「俺はこれで料理を作ろう。最下層にこれがあったのはきっと意味がある。もう一度挑むなら俺の料理を食べていってくれ」
1巻でも加筆エピソードがありましたが、迷宮関連の話が増えていたりしましたねぇ。
相変わらず迷宮食材を用いた「迷宮料理」を出す店として人気を博しているヨイシの酒場。
異世界ならではというか、酒場の娯楽として吟遊詩人の歌は結構重要で。異世界に来た当初言葉が分からなかったヨイシ的にも、メロディに載って覚えられる歌は良い教材だったようですし、爺さんの葬式での葬送歌も頼んだとかで、かかわりが深かったそうです。
料理のおいしさで話題のヨイシの店は、一晩で帽子がいっぱいになるほどのおひねりが期待できる人気店だそうで……最初のエピソード「透明玉菜」もそんな吟遊詩人のひとりを招いたことで挑戦することになった食材でした。
歌にするためにいろんな噂に通じている吟遊詩人から「ヨイシの酒場」として噂になっていると聞くことになったり。最後にはヨイシの歌まで作って去っていったんだから、にぎやかで面白い御仁でしたねぇ……。合間にユグドラとセフィの歌も作ってるので、目の付け所が良い。
山二つほど離れたところにある養鶏場が魔物の襲撃を受けたことで、卵の供給が滞ることになって、爆発卵というそのまま割ると爆発する卵の調理方法を模索したり。
迷宮料理の噂を聞きつけたさる貴族から「食べると死ぬ昇天キノコの調理」を依頼されたり。うわさを聞き付けた王家が宮廷料理人を派遣してきたり……その後も式典に際しての協力を要請されたり。
爆発卵は近隣への影響が大きいのもあって、方法確立してからは結構直ぐに情報提供してましたし、「上手い飯を出す店の主」ってだけじゃなくて、ヨイシにそこまでの意識はなさそうですが、名声的な部分も高まってきてる感じはしますね。
ヨイシ、根が小市民だからなぁ。爆発卵の調理法を探しているときに、ウカノがちょっと反抗期的な振る舞いを見せて部屋に入れてくれなくなって、盛大に戸惑ったりしてるし。
実際は爆発卵ちょろまかして部屋で羽化させてペット化計画企んでただけだったわけですが。
ウカノのこと鹿とトカゲのハーフかな? とか言ってますが。吟遊詩人からは「ドラゴンみたいな尻尾生えてなかった?」と指摘されてもまさかと流してるし。
あからさまコカトリスだろうウカノのペット・ホウオウも「ニワトリだろ」で流してるし。
爺さんとの付き合いもあったアリムラックに不審なところを感じても、なんか丸め込まれてるし。ちょろい。赤い目と長くて尖った耳を持って、鏡の無い診療所でコウモリをペットにして夜間診療を行う、ニワトリの鳴き声で卒倒する一般人が居るか。吸血鬼だよ、それは。
まぁアリムラック先生、一瞬ちょっと危うい場面あったものの、おおむね善良になった吸血鬼ではあるようでしたけど。
閑話「料理人の冒険者」で爺さん世代のエピソードがちょっと見られたの良かったですね。迷宮が土の力を奪うために失われてしまった、かつて王国を代表する作物だった「氷芋」の話があったり。ヨイシを拾った「爺さん」の仲間たちのリーダーの家系、9世代くらい前に女神が居たとかで。わずかな神聖を頼りに迷宮の謎をほぼ解き明かしていた、っていうのも凄いし……そんな彼らですら最下層は攻略できずに、ヨイシが来るまで迷宮都市は健在だったというのが寂しくもある。
割と長命なウカノ、ヨイシに懐いていて実に微笑ましいんですけれども。
彼女の母は旦那を亡くしてから娘にあたっていたようですし……寿命差で別れが待ってそうなのとか、不安は尽きませんが。それでも今幸せなのは間違いないから、良いかなぁ。
大迷宮は踏破しないと土地の力を枯れさせ続けるし、成長を続けた果てには崩壊して大規模な砂漠を創り出したり、迷宮の主が外を放浪するようになったりするとか、危険しかないので、ユグドラとセフィが偉業を為してくれたのはホッとする要素ではある。
読了した人は、WEB版の最後に書かれている「裏話」を読みに行くことをオススメしますよー。