気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

川上稔

川上作品ガイド+オススメ指南「25th」 Remember from 1996

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ナルガ「歴史が出来たと思えばいいわ。古きは古きとして伝え、新しきは新しきとして語る。伝えることと、語ることの差を理解すれば、大丈夫よ」

 

『都市シリーズ』や『終わりのクロニクル』、『境界線上のホライゾン』などを執筆されている川上稔先生本人が、「川上作品について」まとめた同人誌。

『境界線上のホライゾン』のキャラクターたちがアイコン付きで会話していく、カクヨムでの連載中の『川上稔がフリースタイルで何かやってます。』とかでも描かれている、チャット会話形式の解説本ですね。

 

メイン解説はアデーレとナルゼ。「すべての作品が一つの長大な時間軸の上に存在する」という川上作品の特徴から、「どの作品から読むべきか」というアドバイス。

今では入手が難しくなっている作品もありますが、各シリーズの解説などが載っているのでどういう世界観なんだろうと触れる入門編としては良いのでは。

 

作品の設定として「同一世界観」モノであり、時間軸が異なり、他作品との用語的な繋がりについて考えたりする楽しみも出来るけれど、「現役作品や興味を持ったものから読むと良い」という発言が作者頒布物から見られるのは良いですねー。

昔からの御約束・定番に則ったものもあるわけではないから、気楽にしてほしいって発信してもらえるのはありがたいですよ。入る抵抗感薄れるだろうし。……それはそれとしてコアな読者は考察楽しめる余地もありますしね。

 

作中の時系列的には「FORTH」→「AHEAD」→「EDGE」→「GENESIS」→「OBSTACLE」→「CITY」→「LINKS」だけど、刊行順としては「CITY」→「AHEAD」→「FORTH」→「GENESIS」→「OBSTACLE」→「EDGE」→「LINKS」って感じで一致してないのもポイントですか。

 

私のオススメとしては現代舞台で描いている「FORTH」世界の『連射王』と『パワーワードのラブコメがハッピーエンドで五本入り』ですかねぇ。後者はそもそも電子限定ですし『連射王』も紙版は絶版らしいですが、今だと電子で触れやすい作品なので。良い時代ですね~。

境ホラのキャラなので、他シリーズについて語るときのアデーレは「どんな内容なんです?」って聞いてるのに、境ホラの時は「しらばっくれて言いますけど」って枕についてるの笑う。

 

好きな作品である、もう一つの電子限定短編集『パワーワードの尊い話がハッピーエンドで五本入り』がどの時代に属するのか、とかも分かって個人的には満足度の高い一冊でした。見開き6P(つまり12P)という短さでしたが楽しかったです。

私は最近、新刊ちょっと積読の山に埋めちゃってるので、ボチボチ消化していきたいところですねぇ。

FORTHシリーズ 連射王<下>

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「――大事だから、失いたくなかったんだ」

 

プレイしていた大連射をついにクリアできた高村。

それには確かな喜びがあったが、終わってしまったという喪失感も伴っていて。そこに先人の竹さんから「ここで降りるかどうか」なんて問いかけまで加わって。

目標を達成できたけれど、まだまだ人生は続くわけで。彼の悩みは尽きない模様。

岩田とすれ違い、彼女の隠していた事も目撃してしまい、踏み込むのかどうか。自分の秘密も打ち明けるのかどうか、と言う問題の答えも出てませんしねぇ。

 

まぁ竹さんの方も、ファーストプレイワンコインクリアという目標を掲げて、近く発売する「大連射2」に挑むことを決めていたようですが……その矢先、制作会社の倒産が決まったことをしって。

硬派なシューティングゲームを作る会社は減っている中、竹さんにとっても思い入れのあるタイトルを作って居た会社の終わり。それを見送り、同社最後のアーケードになる「大連射2」に挑む心情はいかほどだったろうか。

 

アーケードのゲームなんて、形に残らないものの極致でどこか歪んでる。けれど「歪むんだったら、とことん歪んで無駄なことを極めるのも、粋というものですよ」という竹さんの事、好きだなぁ。

