「……あれは、恐ろしい魔女だな」
「恐ろしいだなんて、いやねぇ。沈黙の価値を知っている才女、って言っておあげなさいよぉ~」
これまで隠していた「沈黙の魔女」という自分の正体について、学園で出来た友人知人に打ち明けたモニカ。
誰もが混乱する中で、事情を知っていたヒューバードが攻撃を仕掛け、それを無詠唱魔法で無効化することで真実を証明して……。
その秘密に薄々感付いていたシリルが真っ先に膝をついて、魔法伯である彼女への礼を示したの、彼らしくて良いですよね。……正しいけど、これまでと違う彼の態度に泣きだしてしまったモニカが、可哀想だったけど可愛い。
最初に出来た友人であるラナが、そんなモニカの涙を拭いてくれて、隠しごとをされていたことは思うことはあるが、隠した理由だってわかるし……起こっているとしても、今も友人だと宣言してくれたのは良かった。
……気付いていなかった人々は、まぁそれはそれは大きな衝撃を受けていましたが。
生徒会長が偽物だった、という事実を伝えた上で「それでも彼を助けたいから協力してほしい」とモニカが提案するの、彼女の成長を感じて良かったですねぇ。
危険な作戦であることも考慮の上で、それぞれに考えはあれど協力してくれたも良き。
かつての友人バーニーのアンバード伯爵領が魔導具作りの職人が多い土地で、秘密裏にとある魔導具を作りたかったモニカが彼を頼ったのも、良かった。
モニカは、「生徒会長は本物の王子であり、呪術師によってそう言わされていた」という筋書きで事を治めようとして。
その案に賛同してくれないだろう、結界の魔術師ルイスの足止めは必須だった。
結界を張った直後にモニカが援護するシーンが追加されていたり、茨の魔女や深淵の呪術師のフォローまであって、加筆要素が熱かったですねぇ。
……それだけ工夫してもなお、正面から打破してきた武闘派魔術師なルイスが恐ろしすぎましたけど。
内心オドオドしまくっているけど、ブリジットからの指導を受けた上で、強い女の演技を貫き通したのはお見事。
クロックフォード公爵、色々と暗躍して敵対者の排除とかも容赦なくしていた人物ではあれど、外交などで実績を積み上げても居て。だからこそ、王すら無視できない派閥を形成できていたわけです。
父に冤罪を着せた仇でもある人物。しかし彼を追い込みすぎると、モニカの目的である生徒会長の救出に関して邪魔される可能性もある。だから手打ちというか、ほどほどの決着を迎える必要があった。
……いやまぁ、父の名誉回復を図るためなら、生徒会長を見捨てる選択をして、公爵の暗躍を暴けば、国力の低下を招くけど出来なくはなかったですけど……。それでも、今生きている人の為に、モニカが選択をしたのが重い。
暗躍を続けるクロックフォード公爵が強大な敵として描かれる中で、国王陛下は病気療養の関係もあって影が薄かったですけど。彼もまたチェスのプレイヤーのように盤面をしっかり見ていたのは、流石の王族というか。矜持を感じて好きです。
アイザック、救われた際に感情を揺さぶられて、自分のやりたい事を模索するようになって。モニカに押しかけ弟子入りまでしているのはこう……思う所なくはないですけど。
モニカがそもそも彼を救う選択をしたしなぁ、とか。実際、モニカの生活能力壊滅的だから助かるは助かるんだよなぁ……という気持ち。
モニカの初恋が実って欲しい派ではありますが、どうなりますかね。特典SSなどをまとめた短編集や、WEBの外伝をもとにした続編なんかも刊行予定とのことで楽しみに続きを待ちたいですね。WEB外伝、そもそも結構な量あるのに、なんか10巻は完全書下ろしらしいので、まだまだサイレント・ウィッチを楽しめそうです。