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「誰かに傷つけられた怒りや恨みを、その相手に似た誰かにぶつけるのって、簡単で楽な方法なんだよね。感情の処理の仕方として」
(中略)
「だから、そういう方法を取る人が、早く違う方法を見つけるといいなって願うばかりだけど。高畑君もさ、そういう人たちを見て絶望するんじゃなくて、自分に希望を感じさせてくれるものに目を向けて、それを大事にしたり、誇りに思ってみたらどうかなぁ」


一つ屋根の下で暮らす人々のアンソロジー。
読書メーターで他の方の感想を見ると、なんかスピンオフな短編を乗せている人もいるとかなんとか。
正直三上さん目当てで買ったからなぁ。
その内手を広げていきたい、と思わないではないですけど。
正直現時点で部屋に積読の山があるので、あれを消化しないことには、手を広げたら死ぬ。財布的にも、積読の消化率的にも。

流石にプロの作品。
同じテーマで手を変え品を変え魅せてくるというか。
それぞれの作家さんごとに個性が出てて、面白いは面白い。

掲載作の中できにいったのは、徳永圭『鳥かごの中身』、三上延『月の砂漠を』。
その次に飛鳥井千砂『隣の空も青い』ってところでしょうか。

『隣の空も青い』は、まとめると仕事と私どっちが大事なの、みたいな話といいますか。
すれ違いを感じ始めていたところに、出張の話が急にはいってきて、同僚と同室で過ごしながら、色々と考えていく話。冒頭に引用したセリフはこの作品からですねー。
ストーリーより、キャラの会話っていう要素がいい感じではないかと。

『鳥かごの中身』は、アパートの別の部屋で暮らしている少女。
母子家庭で母が帰ってこない。途方に暮れている彼女を青年は保護した。
少女を助けたつもりだったけレ度、交流を通して助けられていたのは彼の方だった。
まぁ、いい話だと思いますが。これ、一歩間違えると「少女を部屋に連れ込む事案発生」と警察直行コースだよな、ってツッコミ入れるのは野暮なんだろうなぁ。

『月の砂漠を』。
地震で妹を亡くしたのちに結婚した姉。
相手は妹の婚約者であった。亡くなったことを割り切れず悩んだり、とモヤモヤする部分はありますが。
色々と規約があって面倒な、住宅。どうしてそこを選んだのか。
ちゃんとキャラが立っていた感じがして好みではありました。

個人的には、作品ごとの色が違うので、評価上下して、平均するとなんかパッとしなかったかなぁ、みたいな結論になってしまうのがアレですけど。
まぁ、どれか1作くらいは気に入る作品あるのでは。
好きな作品と、そこまででもない作品が入り混じっていることがあるから、アンソロジーって難しいです。いや、気になって手に取っている以上、文句家立場じゃないと思いますがね。

この部屋で君と (新潮文庫)
朝井 リョウ
新潮社
2014-08-28