気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

珪素

異修羅Ⅵ 栄光簒奪者

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「諦めないぞ……ここで諦めたら、私は私でなくなってしまう。私も、諦めたりはしないぞ。アルス。貴様に追いつくのだ。そのためにやってきたのだ……!」

 

おぞましきトロアは、六合上覧で敗退した宿敵星馳せアルスが亡き父から奪ったヒレンジンケンの光の魔剣を回収を最後の仕事としてワイテへ帰還しようとしていた。

しかしその行いは、宝を求める冒険者アルスを刺激することになり……因縁のアルスVSトロアという、六合上覧外での修羅同士の戦いが勃発することになるわけです。

 

死んでいるハズのアルスが動いたカラクリは、彼が奪ってきた宝の中にあったチックラロックの永久機械の作用だった。肉体の喪失部分を機械に置き換えて代用してくれるが……使った時点で以前とは同じ生命体として在ることはできず、意志もドンドン失われていく。

製作理念としては肉体を機械で補って生きていくためのものだったんでしょうが、制御しきれず利用者すら蝕むならそれは欠陥品だよ……。

しかし使った宝が欠陥品だったとしても。それを扱うのが星馳せアルスとなればその脅威は計り知れないわけですよ。

 

癖の強い修羅が集うとなれば黄都の周囲で騒動が起きることは避けられず……ゆえにこそ、二十九官もまたそれに備えていた。

相手の弱みに付け込んで蹴落としている、同じ組織の人間だけど完全に背中を預けられるような信頼のない内ゲバ好きの集いという側面ばかり強く見えていましたが。

黄都に対してその力を使う者に対して、魔王自称者認定をして、一丸となって戦いに望んでいたのは驚きましたし格好良かったですね。本物の魔王時代から続く戦時体制、というだけの事はある。

 

一方そんなアルスと因縁のあるハルゲントは……冬のルクノカという脅威を擁立し黄都に危機を招いた狂人と評され、アルスが敗れたことによる喪失感もあって、長期療養を命じられて病院に押し込まれることに。

そこで柳の剣のソウジロウと出会って、「恐怖」についての話だったりをしているの、予期せぬ出会いでしたけど不思議とかみ合っている感じがして面白かったですね。

 

しかしまぁ宝を駆使して暴れまわるアルス、本当に恐ろしかったですね。

勇者候補たちへ協力要請がでてシャルクやツーが駆けつけてくれたり、二十九官や黄都の一兵卒だって奮闘して……それでも被害が積み重なっていく。

……こんな恐ろしいアルスを打ち倒すルクノカを擁立してきたら、そりゃハルゲントの狂人評価は順当だろうな……みたいな気持ちも沸きましたが。

 

でも、ハルゲントの狂気って凡人の無謀の枠に収まっているというか。それで犠牲になった部下たちからすればたまったもんじゃないでしょうけど。6巻内で、本物の魔王が現れる前に最悪の魔王と称されていた色彩のイジックの暴虐を見せられると、狂気度合いで言うと常人よりでしょとも思う。

凡人だけど夢に向かって足を止めることをしなかった。自分が「余分」な存在であることを自覚した上で足掻き続けた。多くの人には愚かと言われるだろうけど、その在り方を好ましく思った冒険者が居て……その絆があったからこそ、今回の終わりを迎えることになったのが切なくて悲しい。

至るべき結末だった、感もありますが。第二部完結に相応しい激闘であったと思います。

異修羅Ⅴ 潜在異形種

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「今は進まずにいても、いつか戦いに来る。お前に言ったその強がりを……じゃあ、今の俺が守れなくて、どうする……」

 

今回は逆理のヒロトたちと、黒曜陣営の描写が多かったのでいつも以上に暗躍してるなぁ……って感じがありました。

メレとシャルクの戦いみたいに派手なシーンもありましたけども。

リナリスが空気感染できる得意な血鬼である、という切り札を活かして色々と工作を働いていたわけですが。

ジギタ・ソギはその動きを感じ取って「見えない敵」と呼称し、的確な動きを取っていたんだからお見事。

 

リナリスもジギタ・ソギもヒロトも。

それぞれタイプが違いますけれど、策謀を張り巡らせる力が秀でているのは確かです。

ただ、六合上覧に挑むような修羅に近しい彼等であっても決して万能ではなく……。

例えばリナリスは、表で動く担当だったゼルジルガが見事に成果を上げて戦力を増強することに成功していたわけですが。終盤の展開では、配下を失う失態を演じてもいるわけですし。

ヒロトやジギタ・ソギもまた、この六合上覧を通じて達成したい目標の為に、い協力関係で会ったオゾネズマに伏せていた情報があり……それが耐えがたい喪失に繋がっていくのがままなりませんね。

 

軸のキヤズナという魔王自称者が作成したメステルエクシルという特級の戦力が、状況をかなり引っ掻き回すコマになってしまったことが今後にどう影響していくのかは気になるところです。