長いこと彼の隣にいる麻美が高村に語ってくれた過去を思うに、竹さんもまたかなり不器用度高いですけど。そういうキャラわりとツボです。

でもズルいですよね。色々教えてくれて、でも最後は見せてくれないんだから。だから、高村も逃げられなくなったんですよ。割と既に沼にハマってたけど。

 

ショックを受けて、ゲーセンに居た事が学校にもバレて。2週間の停学措置を喰らって。でも親が責めずに「学校に行くまでにその理由を説明しなさい」と猶予を与えてくれる人であったのは良かった。

あとは、停学中にも電話かけてきた友人の仲君も愉快でしたね。野球に対して本気で、高村が違いを感じていた少年。

そんな仲君が伝えてきたのが「女にフラれた」なんだから笑えると言いますか。気落ちしてた高村が、浮上するきっかけになってくれた感じがして良い。

ふざけた話だけじゃなくて、『ゲーセンだろうと、同じ本気だ』と認めてくれたのも。

 

そこから本気でゲームに向き合い、残された課題を倒そうと本気を出すことにして。

こじれてしまった岩田との関係も、誤魔化そうと嘘を重ねた事を謝って、自分の本心をしっかりと伝えて行って。

もう彼は本気を出せるか迷っていた少年じゃないんだなぁ、とちょっと感慨深くなりましたね。

FORTHシリーズ 連射王<上>

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「本気であるということは、少なくとも、何らかの結論を出した時、初めて言える言葉だろ。結論を出す前だったら誰だって口で好きなように言える。しかし結論を出すところまで付き合い、失敗してもそれから目を逸らさずしっかり見て、その時こそ言えるか? 自分が本気だったと。そして――」

(略)

「結論を見ながらも、こう言えるかよ? まだ俺は本気である、と」

 

再読。

この『連射王』って作品は2007年に単行本で出たものが、2013年に電撃文庫から文庫かされて、そして今年の4月に電子書籍化されました。読むなら今! 

実際、川上稔先生の作品の中でオススメはなに? って聞かれたら、少し前まではコレの名前を挙げていましたね。今だったら電子専売の『川上稔短編集』も候補に入るので悩ましい。

 

今だと『終わりのクロニクル』は入手難易度の問題があるし、『境界線上のホライゾン』も面白いけどどうしても冊数が多くて厚いので入り口としてはどうなんだろうって気分になっちゃうのもあって、『連射王』をあげてました。上下巻でまとまってるので。

そういう長さからの判断もありますけど、『連射王』シンプルに好きなんですよねぇ……。

 

閑話休題。

主人公の高村は野球部に所属している高校3年生。野球は好きだったが、勝負事に本気になれず他の部員との間に温度差を感じていた。

同級生の多くが進路を定めて予備校や塾に通い始めている中で、未だに自分がどこに行きたいのか分からず、「自分は何かに本気に慣れるのか」と悩みを抱えていた。

 

そんな彼はたまにゲームセンターに行って、やることが分かりやすいからと格ゲーを好んでプレイしていた。

彼の通う学校の校則には、学校の行き帰りにゲームセンターなどに入ってはいけないとしっかり刻まれていて、バレたら停学と定められているそうで。

だからかゲーセン通いは不良と思っている幼馴染や体育会系ばかりが知り合いにいて、対戦モードをプレイしたことが無かったとか。

 

待ち合わせの時間つぶしとかに使っていただけみたいですが、ある日、彼はシューティングゲームを最高難易度に設定してプレイする人物を目撃して。彼が「本気だ」と口走ったこともあって、思わず最後まで見てしまったようですが……。

ゲームと言う遊びをする場所の「本気」。ワンコインノーコンテニュープレイに、彼は惹かれてSTGの世界にハマる事になるんですよね。

本気になれない自分が目撃した濃密な時間。その「本気」は自分にできるだろうか、と試行錯誤していくわけですが。

 

幼馴染の岩田という少女の事を融通が利かない、なんて評してましたけど。家庭用STGを始めて、毎回同じように負けるからには理由があるはずだと分析に走る君も、中々頑固と言うか似たもの同士の匂いを感じる。

