばしくも悲しいものですが。刊行の間が空いていたので、このシリーズに関しては見届けられた嬉しさの方が勝ったかなぁ。

 

閑話休題。鳴神尊の暗殺者は、当主の命令に逆らえない。

そんな悪縁すらも絶って闘真の裏人格は自由に動けるようになったわけですが。彼は、完全に世界の外へ踏み出してしまった峰島勇次郎が自分を介してこちらに干渉していることにも気付いて。人格切り替えスイッチである鳴神尊を破壊しようとしたわけですが。

裏人格もまた闘真であるわけで……彼との別れを嫌った由宇に止められることに。

 

岸田博士が峰島勇次郎と再会して、「実の親よりも親らしい」とか言われてましたが。

どの口でほざくんだこの野郎、という気持ちと今更親らしく振舞われても困惑するよなぁって気持ちが同時に沸きました。

由宇がグラキエスを滅ぼすだろうと確信し、闘真の行動を由宇が止めたことに感謝して、今自分がやりたい実験にウキウキ乗り出すのどこまでもマッドサイエンティストだなぁって感じがして、最終巻までブレなかったところは評価しても良い。

 

闘真の認識によって峰島勇次郎の干渉度合いが濃くなるという事実を由宇達も認めることになって。そこに当主である不坐を排除した状態で行われた真目家会議の結果を携えた麻耶の通信が繋がるのは良かったですね。

最悪の場合、殺すことも辞さないという覚悟を示した上で……闘真の存在が逆にこちらの手を峰島勇次郎に届かせてくれるかもしれないから、一番守らなくてはならないと結論を出したのも熱かった。

 

由宇と2人きりになった状態で闘真が真っ直ぐに「大好きだ」と伝えて、由宇もそれに応えているのはニヤニヤしてしまった。決別してからの復縁はめでたい。

その直前の会話で不坐から「お前の恋人はおっかないな」と、不坐が2人の関係を「恋人」と表現しているのも、たった一文ではあるんですが好きな描写でした。おっかないところもあるけど、闘真の前では可愛いんですよ、その子。

 

由宇が考えていたグラキエス対策に必要な最後のピースを、予期せず闘真が見つけてきたりしたのは良かった。スヴェトラーナとクレールの存在も、要所で光ってましたし。

マモンもまた要所で活躍してくれたりしてましたし。最終決戦に臨むにあたっては敢えて情報を拡散してみせる必要もあったりで、サブキャラ達にも役割があったのは結構好きな要素でしたね。

 

勇次郎と由宇がついに再会を果たして……科学の信奉者であった勇次郎に対して、もっと話し合いたかったといったシーンの地の文が良かったですね。闘真と会って、人と人の綱がりの大事さを知り人になれた、という描写がとても良い。

グラキエス対策、峰島勇次郎との決着。闘真の脳の黒点……もう一人の自分とのやりとり。そういった、これまでに描かれていた様々な出来事に決着がついて良く流れは熱く、一気に読んじゃいました。良い完結巻だった。

9S〈ナインエス〉true side XII

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「……伊達」

「なんだ?」

「決めたぞ。私は私の枷をとる」

 

11巻が20123月刊行だったらしいので、実に12年ぶりに刊行されたシリーズ最新刊。最終巻となる13巻と同時発売してくれたのは、本当にありがたかったですねぇ。

峰島勇次郎、元は峰島勇という名前だったけれど……由宇の才能を認め自分の名前を与え、自分は2番手であるという表れで「勇次郎」に改名したと。

勇次郎は基礎知識とかを踏まえず独自のルートで答えを導く異才であった。そして由宇は、幼少期から秀でており……一般的な文法に則って峰島勇次郎の技術を説明することが出来た、と。

 

まぁその理論を一から十まで説明しようとする部分で尖ってるんですが。より分かりやすく解説できる横田健一氏の才能についても想いを馳せてしまった。やっぱり有能すぎるから1巻で消されたのでは……?

