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あたしは今、天使を描いている。
あたしには彼女を理解できない。
けれど、好きになることはできる。
だから、あたしはあの夜彼女と一緒に過ごしたのだ。一生繋がれることになるはずの手錠を、自分で自分に嵌めたのだ。

第1部 ハルジョオン
第2部 ケンタウロス
第3部 サラパンド
終章  hashaby

3冊構成ですが、1冊に1部。
最後の3巻のみ、3部と終章が収録されています。
で、全ての章において視点がかわり、他のキャラクターの違った姿が見えていくのはいい感じですね。
男のキャラクターもいるんですが、視点はすべて少女たちのものとなっています。

夏の終わりに行われる演劇祭。
その舞台背景としての大きな絵を制作することになった少女たち。
学内でも有名な、二人組。
久瀬香澄に斎藤芳野。
いつも一緒にいるが、可愛さをアピールするでもなく。
キャラの一人からは「二人だけで完結している」と称されている女子二人。

1部では、その二人とともに制作にかかわることになったもう一人の少女、蓮見毬子の視点から描かれています。
青春しているなあ、というか、若々しい雰囲気の中に苦さとか不穏さを混ぜるのがうまいなぁと思います。 
香澄の住居である『船着き場のある家』では、付近で人が死んでいたという謂れがあった。
貴島月彦、志摩暁臣。
香澄の親戚とかの理由で、彼らも『船着き場のある家』にやってきます。
それぞれが何らかの形で事故に関係していたり、気になることがあったりと行動していますが、毬子も関係しているじゃないか、と切り込まれて。

2部は、コンビの片割れ、 斎藤芳野の視点。
憧れの対象として見られている芳野。
でもこうして内面を見てみると、結構普通の学生をやっているんだなぁ、という感じ。
絵のセンスがあって、美大に進もうと考えていて。
ただそれだけではなく、かつてあった事件についての話も少しずつ進みますね。
それぞれがかつてあった事件について、自分なりの解釈をしたり、断片的な情報しか持っていなかったりして、進んでませんでしたが。
少しずつ会話によって情報が引き出されていきます。
いったいどんな真相が明らかになるのかと思ったら、巻末が驚きの展開過ぎて。
これ一体どうやって続けるのかと思いましたよ。 

そして完結の3巻。
事件について、真相を解き明かすべくいろいろと月彦が動いています。
この話の登場人物はほとんどが、過去の事件における当事者だったり、あるいは共犯だったりするわけですが。
探偵のように一席ぶった月彦。
それはそれで一つの解釈というか、ピースが足りない状態でパズルをすればそんな形になるのか、という感じ。
終章で語られなかった真実が明らかになるわけですが。
面白かったですよ。すらすら読めました。
 
 
蛇行する川のほとり〈1〉
恩田 陸
中央公論新社
2002-12





蛇行する川のほとり〈2〉
恩田 陸
中央公論新社
2003-04

蛇行する川のほとり〈3〉
恩田 陸
中央公論新社
2003-08-26