岩田は新聞部所属で、野球部の練習にもよく取材に来ていたがここ最近は休むことが増えていて。家の都合と言うが、いざ彼女の実家であるラーメン屋に行っても居ない。

これまでと違う行動パターンを取っているのには気が付いたが、その理由とかは察せない。そして、彼女も秘密があるんだから、と自分のゲーセン通いも秘匿することにして。

どうにも不器用というか。ゲームに少しずつ本気になっていくパートと、幼馴染の距離に迷うパートがあって、すごい青春してるんですよね。

 

ゲーセンに通って挑戦を続ける中で、高村を引き付けたプレイをした竹さん達との交流も出てくるんですが、彼らの言葉も結構好きです。クリアまで行きたいなら応援します、と言ってくれるシーンとか。偏見と断りを入れた上で、ゲームの本質について語るところとか。

でも同時にどこか悪魔的です。一区切りついたところで「君は、ここで降りますか?」と問いかけたあたりとか、特に。でも、その問いは高村の決断を早めただけでいつかは同じ選択をした気もしますが。

ゲームの方に区切りはついて、けれど幼馴染との関係にはすれ違いから距離が生じてしまいましたが。高村君がどんな答えを出すか、是非見届けて欲しいですね。


川上稔短編集 パワーワードの尊い話がハッピーエンドで五本入り2

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電子専売の尊い話、第2弾!

個人的には1巻の方に好きな話が集まってたんですが、こちらもまた尊くて良かったです。


各話ごとの感想は下記。

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川上稔短編集 パワーワードの尊い話がハッピーエンドで五本入り1

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川上稔先生の短編ですよー!!

今回も電撃文庫BornDigitalとして、電子版のみ。

カクヨム連載『川上稔がフリースタイルで何かやってます。』で一時掲載していた作品をまとめたものです(ただし『最後に見るもの』は2020111日時点で掲載中)。

短編集1~2巻は「ハッピーエンドのラブコメ」でしたが、今回は「ハッピーエンドな尊い話」。尊ければいいので、現代だろうとファンタジー世界だろうと何でもアリアリなのは強い。

 

個人的なイチオシは『ひめたるもの』。フリスタは不定期に掲載作品が出し入れされてるんですが、消えるタイミングを失念してて再読しそこねたんですよね……。いつでも読めるようになって嬉しい。

尊い話12だと1の方が好きな話多かったですけど、2も面白かったので是非読んでください!


各話ごとの感想は下記。


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川上稔短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで5本入り2

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電子専売、川上稔先生の短編集第2弾。

今回もタイトル通り「パワーワードのラブコメ」が5本収録されてます。

収録作品の中だと『鍵の行き先』が一番好きですかねー。

『再会の夜』だけ描き下ろしで、他はカクヨム(『川上稔がフリースタイルで何かやってます』)に一度は載ったことがあるハズ。

出し入れが行われる事もあって、把握できてないんですよねぇ。

 

01:幸せの基準

コイツこういうヤツだった!

父が亡くなり、母と姉妹で三人暮らしになって。

仕事一直線となった母の代わりに、食事の準備をすることになった姉の話。

「母さん」「娘」呼びで個性が光るからマーすごいというか。

少しずつ腕を磨いていって。母の弁当なんかも作ってはいたが、高校進学を期に自分の分も作ることに。更に、妹の方でも学校でトラブルが発生して、給食取りやめで手間が三倍になってたのはお疲れ様ですとしか言うほかない。

 

冷食とかも解禁して、それっぽくまとめてそれなりに楽しんで食べていたけれど……クラスに、つまらなそうに弁当を食べている男子がいるのに気が付いて。

「そういうもの」として処理してましたが、ふとしたきっかけで会話して、それから踏み込んでみるのが、アクティブで凄い。

あれよあれよと、弁当交換したりしてましたが、寡黙君のワンテンポずれてる感じがしっかり描かれていたので、「こういうヤツだった!」ってツッコミに、そうだねって同意出来たのは笑えた。

 

02:星祭りの夜

皆、都合のいいことと、逃げ場になることを言ってほしいんだなあ、と。

 

単立の、変わった風習のある神社の娘。

いや風習が変わってるというか、神主の家系が変わってると言うべきなのかな……

オリジナル柄のタロット作って販売したり、占い出来るようにしたりした祖母が特にキャラ濃かった疑惑はありますが。

 

