気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

月の白さを知りてまどろむ

月の白さを知りてまどろむ3

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「ずいぶん待たせた」

ただ一人の客を待って、彼女はこの館にいた。

恋情を捧ぐ男のために。揺らぐ不安を抱えて。

「愛している」

 

シリーズ完結巻。第五譚と後日譚を収録。

テセド・ザラスと対峙した際に残されたサァリの血。それを彼らは回収し……さらに服用することによって、自己の兵隊の強化を図ろうとして。

そもそもそうやって活用する技術があるあたり、外洋国の悪辣さというのが光って見えましたねぇ……。

更には懲りれば良いもののアイリーデにまで踏み込んで、より多くを望もうという傲慢さを見せられて腹立たしいものはありました。

 

様々な思惑から大陸各地が騒がしくなってる中、アイリーデもその喧噪から無関係ではいられず。

……むしろ外洋国関係者や、流浪の神性と封じられた蛇とかの思惑も蠢いている以上、中心にあると言っても過言ではないんですけども。

 

それはそれとして、シシュの中にある思いもここにきて明確なものとなったというか。今までも抱いていたそれを、ついにシシュはサァリに開示しようとするわけですが。

結婚の申し込みの為に立会人を設けようとしたりだとか考えるあたり、相変わらずのズレっぷり。どこまでも真面目で堅物な彼だからこその対応で、ちょっとクスっとはしちゃいましたけども。

堅物すぎて彼女を守るためにいるから「死なないで」の返事に、まっすぐ応えてしまうあたりがもう……。

ちょっと拗れかけてましたが、敵がハッキリと動きを見せたことによって決断の時が早まったのは、良かったのやら悪かったのやら。

 

出来れば2人のペースで進んで行って欲しかったものですが、ままなりませんねぇ。

サァリがただ一人の客を定めてからもトラブルが絶えませんでしたし。状況は落ち着かないものでしだけど、客取りのシーンのやり取りとか、とても印象深くて好きなんですよねぇ。サァリ視点の「私の恋のすべて」とか加筆シーンでしたよね? とても良かった。

 

兄神と対峙することになった場面で、最後の一撃になったのがあの人物が遺したものであったこととか、味わい深くて好き。

あとは先見の巫の結末とかも良かったですよね……。これはこれで人の業なんでしょうけど、だからこそシシュとサァリの交流が見られたのを思うと、私は……否定できないんだよなぁ。

 

後日譚は完全書下ろしエピソード。

シシュは自分のいる場所をサァリの隣と定めて、生活拠点をアイリーデに移すことを決めて。それでも、兄とのつながりであるし地位があった方が楽な時もある、ということで王弟としての立場はそのままにすることが決まって。

実際、低いながらも王位継承権を持つ人がシシュとのつながりを求めてアイリーデにやってきたり、ちょっかいを掛けてくる輩が居たりしましたが。

本編で戦った敵に比べれば小物だったので安心して読めましたねぇ。サァリが可愛くてとても良い後日譚でした。

 

WEBにはこれより先のエピソードもあるにはあるんですが、ちょっと毛色が違うエピソードも入ってくるので、書籍版ハッピーエンドやったー、で良い気がしますよ、はい。

ちなみにWEB版に手を出すのであれば、2巻の「章外:祝福」とか読み返すと味が深くなるとは思います。

 

今回SSがどこも気になったので、珍しく3冊買いをしてしまったわけですが。

アニメイト&書泉特典「誕生祝い」は、実にシシュらしくて笑えました。街の人も彼の理解度上がっていってるの良いなぁ。十年修行したいじゃないのよ。

ゲーマーズ特典「初恋」は、鉄刃の勘違い完結編。いつでも勘違いしてる鉄刃さん、面白エピソードとして大好きだったんですけど、彼もまたアイリーデの人間だったというか。良く見てるなぁ、と思いました。こういうの、当事者ほど気付きにくいと言いますしホラ……。まぁシシュだから、というのもあるでしょうけどね。

メロブ特典『朝寝』は……うん、サァリもまたアイリーデの女だなぁというか。とても「夜の女」っぽくて好きです。

月の白さを知りてまどろむ2

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「捨てられて、どうして殉じられる?」

「そうすべきだと思った。神と正面から向き合うならば人も誠意を尽くさねば」

「裏切られてもか」

「少なくとも、己が納得できるまで」

 

第三譚と第四譚を収録。

ちなみに私は紙版を購入したんですが、各ストアの電子書籍版では『紅き唇の語りし夜は』という短編が特典としてついてくるそうです。

こちらは四譚~五譚の間のエピソードとして描かれた、古宮先生が以前同人誌として発売された短編なのですが、再録された形になるので読んだことない方にはとてもオススメです。

 

短期間シシュが王都に行ったりとかもしてますが、物語の主な舞台はアイリーデへと戻ります。

第三譚では、アイドが追放されたことで新たに化生斬りが補充されることになって。

来る途中で行方不明になって、捜索に行って発見したと思ったら厄介ごとを持ってくるというどうにもイラっとするタイプではありましたね……。

 

補充の下りでアイリーデの化生斬りについての話が出てきたのは笑いました。

5人定員だけど、シシュの前任は高齢で退任したが後半は働いていなかったとか。その関係で4人体制に慣れていたから補充が遅れたとか。やたらツッコミどころばっかりなのが個人的にはツボ。

