気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

サイレント・ウィッチⅨ 沈黙の魔女の隠しごと

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「……あれは、恐ろしい魔女だな」

「恐ろしいだなんて、いやねぇ。沈黙の価値を知っている才女、って言っておあげなさいよぉ~」

 

これまで隠していた「沈黙の魔女」という自分の正体について、学園で出来た友人知人に打ち明けたモニカ。

誰もが混乱する中で、事情を知っていたヒューバードが攻撃を仕掛け、それを無詠唱魔法で無効化することで真実を証明して……。

その秘密に薄々感付いていたシリルが真っ先に膝をついて、魔法伯である彼女への礼を示したの、彼らしくて良いですよね。……正しいけど、これまでと違う彼の態度に泣きだしてしまったモニカが、可哀想だったけど可愛い。

最初に出来た友人であるラナが、そんなモニカの涙を拭いてくれて、隠しごとをされていたことは思うことはあるが、隠した理由だってわかるし……起こっているとしても、今も友人だと宣言してくれたのは良かった。

 

……気付いていなかった人々は、まぁそれはそれは大きな衝撃を受けていましたが。

生徒会長が偽物だった、という事実を伝えた上で「それでも彼を助けたいから協力してほしい」とモニカが提案するの、彼女の成長を感じて良かったですねぇ。

危険な作戦であることも考慮の上で、それぞれに考えはあれど協力してくれたも良き。

かつての友人バーニーのアンバード伯爵領が魔導具作りの職人が多い土地で、秘密裏にとある魔導具を作りたかったモニカが彼を頼ったのも、良かった。

 

モニカは、「生徒会長は本物の王子であり、呪術師によってそう言わされていた」という筋書きで事を治めようとして。

その案に賛同してくれないだろう、結界の魔術師ルイスの足止めは必須だった。

結界を張った直後にモニカが援護するシーンが追加されていたり、茨の魔女や深淵の呪術師のフォローまであって、加筆要素が熱かったですねぇ。

……それだけ工夫してもなお、正面から打破してきた武闘派魔術師なルイスが恐ろしすぎましたけど。

 

内心オドオドしまくっているけど、ブリジットからの指導を受けた上で、強い女の演技を貫き通したのはお見事。

クロックフォード公爵、色々と暗躍して敵対者の排除とかも容赦なくしていた人物ではあれど、外交などで実績を積み上げても居て。だからこそ、王すら無視できない派閥を形成できていたわけです。

父に冤罪を着せた仇でもある人物。しかし彼を追い込みすぎると、モニカの目的である生徒会長の救出に関して邪魔される可能性もある。だから手打ちというか、ほどほどの決着を迎える必要があった。

 

……いやまぁ、父の名誉回復を図るためなら、生徒会長を見捨てる選択をして、公爵の暗躍を暴けば、国力の低下を招くけど出来なくはなかったですけど……。それでも、今生きている人の為に、モニカが選択をしたのが重い。

暗躍を続けるクロックフォード公爵が強大な敵として描かれる中で、国王陛下は病気療養の関係もあって影が薄かったですけど。彼もまたチェスのプレイヤーのように盤面をしっかり見ていたのは、流石の王族というか。矜持を感じて好きです。

アイザック、救われた際に感情を揺さぶられて、自分のやりたい事を模索するようになって。モニカに押しかけ弟子入りまでしているのはこう……思う所なくはないですけど。

モニカがそもそも彼を救う選択をしたしなぁ、とか。実際、モニカの生活能力壊滅的だから助かるは助かるんだよなぁ……という気持ち。

モニカの初恋が実って欲しい派ではありますが、どうなりますかね。特典SSなどをまとめた短編集や、WEBの外伝をもとにした続編なんかも刊行予定とのことで楽しみに続きを待ちたいですね。WEB外伝、そもそも結構な量あるのに、なんか10巻は完全書下ろしらしいので、まだまだサイレント・ウィッチを楽しめそうです。