どちらかと言うとフィジカル系の神を奉っているが、恋愛系という事になっている神社の娘ということで、占いを頼まれたりするそうで。

何度も行う中で、小細工が出来る程度に腕を上げている辺り、手先は器用そうですね……

そんな彼女が見た「気付いてない彼」の事。  

色々と相談を持ち掛けられる側だから見える事とかもあって……でも、そんな彼女の方が最後気付かないとう見せ方がが上手いなぁと思いました。

 

03:鍵の行き先

自分の理想ってのが、自分じゃないのはチョイとキツい。

 

背が低い事を悩んでいる男子視点。

それをネタにしてからかわれることもあったため、心に鍵をかけた。

そして体格が影響しない趣味として、本を読むようになって。

自転車に乗って古書店巡りをしたり、版違いの文章違いを楽しんでいたりと、かなり性に合ってたんだろうなという感じはします。

自分とは違うタイプの読書家だ。私はわりと新しいのを多く読みたいので、あまり古典触れられてないですしね……元ネタ・原典に当たりたい気持ちはあるが、時間が足りない……

 

閑話休題。

2年に入ってからでも部活に入っておくと、内心とか色々関係するぞ、みたいな話を聞いて。

改めて調べてみたところ、文芸部の存在に気が付いて。たまたま窓の外から見た時に、古い装幀の文庫本を目撃したのもあって、部室に足を運ぶことに。

地の文で「背が低いのはこのための伏線か……! 伏線じゃねえよ」とセルフツッコミ入ってた場面では笑った。

 

名義だけの生徒が多いなかで、部室に足を運ぶ数少ない部員となって。

部長―彼とは真逆の背が高い女子―との交流がスタートしてくわけですが。この二人のやり取りが、微笑ましくて良い。

 

04:自由の置き場

「――このままがいい。続けたい。もっと良く出来るなら、そうしたい」

 

『フリスタ』の方に掲載された後書きによれば「頭の良い二人を出そう、と馬鹿な頭で考えたとき~」みたいな身もふたもないような表現をされていましたが。

高校から大学まで一貫性の学校で、一年の時に真面目にやった結果としてトップを取った少女。

 

内申点とか計算すると、23年は馬鹿でも上に行けることになって……これから自分がすることに意味はあるのか、と疑問を抱いて。

なので、1年の時に稼いだ点を減らさないように、最低限のラインは守りつつも自由を謳歌しようとした。

そんな彼女が、隣の席の男子と交流する話。それぞれの授業の受け方が、真逆で中々愉快でしたねー。

でも、描写少ない中で「濃かった」のはやっぱりあたしの弟君なのでは……

 

05:再会の夜

私が知らないものこそが、やがて私を自由にしてくれる。

 

書き下ろしエピソード。

湖を中心にした観光で栄えている地域。それなりに人口はあるけれど、都会ではない。

なので「都会」的な、開かれたエリアに行こうと思ったら、朝から家出て乗り換え三回で昼半ば、みたいな手間が居る。

 

遠出することを「文明摂取して来る」といったり、いざ足を運べば自分を「未開地のゴリラ」とか言ったりする、語彙のセンスが光る女子視点。

……地元の短大の隠語がアレで広まっている辺り、ある意味で地域色なのかなぁとか少し思いましたね。

 

受験を控えていて。進路に悩んで。

それもあって度々「文明摂取」に赴く中、駅で同じ学校の男子生徒を見かけて。

先を見据えて準備している彼と、まだ何かを探している最中の私の話。

微妙に噛み合ってないようで、でもちゃんと影響を与えてるのが、良い距離感だなぁと思いました。

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川上稔短編集 パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで5本入り1

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カクヨム連載の『川上稔がフリースタイルで何かやってます。』に掲載されていた短編の書籍化。

『フリスタ』は独特の運用してて、不定期に短編の出し入れがあるんですよねぇ。1巻収録で『フリスタ』に残ってるのは「恋知る人々」のみです。気になったら、まずこちらを試してみると良いかと。

4話以外は女性視点の短編で、どれもパワーワードというタイトルに偽りはないのでオススメ。

なお、このシリーズは「BornDigital」とある通り、電子専売となっているので要注意。

 

 

