気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

ポプラ文庫

活版印刷三日月堂 小さな折り紙

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「自分の知らない世界を見たいんだよ」

 

前巻『空色の冊子』では、三日月堂にまつわる過去が描かれました。

シリーズ6弾となる今回は、三日月堂から広がっていく未来の話が収録されていました。

「マドンナの憂鬱」、「南十字星の下で」、「二巡目のワンダーランド」、「庭の昼食」、「水の中の雲」、「小さな折り紙」の6編が収録。

 

金子さんが朗読会をしたちょうちょうの一人と交際を始めたとか、ワークショップをした高校生たちのその後の話だとか。

当然なんですけど、これまで多くの人が三日月堂を訪れて、色々な経験をしていましたが。

たまたま多くの人々の歩く道が、三日月堂を通っただけで、彼ら彼女らには三日月堂の視点からは見えないこれまでとこれからがあるんですよね……

世界が広がった様で、とても楽しかったです。

 

直近の時間軸のエピソードが紡がれるのかと思ったら、「小さな折り紙」では子供たちの話になっていて、驚きました。

弓子さんが、三日月堂の店主としても立派になっているのが感じられましたし、家族を亡くした彼女が幸せそうな過程を築けている事にほっとしました。

読んでよかったと思えるシリーズで、とても素敵な番外編でした。


活版印刷三日月堂 空色の冊子

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「届かない手紙でも、書いていいんだよ」

 

三日月堂の新作。

5巻目にして、三日月堂の過去を描く短編集です。

『ヒーローたちの記念写真』。本編でも登場した「我らの西部劇」を執筆していた片山さん達の話。三日月堂で印刷しようと話を進めるまで。

フリーライターだったが、担当が入れ替わったりする中で、刷新についていけなかった。原稿を改変されたり、トラブルもあったみたいですが、揉めた事で敬遠されて仕事が減った。失敗した部分も丁寧に描いてるので、ダメージがデカい……

そして片山さんが急逝してしまい、未完の本となってしまったものが、未来で印刷されるんだから、縁だよなぁ。

 

『星と暗闇』は弓子の父親の話。『届かない手紙』は弓子の祖母の話。『空色の冊子』は弓子の祖父の話。と三篇弓子の家族のエピソードがあったのは嬉しかったですねぇ。

いや、弓子の父が結婚して妻を亡くした下りだったり、祖父視点は祖母が亡くなった後の話だったりと、要所で弓子の過去の重さが解像度増してって、痛いんですけどね……

それでも、みんなで一緒に食卓を囲んだ場面があったりして、温かさもあったから乗り切れた……

 

『ひこうき雲』は弓子の母カナコの大学時代の友人、裕美の話。

『最後のカレンダー』は三日月堂がまだ営業していた時に依頼を受けていた笠原紙店の話。タイトル通り、三日月堂を締める前に受けた仕事の話。「三日月堂の仕事を、お客さんにも覚えていてもらいたい。なんだかそんな気がしたんだ」という店主の言葉が、しっかり届いているのが見えてよかった。

最後の『引越しの日』は、弓子が三日月堂に引っ越す時の話。大学の時の先輩が出て来て、彼女と弓子がお互いにいい影響を与えていたようで、ちょっとほっとしましたね。

いや、久しぶりの新刊でしたが満喫しました。たしか6巻も出てるはずなので買ってこなくては。


活版印刷三日月堂 雲の日記帳

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「運命なんてものはないですよ。みんな自分で決めなければならない」

 

シリーズ完結巻。

これまでの仕事、これまでの縁。

それらがつながって、三日月堂の未来になるというのが良いなぁ。

「星をつなぐ線」、「街の木の地図」、「雲の日記帳」、「三日月堂の夢」の4話が収録。

プラネタリウムの星空館。開館時に作った星見盤の木口木版を使って、リメイク版を作る話。

色々と時期が良かった。弓子が平台を動かそうと決意した後でなければ、縁をつないだ後でなければ、三日月堂に辿り着かなかったでしょうし。

 

