ico_grade6_5

――正しくなくたっていいのだ。

人がいなくなる御伽噺。『幽霊街』と『呪い笛吹き』。
かつて聞いたその話さながらに無人となった村を見つけた税務官のイセリナが、幼馴染の軍師カミナと共に調査に向かう。
イセリナがメインのように思えますが、結局のところはカミナが主人公なのかなぁ、とか。
いや、イセリナがキーパーソンであることには変わりないですけど。

調査に向かってみれば、行った先々で死人が出る、呪われたような道程に。
そして、結局手がかりを得られずに帰還することになってしまう…かと思いきや。
種明かしされていく展開がこの上なく見事でした。
イセリナと一緒に驚き通しでしたね。

「幕後 おとぎあかし」というタイトルで明かされる、『幽霊街』と『呪い笛吹き』の本質。
そこまで踏まえて作戦を考えているとか、どんな超人ですか。
まぁ、色々語りたい部分とかはあるんですよね。
ただ、下手に内容語ろうとするとネタバレになるんですよねぇ。
ネタバレ考慮しない感想も書いてますけど、この本に関しては、最初の一回、新鮮に驚いてほしいと思うんですね。

まぁ、本筋に関係なく気に入ったところで言えば、カミナの貴族名「シュート」。
裁判で有罪になり、死刑が執行された後に、冤罪が発覚した祖先にあやかった名前。
なぜ、そんな名前が付けられたのか。
カミナの父は「――正しくなくたって、いいのだ」と小さく笑っていったそうですが。
この名前が、カミナの行動を支える柱の一つで逢ったようには思います。
単に功績の大きい相手ではなく、こういう日陰を選ぶというのもある意味勇気がいることだったんじゃないかなーとか思ったり。

あとは、カミナに次いで、ノルンが好きですね。
自分に信念を持っている、騎士らしい騎士。
ラノベ的ななんちゃって騎士ではなく、自分の選んだ道のためならば、人を傷つけられる覚悟を持っているっていうのは好感が持てます。

「今はただの騎士です。騎士とは、主君を見つけた剣士のことです」
「けれど夜明けを迎えるには夜を歩かねばならない。(略)」

まぁ、こんな感じで、場面とここまでつながる描写を読んでいないと、ちょっと切れ味鈍りますけど、ノルンの台詞は結構好きです。
後は挿絵も綺麗なので、文句なしですねー。
前の巻でも思いましたけど、最後におかれている見開きのイラストが特に。
物語の終わった余韻を感じさせるいいイラストなんですよね。