01:恋知る人々

ああそうか。皆、だから、そうだったのだ。いつもとか、昔からそうだったからじゃない。恋をして、ハジケたのだ。

 

人の心が読める少女の話。

昔からそういう物として受け入れていて、誰もが出来るものと思って日々を過ごしていた。

違和感を感じる事もあったが、自分の中で確定したのが中学二年の時ってのは、大分強い。

かつて「無口だねぇ」と評価されたのを、他とは違う個性と受け入れてキャラ付していたとは言いますが、多分それ抜きにしても「無口」だったろ、という感じがある。

 

でもまー、ありますよね。結局のところ、他人がどういう世界を見てるかなんてわからないわけですから。

小学校の頃どんどん目つきが悪くなった子が居て、何ごとかと思えば単純に目が悪くなったので細目になってただけとか言う話を聞いたことがある。

「なんでもっと早く言わなかったの」「みんなこんな感じだと思ってた」と宣ったとかなんとか。あ、私じゃないです。念のため。

 

人の考えが分かる事を活かして、適切な距離を保てるようになって。

そうしたら長老呼びされて、色々と相談を持ち込まれるようになったりもしていましたが。

恋愛相談とかもこなしてはきたけれど、いざ自分が恋をした時に戸惑っている姿は微笑ましくて良いですねー。

 

02:素数の距離÷2

いいじゃないですか。

頑張っている人がいて、私は知っているんですから。

 

告白の木。その木の下で告白すると、それが叶うという伝説。

まー、作中のキャラに「一方的な効果の呪い系アーティファクト」とか言われてますけど。

同じような伝説がある木が市内に三本もあれば、なんやかんや言われても仕方ないか……

テレビの取材が来たりして、外に進学すると話題に上がったりするそうで、町おこしにはつながってるんじゃないですかね、えぇ。

 

街の告白押しに辟易してるキャラが曰くを調べて、やっぱり呪いのアーティファクトじゃないですか! になっていたのには正直笑った。

一度恋で失敗して凹んでしまって。自分にとっては縁遠いものだと思うようになった。

……少しずつ復調はしていたみたいですけど。

 

その切っ掛けは例えば、期待されて入部したのに故障してしまった後輩の噂を聞いて、自分の不幸は小さいものだと思えるようになったことだったり。

受験期に心が乾燥し、気分転換として告白の木まで散歩するという習慣をつけた事だったりことなんですが。

高校に進学したと思ったら、転機が訪れるの三年になってからなんですから、時間の使い方が贅沢と言うか。いい性格してる友人からの通話が笑えて好き。

 

03:地獄の片隅で笑う

私は、笑う人が好きだ。

 

個人的にはコレが一番笑えて好きでしたねー。

「やせいの開かずの踏切があらわれた!」と言った後に「野性じゃねえよ、公的だよ」って地の文でツッコミ入れてるのが卑怯だと思いました。

 

出版社らや映像関係のプロダクションやら。

クリエイティブなアレコレがまとまった向こう側と、喫茶店や食事処の多いこちら側。

作家がこちらで「書いて」、向こうで「形にする」サイクルが出来上がった地域。

踏切が出来て利便性が上がった一方、不慮の事態で捕まると多大な時間ロスを食らう。

 

それ故に、地獄広場。時間厳守な案件とかがあると、うっかりで死ねる場所。

悲鳴の連鎖が発生する事もあるとか。なんとおっかない場所であろうか……。ちなみに、長時間しまってるから熱中症の温床でもあって、それ関連でも地獄らしいですけど。二重に死ねる。

あと、色々ぼかしてるのに一か所ハッキリ名前出てるのは笑った。使ったことないのにイメージが……

 

こちら側で仕事をしていたとある作家が見続けた、青年の話。背中押してくれた店長はグッジョブですが、業務上知り得た事口外していいの……? とちょっと心配にはなった。いや店長好きですけど。

 

04:嘘で叶える約束

「何、泣いてんだよ」

 

唯一の男性視点の短編。

学校の桜の木の下には、死体が埋まっているとか言う噂があって……その実態は男の幽霊が巣食っているだけなんですが。

幽霊ゆえに、誰にも見えず聞こえず触れられず。

割と自由気ままに幽霊ライフを満喫していたある日、彼の事を見られる転入生がやってきて。

 

