「後世の歴史家は 口を揃えて諳んじるだろう」
「今この時こそが――」
「帝国軍の進撃が 最も栄光に満ち溢れた瞬間であったと」
共和国相手に大打撃を与えた帝国。
どこもかしこも戦勝によるお祝いムード一色で……
実際、共和国首都へのトドメとなる作戦行動においても、目立った妨害行動はなし。
これは勝った、と。戦後の交渉準備を始めているのも、納得は出来る。
しかし、火種は未だにくすぶっている状態で。
共和国が抵抗を示さなかったのは、残った戦力を逃がし反攻の機会を掴むためでしたし。
アルビオン連合王国では情報部の失態や、先だってターニャ達と交戦した大佐が情報を持ち帰ってましたし。合衆国の参戦まで匂わされて……
かつての世界の知識でもって、ターニャだけが共和国の作戦に気が付きましたが……
これまで積み重ねてきていたディスコミュニケーションの発露、とでも言いましょうか。
本部と現場とで、意思疎通がうまくいかなかった結果、最良の結末は遠ざかってしまった。
もう最後、「この先の歴史は 地獄の晩餐の鍋を覗く 勇気を持つ者のみに目撃してもらいたい」と〆られているのが不穏でならない。