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誤解でないならそれは祝福のようなものだ。世のなかの、ほかのたくさんのカップルたちにも、この雪みたいに、幸福がふりそそげばいいのにとおもう

20周年記念のコラボレーション企画の文庫。
第1弾積読に埋めてるのに、第2弾から読み終えてしまった……
電撃文庫MAGAZINEの付録ですね。雑誌の号数はVol.35の2014年1月号。
あらすじによれば、「ヒロインに隠された1つの秘密」をテーマにした珠玉のラブストーリー」らしいですよ。
4作品収録。舞台は同じ学校、同じクラス。なので、他の作品に出てきたキャラクターが他の作品にも一瞬登場したりしています。こういうリンクしている構造の作品は結構好きです。

・『ふゆのはな』 岩田洋季/そと
5年前、父親が「クリスマスプレゼント」と称して連れてきた少女と一緒に過ごしてきた少年の話。それを見た主人公は「そのとき俺がまず思ったのは、ひとさらいかロリコンの変態か、あるいは両方か、我が親ながらここまでの外道だったのかということだ」とか思っているんですが。小6にこんなこと思われるって、何をしてきたんだ、この父親は。
まぁ、そうした長い付き合いがあって、高校では、公認カップルのように扱われている2人。ただ、少年はそれだけ一緒に居ても少女の事を何も知らない、と思い、秘密を探ろうとする。
うじうじ悩んでいる割には行動力あるんですよね。ただ、その行動力はぶつけるところが違うだろう、という感じ。ま、実際父親にも諭されてますが。しかし、そこには賛同できても、この父親がほとんど出てきていないのに、好きになれない。隠しているわけじゃない? からかいと毒舌しか吐いてないような口でよく言ったもんだ、みたいに思えて。「男の子は甘やかさずに育てる」方針? 自分が楽しんでるだけじゃないのか。どーにも読んでてイライラした。

・『ヒミツな彼女の脱がせ方』 上月司/櫻木けい
『ふゆのはな』はほぼ公認されている状態のカップルでしたが。こっちはクラスの人たちに隠れて付き合っている二人の話。バイト先が近かった縁などで、距離を縮めていったとか。
ただ、ある日、彼氏は彼女に対する秘密というか、噂を耳にして。
スキー旅行に出かけることにしたんですが、秘密を明らかにするために掲げた目標が、彼女を脱がせること。……うん、タイトル通りですね。
高校生のくせに泊りの旅行にいけるとか、懐事情とか色々大変だったんじゃなかろうか。バイトしてるならそーでもないのかなー。公認カップルより先に爆発すればいいのに、って感じの充実しているように思えましたけど。

・『量産型彼女、初春レイ』 御影瑛路/黒銀
この世界には、量産型彼女、という恋愛シュミレーションソフトがあるようで。
無駄に高度なAIを用いた、実践用の恋愛訓練ソフトという事ですね。
主人公はその世界にどっぷりと浸る。1度だけ、一週間だけしか借りられない、リアルなシュミレートをするための仕組みだそうですが。
一方で、彼には、昔仲良くしていたものの、成長に従って、距離が開いてしまった幼馴染の少女がいた。
オタクの、ちょっとのめり込んでいくタイプの話なのかなーって思っていたら、話進むにつれて、ちょっと違う面が見えてくる、っていうのがいい感じでしたね。結局のところ、心の中で罵倒していたのは自分自身だったんじゃないか、と。発狂しそうになったというくらいの熱が、自分の中にあるんじゃないか、と。実際状況に変わりはないので、心が痛いのは変わらないでしょうけど、それでも踏み出したことが間違いじゃなかったと思えるといいですねー。

・『アサシンズ・ダイアリー』 時雨沢恵一/霜月えいと
タイトル通り、暗殺者の日記風。
クラスメイトの少女を殺せという依頼を受けた少年がいろいろと行動する話。
暗殺家業だけでは食っていけないから、何か表向きの仕事も考えないといけないなぁ、と暗殺者の親に言われているとか無駄に生々しいというか。どの業界も世知辛いのね! 暗殺者業界なんて存在するならとっとと廃れてしまえと思いますが。
途中からなんとなくオチの予想はつくんですが、その通りに進んでいくのは、やっぱり王道なつくりかなーという感じ。ただまぁ、終盤の秘密を明かした後の彼女が好きになれないというか。うーん、こういうの普通に居るでしょうけど。