彼女とだけは会話が出来るし、彼女にだけは触れられる。「設定的にかなり矛盾発生する現象だと思うなあ」とか言われてましたが。

時に転入生ちゃんを泣かせながらも検証と交流が続いていきますが。

どうして彼女にだけ見えるのか。もちろん理由があって……

馬鹿正直に幽霊やってた愚直さも、桜の下にいた幽霊を連れ出した転入生の行動も、どちらも良い按配で。

 

05:未来の正直

自分を変えたものに対する想いを、好きと呼ぶのだ。

 

文科系の部活が弱く、色々と合わさった結果、美術部に漫画書く人が集まった高校。

進学し、しばらくたってからそれを知って、遅れて入部した少女の話。

幼少期アニメに惚れ込んで絵を描き始め、アニメのコミカライズを見て漫画に流れ、自分でも創作をするようになった。

 

描くことは続けていたけれど、それまでは誰に見せるでもなく……

同じような趣味を抱く集団の中で、初めて「外」の意見に触れて、少しずつ変化してく話。

「自分が分かってるから」でつい省略してしまいがちなことって、ありますよね……TRPGでシナリオ組む時とか、GMが背景知ったうえで怪しいキャラ配置しても、PLには伝わらなくてすれ違う、とかありますし。情報共有大事。まぁTRPGならPLの発想とかで思いもよらぬ展開からゴールとかで逆に面白くなったりもしますが。

 

閑話休題。

パワーワードラブコメ内の作品は、主人公視点で地の文で内心が語られています。。
この短編で言うと、想いを自覚したときの「簡単なことが、解っていなかったのだと思う」の下りが好きですねー。

EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩のウハウハザブーン 下

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「――またいつか、共に同じ夢を見よう。今度は、現実に出来る夢を」


キャンプ場に到着して合宿編スタート。

明かせる範囲で事情を明かして線引きをしたり、トレーニングに勤しんだり。

純粋に楽しんでる感じがしてよいですねー。

90年代が舞台でありつつ、バランサーによって構成された環境と言うのがやっぱりシチュエーションとして強い。

 

当時は~ですが、○○年に新発見がありますとか普通に面白いですし。

神話関係なんかもあまり詳しくはないので、解説回が純粋に楽しい。情報量が多いので、飲み込むのに時間かかりますが。

知識神が二人いて、それぞれスタンスが異なって違った味わいになってるのも凄い。

 

思兼先輩が、神委から来たデメテルとアテナに対して、嘘を吐かずに騙して右往左往させているのは笑えました。

いやまぁ、知らない地域の電車とか迷いかねないのは分かる。下調べ大事。調べてなお迷う人はいますけどね。えぇ、そういう友人が学生時代にいまして……

 

閑話休題。

木戸先輩を交えてのテラフォーミング。水を創る方法論で、住良木が提案した方法が見事に穴をついているというか、ドッキリみたいな方法で笑った。

雷同達のイメージトレーニングにも付いていけてましたし、知識神の解説に対しても良い反応示す事があるので、住良木、わりと頭良いというか。発想力がある。

まぁ、その発想力を活かして、巨乳信仰をソッコで始めるので、えぇ。バランサーの猿呼ばわりも順当かな……みたいに思えてくるんですが。テンションの上下が激しい。

 

木戸先輩の真名と、住良木に対しての微妙な距離感についても事情が明らかになっていましたが。

距離を取ろうとする彼女の気持ちも分かるけど、それを良しとしなかった人類の行動はナイスでした。

他シリーズでもあった、連続した挿絵も良い感じでしたし。持っていた武装も痺れた。

テュポーンの持つ雷とか、えぇ。AHEADシリーズで見た事ある気がしますね……

そういう繋がりが見られるとやっぱり嬉しくなります。ウハウハですね。

EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩のウハウハザブーン 上

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「自分だけで考えて悩んでいたことって、外のみんながよってたかって助けてくれると、何処かに“ああ、これでいいかな”って思えるものが出てくると、そう思います」

 

