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「答えろよ! 正義の言葉で俺を屈服させろ!」 

主人公のジンは、英雄と呼ばれる父と、勇者と称される妹を持つ、落ちこぼれ学生。
「英雄の息子」として求められる実力や振る舞いをしない彼に対して、周囲の目は厳しい。
本人は、自分に父や妹のような力がないことを早々に悟り、自立をめざし、自らにできることを探している。

別の巻で「我慢できていたのが異様だった」と言われる状況の中、ジンはそれなりに学生生活を満喫しているんですよね。
エリスやウィルみたいな変わり者と付き合いながら。
類は友を呼ぶって言いますが、まさしくそんな感じで。 能力的には平凡で、自分で雑魚と自嘲するぐらい。
普通だったら、英雄である父親や勇者と呼ばれる妹が主人公になるでしょう。
でも、この本の主人公はジンなんですよね。 誰も彼もが、彼を無視できていない。
そんなジンが、遺跡で少女を拾い、運命が動き出す。

まぁ、これが普通だったらボーイ・ミーツ・ガールの典型で、成長だったり、努力だったり、友情だったりとつながっていきそうなものですが。
ひねくれているジンがそんな真っ当な道を選ぶはずも、また周囲が選ばせてくれるはずもなく。
ついに、彼の抱えていた爆弾を爆発させてしまう。

冒頭に挙げた言葉は、途中でジンが叫ぶ言葉です。
何者にもなれないと嘘をついていた彼が選んだ路がまた痛快で。
英雄たちが悪だっていうんじゃなくて、ジンも自分で言っているように、多くの人はジンを悪とするでしょう。
でも、それがどうした、とばかりにその道を進んでいく様がいいですね。 その精神性は、決してヒーローのものではなく。その逆を行くものですが。

周囲が勝手すぎる、と言う部分になんとなく共感もできるので、障害を越えていく様子が気に入っています。スカルノ学園長にすらイラストついているのに、イラストもなくやられていったユスティンはすごく哀れな気もするなぁと思うなど。