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いや――回り道が僕の人生なのだ。これまでだってそうだったじゃないか。後悔なんて墓に入ってからすればいい。
今は、とにかく走り出すときだ。


長かったシリーズもついに完結です。
まぁ、前の巻でてからこのエピソードが本の形になるまでに時間が空いているっていうのもあって、なんか終わったという感じがしません。
久しぶりの新刊が最終巻とかジョークが利いてるなとか言えばいいんだろうか。
もうでないかもと思っていたので、ちゃんと刊行されたのはうれしい限りなんですけどね。

これまでの話では、ニート探偵団それぞれに関係するような事件を取り扱ってきてました。
エンジェル・フィックスはニートたちの居場所を壊したものだったし、彩香の事件でもありました。
園芸部がつぶれそうになったときには、テツ先輩の過去を暴くことになった。
それらは、アリスがやっていたニート探偵が死者の代弁者であったから引き出せた真実です。
引き出してしまった真実という面もあるかもしれませんが。
鳴海が遠回りをしたり、相手をだま蔵化したりしながら真相にゆっくり近づいていく危うげな道のりを、裏でサポートしたり、最後暴き立てる役回りをアリスが担当してきていたわけですが。
最後のエピソードは、これまで暴く側だったアリスのエピソード。

描かれるべくして描かれたというべきでしょうか。
シリーズを通して、鳴海は何処までも鳴海であったというか。
冒頭引用したように、いつまでたってもグダグダうじうじ悩んでいて。けど、吹っ切ってしまってからの行動は、容赦がないというか。
大事なものはすでに決まっているから。覚悟を決めた彼の行動は何処までもまっすぐで。
「大事は恐れないくせに小事にびくつく。マフィアの頭領に向いてるんじゃない?」
なんて、あるキャラクターには言われていましたけど。

微妙な個所とか駆け足な個所もありますが。
好きなシリーズという補正もかかって、中々いいラストだったと思いました。
最後、それぞれのキャラクターのその後みたいなのが少しだけ書かれていましたけど。
そこに至るまでの話、そこからの話、そうしたエピソードを読んでみたいという気持ちもあります。
それらは描かれればきっと面白いでしょう。けど、蛇足だとも感じでしまう気がしてならない。
いいラストだと思えるこの辺が終わり処、という事かもしれません。
好きなシリーズが終わるのは、やはりどこかもの悲しいものです。

神様のメモ帳 (9) (電撃文庫)
杉井光
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2014-09-10