「他者の正しさは、君の納得を担保しない。君が迷うのは、君が心から納得していないからだ。故に導きだされる答えは、こうなる。君に必要なのは、君の中の正しさをはっきりと見つけることなのだろう、とね」
アスヴァールの戦乱が終わった後、次の戦いが始まる前の合間を描くエピソード。
第一話は「エリッサ商会」。リムの知人でもある行商人の少女エリッサのお話ですね。
彼女はジスタートでは珍しい褐色の肌に銀髪、赤い瞳と異国の血を引く風貌のため、いじめも受けていたようですが……。
珍しい容姿ということは、他の人の記憶に残りやすいと言う事だから、善い行いをすれば信頼を勝ち取れるというリムの教えを胸に、商人として堅実に生きているのが好ましいキャラでしたね。
戦闘方面でも秀でた姿を見せる女性が多い魔弾の王シリーズではありますが、エリッサは一般人なんですよね。
盗賊がたむろしているから危ない、という話を聞いて引き返す選択を取ろうとするくらいには。損切りも視野に入れられるの偉い。
でも、何の因果か彼女は流浪の戦姫オルガと……アスヴァールの戦乱を生き伸びた旧魔弾の王と出会い、友人としての縁を育んで助けられることになるんですから、数奇な運命を持ってるなぁと言いますか。
そして第二話は「最後の円卓の騎士」として、蘇ったサーシャが得た穏やかな暮らしについて描かれます。
アスヴァールの田舎にある村で、子供達に文字や計算を教えていたようですが……先日まで戦争をしていたこともあって、野盗の問題が近づいてくるなど平穏ばかりではありませんでしたが。
第三話は「ライトメリッツの春」。エリッサがリムとティグルに会って色々と話す短めの章で、エピローグ1みたいな味わいでした。
後書きで語られていましたがエリッサの出身であるカル=ハダシュトが第二部の舞台になるそうですから、そこに繋げるためのエピソードなんだろうなぁ感。
エピローグでは、復活したサーシャについて聞けばそりゃ動くよな……と納得のシーンで、詳しい会話については描かれないのも味わいがあって良い。