
「自分と違う誰かが自分と同じように思うと考えるのはオススメしない、という話を悠里に判りやすく説明できない。どういえばいい?」
(略)
「いろんな考えのやつがいるってことだよ。何と何を引き換えにしてもいいかは人によって違う」
前作の「夜を歩けば」と同じ世界観です。
作中に柊っていう研究者が名前だけ出てきてるけど、多分あの人ですよねぇ。
夜を歩けばでは「異能者(アウター)」という、異能を持ち、線の向こう側にいる人々の話が描かれていました。
その能力のほとんどは、例えば死角に潜めるとか、認識を焼くとか、思考を読めるとか、五感やらに影響を与えるものが多かったように思います。
今回登場するのは「異能者(ヴァリアント)」という、前作の彼らとは違う能力者。
最初に登場する異能者からして、右腕を鉄のように硬化させるというものですし。
そもそもの身体能力も相当なものがあるようですから、アウターとヴァリアントはまた別の存在だという印象。
共通しているのは、《上》の指示によって研究をしているという点と、最終的な目的くらいでしょうか。
異能者を集めて、殺し合わせる。
なんともまぁ、頭の悪そうな実験ですが、それを真面目に研究している人がいるって言うんだから世も末。
それに出資している人々もいるって言うんだから、アレです。
何でも屋を営む女、式条丹。
ある日喋る猫に「助けてくれ」と請われて実験に参加した彼女。
いやぁ、自分の流儀を持っていて、それを貫き通してくれるから、判りやすくていいですね。
実験の内容を知って参加したり、勝ち残ることで得られる賞金目当てのクズばっかりが集まったりしているので、敵が戦いの後あっさり死んでも心が痛まない。
大体の場合、敵の方がマコトたちを殺しに来るんだから正当防衛な気もしますが。
……過剰防衛になってないかとか、それを楽しんでいるあたりマコトも言い逃れは出来ないという説も。
カバーと扉にしかイラストがないのが残念。
続編出て、アウターとヴァリアントの差とかに言及が入ると個人的にすごく楽しいんですけど、どうだろうなぁ……
最初から最後まで異能バトルしていて、中々面白かったです。