十年目、帰還を諦めた転移者はいまさら主人公になる1

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「数を頼みに勝てると思ってるような奴ら相手に 遅れはとらねぇよ」

 

同名作品のコミカライズ。

主人公のトールは十五の時、普通に学校に行こうと家の扉をくぐったところ、異世界に迷い込んでしまった。

振り返ってもさっきまでいたはずの地球の家はなく、危険な魔物に襲われて命からがら逃げる羽目に。

初期は現地の言葉も分からず、転移に際してありがちなチート能力が貰えたわけでもない。そんな中で帰還の術を探るために彼は冒険者となり……言葉を覚え、冒険者としてもソロでBランクになるまでになった。

 

……しかし当初の目的であった帰還方法については、9年の時間をかけてもさっぱりで。

何の予兆も無くこの世界に来た以上、同じように送り返されてしまうかもしれない。

そんな気持ちから、これまでの9年間でもある程度線を引いた交流を続けて来たみたいです。ただ、異世界生活も十年目という大台に入ることになり、もうこの世界に骨を埋める覚悟を決めて。

十年目の決意記念日をやけ酒で過ごしているのと、深酒してトラブルに遭遇してるのはおいおい……って感じではありましたが。

 

実はトールが立ち寄っていたその街は、近ごろとある騒動が起きていて。

ウバズ商会という街を代表する商会の長であった夫婦が三年前に事故で亡くなり、後を継いだハッランという男が前代表の名に泥を塗るような行いを重ねて。

粗暴な冒険者のクラン『魔百足』という戦力を抱えていることもあって、これまで扱いあぐねていたみたいですが。

トールは根無し草だったこともあり、確実にハッランには与していない。そして実力もあるということで、前当主夫妻の娘の護衛として派遣されることになり……その双子の少女もただ守られるだけの小娘ではなく、ハッランの悪事を暴く貢献をしたりする面白少女だったわけですけど。

トールと双子の出会いと、騒動の解決、そして街を離れるまでの小説1巻のエピソードを1冊にまとめてるので、あちこち駆け足で惜しいなぁ……って感じはしました。


友人の妹4

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「友達裏切って好きな子の事優先する位には いま、麻衣ちゃんの事が好きなのは本当」

(略)

「だって終わりを考えて付き合うのも違くない?」

 

シリーズ完結巻となる4巻。

麻衣が太一と付き合っているという事を打ち明け、兄妹喧嘩勃発したところで引きとなったわけですが……。

4巻は梨子と拓実の義姉弟のエピソードからスタート。幼少期にファーストキスは弟にした、と公表していた彼女が「憧れの先輩が義理の姉になる」という設定のドラマに出ることになって。

 

宣伝も兼ねて実家でのインタビューがおこなわれることに。実際には恋愛ドラマみたいに、姉と「そういうこと」までする踏み込んだ恋人な弟くんでしたが……インタビューの場では「ずっと昔から一緒だから、本当の姉弟みたいなもの」と言い切って。姉に「私より演技上手いのでは」なんて内心で突っ込まれるほど。

姉と共演する俳優さんに、お姉さんと近づきたいからなんて協力持ち掛けられて揺れたりもしてましたけど。卑屈になる自分よりも良い人なんじゃないか、なんて迷いながらも「やっぱり嫌だな」とハッキリ宣言出来たのは前進ですかねぇ。

これまで隠していた姉について友人知人にもバレるインタビューも、姉の仕事の為にという面があるにしよ受け入れたわけですし、変化してってるなぁ……。

 

さて一方の麻衣と太一。康介と良い関係なのではないか、疑惑の遥さんに時間を取ってもらって、事情を教えてもらうことになったわけですが。

太一が中学に上がる前に辞めたバドミントンクラブ。そこに居たコーチと遥さんは付き合っていたらしいですが……実はそのコーチが三股位している女性関係が緩い人で。

コーチを辞める時に分かれて、後から悪評を聞いた形みたいで。遥さんは当時好きだったことは確かだ、としつつある程度割り切りもつけてる当たりは大人だな、というか。

小学生自体の康介は遥に告白した時に、コーチとの関係をこっそり聞いてて、だからコーチが辞めた時に怒りを抱いたりした模様。

 

