気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

三日月かける

断章のグリム1 灰かぶり

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「済まない、白野君」

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「君を関わらせないわけには、いかなくなってしまったみたいだ」

 

久しぶりに再読。

様々な怪奇現象の裏側には、神様が見た悪夢の欠片が存在している。

それは泡のように漂っていて、時に人の意識の中に浮上して来る。そうすると、悪夢は形を成した災いとして、被害をもたらす。

一般市民はそんな事は知らず普通に暮らしていますが、事情を知っている人々は騎士団という互助組織を作った。

 

泡の影響を受けた人間にはその欠片――『断章』が残る事があり、トラウマのフラッシュバックによって現実世界にも影響を及ぼしてしまう。

いうなれば爆弾のようなものだから、リスクをゼロにはできないけれど制御する方法を学んだ方が安全でもある。だから、互助会なんですね。

浸食がすすみすぎて「異端」と呼ばれる領域まで行くと、殺すしかなくなると言いますし踏みとどまるための組織だと言う事です。

 

主人公の白野蒼衣は、そんな泡や騎士団のことなんて何も知らない学生だったはずが……ある時、泡禍に巻き込まれて。

そこで蒼衣もまだ断章を保有している事が明らかになり、今彼の済んでいる街で起きている事件にも影響を及ぼすことが分かった。

だから騎士として活動している少女、時槻雪乃と一緒に行動する時間を増やし、異変の全容解明に奔走する、とそんなお話です。

 

泡禍の中にはその災害を、童話をモチーフとした形で発現することがあるそうで……1巻はサブタイトルにある通り、灰かぶりの物語です。

どうやって事件を童話であるかのように解釈するか、語り合っているシーンとかが結構好きですね。

泡禍の活動しているシーン、断章を扱うシーンはどうしたって痛々しくなりますが。

1巻なのでまだまだ軽いジャブみたいなものです。この恐怖を楽しめる方は、是非続きを読んでいってほしいですね。

ちなみに12006年発売ですって。時代を感じるわ……。今ならもう全巻BOOKWALKERで読めますよ……。


時槻風乃と黒い童話の夜 第3集

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「多くの人は、愛してやまない人間の死には、何かの形で折り合いをつけなければ、そのまま生きてゆく事が出来ないわ」

 

積読消化―。いやぁ、懐かしいこの感じ。

甲田学人流「いばら姫」。怖い。

何が起きたのかわからない恐怖もあるし、風乃が語った真実を聴いても「理解できない」という怖さが残った。

 

生まれ育った町へ4年ぶりに帰って来た少女、繭。

かつての友人たちも歓迎してくれたが……彼女は、この地に、嫌な思い出があって。

仲良し6人組だった内の中心であった少女、小姫の死。

禁じられていた話題が、繭の帰還を期に話題に上がり……その後は、転げ落ちるように、結末へと至った。

 

風乃は、祖母の家があったためにこの地に来ていただけ。そして彼女たちの話を聞いただけ。実行したのは、少女たちではありますが。

同時に、彼女と出会わなければ、最後の一歩を踏み出すことはなかったのではないでしょうかね……いずれ別の形で崩壊していたかもしれませんが。

母が彼女を扱い兼ねて、祖母の家に療養の名目で封じようとしたらしいですけど。

まぁ、正直手元に置いておきたくないのわかるな……と言うエピソードでありました。

断章のグリム2

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『急いで追わないとあの子のついた火葬場――』

『とんでもないことになるわよ』

 

神の悪夢を巡る物語に巻き込まれた蒼衣。

神狩屋から事情を聴き、色々と踏み込んでいってますが。

事情を聴いた翌日。蒼衣の自宅に雪乃が訪れて。

同じ泡禍に遭遇するんだから、少しでも一緒に行動したほうがいい、という合理的な判断です。

 

そして、事態は静かに……けれど確かに進んでいって。

蒼衣の前に異形が現れたりはしませんでしたが。

以前に遭遇した異形の正体が発覚し、その妹が蒼衣のクラスメイトという事情が発覚。

彼女の抱えていた事情なんかも描かれていましたが……

母親が離婚し、虐待されていたとか。逃れられず、囚われたままだった、と。

 

予言された泡禍「灰かぶり」……シンデレラに重なるところがある、彼女の現状。

そんな状況を知ることになったのは、件の母親の葬式の場で。

調査の一環として雪野たちも近くに来ていましたが……そこで、雪乃の断章の一部でもある風乃が登場。

本格的に事件が進行していくのは次回以降に持ち越し、という感じですね。今回は情報の整理がメインで、結構静かな巻だったと思います。

ここからどんどん転がり落ちていくんですけどね……

 

