気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

★5

Unnamed MemoryⅢ 永遠を誓いし果て

ico_grade6_5

「王よ、私は貴方の魔女」

(略)

「そして貴方は私の王。魔女が貴方に、永遠に変わらぬ愛情を捧げましょう」

                                                                                                                                

まず最初に言わせてください。

最っ高でした!!!

当ブログでも、オススメ記事書くたびにその名前を出している位のイチオシ作品なんですが。期待値を軽く超えてくれて、もう感謝しかない。
都内で流通開始した日にゲットしに赴いたのですが、感想書いたネタバレ満載になったので、公式発売日をまってました。未読の方は閲覧注意です。
 

というわけで3巻ですよ。

Unnamed Memory』は大別してAct.1Act.2からなりますが、Act.1の終着点が描かれます。WEBで初めて見た時、衝撃を受けたのを今でも覚えていますね……

今回も冒頭の1章まるまる書き下ろしで、あちこち加筆されていてWEB読んでいても楽しめる構成。

 

特に後半。呼ばれぬ魔女レオノーラの事とか、戦いの情景とかがボリュームアップしていて、熱かったです。

いや、なんだあの隠し玉。気軽に城を呼ぶな。魔女って本当油断ならないですね……怖い。そりゃあ、こんなのが五人もいたら魔女の時代とか言われますわ……

 

ティナーシャがどんどん城に馴染んで、頼み事をされることも増えて。

契約終了まで三か月。四百年を生きた彼女からすれば、あっという間……のはずだった。

けれど、彼女は揺れ迷っていた。そんな中で、城が襲撃される事態になって、オスカーが危機に陥ったりもしてましたが。

それでも助けるべく手を尽くしてくれた、彼女に敬意を表したい。

 

……私人としては、わりと抜けてますけど。

彼女が多数決を取る場面は、WEB時代から特に好きなシーンです。笑った。

そこがギャップになっててまた魅力的というか。完璧すぎるより、ちょっと抜けてるくらいのほうが親しみやすいですよね。

 

そして、その後の挿絵が卑怯でした。あそこで一度死んだ。

というか、あそこに至るまで挿絵がなかったことに最初は気付かなかった位、のめり込んで読んでましたね……

トラヴィスとオーレリアの挿絵も付いてて、今回の挿絵指定、完璧だなって気持ちで読んでました。トラヴィスが思った以上に男前で、同時に胡散臭い……

ついに結婚に至って、感無量でしたね。あの場面でまた死んだ。死に過ぎである。

 

王と魔女が協力して、災いを生む魔女を討ち、ついに結ばれる。

普通の物語だったらここで終わりです。

けれど、『Unnamed Memory』には、まだ続きがあるのです。

文武両道、完璧と言っていい王オスカーの、ただ一つの愚かしさを、それでも後悔がない結末をどうか見て欲しい。

 

巻末には、『Re:ゼロ』の長月達平先生の解説付き。

長月先生の熱が伝わってくる文章で、楽しかったです。

そして、その解説の終わった次のページには、ある広告が掲載されています。

 

えぇ、えぇ。WEB読者すべてが願っていた事でしょう。Act.2の書籍化が、発表されました!!!

後書きと解説まで読んで、「これは……どっちだ……?」と、元々Act.1のみで愉悦するなんて話もあったので、不安になりながら読み進めて。

たった一ページが、とても重くて、深呼吸してから開きましたよ私は。

 

「書籍化決定」の文字を見た時には、冗談じゃなく固まって、「マジか」と零しました。夢かと思った。三度見くらいして、本当だと認識した後くらいから、しばらく動悸が激しくなって大変だった。

刊行時期とかはまだ触れられてなかったので、続報を待て! 状態ですけど、もう、決定したって言う情報だけでしばらく生きていけそう。ありがとうございます……!

◇オマケ1
今回も作者様製作の「書籍情報」サイトにて、短編が読めます。
ネタバレあるので、読了後のお楽しみにどうぞ!!