遥さんは「麻衣ちゃんには私みたいに悪い人に引っかかって欲しくないんだろう」と兄の胸中を分析してました。

そして今になって事情を知って、コーチの情報を追跡して詰めた方がいいんじゃないか、という妹カップルの意見に「あの2人の関係に関しては他人だし、興味本位で引っ掻き回して満足しようなんて何様だ」と言えるのは偉い。

 

……いやまぁ、もう自分が通った道だからするなって話でもありましたけど。そこの割り切りは出来るのに、なんで妹に対しては友人に「悪い虫つかないように見張れ」とか過保護発揮するんだ。麻衣ちゃんから「言葉足らずなのは向こうの落ち度」と言われるのも無理はない、というか。悪い子じゃないけど康介は苦手だなぁ……。

康介君、若い頃に年上の女性に惚れて振られて。その相手が付き合ってた人が悪い人で、でもそれに気付けなくて。「自分もコーチと同じような目で見てた」という、悪い気付きを得て変に枯れてしまってるよな……。妹と友人に「恋愛脳がすぎる」とか言ってるし。

まぁ、兄妹喧嘩はちょっとありつつも、交際それ自体はちゃんと認めてくれたのは良かった。
気兼ねなく外で会えるようになってうきうきプリクラ取りに行く麻衣ちゃん可愛かったですね。 

地獄の沙汰も黄金次第~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~3

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「そうね。そもそも、私は魔女と自称もしていないし、フロンティア人とも言ってない。あなた達が勝手に言い出したことよ」

(略)

「勝手に決めつけて、恐怖しないでもらえる? 善良な一冒険者よ」

 

黄金の魔女エレノアと、一般冒険者沖田としての二面生活を続けている主人公。

ナナカが攫われて、アメリカの工作員ハリーとクレアの協力を得て救出に成功してからも、変わらず活動を続けていたわけですが。

攫われたときにナナカが魔女の弟子を自称して巻き込まれたから、いっそ弟子として認めることで今度自分がトラブルにあった時は巻き込む覚悟の沖田くんは本当にもう……。

 

剣術スキルレベル6とかいう、初心者中心とはいえ受付嬢やってるカエデちゃんが知らないくらいの領域に足を踏み込んでいる一方で、錬金術スキルの方もレベルが上がって作れるもの増えて行ってるんだから、成長が著しいというか。

遅くから冒険者になっただけあって、成長の余地がありすぎる。

クレア……ひいてはアメリカとの交渉中であるレベル2回復ポーション。議員の暴走でその契約が御破算になった日本も当然挽回を狙っているわけですが。

 

本部長子飼いの冒険者である三枝ヨシノが、沖田くんに近づいてくることになって。

高ランク冒険者であるヨシノのパーティメンバーであるBランク冒険者のリンでも、剣だけの勝負なら無理、と判断するくらい沖田の剣の腕が確からしいですねぇ。

実際には魔法を使えたり、高額で頼れる装備を持ってたりするから、いざ戦ったらまた違う結果になりそうですけど。……なんかゲーム的に言うとバフ駆けるポーション作れるようになってるし、なんだかんだエレノアが勝ちそうな感じはある。

ヨシノが「沖田=エレノア説」を疑って、調べて、家にまで踏み込んできた時、それまで交流して一緒に冒険する間柄になったことから生じる油断があったとはいえ、ヨシノあっさり薬盛られてましたしね……。

少しずつ黄金の魔女の正体に気付く人が増えていますが、おおむねエレノアの齎す利益で口を噤んでるの、なるほど『地獄の沙汰も黄金次第』というタイトル通りだなぁ……って読み味ですね。

春夏秋冬代行者 春の舞5

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「雛菊 ね さくらとこれからも 生きて いきたいの…」

 