そこからまた縁がつながっていくわけですが。

星座館でバイトしている学生が、課題で作る雑誌を三日月堂で作ることになって。

それを販売するために借りた店舗の店主についての話が始まり……三日月堂で本を作ることに。

 

終わろうとしていた、継ぐ予定もなかった三日月堂が、ついにここまで来たのか、と感慨深かった。

何でも電子で出来る時代ですけど、やはり紙は紙でいいですよねぇ。書店員としては、やはり紙の本の良さを推したい。電子書籍の手軽さも良いものだと思いますけどねぇ。

本づくりの時も、全て昔のやり方にすることには拘らずDTPソフトとかも活用してましたし。
良い所どりして共存していければいいんですが……

 

視点が切り替わっていく流れが綺麗にまとまってて、読んでいて楽しい。言葉の選び方が、好みなんですよね。

作中の人物だと、「雲の日記帳」の水上さんの言葉が特に気に入ってる物が多いですねぇ。

「でも、思うんですよ。夢だけがその人の持ち物なんじゃないか、って」とか。

地の文では最後の方にあった、「本とは不思議なものだ。」から始まる6行が好きです。

願いを込めて言葉をつづっても、届かないかもしれない。けど、誰かに心に残るかもしれない。
何の気なしに紡がれた言葉に胸を打たれるかもしれない。

言葉には、物語には、そうした力があるのだと信じたくはありますね。
うん、希望が見えるいいシリーズでした。



活版印刷三日月堂 庭のアルバム

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「亡くなる少し前、あの版を見ながら祖父は言っていました。この人の言葉に、この人と家族がこの世界に居たことに、いつも心打たれる。いつまでも残しておきたいと思う。自分が印刷に願うのはそういうものだ、って」

 

活版印刷三日月堂を舞台にした小説、第三弾。

これまで三日月堂が作った商品が、誰かの手にわたって、そこから次のお客様へとつながっていく流れが綺麗だなぁ、と思っています。

 

2巻で作った『我らの西部劇』の完成記念で、川越の小さな映画館で上映イベントが行われる事になって。

ちょうど川越特集を組むことになっていた旅行雑誌の出版社が取材に来て……流れで三日月堂に行って、三日月堂も取材して。

その記事を見た、弓子の母親の知人が訪ねてきて……と今回は特に前の話やそこで作られた印刷物がしっかり次の話に繋がっていった感じがします。

 

デジタル化が進み、パソコンとプリンターで対応できるこのご時世に、敢えて活版印刷で作るわけ。

三日月堂で、店主とお客さんとが、それぞれ納得ができるものを作ろうと語らっている場面が、静かですけど「ものを作っている」という熱が感じられて好きです。



活版印刷三日月堂 星たちの栞

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「はい。あの夜、印刷しているとき、祖父のことをいろいろ思い出しました。『印刷とはあとを残す行為。活字が実体で、印刷された文字が影。ふつうならそうだけど、印刷ではちがう。実体の方が影なんだ』って」

古びた印刷所「三日月堂」。
そこでは昔ながらの活版印刷を行っていて。
元々は店主の祖父が経営していた印刷所で、亡くなっていらいそのままだった。
活字が合金のため処分が難しく、そのままになっていて。
ある事情から、そこへ戻ってきた孫娘の弓子が、知人の依頼を受けて活版印刷を再度行う事に。

言葉一つ一つを大事にしている、と言いますか。
知識としては知っていましたが、こうして描かれるとまた違った趣があります。
章ごとの扉に活字などの道具の写真が置かれているのもにくい演出だと思います。

冒頭の「世界は森」では母から子へ送られるレターセット。
「八月のコースター」では、叔父から喫茶店を継いだ青年が新たに作り出したコースター。
学校でのワークショップなども行っていました。
誰もが、何かを求めていて。店主との相談しながら「これだ」と思える作品と出会う。
いや、いい作品を読んだ、って感じがします。

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)
ほしお さなえ
ポプラ社
2016-06-03
 

プロフィール

ちゃか

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