◇オマケ2
電撃文庫公式Twitterにて「#UnnamedMemory感想」キャンペーンを実施中。
開催期間は9月30日まで。抽選で5名様に、なんと絵皿が当たるとか。
タグ付けてツイートした後に、作者様にDMすると短編URLを送ってもらえます。1~3巻、どの感想でもOKとのことですので、ぜひぜひご参加ください。




ヨルシカ「エルマ」を聴いて

ico_grade6_5

「君の人生になりたい僕の、人生を書きたい」

 

「エルマ」。

「だから僕は音楽を辞めた」と対になるコンセプトアルバム。

前作の初回盤は、音楽を辞めるまでが描かれた青年エイミーが綴った手紙が付き。

今作の初回盤では、手紙を受け取った少女エルマの日記がついています。


楽曲それ自体も魅力的ですが、創作に打ち込んだ二人の軌跡が分かる初回盤も素敵。

こういう作り込まれた世界の背景が分かると、なんかワクワクしますよね。

収録されてる曲、どれも好きですが、テンポとかは「雨とカプチーノ」、「雨晴るる」が好き。

好きなフレーズが多いのは「心に穴が空いた」ですねー。


エルマにとって神様に近かったエイミー。

音楽を、詩歌を、伝えあった師匠と弟子みたいなもの。

……決して、それだけではないんですけどね。

芸術に真摯であった二人の関係を、こんな陳腐な台詞で纏めたくはない。

とは言えど、悲しいかな、語彙力の問題で上手い言葉が出てこない。

 

姿を消したエイミー。

彼の手紙を受け取ったエルマは、同じ旅路を辿る。

「一年だ。この一年が僕の一生だ」と綴った、彼の人生を。

インタビューでも手紙でも、オスカー・ワイルドの「人生は芸術を模倣する」と言う言葉が引用されてますが。

「模倣される側」と「模倣する側」の話でもあるとか。

 

彼がいなくなり、どうしようもなく記憶はこぼれ落ちていく。

薄れていくそれらを逃すことができなかった。だから「日記を付けなければいけな」かった。

強迫観念に突き動かされていた。

足跡をたどり、日記をつけ、詩を記す。

青年の影を追う旅の終盤、日記が日付と一言二言だけになってきた辺り、このまま彼女も擦り切れてしまうのだろうか、と不安を覚えた。

「音楽を辞めた」青年と、そこまで同じ道を進むのだろうか、と。

 

どんな面白い作品にも終わりはあって、どう終わらせるのかは作者次第ですが。

旅路の果て、彼女は日記を書くことを辞めますが、その決断が何ゆえかは、各々で見守って欲しい。

強いて言うならば、「8/27」に記された所からの展開が、パズルのピースがぴたりとはまるような感じがして楽しかったという事くらいですかね。

 

エイミーは「藍二乗」で「君だけが僕の音楽なんだ」とうたった。

そのフレーズをエルマは「心に穴が空いた」で「今ならわかるよ」と言った。

花緑青、神様、夜紛い……聞き覚えのある単語が盛り込まれた詩が、繋がれた歌が、面白くない筈がない。

負け犬の詩とか、なんか気になるフレーズもあったので、他のアルバムも聴き直そう。

エルマ(初回限定盤)
ヨルシカ
Universal Music =music=
2019-08-28

鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々

ico_grade6_5

「随分、遠くまで来たんだな、俺達」

「本当。もう帰れなくなっちゃった」

 

フォロワーさんが激しく推してるのをTwitterで目撃して、物は試しくらいのつもりで読んだんですが……

思いっきり、ぶん殴られたような衝撃を受けましたね。正直、舐めてた。

出来ればネタバレを見ない内に、自分の眼でこの本を手に取って読んでほしい。

「小説家になろう」の方にも掲載はありますが、あちらのあらすじはネタバレ満載なので、本をオススメしたいところです。

 

ある山間の集落、葛野。

鍛冶が盛んな里であるがゆえ、土着神である火の神マヒル様を崇めていて。

その巫女は「いつきひめ」と呼ばれ、巫女守と呼ばれる護衛役を置いていた。

よそ者ながら、その役を務めている甚太が、この物語の主人公です。

巫女守は里の守護者として鬼のような怪異を斬る「鬼斬役」でもあり、彼は日々刀を振るっていた。

 

それは、よそ者であった自分と妹を迎え入れてくれた里に報いるためであったし、養父と幼馴染の少女との約束のためでもありました。

巫女守という役職に誇りはある。同時に鍛冶の里である葛野で、職人としての才能がなかったことに対する劣等感も抱いている。

年相応の青さを感じる場面もありましたが……それでも、甚太には、揺るがぬ芯があって。

 

彼に大きな影響を与えているのが、彼が守るべき巫女。

「いつきひめ」としてあがめられる立場になった、家族として過ごしたこともある少女、白雪。

母もおなじく「いつきひめ」であり…覚悟を持って、その地位を継いだ。

 