1822話を収録。

囚われの撫子に権能の使用を強要する【華歳】の御前、いやぁ良い笑みですね。悪党の、容赦ない微笑みだ。

夏主従と秋の護衛が撫子の探索に赴いている間、四季庁舎で残っている春主従。

……さくらにとってかつての友と師ではあるけれど、絶対的な主を失った原因でもあり……どうしたって複雑な思いを抱いている。

 

雛菊も狼星を慕う気持ちはあるけれど、誘拐された生活の中で心を病み別人という自認をしている歪んだ状態になっているわけで。

そんな中でも、「今度は雛菊がさくらの心を守る」と。今より少し楽になれる道もあるはずだ、と希望の道を示してくれるの春の代行者って感じがして良いですねぇ……あたたかな気持ちになる。

 

ただ優しいだけじゃなくて……裏切り者と族が動き始めて、春主従と冬主従がそれぞれ襲撃を受ける展開になっていくのは慌ただしいですけど。

内部に裏切り者仕込んでいるの、根が深いなぁ……。代行者の事を想う一般人的な感性がありつつ、恐怖で支配しているのが賊のやり口。

撫子を追いかけている夏主従と阿左美が、賊への不満を思いっきり口にしてくれるシーンは賛同しかない。

本編がどこもシリアスモードなので、あとがきページにあるオマケ4コマがほのぼの夏主従なのが良かったですね。……夏の代行者である瑠璃があやめに扮して離宮脱走してたの発覚する話なので、瑠璃もバレて気まずいし護衛であるあやめが鬼の形相になってるので、当人たちは穏やかじゃないですが……。

マギカテクニカ~現代最強剣士が征くVRMMO戦刀録~5

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「決まっている、彼等現地人は人間だ」

(略)

「言葉を話し、物を考え、幸福に笑い、悲劇に泣く。俺たちと彼らの間に、違いなどあるものか。血肉でできていようが、データでできていようが――彼らはオレたちと同じ人間だ」

 

聖火の塔に蔓延る悪魔を討伐に来たクオン達。

個の技量でいえばトップクラスなので、戦闘面ではそこまで困ることはなく攻略を進めていましたが。

クオンは相変わらず武人すぎるというか。いろいろ経験が豊富で、「やられると嫌なこと」を想像するのも得意で、本職には及ばずとも簡単な罠なら見つけられるとか、ホントなんでもできるな……。

でも、ゲーム的な発想にはまだまだ疎くて。ロックゴーレム系の魔物を見つけて「生きてる間なら採掘できるから、ただ倒すなんてもったいない!」と緋真に言われているのはちょっと笑えました。

 

クオン、割り切りがかなりはっきりしているというか。度量が広いというか。

現地人たちにハッキリと心を認めていて、だからこそ自分たちと変わらない人間だと公言するのは、ゲームをプレイしているだけの人とは相性は悪そうではありますが。

……実際、NPCもかなりキャラが立っているというか、「生きている」感が強いのは確かなので、どちらかというとクオンの判断は尊重したい派。

 

アルトリウスがクオンの意見も把握しつつ、重要イベントを見つけた彼に噛みついてきた連中に「NPCの信頼度が足りない。だからクエストが受けられない」と分かりやすく言い換えてたのもなんか好きです。

プレイヤー同士の温度差を描きつつ「これがきっかけで変わってくれることを願う」というアルトリウスも良いキャラしてます。

 

NPCの騎士団長から依頼されて、フルレイドのクエストを受注することになったクオン。

同盟に声をかけて乗り込んでましたが……強力な子爵級悪魔を、成長武器のスキルを使いつつも削り切ったのはお見事。

そしてボスを倒して隣国に踏み込んだとたん、重要イベントに遭遇しているので本当に引きが強いな……。

そうやって活躍しまくっているのでクオン達の姿をCMに使っていいか、という打診が来ることにもなって。……師範である彼が、直弟子の誘いを受けてゲームをプレイしているというのが門下に広がることになって。

師範代たちに詰められている明日香は……まぁ、師匠を独占しようとした私欲交じりだったからね、仕方ないね。

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?13

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「ネフテロスは私が守ると約束した だから…… あのこも私が倒してあげなければいけないんだ」

