「真似事でもなんでも、何もやってないよりマシだろう」
(略)
「人らしいことを何もかも諦めてる俺より、よっぽど生きてる」
『はたらく魔王さま!』の作者、和ヶ原聡司先生の新作。
非日常側に属する存在が、アルバイトによって日常に接しているという構造は同じではありますが。
魔王たちみたいに異世界から来たとかではなくて、元々この世界に根付いた怪異であるのが違いでしょうか。
夜だけコンビニのシフトに入って働いている、虎木由良。
彼は元人間ながら、吸血鬼に襲われ同族にさせられた存在で、仕事の傍ら元に戻る術を探していた。
元人間であるために、家族も居て支えてもらっていることもあってか、かなり真っ当に生活してるんですよねぇ。
勤務先の店長の悩みを聞いたり、酔っ払いに絡まれている女性を助けに行ったり。夜遅くで歩いている未成年に難色を示したり。倫理観がちゃんとしてる。
一方で、「身体を霧状化出来る」・「太陽光を浴びると灰になる」・「灰からの蘇生が可能」だとか、吸血鬼らしい弱点・能力も持ち合わせていて。
吸血鬼が海を渡るのは大仕事とかも言われてましたし、想像される大概の弱点が適用されそうですよね……
ライブハウスには自然に入ってましたから、招かれないと入れない類の性質はなさそうってくらい?
そんな人間味あふれる吸血鬼であるところの由良が、ひょんなことから吸血鬼退治を生業とする組織の少女と出会って……
とは言え「全ての吸血鬼を殺す」みたいな前時代的な組織でもなく、罪を犯している相手を追う類で、会話も成立するのは何より。
組織の少女・アイリスは、人間の男性が苦手で、座学は優秀でも結果を出せず、窓際部署である極東へ飛ばされたポンコツ要素溢れる子で、こう、目が離せない感じではありましたが。
不慣れな土地ということもあり、由良の手を借りようとするアイリスと、面倒だからとバッサリ断る由良のやり取りは楽しかった。
由良の事情を知っているもう一人の少女、未晴も可愛くてそれなりに楽しく読みましたねー。
キャラ的には未晴の方が好みではありましたけど、明かされてない設定的にアイリス掘り下げていくことになるんだろうなぁ、と言う感じが。
未晴とアイリスとバチバチやってるシーンが、外から見てる分には笑えて良い……巻き込まれたくはないですが。中心に置かれてる由良は頑張ってほしい。