岸田博士が峰島勇次郎のゼロファイルを流した……パンドラの箱を開けた、この物語の始まりを告げた人物であるということが11巻で明かされたわけですが。

伊達に対して、由宇を信じ続けて毒のカプセルなんて必要ないと言い続けた善性の人であることも間違いがなくて。

その岸田博士が不在の時に彼の存在を通じて、伊達と由宇の関係が少し変化したの良かったですねぇ。

 

伊達は彼女を信じて今回は毒カプセルを注射しなかった。そして伊達の決断を見た由宇は、自らに課していた枷を外すことを告げた。

すなわち遺産技術、という彼女自身が抱え続けた武器を開放することを。かなり良い展開でしたねぇ。シリーズの集大成というか、最終局面だなぁと思わせる熱量があった。

 

マモンと八代が救助されたシーン、ヘリで吊るされることになったシーン微笑ましくて好き。……グラキエスに襲われてる状況なのであんまりほのぼのできる状況でもなかったですけど。

あとは僻地に配置されて燻りつつも認められるためにイワンの蛮行も見逃してきた司令官であるゴーゴリが、いろんな思いをのみ込んで「誇り高く戦い誇り高く死ね」と部下に命じたシーンは、彼なりの意地を感じて良かった。

 

規模の大きな作戦になるので、伊達が交渉によって勝ち取った「海星の恩赦」によって、動かせる兵隊が増えたのはありがたかったですねぇ。

合法で動けるようになったことでロシアの兵も動かせてましたけど。人手があるに越したことはないでしょうし。

遺産技術を開放しただけあって防刃スーツとか、市販の防犯ブザーの音データを書き換えてグラキエス対策にしたり、由宇が有能すぎる。由宇の的確過ぎる分析による指揮、凄まじかったですね……

 

ただ、善性の少女であるため犠牲を許容する作戦の指揮を任せるのは……というのを、かつてネズミを撃った八代が提案するの良いですねぇ。アドバンスLCの蓮杖とかが後半の犠牲が出るタイミングの指揮を請け負ってくれたのもありがたかった。良い人材が揃ってるな。まぁ優秀な彼らをして、由宇の指揮を模倣するのはかなりの難行だったみたいですが……。

 

さてそんな風に由宇やADEM陣営が奮闘している中で、闘真が何をしていたのかと思えば……。

洞窟のような場所で目覚め、峰島勇次郎と対面することになってるんだから、彼は彼でどんな運命の下に生まれてるんだ……って感じのイベントと鉢合わせてましたが。

世界の外側を覗きすぎたせいで、境界線を越えてしまったためにほとんどの人から認識できない状態になっているとか、マッドサイエンティストの極致ってすごいと思います。

実際に対面していたというよりは、夢のような世界で一瞬チャンネルがあった結果のようでしたけど。勇次郎と会った直後に記憶を取り戻したスヴェトラーナと出会ってるわけで、悪運尽きることなしって感じ。

 

終盤、麻耶や勝司たちが真目家と峰島勇次郎の繋がりだったり、峰島勇次郎の目的だった李……グラキエスで再現された脳についての考察だったりをして、情報を整理してくれたのはありがたかったですねぇ。

同時に、物語が終わりに向かっていっているのを感じてちょっと寂しくもありましたが。

異修羅Ⅵ 栄光簒奪者

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「諦めないぞ……ここで諦めたら、私は私でなくなってしまう。私も、諦めたりはしないぞ。アルス。貴様に追いつくのだ。そのためにやってきたのだ……!」

 

おぞましきトロアは、六合上覧で敗退した宿敵星馳せアルスが亡き父から奪ったヒレンジンケンの光の魔剣を回収を最後の仕事としてワイテへ帰還しようとしていた。

しかしその行いは、宝を求める冒険者アルスを刺激することになり……因縁のアルスVSトロアという、六合上覧外での修羅同士の戦いが勃発することになるわけです。

 

死んでいるハズのアルスが動いたカラクリは、彼が奪ってきた宝の中にあったチックラロックの永久機械の作用だった。肉体の喪失部分を機械に置き換えて代用してくれるが……使った時点で以前とは同じ生命体として在ることはできず、意志もドンドン失われていく。

製作理念としては肉体を機械で補って生きていくためのものだったんでしょうが、制御しきれず利用者すら蝕むならそれは欠陥品だよ……。

しかし使った宝が欠陥品だったとしても。それを扱うのが星馳せアルスとなればその脅威は計り知れないわけですよ。

 

癖の強い修羅が集うとなれば黄都の周囲で騒動が起きることは避けられず……ゆえにこそ、二十九官もまたそれに備えていた。

相手の弱みに付け込んで蹴落としている、同じ組織の人間だけど完全に背中を預けられるような信頼のない内ゲバ好きの集いという側面ばかり強く見えていましたが。

黄都に対してその力を使う者に対して、魔王自称者認定をして、一丸となって戦いに望んでいたのは驚きましたし格好良かったですね。本物の魔王時代から続く戦時体制、というだけの事はある。

 

一方そんなアルスと因縁のあるハルゲントは……冬のルクノカという脅威を擁立し黄都に危機を招いた狂人と評され、アルスが敗れたことによる喪失感もあって、長期療養を命じられて病院に押し込まれることに。