「…いいだろう それでこそ我が盟友だ!」

 

6367話を収録。

ネフテロスを庇護して、キメラ討伐に赴くシャスティル達教会陣営。謎の人物の襲撃問題とか、頭の痛いものはありつつそれでもやるべきことをやってるのが良い。

そしてザガンはザガンで色々と探っていたところ……先日助けた狐獣人の少女クーの身体に憑依するような形で、魔王ビフロンスが接触してきて。

 

ビフロンスは自分の元から逃げたネフテロスを回収したいだけなんだよー、と建前を口にしますが、ザガンはわざわざ他人の領地に侵入した上で接触してくるならそれは「実行を前提にした宣戦布告だ」と看破。

……途中、オリアスが現れたことでちょっとコントっぽくなってましたけど。

三者三様で魔王にふきだしでぎゅむって潰されてるページ、微笑ましくて笑っちゃった。真面目に宣戦布告5秒前、みたいなシリアスシーンだったはずなのにね。

 

自分の領地で勝手は許さないと言えるザガン、実に良い王様やってますよね。

クーのこともちゃんと後処理オリアスに頼んでますし。緊急事態ではあるけど、そこでオリアスから頼み事をされて、ちゃんと時間を取っているの律儀。

それくらいの時間はあるだろうと、周囲を信頼しているのも良いですねぇ。

……ポンコツと不運のかみ合わせで最悪の誤解が生じたシャスティルがちょっとピンチでしたけど、それ以外のところはちゃんと打っていた手が効果を発揮してましたし。

あそこでポカーンってするビフロンス、なかなか見ものなので好きです。


フシノカミ 辺境から始める文明再生記8

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「ヘルメスさんの夢を叶えることは 私の夢を叶えることでもあります」

「これからは共に歩みましょう」

 

3438話と幕間を収録。

相変わらず原作を上手く拾ってアレンジしているのが良いですねぇ。

そもそもここでの人狼との戦いだって、原典や編纂版だとアッシュ個人で戦う羽目になっていたところに、ジョルジュ卿が駆けつけてアッシュを拾って撤退する流れでしたしね。

ただ都市内部で動き出したことで、より「逃げたらマズい」という緊迫感が増して、夢追い人であるアッシュが守るために戦う理由付けになっている。

 

上手く受け流しつつ隙を探してましたが、人狼は疲れを知らずだんだん押されていくアッシュ。本当に危険だ……という時に、アッシュが走馬灯を見るかのようにシーンが挿入されているわけです。

アッシュ自身は、全ては自分の夢の為の積み重ねだから、夢を叶えたいと強欲になると言ってますけど。多くの人の助けを借りたからこそ、叶えたいという想いがより強くなっているのだ、という描写でこれまで協力してくれた多くの人が描かれているの良いですねぇ。

見開きで一番右のコマでマイカが本を見るため背中を見せていたところ、一番左のコマでは笑顔をこちらに向けているの、構図の見せ方が上手くて流石だなぁ……と思いました。

死地でもただ「死んでたまるか」じゃなくて「叶えてやる」と、前のめりなの実に暴走特急アッシュ君らしいな……と思いました。

 

人狼に抗ってる場面は荒々しい筆致・コマ割りだったのに、病床で意識を取り戻してからハッキリしているのも良いですねぇ。

「おにくたべたい」と言ったアッシュ君と、それを聞いたマイカとアーサーの2人のなんとも言えない表情が味わい深くて好きです。

 

幕間「マイカの閃き」。マイカとアーサーのやり取りメインで、傷付いたアッシュを見て、治療の手伝いに踏み込んだとき、ハッキリと自分の想いを口にしてるマイカの覚悟が決まってる目が良いですね。

