――いいや、全て違う。自分には解る。ティグリスが抱いたものは、意地だ。
ウェインは再び西で開催される、選聖公会議に参加する事に。
今回は、聖王直々の招待とあってはウェインに拒否が許されるはずもなく。
着実に力を付けているナトラに、東西どちらにつくのか去就を明らかにさせようとする思惑が当然蠢くことに。
この状況でも蝙蝠を貫こうとするウェインはただただ凄いわ。
まぁ実際、東は未だ帝国の後継が決まらない状態ですし。西は西で伏魔殿だから、行き来して美味しい所だけ取りたいというのは正義ですけど。
帝国との繋がりを、いずれウェインを追い落とす弱みとすればと自分で示唆したりして、交渉を乗り越えていた場面とか、感心してしまった。
冒頭、描かれたナトラ内部のフラム人達の熱。
ナトラが発展している今だからこそ、フラム人が地位を得よう、と。彼らの私欲ばかりではなく、国外から人材が流れ込んでいる中、フラム人に対する偏見を抱いている輩も多いため、危機感が募っている状況のようで。
若者たちの主張も間違って遺灰ないものの、危うさを感じる流れではありますね。実際に、首長は代替わりの時に伝えようとした秘密をまだ抱えておくことにしたようですし。
……ニニムを垣間見た西側の人物が、彼女に注目した、という事実がおっかなくてしょうがない。
ナトラの慣例として、王族がかつて存在したフラム人の王国について学ぶ時、王家のものが直々に教える、というのがあるのも気にかかる。百年前のラーレイは、いったいなにをしたんだ……
今回も選聖公の一人が死んで、その殺害容疑がウェインにかかったりとトラブルに巻き込まれてましたが。
各勢力の思惑を描きつつ1冊でエピソードを纏めてくれるのは読みやすくていいですね。
相変わらずカルドメリアが暗躍していて、おっかない。誰か排除してくれ。あまりにも彼女が怪しくて、聖王傀儡説とかもあったみたいですけど。聖王は聖王で、爆弾じゃないですかヤダー。
次も西側の話になりそう、とのことで。今度はどんな騒動が巻き起こるのか楽しみです。
あと、道中の馬車内でニニムがウェインの癖を利用して良い時間すごしてたり、ウェインが西側で活動するニニムの髪を染めてみたり、相変わらず隙あらばいちゃつくなこの主従は……いいぞもっとやれ。