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「どうして神様は悪い願いばかり聞いてくれるんだろうね」
「…きっと」
「悪いことを願って幸せをつかもうとしたから 天罰が下ったんだ」

掲載誌的にはBL。Amazonの分類でも、「コミック・ラノベ・BL」に入ってますし。
ただまぁ、そういった要素っていうのはほとんどないですね。
あきさんのイラストが好みで購入。
画も話も結構好きなんですけど、結局のところどうして歌姫が歌をささげないといけないのか。そもそも国王の血筋に男児しか生まれないっていうのはどういうことなのか、とか疑問が多くて、説明が足りないかなーっていう不満は少しあります。
ただまぁ、それがあっても結構いい作品だとは思いましたよ。
1巻完結になっているんですが、もう1冊分くらい書いて世界観の補足してくれたらもっと面白くなっていたんじゃないかなぁ。

さて、本編。
女の「歌姫」が歌を歌い、彼女たちが歌い続ける限り、国は平安を保つとされている。
逆に、そうやって保たれている国の「国王」は、男のみがその役目を果たす。
だがある村には、居ないはずの男の「歌姫」が存在していて……?
第1話~第5話まで。
第1話で最新の状況を描き、そこに至るまでの描写を4~5話で描いています。
より正確に言うなら最新は5話のラストの当たりなんですけどね。

国家守護の歌をささげる歌姫は、その恩恵を守ろうとする村人たちの監視のもとに歌を歌う。関係が凍り付いているんですねー。どうにか改善しようという動きがまったくなかったとは言いませんが、徒労に終わった者が多いようで
歌姫の「能力」っていうのが結局よーわからん。

1話で、カインの放浪の原因を「村中でマリアばかり大事にするから拗ねて家で」とトーマスが語っているのがなぁ。そういう面もあるでしょうし、逃げたっていうのも嘘ではないんだと思いますけど。どうにももやもやするといいますか。

歌姫という立場に救いがないんですよね。村人もその恩恵にあずかっているというよりはまさしく寄生しているような状態で。持ち上げてやっているんだから言うこと聞け、みたいな雰囲気があるのはすごく気に食わない。
その中で、トーマスがいろいろと動いて、状況を変えようとしているのは、実って欲しいと思いますねー。

あの村で起きた悲劇は、マリアもカインもトーマスも、歌姫の母親も。誰も彼もが、一言足りなかったが故のものでもあるのかなーとか思ったりして。誰かが、もう少し声を上げていれば。なんてことをつい空想してしまう。
哀しい事があったからこそ、最後のシーンが映えるとは思いますがね。

「『今まで通り』って一番簡単そうだけど 今まで何もなくたってこれかもそのままで大丈夫とは限らないわ」
「『何もなかった』んじゃない『何も起きなかった』だけ 気付かなかっただけでどこかに破たんが必ずあったはずなのよ」

エマの言葉が、歌姫ってこともあってこの世界だと重いよなぁ。必死にやっていることにすがりついているものがいて、特別化と思ったら、それを気にしていない人もいるんだ、と。それはある種の絶望なんじゃないかと。吹っ切って行動しているあたりが強さ、なんでしょうけど。

読み切り掲載だった「ダリカ」も巻末に収録されています。
かつて存在した神を再度作ろうとし失敗。破壊を好む悪魔のよな存在が誕生してしまった。そして、今、その悪魔の子から「神の子」には必要ない存在を取り除いて作られたのが「ダリカ」。ただ、これも問題があって、取り去ったはずのものを得ようと動くことがあり、その兆候が視られたら処分しないといけない…とまぁ、そんな感じの話。
結構面白かったと思いますよー。

歌姫 (ゼロコミックス)
あき
リブレ出版
2006-12-09