甚太と白雪の、不器用すぎる告白と、わかれてしまった道が切なくて苦しかった。

お互いの誇りを思えば、その答えになってしまうだろう、と丁寧に描かれてなお痛かった。

途中から、結末が予想出来て、それでもなおページをまくる手が止まらなかった。

書籍読んだ後、かっとなってPOP書いたりして気持ちを落ち着けようとしましたが、読み終えた後、残った熱が引いていかなくて…思わずWEBの方まで飛びましたね。

 

まだ途中までしか読めてないんですが、尊いやら悲しいやらいろんな感情が沸き上がって「あ、あぁ…」と呟く機械みたいになってました…

今までこの作品を知らなかったことを後悔したし、書籍化を期に読めた事には歓喜しました。すごい物語であると保証します。どうか、ご覧あれ。


Unnamed MemoryⅡ 玉座に無き女王

ico_grade6_5

「親父殿、駆け引きは不要だ。俺は既に決めている。負ける気はないし何かを手放すつもりもない」

 

あぁ、やっぱり好きだなぁ。

ラノベニュースオンライン191月期で3冠を達成したというのも納得というか。

この作品に票を入れてくれた人がたくさんいるんだと思うと、凄い我が事のように嬉しいですね。

 

今回は、冒頭の章から書き下ろしがあり、加筆も多く読み応えがありました。

後はイラスト。帯裏にも出張してきていた、イラストが美麗で。ティナーシャの黒いドレス姿が素敵です。それぞれに武器をもって危うい状況でもあるんですが。

挿絵にイカが登場してるのも笑いました。ラノベで巨大イカの挿絵は流石にはじめて見た気が。

 

書き下ろしの冒頭「魂の呼び声」。

城下町で見つかった怪しい魔術具。それに禁術の気配を感じ取ったティナーシャとオスカーが調査に赴いて。

この二人、能力高くてフットワークも軽いから、こういった騒動もさくっと解決しちゃうのにただただ感心してしまう。悪人はご愁傷様。

いやまぁ、悪巧みしてるところに王剣の持ち主と魔女がくるとか普通想定はしませんが。

 

青き月の魔女、ティナーシャ。

最強と呼ばれた彼女が四百年生きたわけ。秘めていた過去と、探し続けていた者。

「罪」故に、彼女は魔女として行動した。

オスカーの呪いを解いて契約者との柵をなくし、ナークを託し、彼に王族としての責務を説き……ファルサスを去った。

 

その彼女を追う事に躊躇いがないオスカーが、もう格好良くて。

父からの叱責にも覚悟を持って返答する様が。王位を継ぎ、自身の為すべきを為し続ける姿が。

真っ直ぐで、眩しい。ルクレツィアがこぼしていましたが、このタイミングで、オスカーが居てくれて良かった。

騒動が終わってからの「海の青」での二人の交流とかを見ていると本当にそう思います。

 

……真面目に助言とかしていたかと思ったら、媚薬盛りにくるあたり、ルクレツィアも魔女だなぁ、と思う部分もありますけどね!

「緑の蔦」が結構別物になったりもしていましたが、総じて言えるのは、今回も面白かったという事ですね。

 







◇おまけ

今回は販売店でのSS特典はなかったようですが、作者さんが自サイトにて公開しております。

書籍を買って、サイトにアクセスして読もう!
文章は素直に読んで足し算しような!(二十ってあったら、2と10じゃなくて20だよ)

ヨルシカ『だから僕は音楽を辞めた』を聞いて。

ico_grade6_5
「僕らの価値は自明だ 例うならばこれは魂だ」

ヨルシカ、好きなんですよ。
n-bunaさんの作風が好きなのもありますが。
好きすぎて、三月のパンタシアのアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』も買いました。

閑話休題。
もう初回盤が出ると知ったタイミングで、特典とかも気にせず初回盤予約したんですが。
仕事でドタバタしてたのもあって、その後もあまり情報仕入れられてなくて。
合間で公開されたMVを聞いたりして、期待を膨らませるくらいはしてました。
そんな状態で引き取りに行ったもので、最初は箱状なことに驚き……更に開けた後手紙の物量にさらに驚かされました。
え、これ3500円って赤字にならないの? 大丈夫? みたいな気分。