ノロワレ参 虫おくり

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「別に責めちゃいない。己が大人だとも言わんよ。ただああいったものは、子どもの立場からは見えにくいというだけだ。そして疑問を抱かず大人になると分からなくなる。それが濃縮されると、ああなる」

 

元々救いとは縁遠いこの作品ですが……

今回はまた一段と救いがないというか、救われていい相手がいないとすら思えてしまったと言いますか。

現人が嫌っている「田舎の風習・俗習」。それを煮詰めたかのような事件が今回は起こるわけですが。

 

狭い村だからお互いの事はよく知っている。だから、よそ者を嫌う。排斥する。

村社会であるが故、それを見てみぬふりをするものが居て……実力者が行っていることを真似する者も居る。

そうして追いやられて、命を絶った者の呪詛が、その村には残って。

相変わらず、恐ろしい文章を書くというか、怖い雰囲気を作るのが上手いなぁ、と。怖いけれど、先が気になってついページをめくってしまう。

 

夢人が現人に語った「子供からは見えにくい」もの。それは確かにあるのだろうなぁ、と思いました。

間違いに気付けず歪み続けた果て。

夢人は呪い返しの儀式が失敗したときに、「……許さない、というわけだな。良いものを見た。被害者の呪いとはかくあるべきだ」と言っていましたが。

これほど憎しみを募らせた被害者たちの怨念の強さに圧倒される。

 

前回の事件から現人はオミコサマの卵、文音との接点が出来ていたようです。

日高のお見舞いの帰り道を同じくする感じだとか。最もオミコサマ見習いとして、下手に関わったことに謝罪など出来ない文音は、現人から話を聞くだけというなんとも迂遠な接触をしてるわけですが。

二人連れ立って歩いているところに夢人が現れたりするからなぁ……彼らは彼らで夢人被害者の会でも立ち上げればいいんじゃなかろうか……

ノロワレ 参 虫おくり (電撃文庫)
甲田学人
アスキー・メディアワークス
2013-09-10
 

ノロワレ弐 外法箱

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「家族とは、呪いだ。呪いの詰まった、出られない箱なのです」

 

積読消化マラソン中。

メディアワークス文庫の方に移っているというのに、未だに電撃文庫版積んでるとは……とっとと消化しちゃわないとなぁ。スペースとって仕方ないし。

 

閑話休題。

同級生の友人、日高護の祖母の葬儀に参列した現人。

そこで彼は「オミコサマ」という七谷に根付く祈祷師が、遺族に「箱」を返してほしいと願う場面に居合わせて。

 

護は現人の持つ夢人に対する怒りを零せる、数少ない理解者で。

だからこそ、何かトラブルに発展しそうなら力になりたいと思っているようですが。

今回は護の方に事情があり、現人に悩みを語ることが出来ず。

 

葬儀に参加せず現人の怒りを買っていた夢人は、その一連の流れを聞いて「箱」そのものと現人の友人の家系にも興味を持ちはじめ。

「憑物筋」の一種ではないのか、と。

そうして調査に動いていくわけですが……いやぁ、本当に的確にいやがらせムーブをしているというか。

「己の事が嫌いな人間が大好き」という彼のポリシーを徹頭徹尾貫いてるなぁ、という感じがして、好感は持てないけどそのブレのなさは凄いと思います。

 

日高の祖母が諸悪の根源だよなぁ、というか。

本当にその身を外法と化す執念が恐ろしすぎて。

結局今回の話はそうした妄執に振り回されて終わった、という話でしょうか。

オミコサマの卵こと犬伏も、彼女なりに大変な事情っがあるようですし。

今後の活躍に期待……というか現人と一緒に夢人に振り回され続けるような気がしてならない。

ノロワレ 弐 外法箱 (電撃文庫)
甲田学人
アスキー・メディアワークス
2013-05-10


時槻風乃と黒い童話の夜2

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「嘘は、善でも悪でもない。ただ、優しいものよ。ただ優しく、耳にした者と、口にした者を、共に等しく、腐らせるの」
一瞬理解できず、なおは風乃を見た。
「他人にとて優しい嘘は他人を腐らせるし、自分にとって優しい嘘は自分を腐らせる。それだけのものだわ」


今回は、「白雪姫」と「ラプンツェル」。
断章とか神の悪夢とか出てこないんですよ。これで。
いやぁ、人って怖いという月並みな感想しか出てきませんが。
風乃が、自分から積極的に絡んでいるわけではなくて、話を聞いて、彼女なりの見解を口にしているだけなのに。
少女たちがどんどん壊れていく様が、何とも言えない。