そこで柳の剣のソウジロウと出会って、「恐怖」についての話だったりをしているの、予期せぬ出会いでしたけど不思議とかみ合っている感じがして面白かったですね。

 

しかしまぁ宝を駆使して暴れまわるアルス、本当に恐ろしかったですね。

勇者候補たちへ協力要請がでてシャルクやツーが駆けつけてくれたり、二十九官や黄都の一兵卒だって奮闘して……それでも被害が積み重なっていく。

……こんな恐ろしいアルスを打ち倒すルクノカを擁立してきたら、そりゃハルゲントの狂人評価は順当だろうな……みたいな気持ちも沸きましたが。

 

でも、ハルゲントの狂気って凡人の無謀の枠に収まっているというか。それで犠牲になった部下たちからすればたまったもんじゃないでしょうけど。6巻内で、本物の魔王が現れる前に最悪の魔王と称されていた色彩のイジックの暴虐を見せられると、狂気度合いで言うと常人よりでしょとも思う。

凡人だけど夢に向かって足を止めることをしなかった。自分が「余分」な存在であることを自覚した上で足掻き続けた。多くの人には愚かと言われるだろうけど、その在り方を好ましく思った冒険者が居て……その絆があったからこそ、今回の終わりを迎えることになったのが切なくて悲しい。

至るべき結末だった、感もありますが。第二部完結に相応しい激闘であったと思います。

Unnamed Memory6

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「だからこそ俺が手を伸ばす

 俺が立ち止まっていては永遠にあいつに届かない」

 

内部に入り込んでいたミラリス。

その目的は宝物庫に収められた宝玉であったわけですが。

ティナーシャに捕捉された状況でそんな強奪劇が成功するはずもなく。それでも魂すら魔力に変換して抗おうとしたわけですが……失敗。

ただ、ミラリスが最後にティナーシャへ「女王候補者さま」だったり、「妄執との再会」だったりと彼女が引っ掛かりを覚える発言を残していったわけです。

 

その宝玉はオスカーの亡き母が持ち込んできたものだそうですが、オスカーの父である国王の口は重く。

ティナーシャは気になるから心当たりにあたることも考慮してましたが……ルクレツィア以上に厄介だと称する相手なために、即行動というわけにもいかず。

色々と刺激されて迷いが生じているようなティナーシャ相手に「好かれている自覚を持て」と宣言して、アピールしていくんだからオスカーが強いなぁ。

 

31話のティナーシャファッションショー、実に良いですよね!

ティナーシャ自身が頼んでいたものは彼女らしいシンプルさで動きやすさも考慮してそうなのが性格でますよね。

そのあとのシルヴィア、三パターンも選んでるの本気すぎて笑う。ティナーシャの目が泳いでるのも笑えますけど。シルヴィアセレクションだと見開き左のページに載っている奴が特に好きです。

オスカーが選ぶのは式典用なのもあって豪奢でティナーシャに似合ってるのが好き。

 

その次の話で、解呪シーンが見られたのも嬉しいポイント。初出の詠唱では……?

強力な祝福を掛けられていたオスカーに対し、同じ個所に呪いをぶつけることで相殺するという解決方法を見出してるのは凄い。

実際、それを聞いてから詠唱を聞くと呪ってそうだもんな……。

順調に解呪が出来たかと思ったタイミングで、ティナーシャが探し求めていた過去が追い付いてくるんだから悪魔的というか。

オスカーもこれまでの経験でより逞しくなっていて、必要な仕事を片付けた後ルクレツィアに会いに行こうとしているあたり、行動力あって良いですよね。

凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ3

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「……味山さま、なぜアレタ・アシュフィールドや、貴崎凛。綺羅星のように輝く彼女達が貴方に執着し、時に魔道のか、お分かりですか?」

(略)

「貴方が、他人を必要としない人間だからです」

 

プロローグが、探索者組合がダンジョンでの配信を解禁したことを受けて、アルファチームも配信を行うことにして。

怪物種の中では珍しい食事を怪物種のみに絞っている蛇・マザーグースを、別の怪物種オウサマガエルから守る、という一風変わった任務で。

 

味山がカメラ役なこともあって、アレタが普段と違う表情を見せることにコメントで愉快な反応がついていたのは笑えた。怪物種に飲み込まれて腹の中で暴れて脱出できる探索者がどれくらいいるというのか。

後のシーンでとある人物が、遺物を使って味山の情報を抜き出そうとしてましたが、そこでも「凡人」認定されていましたが。凡人とは……?