とりあえず、まずは歌詞も手紙も見ずに曲を一巡聞いて。
その後手紙を読みながら、一曲ずつ追いかけていきました。
あと、気になるタイプなので手紙の並び順をメモしてから読んだ。

一人の青年が、音楽を辞めるまで。最後の創作の旅路。
正直最初は、エルマという友人が亡くなりそれで創作意欲を失ってしまったのかと思いました。
瓶詰の手紙を海に投げるように、届くかどうかわからない手紙を書いて詰めているのかと。
途中で違うんだ、とはわかったんですけど、

重かったり、暗かったり、辛さが伝わってくる。
でも、決してそれだけではなくて。
音楽に向き合ってきた青年の情熱が確かに残っていて、波及する。

収録曲「語学は花緑青の窓辺から」の一節「僕らの価値は自明だ 例うならばこれは魂だ」が印象に残ってます。
他の手紙に青年の解説があって、それもまたいいテイストになっていたんですが。
あぁいう製作者の意図に触れられた文章が、好きです。
青年の魂の叫びが、胸に刺さって痛い。
n-bunaさんの実体験が織り交ぜられて、青年が血の通った人のように形作られている。
いや、バイト収入6万で家賃5万6000円、手元に4000円しか残らないって極限生活すぎないか、とは思いました。ガス止まったとか書いてあったし。凄まじい……

手紙と一緒に曲を聞いたあと、気になってしょうがなかったので、公式で紹介してた各種インタビュー記事を読みに行ったりもしました。
エルマが青年の手紙を読む、その追体験をしてほしかったからこういった形式になった、とか。
無事に届いたんだ、とちょっとほっとしたような……届いてしまったのか、みたいな矛盾した気持ちが生じました。

Skream!のインタビューに在った、受け取った相手が祈りととるか、呪いととるか両方の側面がある、というのが的を射てますよね。
確かに、ここまでの情念を注ぎ込まれた手紙は、一種の呪いだし……音楽に対する真摯な祈りでもあると私は感じました。
とことん芸術に向き合っている、というか。
まぁ、青年の気持ちはかなり重いとも思わずには居られませんでしたが。
インタビューのひとつで「妄執の塊みたいなの」とか言われてましたし。
だからこそ、祈りか呪いかという二択が生まれたわけで。
こんな手紙を、そうして伝えられた詩を見せつけた上で、夏に「エルマ」というアルバムを予定しているって言うんだから、たまりませんね。

対になるコンセプトアルバムという都合上、今作の初回盤もすぐに生産終了にはならないみたいなツイートも見ましたし、是非、多くの人に初回盤の手紙を読んでほしいものです。
あとインタビューも楽しいです。なぜ音楽のインタビュー中に蠱毒の話になるんだろう(笑)。

どの曲も好きですが、表題の「だから僕は音楽を辞めた」、「語学は花緑青の窓辺から」の二曲が特に好みです。


灰の見る夢(Unnamed Memory)

ico_grade6_5

「後悔しませんね?」

「お前といて後悔したことは一度も」

 

172月刊行の同人誌。

Unnamed Memory』の番外編。

小説家になろうの方にも再録された「奇跡のような嘘を貴方と」(17年夏コミ頒布ペーパー)みたいな、消された試行の断片なんですが。

出会い方が違っても。オスカーとティナーシャが隣り合う、その関係がただ尊いと感じる。

 

ティナーシャ視点で話が進みますが。

ちょっと休憩するつもりで横になった数時間の間に塔を踏破されたら、そりゃ驚くよな……

塔で眠っていた少女をオスカーは魔女と思わず、魔女に囚われている下女か何かと誤解して。彼女を連れて塔を降りることに。

「魔女の怒りを恐れないんですか?」「怒られたらその時謝るさ」

契約者と魔女とは違う距離で、ファルサスで過ごす二人の姿が新鮮でした。

 

そしてヴァルトが現れて、オスカーの事を彼が前に居なくても「王」と呼び続けるその姿をティナーシャに指摘される、という流れが好きです。

「彼は王以外の何物でもないよ」。一体どんな気持ちで、この言葉を口にしたのだろう。

多くの蓄積を経て、都度全てを教えることを諦めた。

それでも行動を止めない彼はかなり手ごわい手合いだと思うんですが……幾度の試行の中では、こうあっさり退けられるパターンもあるんだな……

 

