「俺の経験によると いい結果を期待して願ったものは大概ろくな事にならん」
「…不安になるこというなよ」
「だが 悪い結果ばかり浮かぶ『願い』は逆かもしれん」
(略)
「おまえが不幸になれば 誰か幸せになるかも知れんぞ」
願いを叶える石を体に持つ男、露華。
彼は、願いを持つ者も前に現れそれを叶えていく。
喋るカラスを伴い、旅をする彼は、ある街で芝居一座に身を置く楠成と出会う。
彼は願い……というよりは悩みを抱えている男で。
「女の顔が分からない」。
白く塗りつぶされたように見えて、区別が出来ない。
でも、自身の見目は良いもので、女がよって来たりする。
それによってすれ違いが生じて……居づらくなって旅に出る、なんて逃避を続けているわけですが。
縁あって楠成と露華は旅路を共にすることに。
途中、露華の前身についても触れられていましたが……
元々は大きな石であり長い事大切にされていたため、力を持った。
意識を持った彼は、人々には見えなかったが……願いは聞こえていたため、時に力を使い、村を助けていた。
けれど、それは代償を求めるものであり。こちらの村に雨が降ればあちらに降らず、と言った感じで。
歪みが蓄積されていった結果、砕かれて……年月を経て、また形を作った。
そして、旅路の果てに二人はそれぞれの求めていたものを得て。
1冊で綺麗にまとまっていて良かった。