 

神話正統を継ぐ月白の主であるサァリは、これまでも描かれた通り人と神の二面性をもつ「異種」なわけですが。

1巻では王都出身のシシュと夜の街アイリーデ生まれの娼妓サァリという、生まれによる価値観や性格の違いによって生まれる凸凹コンビ感じが微笑ましく映っていたわけですが。

今回収録された三譚~四譚のあたりは、人と神という異種ゆえに生じるズレが強くなってきたように思います。

 

サァリは月白の主として祖母から教えを受けていたと言いますが……なぜ母ではなかったのか。その真実についても明かされたりもします。

価値観の違いというのは、この作品を通して重要になるポイントなのかもしれませんね。

第四譚での不文律に関してのトラブルも、ある意味ではその類ですし。

不文律--明文化されず、暗黙の了解となっている規則。神代からの歴史のあるアイリーデにも当然それはあって、それを巡ったやり取りも生じたわけですが。

 

……明示されないとわからないものというのは、人の心の内にもあるんですよね。分かることと分からないこと、言うべきことと言いたくないこと。いろんな思いと選択が交差した結末が今回描かれました。

異類婚姻譚らしいすれ違いのなかでも、サァリとシシュそれぞれのらしさが光っていて良かった。

「章外:祝福」として書き下ろされたエピソードですが、書籍のみの読者には分からない部分が、WEB最新話まで読んでると刺さって痛かった。

月の白さを知りてまどろむ

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「ならよかった。まだあなたの役にも、あなたが大事にするこの街の役にも立っていないからな」

(略)

「充分よくしてもらってる。だから……きっとここに帰ってきてくださいね」

 

WEBで大好きだった作品の書籍化!! WEBでいう第二譚まで収録されていますよー。

もう楽しみで楽しみでならなかったんですが、その期待に応えてくれる最高の1冊でしたね。

これ単体で読み始められる異世界ファンタジーであり、帯に在る通りの異類婚姻譚でもあります。1巻だとまだ出会ったばかりではあるんですけど、この時期のもどかしい距離感もやっぱりいいなぁ。

WEB既読でしたが加筆修正入ってて初見のエピソードがあったし、表現も分かりやすくなっていたので、とても楽しかったです。

 

古の時代に世界を救った神は、対価として人に「酒」と「音楽」と「人肌」を求めた。

享楽街アイリーデという、その伝統を今なお継承し続けている場所に王都から主人公のシシュがやってきた事で物語が動き始めます。

この世界では人の集まるところにどこからともなく生じる「化生」という赤い目の怪物が存在して……。

シシュはそれを見ることが出来る素質があったため、アイリーデで欠員が出た「化生斬り」の応援として派遣されることになります。

 

そして彼は化生斬りの同僚となるトーマから、神話正統の妓館「月白」の主でありこの街でただ一人「巫」と呼ばれる異能持ちの少女サァリを紹介されます。

化生斬りの仕事を手伝う一方で、彼女自身もまた娼妓としての顔を持つわけですが。

神話に由来する「月白」は女の方が客を選ぶ、という伝統がある店であること。月白の主である彼女が選ぶ客は生涯でただ一人であること、などなど。

歴史が長い分、不文律なども多く……シシュは王都とは何もかも違うこの街に馴染もうと奮闘していくわけですが。

 

タイミング悪くというか、良くというか。アイリーデで化生関連の騒動が増え始めて……。

この街が「神話の伝統を継いでいる」という事の重みと向き合っていくことになります。

堅物で真面目なシシュと、月白を継いだばかりで頑張ろうとしてるサァリのやり取りが本当に微笑ましくて良かったです。

第二譚だとサァリの持つ別の顔を見る事が出来たり、シシュが珍しく感情を見せてくれるのも良き。
この国の王が策を巡らせる描写も見られるんですが……秘密主義で目をかけてるシシュをからかってくるのはちょっと苦手ではあります。いいキャラしてるんですけどね。
だからシシュが感情的になったシーンは、やっぱり多少はそういう気持ちにもなるよね! って思いながら読んでました。333Pあたり。
まぁシシュ王への忠義は厚いんですけど。100%肯定するのではなく、思う所があるのは人間味あっていいなぁと思うのですよ。

 

紙版初版だと帯にQRコードがついていたり、アニメイトとかで買うとシリアルコードが貰えて、挿絵の在る部分にボイスつけた「挿ボイス」が聞ける特典があるんですよ。

それで聞くとシシュが格好いいし、サァリが本当に可愛くて可愛くて仕方がない。アンメモみたいにオーディオ化してくれないかな……。
是非2巻以降も出て欲しいものです。コミカライズも決定してるので、続刊でないなんてことはそうそうないと思いますが。


「no-seen flower」百題感想 月白編

正式名称は『月の白さをしりてまどろむ』。
月白の百題は5個目にしかなくて、だいたい第伍譚読了後推奨な感じですねー。
「この世の真理」は物語開始前の王と巫のエピソードなので、コレは先に読んでもいいですが。
……でも、王の巫の願いについて描かれている話でもあるので、本編読んでからの方が、オススメかなぁ。
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