「彼がそう望むなら叶えないという選択肢はない」っていう一文があったんですが。

もうティナーシャ、オスカーの事本当に大切にしてるんだなぁ、というか。彼女にとっての唯一だというのが、よくわかる。

やっぱり『Unnamed Memory』はいいな…と実感しました。

紅き唇の語りし夜は 月の白さを知りてまどろむ

ico_grade6_5
「巫に贈るものだ。きちんとしておきたい」

(略)

彼女の為に捧げるのだ。全てに変わらない想いと、真っ当な筋がなければ。

 

『月の白さは知りてまどろむ』という作品の短編ですねー。

WEB本編は一度第五章で完結となり、後日談となる六章以降が連載されてるんですよね。

小説家になろうとカクヨムで掲載されていて、カクヨムの方に八章が途中まで乗ってます。気長に続きを待っている。

シシュとサァリの物語の続きが読めるというだけで、もう、本当に幸せなのですよ。

 

さておき、この同人誌『赤き唇の~』は第五章前に起きた事件を描いています。

シシュとサァリの関係が近づいて、けれどまだその道が重なっていない。この不器用な二人の交流が見ていて微笑ましい。

戦闘力とか言う単位で見ると、どっちも常人離れしてるんですが。

それを気儘に振るうのを良しとせず、けれど使うべき時には躊躇わない。その在り方が、美しいと思う。

 

この短編だけでも、本当にお互いがお互いを大切に思っていて。

アイリーデの人々に、シシュが客として選ばれるんだろうなというのがよくわかる。

シシュが贈り物をしようとして真っ先にサァリが候補に挙がるあたりで、明らかですけど。

「将を射んとする者はまず馬を射よ」とか「外堀を埋める」のように、目的を達成するためにまっすぐ行くのではなく、周辺から問題を片付けろという言い回しがありますが。

……この二人「相手を大切にしたい」という大目的を既に達成しているし、サァリなんて「シシュのそういうところが好きなの」とか言うのに、その手前にある問題で立ち止まってるからな……

 

好きな雰囲気で全体まとまっているんですが……特に気に入ったエピソードは、シシュが菓子屋出禁になってた所ですかね。

あの不器用さがシシュらしい。一応出禁解除の条件もはっきりしていたので、それを為した後、きっと彼は土産に買っていったんだろうなと思うと、なんかほっこりする。

 

最近『Unnamed Memory』ばかり推してましたが、『月の白さを知りてまどろむ』も好きです。WEB版で良いからみんな読もう・・・

つれづれ、北野坂探偵舎 物語に祝福された怪物

ico_grade6_5

だから、雨坂続が完成したとき、編集者としての佐々波蓮司は必要なくなるだろう。

それは悲しいことではない。

むしろ、夢のような。奇跡のような、喜ばしい未来だ。

 

シリーズ完結巻。

作家と編集者の業が描かれているように感じられて、好きな作品です。

それが一番濃く感じられる4巻の「感情を売る非情な職業」が一番のお気に入りではあるんですが。

完結となる今回も作家の我がままな面、人間味のある面など多くの顔が見られて楽しかったです。

 

二年の時が流れたところから始まる本編。

佐々波は喫茶店店主から編集者に戻ったし、北野坂の店は、パスティーシュが運営する形になった。

ユキは女子大生になって、ノゾミは幽霊の身で色々と状況を動かそうと手を打って。

雨坂続は病院のベッドで寝たきりで、指先の世界で、文章を書き続けていた。

 

好きな場面がたくさんあります。

冒頭の天才についての佐々波と作家のやり取り。小暮井ユキが「落書き」をした所。

佐々波のプロッフェショナルについての言葉遊び。

ユキがノゾミの依頼に躊躇わなかったところ。彼女が、答えを考え続けていたこと。

聡一郎が語る「人間には書けない本物の小説」の話。

「錯覚でも、わかると答えたいことだって、あるじゃないですか」というユキの言葉。

佐々波の「天才は、祝福されていなきゃいけないんだ」という願い。

 

2年の間で変わった事があって、もっと超然としてるかと思った作家が迷ったり、パスティーシュさん好きだったので、出番少なくて悲しかったりしましたが。

やっぱり河野さんの文章が好きだなぁ、と実感しました。

凄く雑にまとめてしまうと、書けない作家がもがいてる、って話なんですが。葛藤している様子ですら、美しいと思う。思えることが、とても幸せで。

これだから読書は止められないし、出版不況の中で書店員続けられるんだよなぁ。



Unnamed MemoryⅠ 青き月の魔女と呪われし王

ico_grade6_5

「俺に……お前を殺させるな……」

 

もう、なんていうか……好き。

感想これだけでいいんじゃないかな!? 良くない!