マイカ、活発な村娘という顔も間違いではないんですけど。なんだかんだ言いつつサキュラの領主家の血を継いでいるので、個人の感情で結婚を同行できる立場では実はなくて。

イツキはまだアッシュに毒されすぎてないので、平民であるアッシュは有能だけど、貴族家に迎え入れるのに吊りあうのかという視点なのに、マイカは「自分の方が彼と釣り合うか」という視点なのが、よくわかっていらっしゃる。

 

療養のためにアッシュがノスキュラ村に戻ったの、短いページでしたが描いてくれたのも良かったですねぇ。今の状況が見れたのは嬉しい。

そして無事に帰還したアッシュが、次なる計画を実行しようとしたところで、勉強会に参加しつつも上手く馴染めていなかったヘルメス君の「夢」について知り、それを深掘りしていくことになるわけです。

ベルゴ達も技能を持っている集団として協力してくれて、同じ方向を見て協力してるのが良いですねぇ。そして苦労はギュッとまとめて38話の間で製作開始から形になるまでを描いてるのお見事過ぎる。


月の白さを知りてまどろむ2

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「充分よくしてもらってる だから… きっとここに帰ってきてくださいね」

「……了解した」

 

58話と描き下ろし8.5話、原作古宮先生の書下ろしSS『身辺調査』を収録した第2巻。

イーシアの似顔絵、上手いですねぇ。「そうそうこんな感じ」と身を乗り出してるサァリがとても可愛い。

暗躍してる人物が居て、神供の家系が狙われている。そんな中で、かつて取り逃がしてしまったものの「化生を生み出す呪術師」の存在を知るシシュが居たのはラッキーでしたね。

生み出された化生には特徴的な紋章が浮かぶから、仮面しているのもそれが理由だろう、と相手の手札を暴く過程を多少スキップ出来たわけですしね。

 

それを聞いたトーマが化生斬りとして動きだそうとして。

一番狙われるサァリと、王都から来た新参として警戒されているシシュを月白に留めておこうとしたわけですが。

2人とも事件が起きている中で黙っていられる性質でもなくて。

シシュの警戒を解くためにサァリが持ち出してきたのが、彼女の客に与えられる紐だったの、目的のためには手段を択ばないなサァリ……。

アイドには見られないでとは言ってましたが、そもそも他の人にもあまり見られない方が良かったのでは……? 鉄刃とか、まさに誤解する結果になってましたし。いやまぁ逆に間違ってないのか……?

 

王の巫から贈られた呪の掛けられた骨。そこから生じた犬によってシシュは敵を追いかけることに。……ミシロ先生がSNSで、この犬がポメラニアンだったバージョンのネタイラスト描いていて、シリアスぶち壊しだけどとても可愛くて良かったです。

 

そして巫としての力を持っていないサァリもまた、街を愛するがゆえに足を止めてはいられず。どうせこうなってしまうんだったら、まだシシュが連れて行った方がお互い無茶せず良かったのでは……? サァリの存在が明らかになって敵が動き出してしまうかもですけども。

シリアスシーンだけど、忍び込もうとして届かなくてぴょこぴょこしてるサァリが実に微笑ましかったですねぇ。……事情知ってからだと、一番危ないところに一番大切な宝が飛び込んでいく場面なので、とっても危ういですけど……。

 

アイリーデという街を狙った、南部のブナン侯の策略で……それに加担している裏切り者もいたわけですけども。アイドさぁ、拗らせすぎてて本当にもう……。

嫌いじゃないですけど、歪みすぎてて見てられないな、という気持ちにはなります。

神話として語られている、太陽を飲み込もうとした蛇を神が滅ぼし、その返礼として美酒と音楽と人肌を神に収めたことがアイリーデの始まりで……その物語は真実である、と。

蛇の毒に蝕まれた呪術師、神供三家が継いできたもの、王の思惑。そういったものが明らかになっていく展開が好きですね。

踊らされていたシシュがそれでも王への忠誠を譲らず……それでも寒さに震えるサァリの手を取ることも躊躇わないのが良いんですよね。

複雑な感情を抱いていながらサァリを助けるために動けなかったアイドとの対比が光る。いや、アイドも悪いやつでは……ありますけど。重いものを抱えていて歪んでて。繰り返しになってしまいますが、嫌いではないです。