参加者がバチバチやりあうだけじゃなくて、擁立者である二十九官の間でも相変わらずの工作合戦があって。

メレとシャルクの戦いにおいて、互いに有利な戦場を確立しようと噂を流した程度は本当に可愛いもので。失点を演じた相手から速攻で権限を剝奪して蓄えた資材を奪いにかかっているの、改めて恐ろしい場所だなと思いましたね……。

でも、メレと彼の擁立者である空雷のカヨンとのやりとりだったり、戒心のクウロとおぞましきトロアの交流とかはちょっとホッとしたというか。この業の深い戦いの中でも……いや、だからこそ輝いて見えるものはあるんだなぁと思いました。



異修羅Ⅳ 光陰英雄刑

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「そうだよ、何もしなかった。それが俺達の罪なんだ」

 

六合上覧、第三~第五試合が行われる運びとなって。

一番真っ当にぶつかっていたのは、柳の剣のソウジロウと移り気なオゾネズマですかねぇ。

まぁ、オゾネズマの切り札を真っ当と呼んでいいのかどうかは判断に迷う所ではありますが。

残滓ですらソウジロウに異常を来す辺り、恐ろしいにも程がある。

 

そして、今回は黄都が作り上げた英雄ロスクレイの戦いがあるとあって、彼の陣営の話も多かったわけですが。

二十九官の謀略の手はどこまでも伸びてるんだな、と空恐ろしくなった。

そして、彼の戦いぶりとそれに対する民衆の反応も。負ける事を許されない英雄程、悲しいものはないでしょう。

 

それと対峙したのが、まだ二つ目の名を確立していなかった少女だというんだから、あのマッチングは残酷だった。

キアを擁立したエレアの事情も描かれましたが。……その背負った闇も苦しかったし。彼女につきづけた嘘を隠して、彼女の前では優しい先生であった彼女の挿絵と終わりもまた悲しいものでありました。

 

この世界は悲しい話ばかりだ。本物の魔王の爪痕は深く、闇に囚われた人々の救いは遠い。

それでも生きている人々の在り方は尊いと思うけれど……六合上覧は、様々な思惑が混ざり合った蠱毒みたいで、息苦しさも感じる。

だから澱んだ想いをぶつける先が必要で、“教団”がスケープゴートにされたのも、納得できずとも理解は出来る。

その果てに嘘だらけの、罪を背負うことになる英雄が生まれるって言うのは皮肉と言うべきかどうか。

 

読み終えると、「光陰英雄刑」というタイトルが。表紙にロスクレイとクゼ、そしてキアとエレアが明暗分かれた背景に描かれているのが。とても秀逸に感じられますね。

それでもキアとエレアは立つ位置こそ違えど手をつないでいるのに、ロスクレイとクゼは視線すら交わらないというのもまた良い。

修羅たちの中では、やっぱりクゼが一番好きですね。ああいう、真意を隠しながらも行動できるキャラ大好きです。

異修羅Ⅲ 絶息無声禍

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「くだらなくなんてない」

「……そうかよ」

「…………ハルゲントとの勝負なんだ……」

 

ついに、六合上覧が開始する第三巻。

関東に用語解説とか、黄都二十九官の名前一覧とか乗っていて楽しかった。

こういう設定部分が見れるのは個人的に好きなんですよね。

まぁ、私の嗜好を抜きにしても、修羅を擁立している面々の情報が整理されてるのは良いことだと思います。いくつか空席あるんですねー。

                                                                                                      

サイアノプみたいに、離れた地域で産声を上げた修羅なんかも居ますけど。

黄都からも警戒されている、最大の傭兵ギルドが作った国家、オカフ自由都市。

本物の魔王。そして魔王軍が居た場所に続く、最後の地。

前半は、この二か所の描写が多かったですねぇ。特に最後の地周りでは、過去編として本物の魔王に挑んだ「最初の一行」の描写もあり、本物の魔王の名前なんかも明らかになっていて情報量が多い。

 

名を広く知られた修羅達であろうとも震える、本物の魔王の在り方はただただ恐ろしかった。己の在り方を貫く、修羅達の様子を3巻まで読んでいたからこそ、怖さが増すんですよね……。

魔王の正体が明らかになっても。本当に、だれがこんな魔王を倒せたんだ、という謎が出てくる。物語の構成が巧みで、読んでいて引き込まれる。

 

今回当登場した修羅だと、黒き音色のカヅキが好きですねー。

「英雄として、世界への責任を果たさないとね」という客人の少女。

オカフ自由都市に対抗するため、黄都が派遣した銃使い。実際に腕利きを何人も仕留めてて、活躍っぷりが見事。彼女の名を冠した章の、終盤で出てくる修羅紹介文の演出含めて好き。

 

これまで裏で動いていた灰色髪の少年なんかも出て来てましたが。

自らは戦闘力がないものの、誰もが無視できない状況を整えるのが上手い、彼なりの戦い方があるのは結構好みですねー。修羅にも多様性の時代……

 