書籍化発表から発売日が楽しみでならなかったです。

WEB掲載時から好きな作品だったので純粋に嬉しいし、書籍化のお蔭で推しに課金できる! 素晴らしい! 

 

テンションがおかしい。発売が楽しみすぎて、新文芸担当でもないのに、POPを二つも書いたのも良い思い出です。

片方は若干ネタに走りすぎた気がしたので個人アカウントで供養しましたが。店頭にはふざけずに作った方出して、初速で他の新刊より売れてて大満足。

推しを推そう。

 

もうちょっと真面目に感想を書くと、オスカーとティナーシャが好きなんですよね。

二人の軽快なやりとりも楽しいですし。それぞれが王族と魔女に相応しい力と覚悟を持っている。揺るがない芯が通っている。

バラバラ死体の謎解きとか、真面目にやる時はしっかり締めてますが。

息抜きをするときは、かなり気を緩めてる感じがして、そのギャップもまた見ていて楽しい。

 

王子が供一人だけ連れてフラフラと危険な場所に足を運んでいるのは、息抜きにしてもハードな気がしますけどね!

……将軍以上の剣の腕とか、思い切りの良さが為せる技ですよね……

「どんな顔して城に帰ればいいんですか」「沈痛な顔して帰れ」という冒頭のオスカーとラザルの会話が最初に笑ったポイントで、そこからどんどん引き込まれ行ったんですよねぇ。

その後で言うと、媚薬を飲まされたオスカーが「俺にはあまり支障がない」という場面とか。ティナーシャにもっと面倒な仕事を回させようと冗談と言ったあたりとかも好きなんですが……

好きなシーンが多すぎて、上げきれないのでとりあえずここまで。

WEBから改稿されてる部分もあって読みやすかった印象。2巻の発売も決定しているようなので、楽しみです。




ノエルと白亜の悪夢 アリアンロッド・リプレイ・ルージュ3

ico_grade6_5

「我が名は、トラン=セプター。

偉大なるダイナストカバル……極東支部長だ」

 

みっしょん05古の書、みっしょん06白霧に消えてを収録。

フォア=ローゼスの面々が順調に薔薇の武具を集め、それぞれ違う組織の所属ながら仲間らしくなっていく様子はとても暖かくていいですねぇ。

……だからこそ、あのシーンが輝くんですが。初めて読んだとき受けた衝撃といったらもう……

 

次なる薔薇の武具マビノギオン。武具と言いながら本で、4冊に分かれていて、所在不明のものも。

冒険者の街ラインの図書館に1冊があるという情報を得たので、そこで情報収集にあたるわけですが。

エイプリルのかつての仲間――情報部十三班の面々が動き始めて。

クリスも上司のマティアスに神殿会議の護衛をしろと連れて行かれ。

トランとノエルだけで街中を歩いていたら、ノエルを狙った凶刃が……気付いたトランが庇ったものの、毒が塗られている周到さ。

 

エイプリルが登場するシーンはシリアスになりやすくて格好いいですよねぇ。渋い。……ジュライとか言うネタキャラも居ましたけど。

神殿会議でマティアスが「禁忌と言われる薔薇の武具を集めている」という意見が出た時のやり取りが笑えた。マティアスの開き直りっぷりがいっそ清々しい。

……だがその糾弾を受けてるその場にいる貴方の護衛が、薔薇の武具ウィガールを着てるんですが……

その後エイプリルがあっさり手札を明かしたのにも驚きました。なんとか敵を撃退し、次のみっしょんへ。

 

トランの生まれた村、ダイナストカバルと協力関係にあり……薔薇の武具についてしる御仁が居る、隠された村イジンデル。

そこに迫った危機に立ち向かうんですが……チームが分断された状態になってしまって。

意地を貫き通したトランが、本当に格好よかった。

途中で戦術ミスがあったのが無念極まりないところですが、最適解ばっかり選べるわけじゃないですからね……




プロフィール

ちゃか

 新刊・既刊問わず、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。コメント歓迎。ただし、悪質と判断したものは削除する場合があります。当サイトはリンクフリーです。ご連絡等はコメントかメッセージよりお願いします。

メッセージ
アーカイブ
カテゴリー
記事検索
最新コメント
  • ライブドアブログ