巻末の『身辺調査』は、享楽街であるために一時滞在して去る人が多い中で、『戻る』と言ったシシュの事を喜んでるサァリが可愛くて良かったです。

ワールドトリガー28

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「『できるようになった』という無数の事実を忘れるな」

「そして自分に『できる』高さになるまで一段一段を刻んで行けば 必ず今より強くなれる」

「そしてそれが おまえの自信に変わるんだ」

 

239247話を収録。

自分たちでトリオン兵を作って戦わせる、という特殊シミュレーション。

辻が、ネイバーの襲撃の影響でトリオン兵に悪いイメージあるから、別系統のデザインとして恐竜に寄せてみたり。シミュレーションとは別口のアイデアとして、王子は肩に装備して援護してくれる小型タイプを考えてみたり、太一が輸送車両としての性質に注目したものを作ってみたりしてるの、それぞれの個性が見えて良いですねぇ。

小荒井が上手くかみ砕いて説明してくれてるのも読者的にもありがたいし、臨時部隊の中でもアドバイス役になってて作中でも意味があるのが良い。

 

他にも「ルール的に狙って引き分けに出来るんじゃないか」って案を出す隊員が居たり、かとおもえばヒュースは「俺のトリオン量なら火力と耐久を両立した飛行型が作れる」とストレートにパワーで解決しにきてたりしますし。

……いやまぁヒュース、そのトリオン量でごり押しする方が実際強いし、それだけじゃなくて樫尾がタネを見抜けずにいた、諏訪7番隊の作戦を(修を良く知っているアドバンテージあるとはいえ)速攻で見抜いてますから貢献度高いんですけども。

 

修のアイデア、戦闘ターンを切り詰めてコスト削減してるのも上手いけど、実際に大きく動くターン限定してることで、動かす側の負担も減ってそうなのが良いですよね。

見た目だけ偽装してる隊とか、奇抜な見た目のトリオン兵を作って情報量の暴力で殴り着てる隊とかいて、個性が光ってて楽しかった。

絵馬が自分から意見を出していくようになって、「B級隊員は真面目だから、対策出来るならしたがるだろう」って、まだ感覚に寄ってる部分は有れどしっかり要点押さえてたのは偉い。実際、村上10番隊とかは明日が4日目くらいの想定で対策が回っていったらどうなるのか、とか言うカードゲームの環境考察みたいなことしてるしな……。

諏訪隊も、順位が上がってきたこともあって「対策される側になったから、労力少な目で刺さるところには刺さる程度の案を考えろ」とか修に無茶ぶりしてましたが。修なら考え付くだろうなぁ……という信頼がある。

それぞれの順位や環境の中で、「トリオン量で『読み』を超える可能性のある若村隊(ヒュース)や二宮隊(千佳)」への警戒があったり。絵馬から、「『読み』を超えてくる、A級に感じるような怖さを感じたのは、歌川隊(空閑)と諏訪隊(修)だけ」という風に、玉駒第2がバラバラになっても、注目を集める個所に居るの良いですね。

 

そうやって修が注目を集める中で、若村はいろいろと苦悩して……それを抱え込まず、質問出来たのはこれまでの彼からすると一歩前進でしょうか。

その後ヒュースの正論パンチでボコボコにされるんですけど……。ヒュースも若村の師匠である犬飼へ一報入れて相談したりしたうえで、言葉を費やしているの良かったですね……。

 

犬飼、遠征も視野に入っていた隊の隊員なだけはあるというか。「おれがいなくなったらどうすんの」と、自分が居なくなる可能性を踏まえて、「戦う時は独りなんだから、独り立ちさせよう」と指導していたの重い……。

若村も悩んで悩んで、かなり苦慮してますけどまだ彼ら普通に学生やってる年齢なんですよね……凄い優秀なんだよなぁ。

ヒュースのたい焼きを使った『実力』の比喩とか、『努力』の考えとかかなり刺さりましたね……。



プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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