技能認定が能力の上限が定まっている、と記されていてそういう分け方であれば確かに彼は「超人」ならざる「凡人」なんでしょうけど。

 

雨霧さんの分析のように、味山の非凡なところな単純なスペックに現れない精神性だとかに現れていますよね……。

神秘を食べる度に夢の世界で元となった神秘の残滓と会話したりすることになってますが。初対面なら初対面なりの挨拶がある、と仕切り直し入れたりしてるの彼なりの哲学何でしょうけど、切り替えがハッキリしすぎてていっそ怖い。

 

味山、男連中とバカ騒ぎしたり綺麗な女性に鼻の下伸ばしたり、割と年頃の男っぽい顔もありますけど。戦闘時とか覚悟決まった時の彼は、また違う顔みせてくれるんですよねぇ。そういう所が良いと思っていますが、とは言え最後の挿絵はちょっと予想外の顔すぎるんだよなぁ。

耳の部位保持者である彼に目を付けた別の部位保持者が動き始めて。途中、衝撃的なページが挟まって、非日常へと踏み出すことになりましたが……それにしたって、大騒ぎ過ぎてこの後の展開が読めません。4巻の発売も決定したようですし、続きを楽しみにしてます。


Gift 下

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「できません。僕も、彼女も、いつかなんてものを信じていない。そんな不安定で不確実なものはいらないんです。彼女の所有権を主張するような真似はしません」

 人形は、ひとりで作ればいい。この世の果てであっても。世界が終わる時が来ても、たったひとりになっても作ればいい。けれど。

「けど、ひとりで、誰も知らないところで、泣かせるつもりはないんです」

 

人形師平田開闢のアトリエと、カメラマン宮本晴久のスタジオは隣り合っていて、開闢の指には晴久から贈られた指輪が光っている。

相変わらずそれぞれの仕事には真剣で、変わっていない部分もありますけれど。2人で過ごす中で、変化している部分もあるなと感じられるのが好き。

晴久がアシスタントとかを伴った仕事をするようになっても、撮影の瞬間には沈黙を守らせる流れとか。

 

そうやって撮影で晴久が出かけている間に、開闢は真木のエッセイのための対談を申し込まれて。ファミレスで話をすることになっていたわけですが。

インタビューの会話本当に良かったんですよね。あそこも好きです。「貴方は貴方以外になりたかったですか?」と聞かれてるところとか。晴久も開闢も軸がしっかりしてるキャラなので、恐らくはそれを指して真木は「変わらない人」と評していましたが。

その上で、開闢のとある振る舞いから「女の子は変わり続けるな」と口にするのとか、良いですよねぇ。

 

他には、真木の担当さんが奮闘している、BGM付の小説という企画について。小説家真木遊成の傲慢さだとかが見えるエピソード。音楽家もまた癖の強いキャラが出てきたなぁって感じでしたが。

恋愛小説家真木の企画なのに、小説は読めないからと聞かずに別れの曲を出してこられては真木もあらぶるでしょう。才能の尖った人で出来は良かったみたいですが。

作曲側からすれば、こっちの才能に頼って先に曲を出させたのにクレームつけてきてるように見える(実際形式はそう)から険悪になるのも無理はないというか。

最終的に互いの事を知って、見えていなかったものも見て、謝罪の言葉を口にできたのは偉い。真木、才能はあるけれど、藻掻いて暴れてその上でつかみ取っているような感じがあるから、彼の葛藤が良く見える一連のエピソードは良いけど重くて痛かったですね……。

 

エクストラエピソード「Gold Fish」は下巻で初登場したセージくんが、親の決めた婚約者と交流する話。彼が果たして誰だったのか、というのは後のエピソードで描かれるんですが。繋がっていくのが良いですねぇ。

晴久と開闢、互いに互いを好き合っている2人の話が本当に好きです。約束が苦手な開闢と晴久が約束を交わして……その後に、彼女の心情が乱れて失踪。

探すために手段を選ばなかった晴久が、真木に連絡するのが最後になったため「殴らせろ」と友情から憤るシーンとかも良かった。

Gift 上

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「なくなったら困るでしょう」

(略)

「だって、君はそれを書くんだから」

まるで真理のように。

「心を痛めて傷つき涙する、そういう物体を書かなくてはいけないんだから、そおれをなくしてしまったら、ねぇ? 困るでしょ。知りませんけど」

 

紅玉いづき先生が、アマチュア時代に書き続けたシリーズ『Gift』。

同人誌版は即完売して、クラウドファンディングプロジェクトにて文庫版が発行されました。……私は、その後若干数だけBoothで発売されたものを運よく入手できただけの人ですが。良い物語を読むことが出来ました。