絆が何よりも大事だから。
大切にしている相手が、実は想像と違っていたら。
思わず手を離されてしまったら。
収録された2話とも、友人が家庭環境とかに、闇を抱えていて。
風乃に影響されて、歪み、果てには命を落としてしまうわけですが。
その最期の姿を、友人たち自身が目撃しているというのが、えげつない……というか救いがない。

白雪姫は、嘘のつけない少女と顔だけが自慢の少女。
お互いに親友だと思っていたけれど、或る日、顔だけが自慢の少女が顔にけがを負って。
家族が少女に安心させようと嘘をつくが、親友が嘘をつけないことを知っていて、少女は問う。
「奈緒。ちゃんと――わたし、可愛い?」


嘘を嫌う少女については、風乃が白雪姫の鏡にたとえて、興味深いことを言っていました。
「真実を見る目と、嘘をつけない口。二つが揃えば呪いだわ」

破滅に向かうことが分かっているのに、嘘がつけないから。真実を告げて、苦しむのが分かっているのに言わなくてはいけない気持ちは果たしていかようなものなのか、と。

そして「ラプンツェル」。
箱入り娘と育ったから男に免疫がない少女と、父親が下種だから男を嫌っている少女。
これは、巡り合わせが悪かったというか、傍から見ているといっそ面白いぐらいタイミングが悪くてボロボロと零れ落ちて言ったなぁ、という感じ。
本人たちからすれば、タイミングの悪さが面白いとか言っている暇もなくて。終いには失われてしまうんだからたまったものではないですよね……

相変わらず、家族に恵まれている人がいませんね。
まぁ、家族に恵まれているようなひとは、風乃の人生相談教室に迷い込んだりしないからな……


時槻風乃と黒い童話の夜

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「うん、そういうと思った。君は優しいね。毒みたいに優しい」
平然と答える風乃。それを聞いて洸平は、溜息を吐いた。
「君は、人の醜い所を否定しない。受け入れる。手を差し伸べる。だから君に相談した人は破滅する。君に相談すると、君にそんなつもりはなくても、背中を押されるんだ。ここの奥底の、一番醜くて、一番狂ったところを、君の言葉が掘り起こす」
洸平は言う。風乃は何も言わない。
「だから、君を責めると、きっと僕も破滅する」


『断章のグリム』好きなので迷わず買っていた・・・んですが。
その割に積読の山に埋もれてました。
埋まっている間に二巻出てしまったので慌てて読了。
書下ろしの「シンデレラ」、「ヘンゼルとグレーテル」。断章のグリムに収録されていた「金の卵を産むめんどり」。
三話が収録されています。

いやー相変わらずの甲田節といいますか。
タイトルからして風乃がいるし、いつも通りロクな目には合わないんだろうなぁ、と思ってまいましたが。
安定して暗い、エグい、グロい。
けど、短編3作掲載な感じで、一つ一つが短いので、その分いつもよりは抑え目かな、と。
甲田作品の入り口としては案外いいんじゃないだろうか。
「断章」という異能がない分、より人間の醜さがすさまじくなっているというも見方もありますが。

父親は単身赴任で遠くにあり、母と姉の三人で暮らしている夕子。
姉がいつも優先され、自分の願いは通らない。そんな家に暮らしていた彼女は、我慢を重ねて、なんとか生活してきていた。
「……シンデレラは、本当はシンデレラのお父さんが救うべきだったわ」

風乃に相談し、我慢し、怯えながらもなんとか行動を起こした瞬間に足を掬われて。

彼女たちは決して、悪くはなかった。
埒外の幸福を望んだわけではなく、手の内に収まるようなちっぽけな願いを持っていただけだった。
けれど、ちっぽけであるそれらは、彼女たちにとって最後の砦でもあり、それを踏みにじられた瞬間、最後の一線を越えてしまった瞬間に、零れ落ちて、壊れていってしまっただけで。
境界線上にいて、見守るだけの風乃がどうしようもなく恐ろしい。
風乃は少女たちと偶々あって悩みを聞いて、自分の意見を述べただけなので、彼女は彼女で悪いことをしているわけではないけれど……冒頭引用したように、「毒のように優しい」少女でもあるので。
その影響を受けて壊れ方が加速した面もあるわけで。
いや、相変わらずの筆致で安心したといいますか、さすがとしか言えない。


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ちゃか

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