EDGEシリーズ、神々のいない星で、最新刊。

たった一人の人間が、神様たちの力を借りてテラフォーミングする、と言う規模の大きな事をしてるのに、作中の雰囲気は結構緩め。

前巻同様、アイコン付のチャット形式で会話主体なので、読みやすいですよ。分量は多いですが。

 

川で水の精霊が、地脈の乱れによって暴れているのでそれを鎮めに行ったり。

ビルガメスとかの協力も得られるようになって、戦力は十分なので、割とサクサク戦闘終わるのでいいですね。

まぁ、やり方に不慣れなのもあって、一回分裂させてしまったりしてましたが。その後すぐ、対処しなおしている辺り柔軟性あるなー。

川精霊たちの《わー》口調が可愛くて好き。和む。

 

90年代エピソードを交えつつ、そこから発展していく未来の話があったり。

神様や神話に対する考察があったりと、読み応えも抜群。

エシュタルのエビフ山の下りとか、つい笑ってしまった。

「……何してるのあの馬鹿。何か嫌なことでもあったの?」とか《――誰が使うと言いました?》とか。住良木が思わず素のリアクションしてる辺り、本当にもう。バランサーもいい性格してて楽しい。

 

エシュタルが居るのに、新しい神委の監査がくるという話があったり。監査とはまた別の人員がやって来たり。住良木に対してちょっと思う所があるらしい、木戸先輩の不審な動きがあったり。

色々とイベントが起きて、解決は下巻へ持ち越しですが。今回も楽しかったです。

住良木を餌にすると、割とあっさり釣れる木戸先輩が可愛くていいと思います。

 

境界線上のホライゾンNEXT BOX 序章編

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「死を悲しめ。ただ、哀れむな。そして落ち着いたならば、その人が生き切ったことを誇れ。――そういうことだと私は思っている」

 

『境界線上のホライゾン』本編完結後の物語です。

じゃあ、本編を読んでいないと楽しめないのか、と言うとそれも違う。

冒頭に「世界観説明」、「メインキャラクター説明」、「シリーズ各巻ダイジェスト」が収録されていて、最低限の情報は把握できます。

本編では、過去の幻が浮かび上がる怪異が生じています。

そこに至るまでどんな出来事があったのか。それを振り返りながら異変を解決しようとしていくので、『ホライゾン』の入り口としてかなり適している印象。

実際コンセプトは「これから始めるホライゾン」だったみたいですしね。

……ここからホライゾン本編に戻ると、まだ弾けてないノリキとかウォーモンガーじゃない正純とかを見られるのか。それはそれで楽しそうだな……

 

それに本編は『神々のいない星で』のようにチャットノベルのような、アイコン付の会話主体で進んでいくので、読みやすいです。

電子版を購入したのですが、アイコンに色がついていて分かりやすかったですしね。

気になる方はカクヨムの方でも連載していたはずなので、そちらを確認してみるのも手です。……実はカクヨム版未読なんですよね。読みそびれている。その内読みたい。

 

過去の幻影は、ターニングポイントとなった所を繰り返し再生していて。

かつて、力を合わせ乗り越えて来た。けれど、幻影は不完全で、その時に居た人材が欠けているために、事態を解決できない。

例えば、二代と相対するときに賢姉がいない、みたいな形。

 

故に現在の彼ら彼女らが介入して、沈静化を図るわけですが。公式のIFストーリーと言いますか、ある意味強くてニューゲームと言うか。

武蔵勢が味方を増やしたり、地力を上げて来た成長の様子をしっかり見せてくれて、楽しかったです。

 

両親と本舗組推しの豊が、一番いい空気吸っているというか。本編通して一番満喫している感じがして最高でしたね。本人も途中で「私が最高に楽しいから最高です……!」とか言ってましたし。

他の過去再現においても、点蔵とメアリのやり取りが健在……というかメアリの破壊力が増してるようで、そりゃあ通神帯も盛り上がるよなぁとか。

 

まさかの世話子様のレギュラー化。しかも、割と武蔵に馴染んでるのも笑える。

失敗したときの謎のブザー音で自動人形たちがワイワイやってるのですとか、水が追い付いてこなかった二代とか。

気に入った場面を挙げて行くとキリがないくらい、変わらずのネタの宝庫で充実した一冊でありました。


 

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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