敵を打ち倒すのに躊躇するなど、敵に対して失礼なのだ。絶対にやってはいけないことだ。殺す相手に同情するくらいなら殺さなければいい――敵対を選んだのなら、堂々と胸を張らねばならない。
(略)
遥か昔から延々と繰り返される死は、未来へ進むために積み重ねられるからだ。誰かを殺しておいてどこにも進まないなどということがあってはならない。絶対にあってはならないのだ。
面白かった。けど、個人的には前2冊の方が好きですねー。
御伽噺のような、ファンタジー小説、「RINGADAWN」の完結巻。
今回の御伽噺は、戦場に満ちる無念や呪怨から生まれるとされる怪物『虚戦士』。
前王の隠し子として軍に追われる少女ミルナを助けた少年は、その伝説さながらの力を持って追手を倒す。
しかし、戦闘から離れてみれば、屈託のない笑みを浮かべることもあって。
追われる少女と、たまたま縁が出来た少年との物語。
ミルナとかクロードとかは好きなんですけど、ミルナの周りのキャラは好きになれない。
まぁ、周りのキャラと言っても、厳密に言えば騒ぎを引き起こしたソフィアさんなんですけどね。
良いように利用されているじゃないですか。
前2作の主人公たちが、ある程度自分の考えを持って、不利な状況でも呑み込んで行動していく、ある種の信念があったのが好きなんですよね。
それに比べると今回の2人は、その辺りがちょっと物足りない。
否応なく巻き込まれたってこともあるでしょうけど、覚悟が決まっていないというか、前2作のキャラたちと比べて、年齢的にも、子どもに近いってところでしょうか。
どこか、幼い。でも、この二人だからこそ、御伽噺のようなこの世界の幕引きにはふさわしいコンビだったんじゃないかと。
それに、ミルナが覚悟を決めてからのやり取りは結構好きですよ。
『幽霊街~』の方にも『妖精姫~』のキャラが出てきていましたが。
今回は最終巻という事もあり、同じようにそれぞれから主要キャラが登場してきて、結構テンションあがりました。
カミナさんいったい何をやっているんですか、とか。
レイジは相変わらずで安心するなぁ、とか。
しかし、今回はカミナの扱いが衝撃的だったといいますか。
この作者はちょっとまじに容赦ないなぁ、と思いました。
御伽噺みたいな世界、と何度も行っていますが、ただ、優しいだけの世界を意味しない、厳しくともその中で生きていく強さの話なんじゃないかと。
個人的には、レイジとクロードのやり取りが好きですかね。
砦に侵入するときのやり方がどっちも阿呆みたいと言いますか。
助走をつけて、その勢いのまま飛びあがり、建物の出っ張りを足場に登り切るレイジ。
凹凸に手をかけするすると垂直に壁を登るクロード。
どっちもどっちと言いますか、冗談みたいな登り方をする奴らだよなぁ、と言いますか。
ま、なんにせよ、良い物語でした。
気に入ったシーンも多いです。前2作の方が好みではありましたが、この話も十分に面白かったと思います。