 

気難し屋と言われる人形界のプリンセスこと、人形師の二代目平田開闢。

現役女子高生で人形作りの腕があり、当人も容姿が整っているとあって、取材に来ても彼女の作品ではなく、彼女自身にカメラを向けてくることに腹が立っていたとか。

そんな中でカメラマンの宮本晴久は、ほぼ人形にしか興味が無かったために、彼女のアトリエに何度か出入りする機会を得ることが出来た。

 

噛み合っているような、すれ違っているような、不思議な距離感で2人は交流していって……その過程で、お互いの欠けていた部分を埋め合うことができるようになった。

自分の得意分野については自負があるけれど、その他の部分では不器用な部分が光るキャラ達がそれでも傍に居ようとする光景が、綺麗だったなと思います。

そんな2人のエピソードから始まって、その後は断片的に未来と過去とが描かれていきますね。

例えば、ほとんど接点がなかったけれど同じ学校に通っていた少女・芹沢から見た、開闢の話。

あるいは宮本の学生時代からの友人であり恋愛小説家として名を知られている真木遊成。

彼と少しだけ縁のあった女性の話や、実家を捨てた彼と唯一繋がっている妹の話。

開闢自身の過去の話。開闢と晴久の交流の話。いろんな物語が記されているんですが。

 

紅玉先生の言葉遣いが好きなんですよねぇ。刺さる描写が多い。

人形師平田開闢が人形を作って求めたもの。カメラマン宮本晴久が信仰するもの。笠井さんとの別れ際に真木が遺した言葉だとか。「とても純粋な人ですね」という、指摘だとか。代名詞なしに話が通じた時に感じた、繋がりだとか。

晴久が開闢に手を伸ばしたきっかけが、彼女から受けた優しさだったというのが好きだし。そんな彼の何気ない言葉を学生時代の真木は優しいと評しているの、人間の多様さというか。角度違うといろんな表情があるよなぁ、という感じで好きです。

不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚2

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「一緒に居る時は助けるし、離れていても力になる。相手を尊重する。理解に努める。それが及ばなくても、粗末には扱わない。――そういうこと全部を無条件で当たり前だと思ってる。俺にとって花乃と一妃はそういう相手だ」

 

床辻の守護をする地柱の一角になった蒼汰くん。

彼の隣には相変わらず異郷の住人である一妃と、以前の事件の影響で首だけになってしまった妹・花乃の姿があって。

彼は半分人間としての側面を残していることや、まだ就任直後ということもあって地柱としての職務については試行錯誤の毎日みたいです。

 

一部とはいえ土地神みたいな役割を担うことになったわけだから、監徒から市内の高校へ転校してくれと頼まれることになって。監徒関係者が多いだけなら驚かなかったのに、先輩地柱の墨染雨との出会いまであったのは驚きましたね。

先輩地柱達は、蒼汰みたいな半分人間みたいな状態ではなくしっかり「地柱」という存在を全うして長くを生きている方々で……。

 

知恵袋的に頼りになる場面もあったんですけど、やっぱり一妃みたいに人とは違う価値観を持っているな、みたいなシーンもあってちょっとゾクゾクしましたね。

人と似ていて、けれども違う。異種が異種であることが示されるシーン、結構好きなんですよねぇ。

多くの禁忌がある床辻ですが。「東西南北を結ぶ道を歩ききってはならない」という禁忌が破られないようにするために、信号が多めに配置されている話だとか。国に対して「そんなつい最近できたようなもの」とこぼしたりだとか。

違う常識で生きてる方々なんだよなぁ。それでも一妃みたいな変わり者を除けば、異郷の人物よりも、一般的な人間に近くて……だからこそ、人と交流できてしまうし、それによって揺さぶられることすらあるというのが危うさだとは改めて思いましたが。

 

地柱を止めるには死ぬしかない、という意味で蒼汰くんは既に不可逆な変化を迎えた主人公なんですよね。

それを受け入れて、その状態で出来ることを模索しているわけです。目下、一妃から妹の体を取り戻したいと思っているみたいですが。一妃と妹本人は現状を良しとしていて、不利な状況。それでも相手を否定するのではなく、自分はこうしたいという意見を発し続けていたわけで。

そんな彼だからこそ、あの最後になったのは納得です。彼が自分を貫くのであれば、同様に個人の意見を貫こうとする人物を否定するのは、一貫してないことになりますしね……。

不可逆な部分が、悲しくないと言ったら嘘になりますが。異種を交えた上で立派に家族をしていた3人の導いた結末が、良いものであったと私は思います。

 


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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