「先祖が優秀な功績を挙げた、以前の当主は領を上手に統治した。だから子孫も国と民に有益であろう、という期待を込めて徴税をはじめとした権利を与えられておる。国と民から信用と信頼を前借し生活の糧を得る、それが貴族という立場の本質邪」
(略)
「それを理解しておる者は前借りした分、自らを鍛え次世代を育てる義務を負う。家が続くのは優れた次世代を育てた結果であって、目的ではない。逆に国と民からの信用と信頼を軽視した者には相応の結果しか残らぬものじゃ」
マゼル達の協力も得て、魔将ゲザリウスを討伐したヴェルナー。
王都への帰還に際しては総指揮官であるシュラム侯爵がメイン、討伐MVPのマゼル達、その後ろに続く形でヴェルナーは王都の凱旋に際したパレードに並んだようですが。
彼自身も思っていますが、以前は警備する側に立っていたヴェルナーが、後ろの方とは言え凱旋の列に並んでいるのは感慨深い。
ヴェルナー的にはゲザリウスはゲームに居なかった敵であり、警戒対象ではあったものの……彼の心配はあくまでこの先に起こるだろう「王都襲撃」に重点が置かれていて。
だからこそゲザリウス問題は速攻で片付けたかった。ただ、王都の上層部的には猶予はあると考えていた。
そのあたりの齟齬もありつつ、迅速に解決したヴェルナーへの評価は上層部では高いようですねぇ。
ウーヴェ翁に事情を打ち明けたことで「予言書」といった形で簡単に情報共有できたので、意識のズレも多少は改善すると良いですけど……実際に記憶のあるヴェルナーとで温度差はどうしても生じるでしょうねぇ。
色々と手を打って、そのために借金も重ねていることで、若くして実績を積んでいるヴェルナーを叩く人は「借金貴族」みたいに言ってきてるわけですが。
王太子や将爵、商人のビアステッドだったり、彼の事を認めてくれる人が多いのありがたい。
魔将を討伐したことで亡国となったトライオットの貴族が国土復興に前向きになっていたりしてるみたいですが……いつかは必要なコトでしょうけど今じゃないんだよなぁ。
そのあたりを上層部が弁えてて、ヴェルナーを軍から話して王都で文官としての仕事をしてもらうことになって。
リリーの記憶力とかを頼りに、サポートしてもらっているの良いですねぇ。
……これまでの積み重ねがあって、リリーの方から少し踏み込んでいくのも、ヴェルナーがこれまで以上に覚悟を決めているのも良いですねぇ。カラー口絵のところにもありますがあそこの「……お慕いしております」のシーンとか、好きなんですよね。
そうやって大切な人という実感を強めたこともあって、領地の発展につながる未来への積み重ねをしていこうとした息子の変化を、ヴェルナーの父が感じているシーンとかも含めて味わい深い。
王室の特別書庫の調査を許されたヴェルナー、リリーの同伴も認められて彼女の空間認識能力の高さから別の問題に気付いたりもしていましたが。
マゼルを一時的にでも自分の国に引き留めようと他国が動いたり、神殿内の馬鹿の思惑が噛み合った結果、マゼルが訴えられてしまうような事態になったり。
リリーが兄の代理として裁判に臨み、さらにその代理人として指名されたヴェルナーが決闘に臨むことになったりと、文官仕事始めたはずなのに荒事に巻き込まれていたりもして、ヴェルナーの安寧は遠い。……いやまぁ、王都襲撃が控えている以上、彼の安寧ってマジにしばらく来ないことが約束されてるんですが。
なんなら、決闘騒動もバカが多すぎたせいで王太子の予想したタイミングよりも早く起きたけど、似たようなことはするつもりだったみたいですし。
年齢的にはまだ学生であるはずのヴェルナーが、既に実績詰んで、上層部にも認められている状況なので、仮に魔王討伐が成ったとしてもヴェルナーはなんだかんだ政争に巻き込まれて安寧とは遠い日々を過ごしそうではありますけど。