アルスを擁立したヒドウのポリシーも分かるし、名誉に執着するハルゲントのこだわりも嫌いじゃないんだよなぁ。

冬のルクノカという伝説を引っ張り出してきて、アルスと戦う舞台を整えて。それでも、彼は。ただアルスの輝きを信じ続けていた。


アルスはアルスで、冬のルクノカを通じてハルゲントの存在を見ていますし、なんなんだこの二人は……いや、好きですけどね、こういう関係。

ハルゲントは全くもって不器用で、時代遅れの官僚とされているのも無理はない感じですが。最後のあの慟哭は、中々刺さる。嫌いな人はヒドウみたいにとことん嫌いそうですが。
これだけ迫力ある戦いやって、まだ第二試合までしか終わってないとかどうなってるんでしょうね……

異修羅Ⅱ 殺界微塵嵐

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「キュネー。俺には願いがあったんだ。……馬鹿みたいな願いだ」

(略)

「馬鹿みたいでも、ずっとそうしたかった」

 

1巻同様大量の加筆が入り、WEBとは別物になった第2巻。

WEBに殺界微塵嵐なんて出てきませんからね……どうしてこうなった。

新キャラ新展開を入れて、これ以上ないと思っていた熱量を更に高めていってるので、ご無理のない範囲で続けて欲しいと思っております。

 

本当の魔王による爪痕は未だ濃く、平穏な時代は遠い。

今は黄都が力を持っていますが、それに抵抗する旧王国主義者も居るし、魔王自称者だって残っている。

黄都が進めている、勇者を決めるための戦い。それに参加させる修羅達の選考も順調に進んでいます。

 

今回登場の修羅だと、地平砲メレが好きですねー。巨人の射手。ある村を見守り続けた、偉大な戦士。それでいて普段は冗談を口にして笑う、彼の在り方はとても輝いて見える。

新キャラではやっぱり戒心のクウロが一番好き。優れた五感を持った修羅だったが、その感覚を失いつつあるキャラ。

……正直、2巻の犠牲者枠筆頭だと思っていました。予想以上に格好良かったし、まさかキュネーともども生き残るとは思っていなかった。裏切られた……いや、悲劇的予想は裏切られていいんだよ!

 

新エピソード「殺界微塵嵐」。ある地方で信仰されている、全てを微塵にする砂嵐。

今回の敵は災害という事で、どう描くのかと思っていたら……いや、丘をすり潰すとかどんだけだ……

登場キャラ達が、それぞれの事情でこの嵐に立ち向かう事となったわけですが……。修羅が易々と一丸となって戦えるはずもなく、おぞましきトロアと窮地の箱のメステルエクシルとのバトルがあったり、今回も混戦著しかったですね。

 

そして、ロスクレイとルクノカ、思った以上に関わらなかったな! 

表紙をよく視るとこの二人、中心にある微塵嵐とは別方向見てるので、伏線だった感じもしますが。え、そうだったら凄いなクレタ先生。

ロスクレイの戦法が、本人は思うところありそうですけど、手を抜いてなくて気に入ってます。「絶対なる」という二つ目の名が重い。

今回は後書き1ページという事で、かなりあっさりしてましたが。
オチまで完璧なコントのようで笑った。ネタの引き出しが多いな珪素先生。
次巻予告がなかったのがちょっと残念ではありましたけど。
もしあったら嘘予告世界でかい野菜大会とかになってたんだろうか。


異修羅Ⅰ 新魔王戦争

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「勇者が……欲しいな」

 

WEBからの書籍化作品。

……では、あるのですが。なんと書籍化にあたって12万字も加筆したという驚異の作品です。それもう普通に新作では!? 凄まじいボリュームアップです。

WEBは未読だったのですが、書籍が面白かったので、速攻で飛んで読みはじめました。
カクヨム掲載分を読み終えてみると、「本物の勇者」も相当な厄ネタ感があったので、なんというか黄都の政争で都合のいい勇者を仕立てるのあながち間違ってないどころか、正解説までありますね……
 

「魔王」と呼ばれる存在により、危地にあった世界。                                    

何者かによって「魔王」は倒されたものの、その勇者が誰かは誰も知らない。

偶像として英雄が必要である、と生き残った中でも最大の都市・黄都は「本物の勇者」を祭り上げるための試合を催すことになった。

 

1巻は試合開始前の、エントリー段階。

これだけの力を持った英傑が参加しますよと言う、アピールでしかない。

それが、とてつもなく熱いんです。本戦に進むことになる修羅以外にも、逸材は多くいて。

いずれも劣らぬ力と実績を持っている彼らが戦う時、誰が勝つのか予想もつかなくて読む手が止まらなかった。

 

書き下ろしされたキャラたちもまた魅力的で…いや凄まじかった。

コレで本戦に出場するメンバー、まだまだ増えるって言うんだから驚きです。

表紙にいるキャラだと「通り禍のクゼ」が好きですねぇ。あぁいう飄々としたキャラに弱い。

修羅以外だと、自らの愚かさを自覚しそれでも行動を続けている、静寂なるハルゲントが好きです。彼の信じる悪の定義「それは自分を裏切ることだ」が、好ましい。

袖の著者コメントが、自分じゃなくて元素の珪素になってるのは笑ったし、後書きもユーモアあふれてて中々楽しい作者さんですね。冬予定の2巻も期待してます。


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